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成果主義と能力主義の相違点を知る。概要や導入のポイントを解説

成果主義と能力主義の相違点を知る。概要や導入のポイントを解説

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目次

    2010年以降、大手企業が次々に成果主義に評価制度を切り替えたことが話題になりました。成果主義と能力主義の特徴や相違点、また成果主義を導入するためにおさえておくべきポイントはどんなものがあるのでしょうか。

    成果主義の基礎知識

    日本は高度経済成長を境に、長らく勤務年数が給与額に比例する年功序列制度を取ってきましたが、近年は景気などの社会的背景により、年功序列制度を維持するのが難しくなってきました。

    年功序列制度にかわる存在として、新たに注目されたのが『成果主義』です。

    成果主義とは

    成果主義は「成果や成績のみで評価を下すシステム」のことです。年齢や学歴、勤務年数などを一切考慮せず、社員の昇給や役職について決定する要素は、評価期間内の仕事の成果のみという、とてもシンプルなシステムです。

    成果だけが評価基準なので、優秀な人材の給与があがります。働けば働くほど評価されるため、モチベーションアップや人材確保の一助となるでしょう。しかし、「働くほど評価される」のが長時間労働の要因となり、残業が増えてしまう問題もあります。

    成果主義の現状

    成果主義は、元々は欧米の賃金制度でした。日本で成果主義制度が注目されるようになったのは1990年代に入ってからのことです。

    『日産自動車』や『三井物産』など、多くの企業が成果主義に切り替えましたが、2000年代に入ってから廃止した企業も少なくありません。

    2019年現在は、まだ導入検討段階の企業も多く、日本においては、成果主義は浸透しているとは言えないのが現状ですね。

    成果主義導入企業の事例

    成果主義を導入し、成功した有名企業と言えば、『花王』や『ホンダ』が代表的です。

    社員の能力開発に1960年代から取り組んでいたという花王。ある程度の下地があったのが成果主義導入における成功の要因と言えるでしょう。

    ホンダは、成果主義導入にあたり、規定を細かく決めていたのだとか。きめ細やかな下準備が成功の要因でしょうか。

    もちろん、成功した企業ばかりではありません。成果主義導入に失敗した企業も数多くあります。失敗例として有名なのが『富士通』と『マクドナルド』の事例です。

    富士通では、評価を決める直属の上司が、部下の評価を高めにつける傾向が出てしまい、正当な評価が下せなかったといいます。

    マクドナルドでは、上役の社員が自分の成果をあげることに全力を注ぎ、新人の育成を行わなくなるという問題が発生しました。

    さまざまな企業が試行錯誤を繰り返す中で、成功事例も失敗事例も数多く発生している現代の日本において、成果主義はまだまだ模索段階だと言えるでしょう。

    成果主義に向く従業員のタイプ

    成果主義に順応できる従業員とはどんなタイプでしょうか?

    成果主義は野心家で向上心が強いタイプに向いています。実力次第で短期間で昇給・出世できる可能性があるので、上昇志向の強い人にとっては素晴らしい働き方でしょう。競争することが好きなタイプにも成果主義はぴったりです。

    成果主義導入の背景

    戦後、ずっと年功序列制度だった日本。なぜ成果主義に注目するようになったのでしょうか?

    バブル崩壊

    1990年、総量規制によって不動産価格や株価が暴落し、バブル経済が終わりを告げました。いわゆる『バブル崩壊』です。

    日本企業の業績は悪化の一途をたどり、次々とコスト削減をせざるを得ない状況、事業の縮小に追い込まれました。

    中でもネックになっていたのが人件費です。年功序列制度は勤続年数が長い社員ほど給与があがっていくシステム。コスト削減が見込める成果主義は当時の経営者にとって、とても魅力的に見えたのでしょう。そこで、多くの企業が成果主義の切り替えに踏み切ったのでした。

    働き方改革

    時はうつり、2019年。4月より施行された『働き方改革』は政府によって打ち出された施策で、労働時間の見直しや非正規社員の待遇改善などが盛り込まれています。

    労働時間に上限が設けられ、非正規雇用社員の待遇改善が義務づけられた中で企業が利益を上げるには、「決められた時間の中で生産性をいかに高めていくか」が重要となってきます。

    そこで、従業員一人一人の生産性を高めるための成果主義の導入を検討している企業が増えているのです。

    成果主義のメリット

    成果主義を導入することで企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか?

    モチベーションの向上

    年功序列制度では、若い社員がいくらがんばっても評価されることはありませんが、成果主義はがんばって結果を出せば、業績がそのまま給与や評価に反映されます。努力の結果が評価されれば、仕事のモチベーションにもつながり、さらなる努力が生まれます。

    社内での競争意識も刺激することができ、結果として良い循環が生まれると、企業全体の生産性も上げていくことができるでしょう。

    コストの削減

    年功序列制度は、続年数さえ長ければ、成果をあげていない社員に対しても相応の賃金を支払わなければなりませんでした。

    そのため、会社側としては無駄な経費が発生し、やる気のある若手社員のモチベーションを下げる要因にもなる悪循環が生まれていました。

    成果主義は、成果の出せない社員に高い給与を払う必要はありません。やる気のある若い社員を昇給させることができれば、コストの削減と、投資の適正化につなげることができます。

    年功序列の脱却

    成果主義は、年功序列とは対極にある考え方です。成果主義を導入すれば、年配の社員だからといって高い給与を払ったり、上役のためのポストをわざわざ用意したり、という無駄を省くことができます。

    成果主義の導入を進めることは、そのまま年功序列から脱却することにつながります。年功序列制度も悪いことばかりではなく、離職防止の効果など、それなりのメリットがあった制度でしたが、現代社会にはそぐわない施策なので、脱却したいと思っている企業は多いでしょう。

    人材育成や確保

    成果を出せば出すほど給与や役職があがる成果主義。成果を出すにはそれなりの実力が必要ですから、スキルアップのために各社員が頑張るようになります。人材育成のさらなる後押しになるかもしれません。

    成果に応じた給与を設定できますから、外部の優秀な人材に対して好条件を提示することができます。もちろん社内の優秀な人材に対してもそれは同じですから、離職防止にもつながることでしょう。

    成果主義は、優秀な人材の育成と確保に大きく貢献してくれます。

    成果主義のデメリット

    成果主義は良いところばかりではありません。日本企業の多くが導入に失敗しているように、扱いを間違えると組織に混乱を招きかねません。

    デメリットを補うことのできる体制を構築しなければなりません。そのためには、デメリットについて把握することが大切です。

    短期成果に走りやすい

    成果主義は目の前の成果が評価につながるため、中長期的な戦略は評価されづらい傾向があります。そのため、評価を求める従業員が短期成果に走りやすいのが欠点の一つです。

    失敗を恐れるがため、ノウハウやツールの導入、新しい事業への挑戦といった前向きな動きが少なくなってしまうこともあるでしょう。

    従業員が失敗しても評価が下がらないようにする、あるいは中長期目標を評価するなど、従業員が心おきなく長期目標に対して挑戦する下地を作ることが、組織運営の課題になりそうです。

    部署によって公正な評価が難しい

    何を成果とするかは部署によって違うため、公正な評価が難しいのも成果主義の問題点です。

    例えば営業部や企画開発部のように、短い期間で一定の成果が見込める部署は、成果をわかりやすく数字で表すことができます。

    しかし、わかりやすい数字で成果を表すことができない法務部や、成果が出るまでに時間がかかる研究部などは、営業部と同じ評価方法を用いると、評価が著しく下がってしまいます。

    部署によってどう評価を変えていくか、公正性を保つことが課題と言えるでしょう。

    スタンドプレーの可能性

    個人の成果が評価に直結する組織では、スタンドプレーに走る個人が増えることがあります。個人の成績さえ良ければいい、と協力を拒んだり、足の引っ張り合いが生まれたり。こんな状態では、組織全体のパフォーマンスは大きく下がってしまいます。

    そんな状態を生み出してしまい、成果主義導入に失敗した企業が『三井物産』だと言われています。成果主義を徹底した結果、グレーな案件でも取り組むようになってしまったり、人脈や知識の共有が著しく減少したり、という悪循環が生まれてしまったのだとか。

    スタンドプレーを防ぐためのルール採用など、組織のチームワークを維持するための施策を、じゅうぶんに検討しなければなりません。

    外的要因によるリスク

    従業員の仕事と直接関係のない、外的な要因が成果に悪影響を及ぼすことがあります。例えば取引先のミスによる損害、一方的な取引の打ち切り、政策や法改正などによって成果があげられなかった……。こういった場合にどのように評価するかも決めておきたいところです。

    社内でも、誰かのミスによって別の従業員の評価が下がることがあります。そのせいでチーム内がギスギスしてしまうと、その後のチームワークに支障をきたします。

    外的要因を始めとした、当人と無関係なところで評価が下がることがないように、ルールを設けておくことも必要です。

    離職率増加のリスク

    年功序列から成果主義に切り替えた結果、報酬が下がる従業員が出ることもあるでしょう。成果が出せず、報酬が上がらないためにモチベーションが低下する従業員もいるでしょうし、残念ながら離職率が増加することもあるでしょう。

    離職率の増加は、人が減ることで業務負担が増えるなど、他の社員にとってもいいこととは言えません。会社の求人コストも増加しますし、できれば離職率は下げたいところ。

    成果が出ない従業員が成果を出せるようになるための育成や、離職率を下げるためのモチベーションアップ手法などは、成果主義にとって大きな課題です。

    成果主義導入のポイント

    成果主義を導入するために必要なことは何でしょうか?

    評価基準明確化と周知

    まずは評価基準を明確にすることから始めましょう。評価となるポイントや、昇給・昇格の基準をしっかりと決めておくことが重要です。

    基準を設ける際に重要なのは、「評価者が誰であっても同程度の評価になること」「評価されたものが納得できる基準であること」です。評価のハードルが高すぎると、かえってモチベーションが削がれてしまうことがありますから、気をつけましょう。

    また、評価の細分化も必要です。花王の評価制度が成功した一因は、研究部門では長期的な視点の評価を、生産部門では習熟度という独自項目を追加するなど、部署や役職ごとに評価の仕組みを変えた『職群制度』と呼ばれる制度をとったことだと言われています。

    基準ができたら周知しましょう。従業員から不満や建設的な意見が出た場合、評価基準に反映すべきものはどんどん取り入れ、精度を高めていくのもよいでしょう。

    評価者の研修と育成

    評価者である上司たちの研修と育成は、成果主義においても、とても重要なプロセスです。同じ成果なのに、評価者によって評価基準がバラバラだと、従業員は安心して仕事に取り組むことができません。

    評価基準に対する理解度を深め、評価する技術を身につけてもらうために、研修や講習会などを設けて、評価スキルをアップできるような施策を用意しましょう。

    特に、法律関係の仕事やマネジメント業務など、数値ではかることができない評価は、評価基準をどこに置くか悩ましい問題です。評価する目線がぶれないよう、評価者同士が常に基準を共有するなどの工夫が必要です。

    評価者のタスク軽減も考慮する

    評価者が公平かつ適切な評価を行うためには、従業員との面談や目標管理に時間を割く必要があります。評価に関わる業務は多岐にわたり、被評価者の数が増えるほど、それに割く時間も増えます。

    「評価に関する数値をシステムで可視化」「業務をサポートするための人事編成」など、タスク軽減によって評価ができる時間を確保できれば、評価の妥当性を向上させることができます。

    制度だけでなくマネジメントも考える

    成果主義は成果を達成できた人にとってはメリットが大きい制度ですが、達成が難しい人にとってはデメリットが大きい制度とも言えます。

    モチベーションの低下や離職を防ぐために、マネジメントについても考えておきましょう。成果を達成するためにどのようなことをすれば良いかといった目標管理の他に、社員が働きやすい部署にスムーズに異動できるような体制作りも良いでしょう。

    成果主義の導入で成功している企業の多くは、育児休暇などについてもしっかりと考慮した上で制度を取り入れています。

    社員一人一人が働きやすい環境作りと、スキルアップのためのマネジメントについても、あわせて取り組みましょう。

    能力主義などの意味や違い

    成果主義と混同されがちな、能力主義という言葉があります。これもなかなか日本では浸透しにくい考え方です。

    能力主義と成果主義は、しばしば混同されることがありますが、まったく別の考え方です。では、どのように違うのでしょうか。

    能力主義とは「仕事に対する能力から評価をすること」です。

    外国語講師の仕事を例にあげましょう。成果主義の場合は、授業のコマ数で評価が決まります。英語しか使えない講師が多くの授業をこなせば評価される、というのが成果主義です。

    能力主義の場合は、単にコマ数が多いだけでは評価されません。多くの国の言語を教える能力を評価します。たくさんの国の言葉をマスターすれば、その分、昇給が見込めるのです。

    成果主義ではあくまでも成果が評価の基準なので、部署異動の際に不公平感が生じるケースがありますが、能力主義の場合は成果ではなく能力を重視するので、そういったことがありません。

    例えば、それまで高いスキルを持ってシステム課で働いていた従業員が営業に抜てきされたとしましょう。慣れない営業に従事した結果、最初は思うように成果を上げられないということはよくありますね。このケースだと、成果主義の場合は給与が下がってしまいますが、能力主義においては給与が下がることはありません。

    能力主義のメリットとデメリット

    能力主義は成果に左右されず、本人のポテンシャルによって評価が決まるため、マルチスキルを持った優秀な人材を確保しやすいというメリットがあります。

    一時的に成果が出なかったとしても評価に直接影響を及ぼすわけではないので、従業員が新事業や長期計画に積極的にチャレンジできる環境を整えやすいのも利点の一つです。

    デメリットとしては、評価が曖昧になりがちという点です。何をもって能力が高いとするかの定義が難しく、評価者によって評価が変わってしまう可能性があります。そうなれば、評価に対して不当と感じる社員が出てくるのは当たり前のことですね。

    実力主義や結果主義とは

    成果主義、能力主義のほかにも、実力主義、結果主義という言葉があります。

    実力主義は「従業員個人の実力を評価する」という意味なので、成果主義とほぼ同義です。わずかですが能力が反映されることもあります。

    結果主義は、成果主義よりシビアな評価方法です。成果主義の場合はプロセスを考慮することもありますが、結果主義は、表面に出た数値のみが評価の対象となります。

    結果主義は、社員のカウンセリングやシステムメンテナンスなど、結果が数値では反映されにくい仕事の評価には不向きと言えるでしょう。

    成果主義の導入は十分な検証を

    働き方改革の施行により、今後は成果主義を導入する企業は増えていくでしょう。しかし、過去の例から見てもわかるように、成果主義の導入はかえって社員のパフォーマンスを下げて、組織力の低下につながる危険があります。

    成果に対してきちんと評価できる基準の設定と評価者の育成は不可欠です。評価者の負担を軽減する人事やシステム導入も併せて考慮しましょう。

    また、成果主義以外にも、能力主義や実力主義、結果主義などの色々な評価基準があります。

    業種や会社の環境に適した制度を作り上げることが、導入成功の秘訣です。

    HR大学 編集部

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