人材管理
自然退職とは?自然退職に関わるトラブル事例を中心に分かりやすく解説
目次
自然退職とは
自然退職は、社会人であれば誰にでも起こり得る退職です。人事パーソンのみならず、社会人であれば誰もが理解しておく必要があるでしょう。ここでは、基本的な意味や自然退職と判断されるケースについて説明します。
自然退職の意味
自然退職とは、労働者や会社の意思表示がなくとも自動的に労働契約が終了し退職することをいいます。
どのようなケースで自然退職と判断されるか
自然退職と判断されるケースはいくつかあり、大きく分けて5つに分類されます。以下にその種類を説明します。
- 従業員が無断欠勤を繰り返して音信不通になっている場合
- 休職期間終了時に休職事由が解消していない場合
- 雇用期間が定められている契約社員などに対して、雇用期間満了となった場合
- 何らかの理由で本人が死亡した場合
- 従業員が定年を迎えることになった場合
などが自然退職と判断されます。
自己都合と会社都合の2つの自然退職
もし想定外のケースで自分が退職するとなった時、自己都合退職か、会社都合退職か、判断に迷うケースがあります。ここでは、判断ポイントと用語の解説をします。
判断するポイント
自分の退職が「会社都合」になるか「自己都合」になるか分からないときは、会社の人事部に直接聞くのが最も良い方法です。また、「会社都合退職」による解雇の場合、会社側は30日以上前にその旨を伝える、もしくは30日に満たない分の「解雇予告手当」を支払うことが法律で定められています。
自己都合退職と会社都合退職の違い
それぞれの用語解説と、大きく異なるポイントについて解説します。
・用語の解説
自己都合退職は、他社への転職、転居、病気療養等、自身の都合による退職のことを言います。
会社都合退職は、倒産、経営状況の悪化、ハラスメント被害など会社が責任を負うべき理由による退職のことを言います。
・大きな違い
自己都合退職と会社都合退職の大きな違いは、失業保険の支給の場面で生じます。
自己都合退職の場合、最短支給開始日は退職後7日間の待期期間プラス3か月後、支給日数は90日から150日とされています。
一方、会社都合退職の場合、最短支給開始日は退職から7日後、支給日数は90日から150日となり、退職者にとって失業後すぐに失業保険を受給できるという特徴があります。
自然退職はどちらに分類されるか
自然退職は退職の従業員や会社の意思表示なく労働契約が終了するため、会社都合による退職には該当しません。従業員側の都合にも該当しないと考えられますが、無断欠勤や休職期間の満了を理由に退職する場合は、自己都合退職とされるのが通常です。これは、労働者が労働契約に基づいて労務を提供することができなくなったと解釈できることが理由になります。
自然退職に関わるトラブル事例
自然退職は、労働者や会社の意思表示がなくとも自動的に労働契約が終了し、退職となります。そのため、どちらかの意思とは反する場合もあり、トラブルが発生することがあります。実際に想定されるトラブルを例に挙げて説明します。
ケース1:無断欠勤による自然退職
無断欠勤が続いたことによる自然退職は、会社側に何ら責任がないにも関わらず従業員が出社しなくなることが想定されます。しかし、無断欠勤が続いて自然退職扱いとなった元従業員から「出社できなくなったのは会社の責任だ」と主張されるケースは少なくありません。
従業員が出社できなくなったことについて会社が責任を問われるケースとして、社内でのパワハラやセクハラなどが挙げられます。
例えば、従業員が会社へ連絡することなく出社しなくなり一定期間が経過したため、就業規則の自然退職の規定に基づいて退職の扱いとした。しかしその後、従業員から「出社できなくなったのは上司からパワハラを受けたからだ」と主張されたとします。パワハラの事実が認められた場合、会社が従業員を退職させたことは無効とされて欠勤中の賃金を請求されるだけでなく、パワハラを理由に損害賠償を請求される恐れもあります。
無断欠勤の背景にはパワハラなどのハラスメント被害や、不慮の事故などの深刻な原因が潜んでいる可能性もあるため、慎重な対応が必要です。
ケース2:休職期間の満了時の自然退職
うつ病などの精神疾患に罹患して休職した従業員が、休職期間満了後も完治しなかったため、就業規則の規定に従って自然退職となるケースがあります。こちらも法的な紛争等のトラブルに発展しやすい典型例です。
会社での長時間労働やハラスメント被害等の原因により精神疾患を発症した場合は特にトラブルに発展する可能性が高いため注意が必要です。
職場に関連するストレスが原因で精神疾患を発症した従業員に対し、会社が行うべき適切な対応を怠った場合、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償を請求される恐れがあります。
近年、職場に関連するストレスにより精神疾患に罹患する方は増加傾向にあります。企業は、従業員が精神疾患を発症した場合の対応や予防策を用意しておく必要があります。
ケース3:新型コロナウイルス感染拡大によるトラブル
近年、新型コロナウイルスの感染拡大による自然退職を巡るトラブルも増えてきています。
例えば、新型コロナウイルスへの感染が疑われる従業員に対して、会社が自宅待機するよう命令を出した。その後、連絡が取れなくなり、就業規則の規定に基づいて自然退職の扱いとしたとします。後日、その従業員から「会社から自宅待機命令を受けて出社しなかっただけなので、退職は無効だ」と主張された場合、退職は無効と判断される可能性が高いです。会社が強制的に従業員を休ませた場合、労働基準法が定める休業手当の支払い義務も生じます。
新型コロナウイルス感染の疑いがある従業員を一時的に休ませる場合、どのような扱いにするか明確にしましょう。また、PCR検査の結果や症状等について継続的に聞き取る体制を整えておくことも大切です。加えて、復職の判断基準も明確に決めておく必要があります。
自然退職のトラブルを未然に防ぐポイント
自然退職のトラブルを防ぐ対応策とそのポイントを説明します。
対応1:就業規則等に規定する
自然退職を巡るトラブルを防ぐためには、就業規則や雇用契約書に自然退職に関する規定を設けておくことが重要です。
ただし、労働者に著しく不利な規定は合理性を欠くことから無効と判断される可能性があるため注意が必要です。例えば、わずか2~3日の無断欠勤を理由に自然退職とするという規定は無効と判断される可能性が高いです。
対応2:連絡が取れない従業員に対して積極的なコミュニケーションを心掛ける
無断欠勤で連絡が取れない状態が続いた場合、自然退職扱いとする前に、
- 従業員の自宅を訪問する
- 身元保証人に連絡する
- 書面等で出勤の催促をする
等、従業員と連絡を取り、出勤を促すために最善を尽くすことが大切です。
就業規則に基づく自然退職は、あらゆる手段を尽くしても連絡が取れない場合の最終手段という位置づけであることが多いです。
対応3:ハラスメントの疑いがある場合、社内調査を実施する
従業員から無断欠勤の原因は上司からのパワハラやセクハラ等のハラスメント被害であったと主張された場合、従業員が主張する事実が真実であるか調査する必要があります。
まずは被害者や目撃者などの関係者を対象として聞き取り調査を行いましょう。パワハラやセクハラは加害者に自覚がない場合もあります。そのため、どのような状況でどのような言動をしたのかという客観的な事実に関する情報を収集することが重要です。調査の結果、パワハラやセクハラの事実が確認できなかった場合でも、当事者間の誤解を解くための働きかけ等の適切な対応が求められます。
【まとめ】人事評価・目標管理をカンタン・シンプルに
自然退職について、いかがでしたか。自然退職について理解しておくことは、従業員と音信不通になる、精神疾患が長期間に渡り治癒しない等のトラブルに対応するために必要不可欠です。そして、自然退職により労働契約を終了させたことが契機となり深刻なトラブルに発展する可能性があるという点も認識しておく必要があります。
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