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2023/09/04

スーパー・小売編|従業員満足度(ES)を高める施策や事例を紹介!

目次

    従業員満足度とは

    「従業員満足度」とは、職務内容・労働環境・人間関係・評価制度・賃金制度など、「従業員がどれくらい仕事に対して満足しているか」を表す指標です。英語では「Employee Satisfaction(ES)」と訳されます。

    この「従業員満足度」と相関性がある指標としてよく挙げられるのが、「顧客満足度」です。企業の業績向上や経営目標の達成について考えると、どうしても「顧客満足度」に意識が向きがちですが、「ESなくして、CSなし」と言われるほど、「従業員満足度」と「顧客満足度」には深い関連性があると言われています。従業員満足度が低い場合には、顧客満足度の低下を招く恐れもあり、課題意識がある場合は的確に対応していく必要があるのです。

    今回は、さまざまな業種の中から「スーパー・小売業」にフォーカスして、従業員満足度を構成する要素や、満足度向上のために行っている各企業の取り組みについて紹介していきたいと思います。

    ES調査の具体的なメリットが知りたい場合は、こちらの記事をご確認ください。
    従業員満足度調査(ES調査)のメリットとは?実施時の注意点と便利なツールを紹介

    スーパー・小売業の満足度水準はどれくらい?

    各企業の「課題意識」や、それに対する「取り組み内容」に左右されますが、業種別で見た場合、スーパー・小売業の従業員満足度はどれくらいになるのでしょうか。

    『転職サービスdoda』が行ったビジネスパーソン15,000人を対象にしたアンケート結果によると、合計20の業種のうち、1位はインターネット・広告・メディア、2位は公社・官公庁・学校・研究施設、3位にエネルギー(電力・ガス・石油・新エネルギー)がランクインし、小売業は16位という結果に終わっています。

    参照:『転職サイトdoda』仕事満足度ランキング2021【業種別】

    また、仕事への満足度や熱意について他国と比較した場合、日本の全体的な満足度は業種に関わらず低い傾向にあります。アメリカの人材コンサルティング会社ギャラップ(Gallup, Inc.)の調査によると、日本の「熱意のある社員の割合」はわずか6%で139ヵ国中132位、「周囲に不満を漏らす無気力な社員の割合」が23%、「やるきのない社員の割合」が71%となっています。また、オランダの人材サービス会社ランスタッド(Randstad N.V.)の「仕事満足度」に間する国際調査では、34ヵ国中最下位となっています。

    ▽Gallup, Inc.の資料はこちらからご確認いただけます。
    ▽Randstad N.V.の資料はこちらからダウンロードいただけます。

    世界的にも従業員満足度が低い傾向にある日本の中で、小売業は国内・業種別の満足度においても低い水準となっています。従業員満足度の低下は、生産性の低下や人材の流出につながり、最終的には顧客満足度の低下を引き起こす可能性があるため、十分な対策を講じる必要があると言えるでしょう。

    スーパー・小売業界で従業員満足度が低くなりがちな理由

    それでは、スーパー・小売業ではどうして従業員満足度が低い傾向にあるのでしょうか。ここでは満足度低下の要因として考えられる3つの要素について紹介していきます。

    不規則な労働時間と休日

    主な理由の1つに労働時間の長さや、「シフト制」という勤務日の不規則性が挙げられます。特にスーパーやドラッグストアといった、生活必需品を販売している店舗は、朝早くから夜遅くまで営業していることが多くなっています。また年中無休で営業している店舗もあり、生活のリズムが整えにくく、年間休日も他業種と比べて少ない点は、働きづらさを感じる要因になるでしょう。さらに、「シフト制」という勤務体系により、家族や友人とスケジュールが合わない、年末年始など世間が休みの場合でも働かなければいけない、といったことも不満を感じる要因になります。

    立ち仕事・軽作業による身体的疲労

    スーパー・小売業の現場従業員として働く場合、勤務時間の大半は立ち仕事になります。品出しや搬入、バックヤードの商品管理といった軽作業が1日に何度も繰り返されるため、体力的な辛さを感じることもあるでしょう。また、前述した「不規則な労働時間」や「休日の少なさ」なども相まって「次の日も疲れがとれない」といった疲労の蓄積も起こりやすくなります。

    賃金水準の低迷

    生活していくうえで重要な「賃金」についても、満足度低下につながる要因があるようです。『転職サービスdoda』による調査では、全10業種のなかで小売/外食業の年収が最低水準となっています。

    不規則な労働時間や、立ち仕事による身体的疲労があったとしても、賃金によって補填・還元されていれば、モチベーションを保つことも可能です。しかし、インターネット販売の普及や高齢者雇用の長期化などさまざまな要因によって、従業員に還元するだけの利益を確保することが難しくなってきています。そのため、従業員は「低賃金・重労働・不規則な勤務体系」という条件のもとで働かざるを得ず、結果として「従業員満足度が上がらない」という状態を引き起こします。

    ※参照:『転職サービスdoda』平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)

    従業員満足度向上に向けた取り組みを紹介!

    国内の全体平均として、従業員満足度が低迷している小売業界ですが、中にはさまざまな工夫や取り組みによって、高い満足度を維持している企業もあります。ここでは、国内・海外の取り組み事例をピックアップして紹介していきたいと思います。

    株式会社高島屋

    国内21店舗、海外4店舗を展開する老舗百貨店の高島屋は、「安心して働ける職場づくり」をテーマに「働き方改善」や「労働環境の整備」に取り組んでいます。

    ワークライフバランスの面では、男女問わず育児休職ができるよう制度整備を行っているほか、年間休日122日、年2回の10連休取得など、仕事とプライベートを両立できる勤務体制が整っています。マネジメント層に向けた「ワークライフバランスの意識啓発」といった研修も行っており、休暇が取りやすい環境づくりに積極的に取り組んでいます。また、メンター制度の導入によるキャリア形成意欲の喚起、スキルを効率的に取得するためのプログラム提供、副業の承認など、多方面からの能力開発にも意欲的で、従業員が自立してキャリア・スキル開発しやすい環境を整えています。

    参照:TAKASHIMAYA GROUP | サステナビリティ 安心して働ける職場づくり

    佐竹食品株式会社

    大阪府を拠点にスーパーマーケットを展開する佐竹食品は、「日本一楽しいスーパーづくり」をテーマに、従業員のモチベーション向上につながる仕組みづくりに取り組んでいます。

    休日に関しては、完全週休2日制、1月1日~1月4日の年始休暇、1年に1回5連休が取れるパワーチャージ休暇を取り入れるなど、社内で行った「従業員エンゲージメント調査」の結果をもとに改善に取り組んでいます。従業員からのフィードバックを制度づくりに活かしている点が特徴的と言えるでしょう。

    また、細かなマニュアルやルールを設けず、従業員の自主性や発想を大切にする企業文化を確立しています。そのため、従業員は「自分たちで店舗をつくっていく」という意識が強く、アイディアが採用される機会も多いため、モチベーションや満足度の向上にもつながっています。

    参照:佐竹食品株式会社 | リクルートサイト

    【海外編】ウェグマンズ(Wegmans Food Markets, Inc.)

    アメリカのニューヨーク州を中心に76店舗を展開するウェグマンズは、フォーチュン誌の『働きがいのある会社ベスト100』にも度々選ばれている、従業員満足度の高いスーパーマーケットです。

    特に育成に関する福利厚生が充実しており、従業員の学費を援助する奨学金プログラムには毎年450万ドル(日本円で約5億円)、従業員の育成には毎年5000万ドル(日本円で約57億)の投資を行っています。

    また、パートタイム従業員が多い業界でありながら、フルタイム従業員が全体の40%という高い水準を保っています。そのほか最低賃金の引き上げを行うなど、従業員の「well-being(ウェルビーイング)」に配慮した対策が多くとられており、安心して働くことができる環境整備を意欲的に行っています。また、従業員満足度だけでなく、顧客が選ぶ「好きなスーパーマーケット」でも、度々上位にランクインしています。

    参照:FORTUNE | 100 Best Companies to Work For

    【海外編】トレーダージョーズ(Trader Joe's Company)

    アメリカのカリフォルニア州を本拠地として約500店舗を展開するトレーダージョーズは、Forbes誌の『最も優れた雇用者(2019年版)』で1位に選ばれているスーパーマーケットです。また同年の、Consumer Reportsによる顧客調査でもトップスコアを記録しており、高い従業員満足度と顧客満足度を誇る企業です。

    トレーダージョーズでは、福利厚生や賃金制度の改善に力を入れており、時給は各州の最低賃金から約2倍上乗せした金額です。また、各従業員のライフスタイルに合わせた柔軟なシフト選択が可能になっている点や、「退職金制度」「有給休暇制度(期限なし)」を整備し、雇用形態問わず利用できるようにしている点も特徴的です。

    ルール・マニュアル・上下関係を設けず、従業員が自由な発想で顧客とコミュニケーションを取ることを大切にしているため、従業員も羽を伸ばして働くことができ、顧客からのサービス評価も高いものになっています。

    参照:Forbes | America's 10 Best Employers 2019

    従業員満足度が高い企業に共通する特徴

    国内・海外の取り組み事例を紹介しましたが、従業員満足度を高く保つことができる企業には、いくつか共通する特徴があります。ここでは、先程の事例からも見えてくる4つの特徴について紹介します。

    企業と従業員の信頼関係が構築されている

    従業員満足度が高い企業では、従業員ひとりひとりが会社の方向性を理解していることが多く、企業理念や経営目標が浸透しています。経営層やマネジメント層もまた、従業員が理解していることを知っているため、安心して業務を任せたり、裁量を持たせたりする傾向にあります。「信頼して仕事を任せる⇔その信頼に応えようとする」といった相互作用により、「良好な信頼関係」が築けている場合が多くなっているのです。

    コミュニケーションが活発

    従業員満足度が高い企業では、人間関係が良好で、コミュニケーションが活発に行われる傾向にあります。「無知な人間だと思われたらどうしよう」「無能な人間だと思われたらどうしよう」など、率直な意見を交わすことに対して心理的な不安や心配がないため、風通し良く意見交換が行われていることが多くなっています。

    ▽心理的安全性についてさらに詳しく知りたい方は、こちらをご確認ください。
    心理的安全性が高い組織を作るには?測定方法や対策をチェック

    従業員のモチベーションと生産性が高い

    従業員満足度が高い企業では、高いモチベーションの従業員が多い傾向にあります。毎回指示を出さなくても、ひとりひとりが「どうしたらもっと良くなるか」「どこを改善すべきか」など、自立して考えて行動に移すことができるため、従業員個人の生産性のみならず、組織全体の生産性も高いことが多くなっています。

    人材定着率が高い

    「ここより良い職場はない」「ここでずっと働きたい」と思う従業員が多く、離職者は少ない傾向にあります。また、従業員満足度の高さを活かして「リファラル採用」の手法を採る企業も増えており、採用コストや育成コストを削減できるというメリットにつながっています。さらに、モチベーションが高い経験豊富な従業員が増えることで、顧客満足度の向上が期待できるといったメリットもあります。

    従業員満足度を高めるために必要なこと

    スーパー・小売業の現場は慢性的な人手不足に陥ってるケースが多いですが、人手を集めるためには、まず離職率を下げること、すなわち現従業員の満足度をあげることが重要です。ここでは、スーパー・小売業における不満要素にフォーカスして、「従業員満足度を高めるためにはどんな改善が必要なのか」について記載していきたいと思います。

    従業員満足度を高めることで、モチベーションの向上、生産性の向上、離職率の低下、採用・育成コストの削減、といったメリットがあり、顧客満足度の向上にもつなげることができます。ぜひ参考にしてみてください。

    休日・休暇のとりやすさ

    従業員がプライベートも充実した時間が過ごせるよう、休日・休暇が取りやすい環境づくりをすることは大切です。「有給が取りづらい」「シフト制で身体が休まらない」というような状況であれば、満足度をあげることは難しくなります。来店者数を分析して曜日別に営業時間を変更する、有給の期限を廃止する(もしくは使いきれない場合、換金できるようにする)、1ヶ月に2回は連休があるシフトにするなど、前例にとらわれず柔軟に工夫してみると良いでしょう。

    一見、営業利益が低下してしまうように思われる「営業時間の短縮」についても、従業員の生産性が向上したり、離職率が低下したりすることで、業務の効率化や採用コスト・育成コストの削減につながる場合もあります。

    自己成長の機会創出

    「自社でしか使えないスキル」「自社でしか活かせない経験」は、従業員にとって不安要素になる場合があります。現場の従業員であっても、OAスキルや語学スキルが取得できる教育プログラムを用意するなど、成長を感じられる環境づくりが大切です。

    また、ルールやマニュアルに固執するのではなく、徐々に従業員に裁量をもたせることも大切です。従業員のアイディアを積極的に採用したり、発言する機会を多く与えたりすることで、「当事者として店舗を創っている意識」が生まれ、仕事のやりがいや面白さを感じることにつながります。

    評価制度の構築と給与への反映

    どの業種・職種においても言えることですが、「自分自身の頑張りに見合った給与が支払われる」ということはとても大切です。多くの従業員は、「企業理念への共感」「やりがい」のほか、「生活」のために仕事をしています。そのため、いくらやりがいを感じていたとしても、それがしっかり評価されず昇給の見込みがなければ、転職を検討することにつながるでしょう。スキル・能力・仕事への姿勢を給与に反映できるよう、評価制度を整備することが重要です。

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    企業理念や経営目標の浸透

    「何のためにやるのか」「何に貢献できるのか」など、企業理念や経営目標を浸透させることで、従業員ひとりひとりの役割を認識させることは重要です。企業理念や経営目標は、組織全体が目指す方向性であり、従業員ひとりひとりの行動軸になります。これらについて共通認識を持つことで、企業理念が体現出来たとき、経営目標を達成できたときに、充足感や達成感を感じることができ、組織の一体感を創出することにもつながります。

    仕事に慣れてくるにつれて日々の業務に忙殺され、目的を見失ってしまう場合があるため、定期的にミーティングの機会などを設けて認識をそろえることが重要です。

    従業員満足度調査を実施しよう!

    これまで従業員満足度の大切さについて紹介してきましたが、満足度を高めるためには「現在の満足度状況を把握すること」「現状から課題を洗い出すこと」が重要です。

    そのために行うのが「従業員満足度調査」ですが、最近では、人材管理システムを活用して「従業員満足度調査」を行う企業が増えてきています。アンケートの作成・配布・回答・集計・分析が全てシステム上で効率的に行うことができるため、特に従業員数が多く、多店舗展開をしている場合は、大幅な時間短縮が期待できるのです。

    HRBrainでは、カスタマイズ性の高いアンケート機能に加えて、従業員のコンディションチェックを行える「EXIntelligence」機能も提供しています。従業員の不満を可視化するだけでなく、離職兆候も察知できるため、人材流出の防止に役立てることができるでしょう。また、そのほか「人事評価機能」や「人材管理機能」も搭載されているため、人事領域を幅広く効率化することが可能です。

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    HR大学編集部
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