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キャリア形成の必要性、その背景と企業が得られるメリットとは

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キャリア形成の必要性、その背景と企業が得られるメリットとは

目次

    キャリア形成の概要

    「キャリア」という言葉だけを見ると、これまでの職業経験や実績といった遍歴を指しているように感じます。しかし近年では、過去・現在・未来のトータル的な働き方の過程を表すものとされています。

    これまでの職歴や積み上げてきた実績・経験・スキルを振り返り将来的にどのような働き方をしたいのか、どのような仕事に携わりたいのかを考えることをキャリア形成といいます。また、理想を実現するために今の自分には何が足りず何を伸ばすべきかといった総合的かつ具体的なプランを考えることも該当するでしょう。

    キャリア開発との違い

    キャリア形成と似た言葉に「キャリア開発」があります。しかしながら、キャリア形成とキャリア開発は全く別物です。

    「キャリア形成」は、これまでの積み重ねてきた経験や実績を振り返り、将来どうありたいか、理想を叶えるために足りないスキルや経験は何かを考えライフプランを含めた計画を考えることをいいます。

    一方で「キャリア開発」とは、これまで培ってきた知識や経験、スキル・能力を把握したうえで、さらに伸ばすあるいは活かすにはどのような経験が必要かを考えることです。キャリア開発は個人の活動だけでなく、企業でも社員の能力を向上させるためにさまざまな研修や教育を実施するなどキャリア開発に力を入れています。

    つまり、大枠にキャリア形成があり、キャリア開発はさらに具体的な中身を考えるものといえるでしょう。

    キャリアデザイン・キャリアパス・キャリアステップとの違い

    キャリアにまつわる用語には、キャリア開発やキャリア形成の他にも似た言葉が多数あるのをご存じでしょうか。とくに混同しやすい、キャリアデザイン・キャリアパス・キャリアステップの3つの違いについて解説します。

    「キャリアデザイン」は、キャリア形成とよく似ていますが厳密には異なります。自分の働き方や職業人生をメインとし、人生において今後迎えるライフイベントも含めた人生設計を主体的に考えることがキャリアデザインです。たとえば、多くの女性たちは結婚や妊娠・出産、子育て、介護といった大きなライフイベントを迎えるでしょう。こうしたライフイベントとキャリアが両立できるように考えることも、キャリアデザインといえます。

    「キャリアパス」を英語にすると「career path」と表します。「path」は道・経路という意味を持っており、キャリアを実現するための道というような意味合いです。キャリアデザインやキャリア形成は、基本的に個人が主体となってプランニングしますが、キャリアパスは企業主体でおこなうのが特徴です。社員が所属する企業において目指すポジションに就くための方法をキャリアパスといい、どのようなスキルや経験、実績が必要であるかを明確に提示したり社内検定を設けたりします。

    「キャリアステップ」は、キャリアパスと同じ意味として扱われている言葉です。キャリアアップのための道筋や段階を指します。

    そして新たにキャリアに関するビジネス用語として浸透しはじめているのが「リスキリング」です。経済産業省の資料によると、リスキングとは「新しい職業につくため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する(獲得させる)こと」です。

    今後ロボットやAIに業務を任せることも増えるといわれていることから、その分人間が仕事を失うこととなるでしょう。こうした将来をふまえ、ロボットを管理したりプログラミングをしたりといったデジタル関連のスキルが必須と考えられます。このように、新たに生まれる職業や求められる人材として適応するためのスキルを獲得することを「リスキリング」といいます。

    キャリア形成が注目されている背景

    今の時代、キャリア形成は当たり前のように認識され働く人の多くが考え始めています。キャリア形成がこれほどまでに浸透したことには、しっかりとした背景があるのです。ここからはキャリア形成が注目されている理由を4つご紹介します。

    働き方が多様化している

    時代の流れとともに、働き方も変化し多様化しています。高校や大学を卒業後、最初に就職した会社で定年まで勤めるのが一般的であり、転職という考え方自体がネガティヴなものでした。また、年功序列により個人の能力や実績での評価ではなく在籍年数での出世・昇格が当たり前であったため「キャリア」という考えそのものが認識されていませんでした。

    しかしながら、働くことに対する考えや価値観がより自由なものへと変わり、雇用されるだけでなく独立や起業を含め多様な働き方ができるようになりました。その結果、キャリア見据えた考え方へとシフトしています。

    転職者が増えている

    働き方の多様化にあわせて、転職者数は年々増加しています。総務省の『労働力調査』によると、日本の転職者数は2011年から年々増加しており2019年には351万人のピークに達しています。転職に対する印象が変化しているだけでなく、個人がキャリアや働き方について考え、理想のキャリアを描き実行しているといえるでしょう。

    また、平均寿命が伸び人生100年時代と言われている現在、寿命が伸びている分、職業人生も伸びています。定年制度も年齢が延長され、人生において労働期間が長くなったこともあり、個人がキャリア形成を意識し理想のキャリアを叶えるために転職者が増えているといえるでしょう。

    終身雇用にこだわらない人が増えている

    日本では長く「終身雇用」の考え方が一般的でしたが、変わりつつあります。企業に入社できれば、年功序列も相まって一生安泰とされていましたが、近年はスキルや能力を重視する企業が増え終身雇用の概念は終わりつつあります。また、世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響などをはじめ、企業に属しているからといって一生安泰とはいえなくなりました。

    そのため、資格やスキルを取得して給与アップできる会社へ転職したり、これまで培った経験や実績をもとに新たな業界へチャレンジしたりする方も増えているのです。

    テクノロジーが進化している

    日本だけでなく世界でテクノロジーは進化し続けています。身近なものでいうと、コンビニやスーパーの無人レジ(セルフレジ)やデータ分析が挙げられます。これまで人間が行うこととして当たり前であったことが、今後さらにテクノロジーが発達しAIやロボットが導入されるでしょう。

    人手不足の解消とも取れますが、テクノロジーの進化により人間の仕事はさらに減少するといわれています。こうした背景もあり、未来を見据えたキャリア形成をしなければ安定した仕事や収入が得られない時代となりつつあるのです。

    会社としてキャリア形成を実施するメリット

    キャリア形成をおこなうことは、個人のメリットだけではありません。企業が従業員のキャリア形成を支援することで得られるメリットもあります。ここからは、企業がキャリア形成によって得られるメリットを3つ紹介します。

    会社の生産性が向上する

    企業が従業員のキャリア形成を支援することで、従業員のスキル向上・取得が期待できます。既存従業員のスキルが高まれば、その分生産性の向上やクオリティ向上へと直結するでしょう。スキル不足による人材調達が不要になるため、コスト削減にも期待できます。また、従業員を尊重している、従業員教育に力を入れている企業だと評価が高まれば、優秀な人材の確保や定着など採用面にもプラスに働きます。

    従業員のモチベーションがアップする

    人が働く理由は、主に生活するためにお金が必要であるからでしょう。しかしながら、従業員も人間であり人として大切にされなければ、企業から離れていきます。だからこそ、キャリア形成の支援というかたちで従業員に投資して育てることで「従業員を大切に思っている」と感じられ、企業の期待に応えたいという気持ちになります。そうすると、従業員のモチベーションへとつながり生産性やクオリティの向上へと反映されるのです。また、従業員からの企業への信頼へとつながり定着し、人手不足の予防にも期待できるでしょう。

    従業員一人ひとりがスキルを自覚しやすくなる

    キャリア形成は、従業員のこれまでの経験や実績の振り返りもおこないます。この振り返りや客観的な意見により、従業員自身が気づけなかった長所や新たなスキル、活かせる能力に気づくこともあるでしょう。「こんな一面があった」「こういう業務が向いている」と認識し自覚することで、仕事に対する意欲が湧いたりモチベーションアップへとつながったります。

    キャリア形成即成助成金とは?

    企業が従業員の職務に関連する知識や技能を取得させる際に、計画実施により発生する訓練経費や賃金の一部を助成する制度が「キャリア形成即成助成金(現:人材開発支援助成金)」です。労働者のキャリア形成を効果的に促進することを目的としており、厚生労働省が管轄しています。

    キャリア形成即成助成金は、現在訓練関連と制度導入関連が各2つ、あわせて4つのコースに分類されています。

    1. 特定訓練コース
    2. 一般訓練コース
    3. キャリア形成生制度導入コース
    4. 職業能力検定制度導入コース


    「特定訓練コース」および「一般訓練コース」は、正社員従業員に対し、OJTと教育訓練機関での座学を組み合わせた訓練をおこないます。助成額は訓練や要件によって異なります。

    「特定訓練コース」は若年者への訓練やグローバル人材育成訓練、労働生産性向上に資する訓練といった6つの訓練があり、「一般訓練コース」は、特定訓練コースの6つの訓練以外をおこないます。

    「キャリア形成支援制度導入コース」および「職業能力検定制度導入コース」は、企業が継続した人材育成のための制度を導入・実施した際に最大60万円が支給されるのが特徴です。

    「キャリア形成支援制度導入コース」は、セルフ・キャリアドッグ制度や教育訓練休暇制度や短時間勤務制度といった制度を導入および実施すると助成されます。

    「職業能力検定制度導入コース」は、社内検定制度導入および実施や技能検定制度の導入および合格した従業員への報奨金制度の導入・実施により助成がおこなわれます。

    『キャリアアップ助成金』と類似していますが、キャリアアップ助成金は「非正規労働者」を対象にしているのが特徴です。昇格や待遇改善を目的としているため、キャリア形成即成助成金とは目的が異なります。

    従業員が自分でキャリア形成をしていくには?


    企業が従業員のためにキャリア形成を支援しても、従業員本人に意欲がなければ前向きなキャリア形成はおこなえません。逆をいえば、企業がキャリア形成支援をしながら従業員も自主的におこなうことで、より効果的かつ双方にとってメリットがあります。ここからは、従業員自身がキャリア形成を実施する際に必要な力や意識すべきポイントについて解説します。

    キャリア形成に必要な力

    キャリア形成には4つの力が必要です。

    1. 人間関係・対人関係を築く力
    2. 自分を理解・把握し成長する力
    3. 課題発見・解決する力
    4. 計画し実行・遂行する力

    「人間関係・対人関係を築く力」は、社会だけでなく人生において必要な力であるといえます。とくに会社という環境では、大きな組織であるだけでなく、プロジェクトによってはチームで仕事を遂行するためチームワークや協調性が試される場です。過度な交流は不要ですが、最低限のコミュニケーション能力は必要であるほか、人間関係を構築しておくことで円滑に仕事を進められます。

    「自分を理解・把握し成長する力」は、キャリア形成のベースといえるでしょう。キャリア形成は、自身の能力やスキル、得意・不得意を洗い出す必要があります。また、得意・不得意や好き・嫌いを把握することで、将来なりたい自分を具体的に考えられるでしょう。主観だけでなく、客観的にも自身を見つめることで「なりたい自分」に足りないものを把握しそれを埋めるために成長する力も必要不可欠です。

    「課題発見・解決する力」は、自分を理解した際に見つけた課題や仕事を進めていくうえで必ずつまずく場面があります。立ちはだかる障害を前に、どのように乗り越えていくのか解決力を身につける必要があります。課題を見つけ乗り越えるたびに、理想のキャリアへと近づけるでしょう。

    「計画し実行・遂行する力」は、キャリア形成のみならず日常生活においても使えます。たとえば旅行へいく時、行き当たりばったりで楽しむことも醍醐味ですが、あらかじめ行きたいスポットや買いたいものを決めておくことでより充実した時間をおくれるほか、トラブル発生時も慌てず対処できるでしょう。キャリア形成においても同様で、流れに身を任せ日々の業務をこなすよりもゴールを決め、ゴールまでの中間目標を立て達成のために何が必要かを把握することで働くことに対する意識やモチベーションが変わります。

    キャリア形成をする際に意識するポイント

    キャリア形成に必要な力とは別に、意識すべき5つのポイントを紹介します。

    1. 「Will・Can・Must」をベースに
    2. ロールモデルをみつける
    3. 「やりたくないこと」を書き出す
    4. 周囲の話・経験を聞く
    5. 自分の適性を理解・把握する

    「Will・Can・Must」とは、将来やりたいこと・今できること・やるべきことを表したもので、企業などの面談や実際のキャリア形成で用いられる考え方です。将来やりたいことやなりたい自分を考え、今自分には何ができてどの位置にいるのか、なりたい自分になるためには何が不足しているのかを考えます。キャリア形成の簡易版ともいえるでしょう。

    「ロールモデル」とは、自分にとって理想的な人物、目指したい人物のことです。女性であれば、子育てをしながら第一線で活躍している方であったり、男性であれば最速で出世している方であったりです。自分がどうなりたいかよく分からない方は、一度社内の先輩や上司、起業家などで憧れの人を探してみましょう。

    「やりたくないこと」をリストアップすることは、実は非常に大切です。やりたいことが見つからない方は、先にやりたくないことを書き出してみましょう。たとえば、人とのコミュニケーションが多い「営業」やずっと座りっぱなしの「事務」、独創性やクリエイティブさが求められる「企画系」など、苦手をベースにして考えると少しずつ自分にとっての好きや得意が見えてきます。

    「周囲の話・経験を聞く」は、ロールモデルを見つけることにも通じます。憧れの先輩や上司、経験豊富な両親の話を聞いたり、独立・転職した友人から話を聞いたりするのも良いでしょう。社内の先輩や上司であれば、これまで身につけ磨いてきたスキルや能力の話、両親であればこれまでのキャリアや仕事に対する考え方、一歩先行く友人であれば学んできたスキルや積んだ経験、実績などさまざまな人の話を聞くことで自分の考えがまとまることもあります。

    「自分の適性」とは、好き嫌いとは別ものです。あまり興味のない業務でも、同僚より早く仕上げられたり高いクオリティで仕上げられたりすることがあるでしょう。そうした「得意・不得意」を理解し把握しておくと、今後の働き方を考える際の材料になります。逆に、今はまだクオリティが高いとはいえないものの、業務自体は好きでやりがいを感じられることもあります。そこを把握していくことで、今後習得すべきスキルややるべきことを明確に考えられるでしょう。

    まとめ

    キャリア形成は、個人にとって職業人生だけでなく人生そのものを豊かにするものです。企業にとっては、従業員を育成しスキルや能力を伸ばすことで生産性を向上させるほか、従業員のモチベーション向上および信頼を得ることで人材の定着率を上げ人手不足の予防にも期待できます。

    キャリア形成が浸透していることで、個人のスキルや意識が高まり会社に依存しない働き方も増加している今、優秀な人材の確保のためには企業の従業員への投資が必須にもなりつつあります。

    今後も働き方は多様化し求められるものも複雑化することが考えられるため、時代にあわせたキャリアの考え方が必須となるでしょう。

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    HR大学 編集部

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