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同一労働同一賃金とは?法改正やガイドライン、最高裁の考え方を解説

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは?法改正やガイドライン、最高裁の考え方を解説

目次

    非正規社員と正規社員との間で不合理な格差を解消することを目的に、働き方改革で取り組みが進められている同一労働同一賃金。

    ここでは、同一労働同一賃金の内容や改定ポイントのほか、ガイドラインの説明、知っておきたい最高裁判例の考え方を解説します。

    同一労働同一賃金とは

    同一労働同一賃金とは

    同じ仕事でも、雇用形態の違いによって生じる不合理な格差が社会問題化になっていましたが、働き方改革の柱として同一労働同一賃金が整備されました。ここでは、同一労働同一賃金の概要や罰則、施行時期について説明します。

    同一労働同一賃金とは?

    同一労働同一賃金とは、同一企業内において、正規・非正規雇用労働者の間で、基本給や賞与など、それぞれの待遇ごとに不合理な差が生じることを禁止するものです。働き方改革関連法(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)で定められています。

    法律上は、期限の定めのない正規雇用労働者(いわゆる正社員)と期限の定めがある有期雇用の非正規労働者(有期雇用のパート・契約社員)との比較であることに留意が必要です。

    同一労働同一賃金の罰則は?

    同一労働同一賃金は、罰則規定は定められていません。そのため刑事罰を受けることはありませんが、違反によって損害賠償請求の恐れがあります。

    のちに説明しますが、非正規労働者より待遇差の説明を求められたら、内容・理由を説明する義務があり、合理的な説明ができない場合、訴訟リスクが高まるといえるでしょう。

    中小企業はいつから?

    働き方改革関連法の大半は、大企業が先行し、中小企業が1年猶予されています。同一労働同一賃金においても、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月からそれぞれ施行されています。

    中小企業の定義は、基本的には中小企業庁の中小企業の定義によります。業種毎に定義される基準に違いがあり、たとえば、製造業であれば「資本金3億円以下、または常時雇用人数が300名以下」とされています。

    法改正のポイント3点

    法改正のポイント

    同一労働同一賃金の改定ポイントは、「不合理な格差の禁止」「待遇に関する説明義務の強化」「行政による助言・指導、裁判外紛争解決手続の整備」ですが、それぞれ説明していきます。

    正社員と契約社員の不合理な待遇差の禁止

    同一企業内において、同一労働を行う正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で、基本給や賞与などの賃金をはじめとして、慶弔休暇や慶弔見舞金、福利厚生施設の利用まで、あらゆる待遇について、不合理な格差を設けることを禁止しています。

    「職務内容」「配置変更の範囲」「その他の事情」を考慮して、各々の項目において不合理な格差があれば是正が必要です。

    たとえば、住宅手当を正規雇用労働者には支給し、非正規雇用労働者に支給していないケースにおいて、同一労働であっても、「正規雇用労働者は転居を伴う異動があるが、非正規雇用労働者は転居を伴う異動がない」という場合、「配置変更の範囲」に合理性に合理性があると考えられ、不合理な格差ではないといえるでしょう。

    待遇に関する説明義務の強化

    事業主は、非正規雇用労働者から正規雇用労働者との待遇差の内容や理由などについて、説明を求められた場合、非正規雇用労働者に説明する義務が課せられています。これにより、非正規雇用労働者は、正規雇用労働者との待遇差について事業主に説明を求めることができます。

    なお、厚生労働省の「説明書 モデル様式」を活用することで、効率的に説明書類を作成することができます。

    行政による助言・指導、裁判外紛争解決手続の整備

    「不合理な待遇差の禁止」や「待遇に関する説明義務の強化」について、行政による履行確保措置、行政ADRが整備されます。

    なお、ADR(裁判外紛争解決手続)とは、労働者と事業主の紛争を訴訟手続きによらない方法で解決する手続きであり、紛争の早期解決を目的とした行政サービスです。

    同一労働同一賃金ガイドラインとは

    同一労働同一賃金ガイドラインとは

    同一労働同一賃金ガイドラインとは、どのような位置づけのものでしょうか。ここではガイドラインの概要やどこまで参考にすべきかについて解説します。

    同一労働同一賃金ガイドラインとは?

    同一労働同一賃金ガイドラインは、不合理な待遇差の考え方を示したものであり、どのような待遇差が不合理か不合理でないものかを示す「指針」です。

    「短時間・有期雇用労働者」「派遣労働者」「協定対象派遣労働者」の区分毎に、基本給・賞与、各種手当や福利厚生などの不合理な待遇差について、「問題となる例」と「問題にならない例」を示しています。

    【同一労働同一賃金ガイドラインの主な項目】

    • 基本給
    • 賞与

    (各種手当)

    • 退職金
    • 職務手当
    • 通勤手当
    • 時間外労働手当の割増率
    • 精皆勤手当
    • 住宅手当
    • 家族手当

    (福利厚生)

    • 食堂・休憩室・更衣室
    • 慶弔休暇
    • 教育訓練

    (※参考) 厚生労働省:「 同一労働同一賃金ガイドライン」より

    どこまで参考すべき?!法的拘束力はない同一労働同一賃金ガイドライン

    同一労働同一賃金ガイドラインは「指針」の位置づけで、法的拘束力がないガイドラインをどこまで参考にすべきか、迷っている方もいるのではないでしょうか。ここでは、同一労働同一賃金ガイドラインをどこまでに参考にすべきかを、ひとつの考え方としてお伝えします。

    同一労働同一賃金ガイドラインは、厚生労働省が示す一定の指針であり、法的強制力はありません。執筆時点では、同一労働同一賃金ガイドラインは2018年12月に公布・告示されたものですが、最高裁判決が下される前のものであっても、考え方の材料として参考すべきものです。

    ガイドラインに示された内容の条件が自社に当てはまるか踏まえて、弁護士などの専門家と相談し、個別にみていくことが望ましいと考えられます。

    知っておきたい、同一労働同一賃金の考え方

    同一労働同一賃金の考え方

    同一労働同一賃金は、「職務内容」「配置変更の範囲」「その他の事情」を考慮して、不合理か否かを整理する必要があります。

    最高裁の判決は、それらの事情を考慮した個別事案毎の判決であり、必ずしも考慮する条件が各社の事情にあっているものではありません。同一労働同一賃金は、執筆時点では判例が蓄積されていないため、判例法理は形成されていないと考えられます。

    ここでは、2021年秋に下された最高裁判決における概要をふれますが、個別事案の一例として参考程度に留めてください。

    最高裁を踏まえた考え方(賞与)

    正職員に支給している賞与について、アルバイト職員は不支給としていることにつき、正職員との待遇格差は違法として、アルバイト職員により不合理な格差是正を訴えた裁判です。

    本件は、支給する賞与の目的や性質を踏まえ、賞与を「労働対価の後払いや、将来の労働意欲の向上等の趣旨を含むもの」と認定し、正職員の賞与は賃金の一部を後払いしている等の考え方から、不合理とはいえないと判断しています。

    なお、本件は「職務内容」「配置変更の範囲」のいずれも、一定の相違があったと判断されているほか、「その他の事情」については、アルバイト職員から契約社員・正職員への登用試験制度があることも考慮されています。

    なお、この判決は地裁では不合理と判断されていましたが、最高裁で逆転したものです。

    【大阪医科薬科大学事件 2020年10月13日最高裁判決】

    最高裁を踏まえた考え方(手当・休暇)

    正社員と有期雇用契約社員との間で、年末年始勤務手当や扶養手当、夏期・冬期休暇などの労働条件の相違について、不合理にあたるか否かを争われた裁判です。

    本件は、正社員登用制度は設けられているものの、有期雇用契約社員は、職務内容が限定され、人事異動、昇任・昇格は予定されないなど、職務内容、配置変更の範囲、その他の事情に相応の相違があることを考慮しても、不合理にあたると判断されています。

    たとえば扶養手当については、正社員に対する支給目的について「継続的な雇用確保を目的に扶養親族のある者の生活保障・福利厚生を図る」ことは経営判断として尊重しうると判示しています。

    これに照らし合わせて、有期雇用契約社員に対しても、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、支給することが妥当とし、契約社員に支給されていないことは不合理と判断しています。

    夏期・冬期休暇については、契約社員に与えていないことについて、地裁判決では「勤続5年超の場合のみ不合理」と判断されていました。

    しかし、最高裁判決では「労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図ることにある」との考え方から、休暇の取得可否や取得日数について、勤続期間の長さによって決まるものではないとしています。契約社員にもこの考え方が当てはまるとし、契約社員に与えていないことは不合理と判断しています。

    【日本郵便事件 2020年10月15日最高裁判決】

    最高裁を踏まえた考え方(退職金)

    売店の正社員と有期雇用契約社員との間で、退職金支給有無の相違について待遇格差は不当として争われた裁判です。

    なお本判決は、一審で不合理でないと判断されましたが、二審で1/4の退職金が支給されなければ不合理と判断されました。さらに最高裁では次のとおり不合理とまではいえないと判断されています。

    同社の退職金は、正社員としての職務を遂行し得る人材の定着を図るなどの目的から、様々な部署等で長期就労が期待される正社員に支給することとしたといえるなどにより、不合理とまではいえないと判断されています。

    なお、売店の職務は同一労働であることに対し、比較対象としている正社員は売店に従事しているごく一部の者であり、正社員に占める割合が少ないという事情もあったと考えられています。

    退職金制度は、支給の有無・支給方法等も含め企業ごとに各様で、会社側の裁量余地が比較的大きいとも考えられていますが、本判決は個別事情であることに留意が必要でしょう。

    【メトロコマース事件 2020年10月13日 最高裁判決】

    同一労働同一賃金はおかしい?!問題点

    同一労働同一賃金は、比較対象が「有期雇用」非正規社員に限定されています。つまり、有期雇用から無期雇用に転換した非正規社員は比較対象となりません。

    この定めから、無期転換社員は同一労働同一賃金の対象外となり、法律の抜け穴の状態になり、問題視されています。

    今後、非正規社員の待遇の見直しついて、無期雇用契約社員は同法の対象外として不合理な定めを残しておくことは望ましくなく、今後、是正されることも視野に入れて考慮することが必要でしょう。

    【まとめ】同一労働同一賃金ガイドラインは参考すべきもの。自社の状況と照らし合わせて専門家に相談しましょう

    同一労働同一賃金は、判例法理が形成されているとはいえない状態と考えられるため、今まで下された最高裁判決は個別事案であることを念頭に、自社の同一労働同一賃金の対応を考える必要があります。

    同一労働同一賃金ガイドラインは、考え方として参考すべきものですが、「職務内容」「配置変更の範囲」「その他の事情」は各社各様で、ガイドラインにぴったり当てはまることはいえません。

    同一労働同一賃金の対応は、同一労働同一賃金ガイドラインに示される例と自社の状況を照らし合わせ、弁護士等の専門家と相談しましょう。

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    HR大学 編集部

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