人材育成
2022/04/05
オンボーディング(新入社員研修)の効果や具体的な内容・方法を解説
目次
本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。
新しく配属された人材を即戦力にするために「新入社員研修」(オンボーディング)を行う企業が増えています。これは離職防止・社員同士のコミュニケーション・向上心アップなど全社員の成長を通して企業成長へも繋がる重要なものだと言えます。「新入社員研修」と「オンボーディング」はほとんど同じ意味と解釈されますが、ここではオンボーディングの視点からメリット・デメリットについて説明します。また、中途採用人材にも当てはまる教育マニュアルの作成から、指導のポイント・スキル確認・適材適所に至るまでを詳しく解説していきます。
オンボーディングとは?
昨今、注目されている「オンボーディング」とは、「新入社員研修」とほぼ同じ意味ですが、中途採用社員や配属替えの際にも行われ、組織として社員全体の成長を目指す研修のことを指します
英語の「on board」から生まれた言葉。もともとは「船や飛行機」に乗った人に対しサポートをして慣れてもらうプロセスのことです。企業においては、配属された新しい人材がスムーズに職場になじみ、すこしでも早く成果を出せるようにするための取り組みのことを指します。
オンボーディングの目的・メリット
それでは、まずオンボーディングを実施する目的・メリットを見ていきましょう。
新卒採用の学生気分を一転させ、社会人としての自覚を持たせる
新卒の優秀な人材を採用したとしても、社会人としては1年生。自社に適応する人材に育てていく必要があります。学生気分が残ったまま職務に就いても、成果が得られるまでに時間がかかってしまいます。研修を行うことで、基本的な社会人としての自覚を持たせることができます。また実際に働いている既存社員や上司とコミュニケーションをとる中で、社会人としての緊張感・責任感も生まれるという効果もあります。
人間関係・雰囲気に慣れる(会社の理念・規則・社風)
新卒採用の早期退職が懸念される中、離職の理由として最も多いのが人間関係だと言われます。職務を遂行する上で大事なのは環境に慣れること。研修を通して、会社の理念・規則を理解し、社員同士コミュニケーションを図ることで、スムーズに職務に就くことが期待できます。
即戦力として職務に就くことができる(知識・スキル)
新入社員が戦力となるまでには半年から1年を要すると言われます。即戦力にするためには研修を通して知識・スキルをいち早く習得させることが必要です。そのためには研修をマニュアル化し、実践と成果を体験させモチベーションを維持することが大事です。目標設定をし、会社全体で計画的に新人を育てる取り組みをすることが重要です。
職務に対しての自信・向上心を与える
職務に就いた際、スムーズに仕事が遂行できることは自信に繋がります。研修を通して身に着けたスキルを実際の仕事で体験し成果を実感することが大事です。成果が得られることで「もっと出来る」という自信が生まれ、向上心に繋がっていきます。
離職防止につなげる
新卒採用の離職率は三年で三割と言われています。また転職が活発化する現代では中途採用者の離職率も増えています。企業にとって戦力化に力を入れる初期段階での退職は大きな損失だと言えます。オンボーディングを行うことで全社員を育成し、組織として人間関係の構築をしていくことが離職を防止する重要なポイントとなります。
社員同士・上司とのコミュニケーションがとれる
研修を通して新人・既存社員・上司と多くのコミュニケーションがとれます。職務に就く前の段階なので、「教わる側」・「教える側」という立場から自然と質問・説明・解説といった会話が増えます。これは職務についてからでは聞きにくい「単純な質問」なども研修の中ではしやすいからです。このようにコミュニケーションを自然にとらせることもオンボーディングの重要な目的なのです。
オンボーディングをしなかった場合のデメリット
これまでメリットを見てきましたが、ここからはオンボーディングをしなかった場合のデメリットについて見ていきましょう。
適材適所の仕事をすぐに与えられない
まず新人のスキルや実績がないため、どのような職務に就けば活躍できるのかが把握できません。人員補充などの理由で「とりあえず」といったような配置をしても、仕事を覚えるまで教える側にも負担が多く、仕事がスムーズに回らない結果を招いてしまいます。
指導に一貫性がなく人材育成が難しい
教える側にもカリキュラムや計画性がないと、「教えていないこと」「出来ないこと」の把握ができず、その場しのぎの仕事を繰り返す事になってしまいます。人材育成に繋がるまでは、時間と労力がかかってしまいます。
特性や性格がわかるまでに時間がかかり仕事効率低下に繋がる
特性が分からないまま職務に就かせると、仕事効率が低くなってしまう可能性があります。人材の特性と仕事内容が合わず、成果が挙げられない結果を招いてしまうのです。
また、チームとして仕事をする場合等は「新人の性格」が分かるまでに時間がかかり、コミュニケーションが上手くとれない場合があります。その結果、仕事効率にも影響を及ぼします。
仕事の達成感を得られるまで時間がかかり離職に繋がりやすくなる可能性がある
これまで見てきたようにオンボーディングをせずに職務に就くと、慣れるまでに時間がかかり、仕事の達成感がなかなか得られないという結果になってしまいます。達成感や成果が得られないと「出来ない」「自分には向いてない」「やる気が出ない」というマイナス思考が強くなってしまい、離職に繋がりやすくなる可能性があります。
オンボーディングのメリット・デメリット面を見てきましたが、その重要さを理解していただけたと思います。
ここからは、具体的に「オンボーディング」の具体例や内容・指導のポイント等について解説していきます。
研修のカリキュラム具体例
実際にオンボーディングをする際、具体的にどのように進めていくのかについて見ていきましょう。
受け入れ側の準備を整える
まず第一に受け入れ準備を整えます。入社してすぐに会社の一員であることの自覚を持たせるとともに、仕事に対する意欲を向上させる効果があります。具体的な準備としては以下のような内容です。
1.新人の制服・名詞・メールアドレス・デスク・ロッカー・文具などを揃える
2.新人の情報を把握しておく
3.歓迎している雰囲気をつくる
社内の備品や道具の場所や使い方の説明
仕事を始める際の不安を取り除けるとともに、コミュニケーション導入としても効果があります。
1.給湯室・お手洗い・社長室・休憩場所など社内の案内をする
2.コピー機・電話・パソコン・掃除道具などの使用方法を説明する
3.備品や文房具などの場所や利用方法を説明する
ビジネスマナーの基本
新卒採用の場合は特に、基本的なビジネスマナーの指導をします。
1.仕事に適した服装・身だしなみについて
2.言葉遣いについて社内・社外の敬語の使い方や上司の呼び方など
3.仕事とプライベートを分けること
NG:職務中に友人へラインを送る・会社のPCを私用で使う等
4.社内・取引先での挨拶のやり方など
接客・電話対応の基本
接客・電話対応について指導します。
1.接客の際の言葉遣いやお辞儀の方法など
2.電話対応の際の対応の仕方・メモの取り方・伝言の伝え方など
パソコンのスキル
以下のような内容を、自社の形態に沿って指導します。
1.ビジネス文書の作成方法
2.メールの作成方法
3.様々な書類作成方法など
職種による研修内容の違い
業種・職種により、やり方に違いがあります。例えば、IT企業等では「ネット上でのルール」「パソコン作業」についてに重点を置きますが、メーカー等では「商品開発について」「営業展開の方法」「接客の仕方」などに重点を置きます。各企業が自社の理念に沿った内容の研修を行うことが大事です。
かける日数ややり方について
オンボーディングの期間は一般的に、およそ3か月〜1年行います。入社してすぐはオリエンテーション・セミナーとして3日〜1週間というスケジュールで研修を行う企業が多いと言われます。
指導者に負担がかからないようスケジュールを整えることが大事です。また外部講師・委託研修なども利用すると良いでしょう。
オンボーディングは入社後すぐの研修に限らず、配置換えや異動の際にも行うことも含むので、それぞれに適したスケジュール・カリキュラムの調整が大事です。
オンライン研修
新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される昨今では、研修のオンライン化が進んでいます。パソコン・携帯電話・タブレットなどとインターネット環境があれば簡単にできるので利用する企業が増えています。
オンライン研修は「WEBセミナー」・「WEB研修」などとも呼ばれますが、こちらもメリット・デメリットがあるのでそれぞれあげてみます。
メリット
- コストが抑えられる
- オンデマンド型にすると、指導者の負担を軽減できる
- 自宅で受けられる
- 新型コロナウイルスの感染拡大防止に繋がる
- 録画・録音が可能
デメリット
- インターネット環境が不安定だと受けにくい
- 指導者と受講者のお互いのリアクションが分かりにくい
- 受講者同士のコミュニケーションが取りにくい
- 実践的な指導が難しい
指導のポイント
オンボーディングの具体的な内容について見てきましたが、ここからは「指導のポイント」について見ていきましょう。
教育マニュアルを作成する
マニュアルを作成することで、指導者の負担を軽減するとともに、計画的に研修を進めることができます。また、受講者もマニュアルにそって「確認」「振り返り」ができるので受講しやすくなります。
マニュアル作成については、専門的にツールを販売している企業もあるのでネット上で自社にあうものを探して検討してみるのも良いでしょう。
社会人としての見本となる言動
指導者が社会人としての見本となるよう、ビジネスマナー・言葉遣いに気を付けて行動します。受講者から答えられない質問などがあった際も、動揺をみせず「調べて確認してから答えます」などのように新人に不安を持たせないように注意した言動をとりましょう。
企業理念・規則
研修の中で「企業理念」「規則」を自然と植えつけるよう指導します。また企業には「社風」というものがあるので、職務に就いた際にこの社風に少しでも早く慣れることがとても大事です。研修内で慣れてもらう事でスムーズに職務に取り組むことが期待できます。
配属ごとの知識・スキル
実際に配属先が決まっている場合は、即戦力となれるよう知識・スキルを磨くよう指導します。人材の能力を指導者が見極めて指導することがとても重要になります。
教育担当者の負担軽減
担当者の普段の仕事に影響がないよう、負担軽減となる内容にします。担当者に集中して負担がかからないよう、組織全体として取り組むようにします。
研修内容が身についているかの確認
ただ一方的に指導して終わるのではなく、最後に研修した内容が身についているかの確認をすることが重要です。最後に「テスト」「実践テスト」を行うことが良いでしょう。
研修で学んだことを職務で活かせてこそオンボーディング成功だといえるのです。
まとめ
オンボーディングは「新入社員」「既存社員」全社員の成長に効果があり、いち早く仕事の成果をあげるための重要な取り組みだということが分かりました。入社の際だけでなく、配置換えや異動の際にも行うことで人材の即戦力化となり、仕事効率アップに繋がります。
またオンボーディングを通して社員同士のコミュニケーションを図ることで、意欲・向上心が生まれ会社に活気がでます。
昨今では委託研修・オンラインセミナーなどを専門に行う企業も増え、オンボーディングが実行しやすい環境だと言えるでしょう。
職務に就く際に、オンボーディングを行うことは会社全体の成長にも繋がっていく重要なものだと言えます。
ぜひこの機会にオンボーディングの取り組みを検討されてみてはいかがでしょう。
興味ある方は以下もご参照ください
人材育成
HR大学 編集部
HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。
