人事評価
2022/02/03
360度評価とは?自律型の組織づくり・人事評価や人材育成にも効果
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従来の管理型組織から自律型組織への転換が叫ばれる中、注目を集める360度評価。人事だけでなく、ビジネスパーソンなら知っておきたい360度評価とは?その意味や目的から、効果的な活用法や評価共有のノウハウ、導入企業の事例までまとめてご紹介します。
【システム比較】360度評価システム選定のポイントは、こちらで詳しく解説しています。
360度評価システム導入の比較ポイントは?メリット・導入前準備まとめ
360度評価(360度フィードバック)とは
360度評価(英語:360-Degree Feedback)とは、上司・同僚・部下など評価対象者にとって立場の異なる人が多面的に評価をする手法のことで、「360度フィードバック」、「多面評価」とも呼ばれます。
「評価」という言葉が付いてはいますが、元々は能力開発の手法としてアメリカで誕生したもの。そのため、必ずしも人事評価のための手法ではなく、処遇等とは結び付けずに育成の手法として用いられることも多くあります。
ワークスタイルの多様化など労働環境の変化によって従来の単独評価では公正な評価がしづらくなっていることや、ピラミッド型の組織からフラットな自律型組織への変革を受けて、360度評価は業種を問わずさまざまな企業で導入が進んでいます。
【評価の意味は?】360度評価の意味については、この記事で詳しく解説しています。 360度多面評価って意味あるの?バレない・失敗を防ぐための準備とは
360度評価を導入する目的
360度評価を導入する目的は、大きくは下の三つに大別できます。
複数の視点を取り入れることで、より客観的な人事評価を行うため
多面的な評価を行うことで対象者の行動や特性を正しく把握できるだけでなく、対象者にとっても評価を納得しやすくなります。
対象者の気付きや学びにつなげ、自己成長を促進するため
360度評価では自己評価も行うため、自己認識と周囲から見えている自分とのギャップに気づくことができます。さまざまな立場の人から評価を受けることで、より客観的に自分と向き合うことができ、改善行動にもつながりやすい利点があります。
チームビルディングや理念・行動指針の浸透など、組織づくりに活かすため
360度評価を行うことで、普段から周囲の人を観察し積極的に関わる習慣が生まれます。また、質問項目を自社の理念や行動指針に紐付けることで価値観の浸透を図ることもできます。
360度評価はどんな企業に効果的?
以上のようにさまざまな目的で活用される360度評価ですが、特にどんな企業で効果を発揮しやすいのでしょうか。
上司ひとりの視点では適正な評価がしきれない環境になっている
具体的には、 上司が抱える部下の人数が多い、またはプレイングマネージャーのため部下一人ひとりの行動観察に十分な時間を割けていない、他店舗・他拠点などの環境で、部下の日頃の行動に目が届きにくい、対象者が組織横断型のプロジェクトに参加しているなど、上司が対象者の行動を把握しにくい状況にあるといった環境の場合、複数の視点から評価を行う360度評価は効果的な手段でしょう。
社内のコミュニケーションや風通し、透明性に課題を感じている
成果主義でお互いへの関心が薄く、協力姿勢が見られない、積極的な発言が少なく、「言われたことをやればいい」という風潮がある、社内のコミュニケーションが希薄であることが離職率の高さにつながっている、といった環境の場合、自由闊達なコミュニケーションは人材の定着や成果を発揮しやすい組織づくりに欠かせない要素であり、企業風土として根付かせていくには仕組み化するのが一番です。特に、部下から上司への意見を拾い上げられる360度評価は効果的なツールと言えるでしょう。
360度評価のメリット・デメリット
では360度評価を導入することで、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
360度評価を導入するメリット
- 単独評価よりも客観的な評価を行える。その結果として従業員の評価に対する納得感が高まる
- 自身の強みや弱みを把握でき、多数の意見をもらうことで自発的に改善行動が促される
- 自身の意見が組織に反映されることで帰属意識の醸成を図れる
- 社内のコミュニケーションが活性化する
などが挙げられます。
360度評価を導入するデメリットや注意点
一方、360度評価を導入するデメリットや注意点としては
- 運用の手間が増える
- 主観や談合などによって不適切な評価が行われる可能性がある
- 上司が部下に厳しくしなくなる可能性がある
などが考えられます。
冗談のような話ですが、実際に360度評価の結果を考査と直結させたために社員間の談合を生み、公正な評価とはかけ離れた結果を招いたという失敗例もあります。
本来の目的に反するのでは意味ないものとなってしまうため、360度評価は人事評価とは切り離して育成を目的とするか、人事評価に用いるとしても材料の一部とするなどの工夫が必要です。
あわせて、評価者を対象とした研修も検討すると良いでしょう。
手間の軽減が運用のカギ
運用の手間については、入力側の負担だけでなく、評価者の選定や提出状況の把握、集計など管理側の負担も多く、導入や継続の上でネックとなりかねません。この負担をいかに軽減するかが、運用のポイントとなるでしょう。
負担の軽減方法としては、人事評価システムの導入が効果的です。人事評価システムの導入は無駄な手間を省くだけでなく、時間軸・組織軸など多角的な集計・分析にもつながるため、人事戦略・経営戦略にも役立ちます。
人事評価システムの導入を検討されている方は『人事評価システムを使うべき三つの理由』の資料もぜひご覧ください。
https://www.hrbrain.jp/contact-evaluationsystem
360度評価の具体的な評価項目や運用方法
注意すべきなのは、いずれの場合でも評価項目は行動状態を示す内容にすることです。
× 十分なリーダーシップを持っている
○ 常に目標とする方向性や方針を部下に説明している
× 業務遂行スピードが速い
○ 適切な時間配分で業務を進めている
といった具合です。
また各項目の評価は「どちらとも言えない」を含む5段階とするのか、自由記入欄は作るのか、項目ごとにウェイトを変えるのかも検討しましょう。
フィードバック
前述の通り360度評価は元々能力開発を目的とした手法ですので、実施後はぜひ1on1でのフィードバックの機会を設けましょう。本人にとっても自身を俯瞰的に見ることができ、シートがあることで具体的な改善行動への話し合いができる有意義なコミュニケーションの場となるでしょう。
ここで押さえておきたいフィードバックのポイントは三つです。
・主観を入れずに事実だけを伝えること
(コメント例文)「この項目は、自身の評価が5で周囲の人は2から3とギャップがあるね」
・要因については本人に考えさせる
(コメント例文)「周囲が2から3と評価した要因は何か思い当たる?」
・具体的な改善行動に落とし込む
(コメント例文)「では具体的に、今日から何を変えたらいいと思う?」
特に社内コミュニケーションやメンバー育成に課題を感じているのであれば、人事評価のタイミングだけでなく月1などの頻度で1on1ミーティングを実施し、改善行動の進捗について確認するのもおすすめです。
1on1ミーティングの効果や進め方について詳しく知りたい方は、「1on1ミーティング入門書」もぜひご参考ください。
https://www.hrbrain.jp/contact-ebook-1on1
360度評価を導入している企業事例
最後に、360度評価を導入している企業の具体的な事例を三つご紹介していきましょう。
アサヒビール株式会社
2010年から360度評価を導入した同社。当初は組織長や部門長クラスを対象としていましたが、現在は部下がいる管理職やチームリーダーにも広げ、年1回の頻度で運用しています。
強い管理職と職場づくりを目的に人材育成の制度として活用しています。
質問項目は、WILL(意思の表明)、SEE(問題の感知)、THINK(戦略の構築)の3分野で構成される「ビジョンマネジメント」と、PLAN(業務の計画)、DO(業務の遂行)、CHECK(成果の検証)、ACTION(業務の改善)の4分野からなる「ジョブマネジメント」に関するもの。全24項目について5段階で評価します。
評価者は上司、部下、同僚の合計10人以内で、人事部が指名。誰が回答したかわからない形でフィードバックされます。
また、360度評価の実施後には「リーダー・ミーティング」を実施。同じ職種の者が15名前後を集まり、今後自らが実施する「アクションプラン」を立てることでマネジメント力向上を図っています。
株式会社ディー・エヌ・エー
対象者はマネジメント層で、評価ではなくマネージャーの能力開発を目的した制度として導入しています。同社の事例で特徴的な点は、実名制であること。行動規範の一つである「発言責任」(率直に思ったことはなんでも言う)に則って、包み隠さず正々堂々と意見を伝えるようにしています。
内容は、マネージャーの評価軸としている
- ゴールを示す
- 適切に任せる
- 支援する
- 結果を出す
- インテグリティ(誠実さ)が高い
の5点の実践度合いについてコメント付きで評価をします。実名制とすることで改善サイクルが早まり、その後のコミュニケーションも活発になるという利点があります。
アイリスオーヤマ株式会社
人事評価と人材育成の両面で「公正さ」を重視している同社では、2003年から「多面評価」制度を導入。当初は人材育成ツールとして管理職を対象としていましたが、5年後にはパート・契約社員も含めた全社員に対象を拡大しました。主任級以上の幹部社員用と、一般社員用で項目や運用方法、利用目的を変えて運用をしています。
幹部社員については人事評価と人材育成に利用。年1回のリーダー研修の結果と多面評価の結果を基に、人事評価委員会で査定を行い、幹部社員の昇格・降格を決定しています。幹部社員用の質問内容は「業務力」「実力」「指導力」「人間力」の4分野から計12問。評価者は10〜30人で、人事部が人選を行います。
自社に合った評価制度を導入するには
360度評価は数ある評価制度の1つです。評価制度を見直す際には、自社の状況と照らし合わせながら、最適な評価制度を構築する必要があります。
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