人事をやさしく学ぶメディア

HR大学

人事用語

キャリアアップ助成金で従業員のやる気アップ。仕組みとポイント解説

キャリアアップ助成金で従業員のやる気アップ。仕組みとポイント解説

読了時間:10分

目次

    従業員の業務スキル向上や生活の質改善は、企業全体の業績向上に寄与します。一方で、推進するための企業負担は軽くなく、導入に二の足を踏む経営者も少なくありません。『キャリアアップ助成金』はこうしたギャップを解消するのに大きく貢献してくれます。

    キャリアアップ助成金の基礎知識

    『キャリアアップ助成金』は、従業員、経営側双方に大きなメリットをもたらす助成金の一つです。

    補助金や助成金とは

    企業経営にとって、資金調達は重要課題の一つといえます。返済義務がない助成金や補助金は、企業にとって資金調達上の大きな助けとなります。

    補助金・助成金にはいくつかの種類が存在します。公的な補助金・助成金でいえば、国が支給するものから、都道府県、市町村が支給するものまで多種多様な制度があります。また、企業規模や事業形態、補助・助成目的により交付額や使途への条件も考慮する必要があります。

    申請書類が大量であったり、プレゼンの義務があったりと、手続き上の煩雑さがあるケースも多いですが、申請が通ることで、対象事業の正当性に対し、公的機関の一定度の「お墨付き」を得られるという側面も期待できます。

    キャリアアップ助成金とは

    多くの助成金・補助金の中でも、キャリアアップ助成金は、会社とそこで働く従業員双方にとってメリットが大きい制度です。

    企業の成長には人材の成長が欠かせません。そして、人材は正社員だけではなく、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用労働者も多数含まれています。

    そんな有期契約労働者のキャリアアップ等を促進するための助成金が、キャリアアップ助成金なのです。

    非正規雇用が増え続ける現代で、正社員に対しての非正規雇用労働者の地位や処遇の低さが問題視されています。そんな中で非正規雇用労働者のキャリアアップを図る取り組みを積極的に行った会社を支援するのが、この助成金の目的です。

    キャリアアップ助成金を受給するためには、非正規社員の人材育成、賃金の改定、健康診断制度の導入を行うことが必要です。

    中小企業の場合の受給例

    中小企業が正社員化コースの助成金を受ける場合、従業員を有期契約労働者から正規雇用労働者への転換を行う必要があります。1人あたり60万円が支給され、東京都の企業の場合はさらに1人あたり50万円の上乗せがされます。

    有期契約労働者から正規雇用労働者への転換を行うだけで、100万を超える助成金が支給されるのです。

    人材育成コースの助成金を受ける場合は、1時間あたり800円の賃金助成が行われます。例えば1人200時間Off-JT(職場外教育訓練)を行った場合、800円×200時間=16万円が支給されます。

    さらに、経費助成という助成金もあります。これは200時間以上のOff-JTの有期実習型訓練後に正規雇用への転換を行うと、1人あたり50万円が支給されるものです。

    つまり、正社員化コースと人材育成コースを併用して受給する場合、1人あたり(50+60+16+50)万円で、176万円が支給されます。

    キャリアアップ助成金は、訓練を受けて優秀な人材を得られるだけでなく、助成金も得られるという、企業にとってメリットの大きな助成金制度といえます。

    助成金適用の要件

    キャリアアップ助成金には、大きく分けて3コースがあります。各コースの説明の前に、厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」をもとに、キャリアアップ助成金全般で把握しておくべき点を解説します(平成30年4月1日現在のもの)。

    対象事業主

    助成金適用の要件として、雇用保険適用事業所の事業主であることが大前提です。そのうえでキャリアアップ管理者を置いていること、キャリアアップ計画を作成して管轄労働局長の受給資格の認定を受けていることが要件としてあります。

    これらを満たしていないと、そもそも助成金の申請はできません。

    実施要件

    キャリアアップ助成金の条件として、上記を満たした次は、各コースの実施日までに有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドラインに沿った「キャリアアップ計画」を作成・提出しなくてはなりません。

    提出したキャリアアップ計画は、所轄の労働局長の認定を受ける必要があります。認定を受けたら、対象労働者の名簿、賃金台帳、出勤簿など法定帳簿を整備、保管し、必要に応じて提出できるようにしておきます。

    生産性要件

    生産性要件は、積極的な取り組みを行って生産性伸び率が要件を満たしている企業で、成果をあげた会社に一定額の助成金が上乗せされる制度です。

    しっかり条件さえ守っていい成果を出せれば、助成金を上乗せしてもらえます。

    正社員化コースの概要

    まずは派遣社員やアルバイトなどを正規雇用、あるいは多様な正社員等に転換する際に助成される『正社員化コース』について紹介します。

    このコースを適用させるならば、詳しい内容や支給額、対象従業員などをしっかり確認しておきましょう。

    内容と支給額

    正社員化コースは、有期契約労働者等を正社員等に転換したり、直接雇用した場合に助成金が支給されます。期間限定での仕事から、より安定度の高い雇用形態へのキャリアアップが目的です。

    どのような転換を行ったかによって受給額は異なりますが、最大1人あたり60万円の支給額を受給できます。

    対象となる従業員

    正社員化コースの対象は、

    • 雇用期間が通算して6カ月以上の有期契約労働者
    • 雇用期間が6カ月以上の無期雇用労働者
    • 同一業務に6カ月以上継続して労働者派遣に従事している派遣労働者
    • 事業主が実施した有期実習型訓練を受講し、修了した有期契約労働者等

    のいずれかに該当する従業員です。この条件を会得していることに加えて、過去3年以内に正規雇用者として雇われた経験がない、基本給が転換前あるいは直接雇用前よりも5%以上昇給されているなど、細かな要件をクリアする必要があります。

    申請の流れと必要書類

    申請の流れとして、5段階のプロセスを経る必要があります。まずは、対象の労働者を6カ月以上雇用するのがスタート地点です。その後、転換・直接雇用を実施する日までにキャリアアップ計画の作成・提出を行い、就業規則の整備を行います。

    ここまできたら、正社員等へ転換・直接雇用に切り替えます。切り替えてから6カ⽉分の賃⾦を⽀給した時点で、2カ月以内に事業所の所在地を管轄する労働局へ必要書類を提出し、助成金の⽀給申請を行う流れです。

    主な必要書類は、5種類です。1点目が、キャリアアップ計画書です。これは、管轄労働局長の確認を受けたものに限られます。2点目は労働協約または就業規則です。

    こちらは、転換制度または直接雇用制度が規定されている必要があります。さらに、仕事内容の証明となる対象の労働者の雇用契約書、賃金台帳、タイムカードなどを提出し、最後に自らが中小企業事業主であることを確認できる登記事項証明書などの書類を提出します。

    賃金規定等共通化コースの概要

    次に紹介するのは『賃金規定等共通化コース』です。このコースは、派遣労働者ならびに非正規社員などが正社員と同程度の業務を行った場合には同一の賃金を支払うといったルールを適用した事業者に対し、助成金が出る制度です。

    内容と支給額

    賃金規定等共通化コースを受給する場合、正規社員と有期社員の評価等級を三つ以上作成した上で、どちらの雇用形態も重なる同一の等級を二つ以上作ることが求められます。

    支給は一度きりとなっており、20人までを上限として、対象者1人あたり2万円、中小企業以外なら1万5000円が支給されます。

    支給の要件

    支給の要件は、正規労働者の賃金規定を新たに作る有期契約労働者の賃金規定と同時かそれ以前に導入していることや、賃金規定を6カ月以上運用している事業主であることが挙げられます。

    さらに、正規労働者について3区分以上設け、その上で有期契約労働者と正規雇用労働者の同一の区分を2区分以上設けることが条件となります。また、適用前と比較して手当等を減額していないことも条件です。

    申請の流れと必要書類

    賃金規定等共通化コース申請の流れは、正社員化コースとは少し異なります。 賃金規定等共通化を実施し、6カ月以上が経過した後に、支給申請を行うことになります。また共通化を実施した後でも、有期契約労働者がいなければ申請できません。

    そのため、実施中に6カ月以内に正社員として雇用した場合などは申請は不可能です。

    必要書類については、下記のとおりになります。

    • 管轄労働局長の確認を受けたキャリアアップ計画書
    • 訓練対象者ごとのジョブ・カード

    は正社員コースと同じですが、下記が異なります。

    • 賃金規定等共通化コース内訳
    • 賃金助成および実施助成の内訳
    • 賃金規定等が規定されている労働協約又は就業規則及び賃金規定等が規定される前の労働協約または就業規則
    • 有期契約労働者等と正規雇用労働者が賃金規定等の適用を受けていることを証明する労働者名簿等
    • 同一区分が適用されている対象労働者全員及び正規雇用労働者1人の共通化前後の労働条件通知書等

    他のコースに比べると、必要な書類が多いので、しっかりとチェックしましょう。

    健康診断制度コースの概要

    健康診断制度コースは、有期契約労働者を対象として健康診断を実施した際に、助成金が出るという制度です。内容や支給額、申請の流れについては以下の通りです。

    内容と支給額

    健康診断制度コースは、正社員とは異なり健康診断義務のない有期契約雇用者に対して、健康診断を行った場合に助成金がもらえる制度です。非正規雇用者の健康診断の実施率はかなり低い現状が背景にあります。

    支給額については、1回のみ、1事務所につき38万円を受けることが可能です。

    支給の要件

    支給の要件については、以下のようなものがあります。

    • 有期雇用労働者に対して実施する健康診断を就業規則等の規定化
    • 有期雇用労働者4人以上に健康診断等の実施
    • 実施した定期健康診断や健康診断等の費用の全額負担
    • 人間ドック制度の費用の半額以上負担

    申請の流れと必要書類

    キャリアアップ計画書の作成・提出は他のコースと同様です。その後、健康診断制度を規定し、実際に有期契約雇用者4人以上に対し実施する必要があります。

    4人目の健康診断を実施した月の給与支給日から2カ月以内に申請を行わなければならない点には注意が必要です。

    必要書類については、以下のとおりになります。

    • キャリアアップ助成金支給申請書
    • 健康診断制度コース内訳
    • キャリアアップ計画書
    • 健康診断制度の規定前、規定後の労働協約又は就業規則
    • 健康診断を実施したことを証明する書類
    • 対象労働者の労働条件通知書または雇用契約書
    • 対象労働者の賃金台帳

    受給のポイント

    いくつかのコースに分かれているキャリアアップ助成金は、受給のポイントを押さえておくことでスムースに助成されます。では、受給に向けて、どのような点に気を配るべきなのでしょうか。

    ここでは、助成金受給のポイントを『計画と訓練の整合性』『就業規則の規定など必要書類の整備』『スケジュール管理』の3つに分けて説明します。

    計画と訓練の整合性

    助成金受給のために最も重要なポイントは、計画と訓練に客観的な整合性があるかどうかです。

    「電話応対スキルの向上」を目標にしたのにもかかわらず、電話応対に関するスキルを上げる訓練を全く行わない内容の計画書が提出された場合、支給申請は却下されます。

    計画書に内容の変更があった場合は、その都度計画書を提出し直さなくてはなりません。

    就業規則の規定など必要書類の整備

    キャリアアップ助成金の申請を行う場合、就業規則の規定など、多くの申請書類が必要です。コースを重複して申請する場合は、より多くの書類が必要となり、準備に手間取ってしまいます。

    不足があると、申請が受理されずに返却されてしまうので、必ずチェックしてからまとめて申請するようにしましょう。

    スケジュール管理

    キャリアアップ助成金の受給申請は、書類を提出する以前の各種施策を実施するための時間のほうが長くかかります。

    準備から申請まで、ほぼ1年がかりの手続きとなりますが、各種手続きは定められた手順を期限を守りながら行わなければなりません。そのため、スケジュール管理は非常に重要なポイントです。

    可視化できるスケジュールリストを作成してスケジュール管理を行っていくと、ミスが起こりにくくなります。

    申請書のダウンロード

    キャリアアップ助成金の申請にあたっては、申請書類の提出が必要です。キャリアアップ助成金申請に必要な「キャリアアップ計画書」「職業訓練計画届」などの書類は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

    請する書類は量が多いので、チェックリストを活用すると便利です。

    各様式のダウンロード

    厚生労働省のサイトより、必要な書類がダウンロードできます。自分が申請するコースの申請書をダウンロードし、印刷して管理しましょう。

    申請様式のダウンロード(キャリアアップ助成金)

    チェックリストの活用

    必要書類が多いため、提出の際には注意が必要です。東京労働局のホームページに無料でダウンロードできるコースごとの書類チェックリストが用意されています。

    東京労働局ホームページ:キャリアアップ助成金 必要書類チェックリスト

    助成金制度の上手な活用を

    働きやすい環境を整え、キャリアアップをサポートしてくれる『キャリアアップ助成金』は、企業・労働者ともに重要な助成金です。

    昇給、手当支給などの方法で有期契約労働者の待遇を改善させることは、人材を育成し事業を大きく成長させていくことにつながります。

    キャリアアップ助成金の申請は不備があると申請が却下されてしまうこともあります。そのため、キャリアアップ助成金について正しく理解し、常に最新情報をチェックしておきましょう。

    HR大学 編集部

    HR大学は、人事評価クラウドのHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。

    おすすめ記事