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コーチングを学び、スキルやモチベーションの向上に役立てよう

コーチングを学び、スキルやモチベーションの向上に役立てよう

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目次

    社内人材の育成のために『コーチング』の技術を身につけましょう。コーチングは単なる知識や技術を伝えるだけではなく、問題を自発的に解決する力を育み、モチベーションを向上させることができます。

    コーチングの役割

    人を指導するための技術には、ティーチングやコンサルティングなど、コーチング以外にもさまざまなものがあります。

    その中でもコーチングとはどのようなものなのでしょうか。

    コーチングやティーチングの意味

    コーチングとティーチングは、相手を導くという点では同じような言葉に見えますが、2つの言葉には明確な違いがあります。

    「teach」の意味は「教える」。ティーチングとは人に知識やノウハウを教えることです。学校の授業や教習所、セミナーやイベントなど、問題解決の方法を伝授することをティーチングと呼びます。

    一方、コーチングの語源は、「馬車」という意味の「coach」です。馬車が人に目的地を届けるように、人を目標地点まで到達させる役割を担うのがコーチングです。スポーツの指導などによく使われる手法でもあります。

    コーチングの役割

    「指導対象である相手が、自発的に目標へたどり着くための手助けをする」のがコーチングの役割です。

    例えば、川辺にお腹をすかせた人がいるとします。その人の空腹を解決するため、ティーチングとコーチングを使います。さて、どうしましょうか?

    魚の釣り方と食べ方を、一から十まで教えるのがティーチングの解決方法です。「魚を釣って食べる」という一つの目的に対しては最短で到達できる指導法だと言えますが、釣る以外の捕獲方法を思いついたり、他の食糧を探すために応用したりするのは難しいでしょう。

    コーチングの場合は、「魚をよく観察させる」「自分の持つ道具やこれまで培ってきた知識を確認させる」「相談に乗る」といった指導内容で、「魚を捕獲して食べる」という成果を自身で導くことができるようにしていきます。

    この方法では魚を捕獲するまでには時間がかかるかもしれません。しかし、川辺での空腹時に何が必要なのかを自発的に考え、実行する力を育むことができます。「魚以外の食べられるものを見つける」という解決方法を本人が見出すこともあり得ます。

    つまり、成功までのプロセスを自身で辿れるようにするのがコーチングです。ビジネスにおいてコーチングを利用することで、自主性を育み、自発的に組織のために行動する人材を育成することができるのです。

    コーチングの特徴

    コーチングの前提条件は、指導者と対象者が対等の関係であることです。上下関係になってしまうと、対象者は指導者の意見を聞くだけになってしまい、自主性を育むことができません。これではコーチングの役割を果たせなくなってしまいます。

    また、成果達成のための方針決定や行動は、あくまで対象者が行います。解決方法を指導者が提示してしまっては、対象者は成功体験の機会を損なってしまうからです。

    ティーチングは1人が多数の人間を指導することができます。学校の授業をイメージするとわかりやすいでしょう。対して、コーチングは個別指導塾のようなもの。一人ひとりにあわせた指導が必要になるため、1対1が基本です。状況に応じて少人数に対して行うこともあります。

    コーチングの資格について

    コーチングの資格を発行しているのは民間の団体で、団体数も少なくありません。資格を取得すれば、プロのコーチとして活動することが可能です。

    国際コーチ連盟(ICF)では、世界90カ国、1万7000人以上の会員を有しています。トレーニングや実績によってコーチ資格の取得が可能です。

    国際コーチ連盟が発行している資格は三種類あるようです。

    • アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)
    • ICF認定資格プロフェッショナルコート(PCC )
    • ICF認定資格マスターコーチ(MCC)

    このような資格を得ることで、国際的なコーチング活動も可能になります。

    国内にはコーチング資格を得ることができる機関はいくつもありますが、信用のある機関でないと対外的な資格として認められることは難しいので、事前に調べておくことが重要です。

    参考:国際コーチ連盟(ICF)認定コーチ資格

    コーチングの種類

    コーチングには『行動レベルでのコーチング』と『メンタルレベルでのコーチング』の2種類があります。技術を習得するのであれば、どちらのコーチングを学ぶかを決めることも重要です。

    行動レベルでのコーチング

    「目標達成のために、具体的にどんな行動を起こすべきか」を指導するコーチングです。ビジネスにおいては『ビジネス・コーチング』と『エグゼクティブ・コーチング』の2種類が、行動レベルでのコーチングと言えます。

    ビジネス・コーチングは、会社全体の目標と個人の目標を同じ方向に向け、目標達成のためにどのような行動をすべきかをコーチングするもの。主にチームリーダーや中間管理職がMBO(目標管理)を行う際に必要な技術です。

    エグゼクティブは会社に多大な影響力をもたらす経営者や役員のこと。エグゼクティブ・コーチングは、ビジネス上で成果をあげるための組織における課題の発見や、システム管理などをコーチングする技術なので、教える側にも豊富な経験や知識が必要です。

    現状の確認やゴールの決定、そのために必要なリソースやスキルの習得など、行動レベルでのコーチングは、社員をレベルアップさせるために実施します。

    メンタルレベルでのコーチング

    メンタル面の不安や課題を克服することによって、様々な問題が解決することがあります。心の整理方法や物事のとらえ方、仕事との向き合い方を教えるのがメンタルレベルのコーチング手法です。

    ビジネス向けの自己啓発本などは世の中に多数出回っていますが、本だけで解決しようとするよりは、対象者に向けてより細かく対話や指導を行うことができるコーチングを利用する方が効率的な場合もあるでしょう。

    NLPコーチングなどが近年注目を浴びている手法です。

    コーチングの基本要素

    コーチングに必要な要素は、大きく『インタラクティブ』『オンゴーイング』『テーラーメイド』の三つに分かれます。それぞれどんな意味を持つ言葉なのでしょうか?

    インタラクティブ

    インタラクティブとは「双方向」のこと。コーチングにおける基本要素です。

    コーチングは一方的な知識の伝授やアドバイスではありません。双方向コミュニケーションであることが重要です。相手の反応を伺い、その上で様々なアプローチを模索していきましょう。

    インタラクティブを継続すれば、信頼関係の構築にも結びつきます。相手から積極的に意見を発信してくれるようになれば、問題点の早期発見や優先すべき課題に気付きやすくなります。

    オンゴーイング

    オンゴーイングとは「継続」のこと。

    人間は本能的に行動や習慣を変えることを嫌うものです。禁煙やダイエットがなかなか続かないのはよくあること。結果がよくなるとわかっていても、ついつい現状維持に落ち着いてしまいます。

    これを解決するため、コーチングではオンゴーイングが必要になります。1度の指導や相談ですませるのではなく、それが習慣化し、結果に結びつくまで継続的にコーチングを行わなければなりません。

    行動心理学では、継続のためには、簡単な変化が重要だと言われています。「これなら簡単にできる」と思える小さな変化から始めることが、後の行動につながっていきます。

    実際に、引きこもりが「スリッパを揃える」という小さな行動から始めることでなおった、という実例もあります。

    テーラーメイド

    テーラーメイドは「個別対応」のこと。

    人によって考え方や価値観は異なります。同じ言葉をかけても深く共感する人もいれば、反発する人もいるのは当たり前のことですね。相手に合わせて対応することが、コーチングをより効果的に行うポイントです。

    アメリカの大リーグ・ドジャースの監督を20年間務めたトミー・ラソーダは、テーラーメイドによってチームを何度も優勝へ導きました。彼はメモ魔で、選手の反応や気付いたことを逐一メモしては一人一人への対応を変えたといいます。

    大人数のセミナーなどはコーチングとは対極にあるものです。相手にあわせた言葉選びや対応を選択する技術を習得していなければ、コーチングはできません。

    コーチングにおける主なスキル

    コーチングをより効果的に行うために必要なスキルは主に三つあります。「ペーシング」「プランニング」「Disc理論によるパターンの分析」です。

    ペーシング

    ペーシングは「相手と会話の呼吸を合わせるテクニック」です。相手の声の大きさや会話の抑揚、速さに自分のペースをあわせていくと、相手に安心感や信頼感を抱かせることができると言われています。

    相手の仕草や表情を真似する『ミラーリング』や相手の言葉を繰り返す『バックトラッキング』などは、ペーシングの手法として広く知られているものです。ただし、使うにはコツが必要。仕草や表情をあからさまに真似ては、相手が不快になってしまう可能性もあります。

    心理カウンセラーやネゴシエイターなど、会話のプロと呼ばれる人達は皆、卓越したペーシングスキルを持っています。

    プランニング

    プランニングとは「コーチングを施す→実践してもらう→振り返り、次のコーチングへいかす」というサイクルを繰り返すことです。

    プランニングでは、サイクルが変わるたびに少しずつ変化していくことがポイントです。変化がなければいずれ元に戻ってしまうからです。

    一気に変化をつけないことも大切です。ハードルをあげすぎるとかえってモチベーションが低下してしまうもの。目標達成率が低くなってしまいます。

    コーチングは長期的視野が大切な手法です。数カ月単位のサイクルを繰り返し、成果が見えにくくても地道にやっていくことが何よりも重要です。

    Disc理論によるパターンの分析

    Disc理論はウィリアム・M・マートン博士によって提唱された自己分析手法で、人間の行動を『Dominance:主導』『influence:感化』『Steadiness:安定』『Conscientiousness:慎重』の4パターンに分類します。

    Disc理論によると、人間の行動原理は4つのタイプに分類できます。

    • (主導型)…自分のやり方で行動することを好み、人から指示されることを嫌います。目標を一緒に設定し、方法は本人に一任することが大切です。
    • (感化型)…社交的で感受性が豊か。コミュニティに居場所があることを実感することを好みます。自分は認められているのだと意識させることが大切です。
    • (安定型)…慣れ親しんだやり方を好み、変化を嫌います。コーチングの際は、行動をより具体的にして、不明確な点を潰していくことが重要です。
    • (慎重型)…感情よりもデータや論理を優先するタイプ。できる限りデータや論証を提供し、本人の納得のいくやり方をさせることが重要となります。

    コーチングでは対象者をしっかり分析する必要がありますが、この4パターンに分類することをベースにすれば、コーチングの方向性が定めやすくなるでしょう。

    コーチングのやり方

    実際にコーチングを行う際には、どのような手順で進めるとよいのでしょうか。

    現状とゴールの確認

    コーチングでもっとも重要なのはゴール(目標)です。ゴールが設定できていなければコーチングの意味はありません。

    まずは、対象者がどのようなゴールを設定しているのかを聞き出し、ゴールの設定を自らできるように誘導する必要があります。

    そのためにも、ゴールだけではなく現状の把握に努めてもらうようにしましょう。社内における自身の立ち位置や能力について正確に理解してもらうことが第一歩です。

    プロジェクトの進捗や仕事の話を掘り下げ、現状とゴールを対象者に自覚してもらうことがスタートラインとなります。「どうしてゴールにたどり着きたいのか」といった動機からアプローチするのも一つの手です。

    障害やリソースの確認

    ゴールに設定した理想的な状態と現状が一致していないのは、間に何らかの障害があるからです。まずはその障害が何なのかを把握する必要があります。

    その具体的な解決策が、「対象者が自身で影響を及ぼせる範囲内であるかどうか」が大事です。例えば、プロジェクトがうまくいっていない要因が取引先企業のシステムや体質だったとしても、変えるのは難しいでしょう。

    これはリソースの確認作業でもあります。障害となっているものに対して、解決するためのスキルや経験を持っていなければ、別のアプローチを探る必要があります。

    「将来的に妨げになると予想できる障害」についても、確認しておきましょう。あらかじめわかっていれば下準備ができるので、対処も容易になります。

    行動計画(プラン)の作成

    現状と、理想とする目的の間にある障害が確認できたら、次は具体的な行動計画(プラン)の作成に移っていきましょう。

    コーチングでは、対象者本人が行動計画を発案することが重要です。ゴールの期限やプランの妥当性、手順についても一つ一つ丁寧に確認していきましょう。

    コーチングは数カ月単位のサイクルで対象者と面談を行うことが原則ですので、次の面談日までに達成する中間目標を設けておきましょう。都度、進捗の確認ができますし、最終目標よりもハードルが低いので、行動に移しやすいという利点があります。

    計画を達成することでどのような影響がもたらされるかを本人が明確にイメージできると、達成に対する意欲向上が見込めます。

    コーチングの勉強方法

    コーチングは資格試験が設けられていることからもわかるように、一定以上の技術や経験があることが望ましいです。どうすればそれを獲得できるのでしょうか。

    講座やセミナーを受ける

    費用はそれなりに必要ですが、プロのコーチから直接指導を受けることでコーチングに対する多くの知識を学べます。自身の意見や質問に対してアドバイスをもらえるのも、学ぶ上では大きなメリットです。

    近年は、コーチ養成機関や団体の数がかなり増えており、どこで学べば良いか判断に困ることもあるかもしれません。

    有資格者が指導しているかどうか、信頼できる機関かどうかはしっかり調べた方がよいでしょう。

    本で学ぶ

    本の学習も効果的です。

    講座やセミナーで直接教えてもらうより効率は落ちるかもしれませんが、自身のペースと自身のレベルにあわせて学べるのが、書籍による学習の大きなメリットでしょう。自分に欲しい知識を選び、収拾することが可能です。

    単発のセミナーとは違い、何度も読み返せるのも利点の一つでしょう。本を使って、社内でノウハウや知識を共有することもできます。

    コーチングで適切なアクションに導こう

    価値観の多様化や考え方によって、近年はティーチングよりもコーチングに注目が集まっています。

    コーチングを適切に行い、技術を社内に浸透させることで、管理職から一般社員に至るまで、全員のスキルやモチベーションアップにつながれば、企業はますます発展していくでしょう。

    組織の総合的なレベルアップをはかるため、コーチングを利用するのも一つの方法です。

    HR大学 編集部

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