人材育成
2021/12/20
【Why EX?】ニューノーマル時代 人的資本経営のアップデートとは? -The EX DAYイベントレポート①
本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。
来るESG時代、EX(Employee Experience:従業員体験)の重要度はますます高まりを見せている。
働く選択肢や価値観が多様化し、人材の流動性が加速する現代。企業と個人の関係が大きく移り変わる中、企業は競争優位の根幹である従業員ひとりひとりとどのように向き合うべきか。
10月21日に開催されたイベント「The EX DAY 従業員体験向上の効果とその実践に迫る1日」では、EX向上にいち早く向き合う企業の実践者が集い、「Why」「What」「How」の視点から最新の知見を交わした。
EXが注目される背景とは
藤本:
最近は、EXや人的資本経営といったキーワードが盛んに語られています。なぜ企業がヒトを経営のど真ん中に置くのか。背景にはどんな理由があるのでしょうか。
宮川:
市場の変化から見ると、イノベーションが起こるスピードが加速する中、新しいアイデアがどんどん出てくる、ワクワク感のあるような体験、EXがまず重要になっています。
もうひとつは、労働人口が減少する日本では優秀な人材の獲得は企業にとって最優先課題。 優秀な人たちに、この会社で働く経験が企業を成長させるだけでなく、自分にとってもWin-Winであると思ってもらえるようなEXが必要です。
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東京都出身。2003年に外資系IT企業に人事として入社後、日本国内人事のみならず、アジア太平洋地域の人事(主に人事企画業務・報酬制度・M&A等)に従事。2014年3月 にシスコ入社後、部門担当人事(HR Business Partner)として営業組織の組織強化に携わる。2016年8月より現職。2018年、2021年「働きがいのある会社」大規模部門1位を獲得。シスコ社内のみならず日本の働き方の未来の創造に向けて 講演やセミナーにも多数登壇。
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小林:
楽天の場合、創業時から「やりたいこと(ミッション)」がまずあって、仲間と一緒にそれを実現していこうとするカルチャーがあり、結果的にEX自体を意識せずともEXが提供されていると思います。
リーダーからも、「これが俺たちのやりたいことだよね、それをちゃんと体験できてる?」という言葉をかけ続け、社員がその体験価値を感じられる仕組みや機会をつくってきました。
現在の楽天は従業員の国籍が70を超えており、本当に多様な職場環境です。ムスリムの仲間たちにハラルフードを提供しているように、どんなバックグラウンドの方でも自分に合った体験ができているか、という点は常に意識しています。
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1994年慶應義塾大学卒業(SFC1期生)。1997年の楽天創業から参画。EC事業責任者等を歴任後、2012年に米国へ赴任し米州本社社長、2014年にはシンガポールを拠点とするアジア本社社長を務める。グローバルマネジメント体験後、現在は人々を幸せにする役割を担うCWO:チーフウェルビーイングオフィサー。2001年慶應義塾大学に「正忠奨学金」を創設。若者の育成に力を入れている。2011年世界経済フォーラムYoung Global Leadersにも選出。5児(娘3人息子2人)の父。
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宮川:
社員ひとりひとりの「あったらいいな」や「やりたい!」を可能にすることが大事ですよね。 金太郎飴的に「会社のポリシーだからこうする」のではなく、社員からのさまざまな声をボトムアップで反映していくこと。それが共創だと思います。
コロナ禍でEXは変わったか
藤本:
コロナ禍がEXにどのような影響を与えたのかも気になります。
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大学卒業後、2002年キャリアデザインセンターに入社。求人広告媒体の営業職、マネージャー職を経て2007年4月グーグルに転職。代理店渉外職を経て営業マネージャーに就任。女性活躍プロジェクト「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後の2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。株式会社お金のデザインでのPRマネージャーとしての仕事を経て、2018年3月よりPlug and Play株式会社でのキャリアをスタート。現在は執行役員CMO としてマーケティングとPRを統括。
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小林:
コロナはEXのあり方を再考するきっかけになりました。
事業の拡大とともに、楽天では多くの新しいメンバーを迎えていますが、以前は中途社員を対象に、毎月リアルで懇親する機会がありました。
しかし、コロナ禍で中途の従業員が同期のつながりを作る機会が途切れてしまいました。 そこで、ネットワーキングパーティを昼夜に分けてオンラインで開催し、それぞれの働き方に合わせて交流を図る取り組みを行っています。
同期や部署への所属意識を醸成するためにも、リモートワークであってもコミュニティをつくる仕組みが必要です。 リモートワークに関しての社員アンケートでは、「もっとも楽天らしさを感じるのは全社員が参加する週1回の朝会」という声が、オンラインになっても3分の2の社員からあがっています。むしろ、1on1のように近い感覚で価値観が伝わりやすいこともあってか、25%のメンバーは以前よりもポジティブに捉えていました。
宮川:
シスコの取り組みの話をする前に、「働きがいのある会社とは何か」を考えてみたいと思います。
ひとつは働きやすさ、もうひとつはやりがい。この2軸で決まります。
働きやすさは、快適な職場環境ですね。それがなければ不満が生じますが、逆にあればあるほどやりがいにつながるものでもありません。
一方、やりがいというのは「マズローの5段階の欲求」の一番上にある「自己実現の欲求」です。 裁量がある、成長実感がある、業務をこなすだけでなく、より大きな目的(大義)とつながっているということから感じるものです。
それを踏まえた上で、会社としてやりがいをいかに広げていくか。
この考えのもと、我々の人事戦略における基本理念「トップダウンとボトムアップ双方向のアプローチ」「一人ひとりの役割と期待値を明確化」「最初から完璧を目指さない(アジャイル)」を定めています。
自社にとっての「Why EX」を突き詰める
藤本:
2社の取り組みを拝聴して、さすがだなと感じる一方で、つまずきや失敗などもあったのではないかと思うのですが。
宮川:
実行する上で大切なのは、それぞれの企業に合わせた目的をしっかり持つことです。
EXを考えるときも、社員寄りになるだけではダメです。
なぜ、EX向上に向き合うのか、それがどう経営課題に直結するのか。
従業員のためになぜ必要なのかというWhyを、会社の目的とバランスを取りながらはっきりさせることがすごく大切になってきます。
弊社には「会社が提供すること」「社員に期待すること」それぞれが、双方向で約束を果たし合うという「People Deal」という考え方があります。
これはつまり、自由と自律の関係。この2つのバランスを明確化し、双方のWin-WinとすることがEXを考える上で欠かせません。
小林:
楽天では、コレクティブ・ウェルビーイングのための要素として「仲間・時間・空間」という「三間(さんま)」の概念を大事にしています。
「仲間」をつなぐこと。「時間」を区切ること。「空間」を整えること。この3つの「間」を意識し、そこに余白という「間」を持たせるようにしています。
体験だけでは、なんとなくしかわからないことも、意味づけをすることで明確になっていきます。
だからこそ、会社のミッション、バリューとEXを紐づけ、意識的に振り返りながら意味づけを随時定義していくことが重要ですね。
宮川:
EXといわれてもよくわからないという方もまだまだ多いと思います。
日本人はどうしても正解を求めがちで、すぐロールモデルを求めたり、用意されたものの中から答えを探したりします。
しかし、これからの時代は正解がない世界。だからこそ自分がどうありたいかを追求し、その解像度を上げることがとても重要です。
既存の正解にただ当てはめるのではなく、自分自身の形、それぞれの企業でのEXのあり方を見つけていくことが求められていると思います。
写真:小池大介
デザイン:月森恭助
編集:樫本倫子
NewsPicks Brand Designにて取材・掲載されたものを当社で許諾を得て公開しております。
2021-12-02 NewsPicks Brand Design
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