人材管理
2022/10/20
離職が多い企業・従業員の特徴は?離職の原因や防止対策を交えて解説
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離職率が高くなると、新たな人材の採用にコストがかかってしまいます。既存の従業員にかかる負担も増えるため、さらなる離職につながる可能性もあります。また、企業にノウハウが蓄積されず、企業のイメージダウンにつながってしまうのも離職率が高いことによる問題です。
これらの理由から、離職防止の観点が非常に重要であるといえます。離職を防止するために、離職の原因を把握しておくことも大切です。
今回は、離職の原因でも多いものをピックアップしたうえで、従業員の離職防止に最適な方法を紹介します。また、従業員が離職しやすい企業の特徴や、離職しやすい従業員の特徴についてもあわせて紹介します。
離職防止対策を思うように実施できていない企業や、従業員の離職に付随する課題を抱えている企業はぜひ本記事の内容を参考にしてください。
離職の原因で多いものは?
より効果的な離職防止対策を実践するには、離職の原因について詳しく理解しておく必要があります。ここでは、主な離職の原因である以下の5つを紹介します。
- 人間関係
- 仕事内容のギャップ
- 待遇に対する不満
- 健康面での負担
- ライフスタイルの変化
人間関係
職場での人間関係は、働きやすさに直結する非常に重要な要素です。人間関係が悪い職場では、貢献したいという気持ちをもてず離職を検討する方も多いかもしれません。
離職につながってしまう人間関係のストレスには、プレッシャーをかけてくる上司に対する不満などが挙げられます。また、同僚や部下との相性が悪く、思うように業務を進められないことにストレスを感じる場合もあるでしょう。
職場全体の人間関係がよくない場合、気軽に相談できる相手もいないといったことが起こりがちです。人間関係に関する悩みがあり、かつそれを解決できない環境であることが、離職の原因になりやすいといえます。
仕事内容のギャップ
求人情報に記載されていた内容や、思い描いていた理想の仕事と現状があまりにも異なる場合、仕事に対する意欲をキープできなくなります。特に、仕事に対する理想が強い人の場合「自分の理想を実現できる会社に移りたい」と考えるのが自然です。
ほとんどの人が、会社や業務に対してある程度の「やりがい」を求めて入社します。事前に聞いていた仕事と実際の仕事にギャップがあると、モチベーションを保てず離職してしまうでしょう。
待遇に対する不満
仕事内容と同様に、待遇面もギャップが生じやすいといえます。例えば、労働時間や休日、給与などが挙げられます。
待遇面が自身の希望とマッチしたため入社したにもかかわらず、実際の待遇がよくなければ、多くの従業員は離職を検討してしまうでしょう。よりよい労働条件・休日・給与の会社があった場合、すぐにでも転職したいと考える人もいるかもしれません。仕事内容と同様、待遇面も可能な限りギャップが生じないよう意識し、求人内容と実際の業務内容を見直す必要があります。
健康面での負担
日々の業務をこなすことで肉体的に負担がかかり、離職を考える人も少なくありません。健康面での負担は、仕事内容や待遇のギャップにも関連してきます。
例えば、求人内容に記載されていた労働時間よりも実際の労働時間が長かった場合、肉体的に大きな負担がかかります。会社への不満が募り、精神面に負担がかかる場合もあるでしょう。
また、休暇を取得しづらいことで肉体的・精神的に負担を感じて離職につながるケースもあります。現場での業務をこなすのはあくまで従業員であるため、従業員の健康を保てる労働環境であるかどうか、見直す必要があるでしょう。
ライフスタイルの変化
特に女性の場合、結婚や出産を理由に離職するケースが多くあります。ライフスタイルの変化はネガティブな理由ではないものの、企業からすると欠員が発生することに変わりはありません。
近年では、結婚や出産を経ても復帰できる環境の整った企業も増えています。自社でも復帰可能な環境を整えることで、離職を防止できるかもしれません。
ライフスタイルの変化による離職は、従業員にとっても望まない離職である場合も多いでしょう。仕事に対して前向きな気持ちのある従業員が復帰できるよう、ライフスタイルの変化に対応できる労働環境を整備しましょう。
従業員が離職しやすい企業の特徴とは?
ここでは、従業員が離職しやすい企業に共通する、4つの特徴について紹介します。
- 人材育成に対する意識が低い
- 労働時間・業務内容に関する負担が大きい
- 従業員エンゲージメントが低い
- 評価制度が整っていない
上記の特徴に自社が当てはまっていないかを客観的に見直し、離職を防止できる環境を整えましょう。
人材育成に対する意識が低い
従業員が離職しやすい企業は、そもそも人材育成の制度が十分に整っていない可能性があります。特に、新入社員に対する育成が不十分だと、仕事や職場に対してストレスや不満を感じる従業員が多くなるでしょう。
人材育成を重視し、実践することで、新入社員の定着率が向上します。定着率が高まれば、従業員ひとりひとりの生産性なども向上するでしょう。
また新入社員だけでなく、既存の従業員がレベルアップを意識できる環境を整えることも大切です。新入社員の育成ばかりにかまけて、長く活躍してくれている従業員に対する育成が疎かになっては意味がありません。
既存の従業員が離職してしまうのは企業にとっても大きな打撃であるため、メンタルケアなども含めて新入社員と同様に目を向けて挙げましょう。
労働時間・業務内容に関する負担が大きい
労働時間が長く、従業員ひとりひとりにかかる負担が大きい企業は、従業員が離れやすくなります。業務負荷に関する意識が薄い企業では、特定の従業員に負担が集中しがちです。
過剰な業務負荷で肉体的・精神的にストレスを感じることで、離職につながってしまうケースも少なくありません。労働時間や業務内容の負荷が特定の従業員に偏っていないか、早急に調査する必要があります。
また、基本的な労働環境そのものが従業員の負荷になっていないか見直すことも大切です。業務に対するやりがいを全従業員が感じられるよう、労働時間・業務内容を見直してみてください。
従業員エンゲージメントが低い
たとえ離職防止の対策を考案・実施しても、従業員が「この会社で頑張りたい」と感じなければ意味がありません。従業員が業務に対してやりがいを感じられていない企業は、離職につながりやすいといえます。
従業員がやりがいを感じられない環境では、ほかの従業員もモチベーションを保てなくなるかもしれません。企業全体で「やりがい」を意識できない環境では従業員が定着せず、かつ業務の品質も下がってしまうでしょう。
評価制度が整っていない
離職が多い企業には、人事評価制度が曖昧になっているという特徴があります。自身の成果が正当に評価されない環境では、やりがいを感じられず離職を検討する従業員も多いでしょう。
また、そもそも評価制度自体が浸透していないことも、離職が多い企業の特徴です。評価制度が整っていない企業では、何を目的にすればいいのかわからずモチベーションを保てない従業員が増えてしまいます。
離職しやすい従業員の特徴とは?
従業員の離職を防止するには、上司が従業員の状態や行動を把握しておくことも大切です。特に、以下に該当する従業員は離職しやすい傾向にあるため、注意が必要です。
- 業務に対するモチベーションが低い
- コミュニケーションへの意識が希薄
- 転職を意識した行動が目立つ
上記の行動をする従業員は離職を検討している可能性が高いため、人事担当や上司は注意しておかなければなりません。定期的な面談やメンタルケアなどを実施し、離職を防止しましょう。
業務に対するモチベーションが低い
離職を検討している上司は、モチベーションが下がっている傾向にあります。モチベーションが下がっているかどうかは、以下の観点で判断してください。
- 初歩的なミスが目立つようになる
- ミスの再発防止に対する意志が感じ取れない
- 業務効率が明らかに悪くなっている
- 自分の業務を別の従業員に任せている
上記の行動が目立つ従業員は、離職を検討しているかもしれません。このような行動を発見したら放置せず、面談などを実施しましょう。
コミュニケーションへの意識が希薄
会社を辞めたいと考えている従業員は、ほかの従業員とのコミュニケーションを避ける傾向にあります。明らかに挨拶をしていなかったり、雑談することが減ったりした場合は、注意が必要です。
会議の場で以前よりも発言が減った場合も、離職を考えている可能性があります。今いる会社への貢献を意識していないとも判断できるため、こちらからコミュニケーションを取る必要があるでしょう。
また、以前と比べて明らかに元気がなくなっている従業員も、離職を考えているかもしれません。業務負荷が原因で肉体面・精神面に異常をきたしている場合があるため、面談などで現状に関する不満などを聞き出しましょう。
転職を意識した行動が目立つ
自社を退社し、新たな企業に転職することを検討している人は、以下の行動が目立つようになります。
- 退社時間が急に早くなる
- 有給・半休の取得が多くなる
- 同僚とのコミュニケーションが減る
- 新規事業やプロジェクトへの積極性が感じられない
上記に挙げた行動が目立つ従業員は、自社を離れて新たな会社に移ることを検討しているかもしれません。
退社時間が早くなったり、有給や半休が多くなったりした従業員は、合間に転職活動を進めている可能性があります。コミュニケーションや新規事業への積極性がない場合も「転職するからこの会社でこれ以上頑張る必要はない」と、考えていると判断できるかもしれません。
また、先ほども触れた会議での発言が減少することも、転職を検討している従業員に当てはまる行動です。転職せず自社に残ってもらえるよう、メンタルケアやヒアリングなどを実施しましょう。
離職を防止するための有効な対策とは
ここでは、離職防止につながる以下の対策について紹介します。
- 定期的な従業員のフォロー
- 採用情報の正しさを意識する
- 働き方の柔軟性に目を向ける
- 労働条件や人事制度を再考する
- 従業員に明確な役割を伝える
- キャリアデザインのしやすい環境を整える
- 上司の対応にも目を向ける
離職防止対策を施すことで、離職率を下げられるかもしれません。離職に関する課題のある企業は、ぜひ実施してください。
定期的な従業員のフォロー
特に入社間もない従業員は、自分の業務や職場の環境に対する不安を感じやすいといえます。そのため、先輩が定期的にフォローし、メンタル面を支えてあげる必要があるでしょう。同じ業務に触れている先輩からフォローしてもらえることで、安心して相談できる環境が整います。
採用情報の正しさを意識する
採用情報と実際の業務に大きなズレがないよう、事前に確認したうえで従業員を募集してください。ミスマッチに対する意識が高まっている求職者も多いため、できるだけギャップの少ない採用情報を掲載しましょう。採用情報は良い点だけでなく、厳しい観点も隠すことなく掲載するのもおすすめです。あえて厳しい部分を隠さず掲載することで、求職者は実際に働いたときのイメージがしやすくなるでしょう。
働き方の柔軟性に目を向ける
昨今では、ワークライフバランスを重視した働き方を重視する求職者・従業員が増加傾向にあります。コロナ禍で注目されたテレワークなど、柔軟な働き方を導入・実施することで「働きやすさ」を感じる機会になるかもしれません。通勤・出社にストレスを感じる従業員も多い中で、柔軟性のある働き方を実現することは、会社に対する不満を軽減する有効な手段といえるでしょう。
労働条件や人事制度を再考する
離職を検討する理由として多いものに、給与などの待遇面や評価に対する不満が挙げられます。正当な待遇・評価を実現できるよう、既存の労働条件や人事制度を見直してみてはいかがでしょうか。ただし、単に給与をあげるといった形ではなく、従業員のモチベーションが上がるような「正当な制度」を意識しましょう。努力が数字となって反映されるような、やりがいのある労働条件・人事制度を構築することが大切です。
従業員に明確な役割を伝える
入社したばかりの従業員は業務を覚えるのが精一杯で、自身の役割を理解しきれていないことも多いでしょう。「なぜ自分はこの仕事をしているのか」と疑問に感じる時間が長くなると、会社にいること自体がストレスになるかもしれません。そのため従業員に対し、今求めていること・今後実現してほしいことを明確にして掲示する必要があるでしょう。自社が求めていることを正確に伝え、従業員の自己肯定感を高めることが大切です。
キャリアデザインのしやすい環境を整える
ただ闇雲に日々の業務をこなすだけの環境では、従業員はいずれやりがいを失って離職してしまうでしょう。自身が努力し成果をあげることで、どのようなキャリアを実現できるのか明確にすることが大切です。従業員が自身の目標を設定しやすくなるため、モチベーションの向上や中長期での維持が期待できます。
上司の対応にも目を向ける
従業員だけでなく、上司に問題がないか経営層・人事部がチェックすることも重要です。従業員のストレスが、上司の対応が原因になっているケースも少なくありません。納得できる指導がされないことで、上司に不満を抱く従業員も多いでしょう。従業員の不満を解消し、正当な育成を実現するためにも、上司の立場にあたる人材にも目を向けることが大切です。
なぜ離職防止対策が重要視されているのか
離職防止対策が注目されている理由には、労働人口の減少により人材確保が困難になったことが挙げられます。また、転職のハードルが下がったことで、人材が流出しやすくなったのも理由のひとつです。
昨今、上記に挙げた理由で人的リソースが不足していることに頭を抱えている企業が増えています。人的リソースの不足は事業継続や新規事業の立案にも影響を与えるため、既存従業員の離職を防止しようと考える企業は多いでしょう。
離職防止対策を実施することによる効果
ここでは、離職防止対策の実施により企業にもたらされる効果を紹介します。
企業としてのイメージ維持
離職防止対策を実施し、成功することで「従業員が定着しやすい企業」というイメージがつきます。定着率に関する前向きなイメージが浸透すれば、新たな人材の確保も効率的になるでしょう。他社からの評価も上がるため、顧客獲得や事業展開の視点でもメリットがあるかもしれません。
育成・採用コストの削減
人材が定着すれば、新たな人材に充てる育成・採用コストを削減できます。順調に育成が進めば、これまでかけてきたコストを回収することも可能です。反対に、従業員が早期離職してしまっては育成・採用コストは回収できません。従業員の早期退職はコスト面で打撃になるため、離職防止対策を通じて防止しましょう。
まとめ
今回は従業員の離職を防止するための対策を、根本的な離職の原因をふまえたうえで紹介しています。
離職の原因には、人間関係のストレスや業務内容に対するギャップ、待遇やライフスタイルに関する不安・不満が挙げられます。今回は離職しやすい企業や従業員の特徴についても触れているので、離職の原因とあわせて自社の現状と照らし合わせてください。
また今回は、離職防止対策として有効な手段と、離職防止対策による効果についても触れています。離職に関する課題を抱えている企業は、今回紹介した内容を参考に離職防止に向けた施策を考案してみてはいかがでしょうか。
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