労務管理
衛生管理者試験はどんな試験?第一種と第二種の内容の違いや受験資格について解説
目次
常時50人以上の従業員がいる事業場において、選任義務がある衛生管理者の資格取得のための試験が衛生管理者試験です。第一種と第二種があり、試験範囲が異なります。合格には講習の受講や過去問の勉強が有効です。今回は試験内容や難易度、受験資格を解説します。
衛生管理者試験とは
衛生管理者試験とは、労働安全衛生法で定められた国家資格である衛生管理者免許を取得するための試験です。では、衛生管理者とはどういう資格で、なぜ必要になるのでしょうか。ここでは衛生管理者試験を受ける上での前提となる知識を解説します。
衛生管理者とは
衛生管理者とは、労働安全衛生法で定められた国家資格です。事業場の衛生管理業務従事者として働くために必要な資格となります。衛生管理者の役割は、職場環境の安全や衛生状況を管理し、労働者が安心して働ける環境を作ることにあります。その主な業務内容は、
- 週1回の作業場の巡視
- 労働者の健康管理
- 衛生教育の実施
などです。特に、労働安全衛生法第11条において、「衛生管理者は、少なくとも毎週一回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」と定められています。
(※参考) 中央労働災害防止協会:「労働安全衛生規則 第一編 第二章 安全衛生管理体制」より
衛生管理者の選任義務
衛生管理者は、事業場ごとにいる労働者数によって選任しなければいけない人数が決められています。これを選任義務といい労働安全衛生法において以下のように定められています。
- 衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任すること。
- その事業場に専属の者を選任すること。
選任する人数は労働者の人数に応じて、以下のように定められています。
- 50人以上~200人以下:1人以上
- 200人超~500人以下:2人以上
- 500人超~1,000人以下:3人以上
- 1,000人超~2,000人以下:4人以上
- 2,000人超~3,000人以下:5人以上
- 3,000人超:6人以上
(※参考) 厚生労働省:「衛生管理者について教えて下さい。」より
第一種と第二種の違い
衛生管理者には第一種と第二種の2種類があります。第一種は全ての業種において衛生管理を行うことが可能です。一方、第二種は有害業務が含まれる業種では衛生管理を行うことができません。衛生管理者試験でも第二種の方が試験範囲が狭いため、難易度は下がります。
衛生管理者試験の受験資格
50人以上の事業場には必ず1人必要となる衛生管理者ですが、その資格を得る衛生管理者試験は誰でも受けれる試験ではありません。ここでは衛生管理者試験の受験資格について解説します。
衛生管理者試験の受験資格
衛生管理者試験を受けるためには実務経験が必要になります。実務経験の必要年数は最終学歴によって異なります。ここでは主となる3パターンを紹介します。
・大学又は高等専門学校を卒業した者学校教育法による大学又は高等専門学校(専修学校・各種学校等除く)を卒業した人は、労働衛生の実務に従事した経験が1年以上必要です。
・高等学校又は中高一貫教育学校を卒業した者学校教育法による高等学校又は中高一貫教育学校を卒業した人は、労働衛生の実務に従事した経験が3年以上必要です。
・学歴が関係なくなる場合10年以上の労働衛生の実務に従事した経験がある場合は学歴を問わず受験をすることが可能です。
実務経験になる業務の例
従事した経験が必要となる労働衛生の実務は以下の13業務となります。
- 健康診断実施に必要な事項又は結果の処理の業務
- 作業環境の測定等作業環境の衛生上の調査の業務
- 作業条件、施設等の衛生上の改善の業務
- 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備の業務
- 衛生教育の企画、実施等に関する業務
- 労働衛生の統計の作成に関する業務
- 看護師又は准看護師の業務
- 労働衛生関係の作業主任者としての業務
- 労働衛生関係の試験研究機関における労働衛生関係の試験研究の業務
- 自衛隊の衛生担当者、衛生隊員の業務
- 保健衛生に関する業務
- 保健所職員のうち、試験研究に従事する者の業務
- 建築物環境衛生管理技術者の業務
上記の13業務のうちのいずれかを必要年数以上経験し、社長や支店長などの事業場代表者がそれを証明することで、実務経験があると認められます。
(参考)公益財団法人安全衛生技術試験協会「事業者証明書」より
衛生管理者試験の試験概要
衛生管理者試験はどのような試験なのでしょうか。ここでは衛生管理者試験の試験時間や出題形式、配点方法などの試験概要について解説します。
試験時間と場所
まずは試験時間と場所を紹介します。
・試験時間
試験時間は第一種・第二種ともに13:30~16:30の3時間となります。時間は十分にあるのでスピードを求められる試験ではありません。また、試験開始後1時間以降は途中退出が可能となっています。
・試験場所
試験の場所は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州の7つのセンターに設けられており、場所ごとに試験日程が異なります。最も多いのは関東センターで多い月だと月に9回の試験日が設けられています。逆に最も少ないのは北海道や中国四国センターで月に1回だけの場合もあります。
(参考)公益財団法人安全衛生技術試験協会「試験の日程」
出題形式
出題形式は、マークシート方式で5肢択一となっています。
配点方法
配点方法は試験範囲の違いから、第一種と第二種で異なります。
【第一種衛生管理者試験の配点】
第一種の場合、
- 労働衛生(有害業務に係るもの):10問80点
- 労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの):7問70点
- 関係法令(有害業務に係るもの):10問80点
- 関係法令(有害業務に係るもの以外のもの):7問70点
- 労働整理:10問100点
の合計400点満点となっています。有害業務に係る問題が多く出題されます。
【第二種衛生管理者試験の配点】
第二種の場合、
- 労働衛生(有害業務に係るものを除く):10問100点
- 関係法令(有害業務に係るものを除く):10問100点
- 労働整理:10問100点
の合計300点満点となっています。
(参考)公益財団法人安全衛生技術試験協会「受験資格」
合否について
衛生管理者試験は、「科目ごと(第一種衛生管理者試験の科目のうち範囲が分かれているものについては範囲ごと)の得点が40%以上で、かつ、その合計が60%以上であること。」という条件を満たした場合、合格します。科目ごとに合格基準が設けられている点に注意が必要です。試験範囲を満遍なく網羅している必要があります。
(参考)公益財団法人安全衛生技術試験協会「受験申請から資格の取得まで」
衛生管理者試験の試験範囲
衛生管理者試験は第一種と第二種によって試験範囲が異なります。ここでは第一種と第二種に共通する試験範囲及び、それぞれに特有の試験範囲を解説します。
共通の試験範囲
衛生管理者試験の試験科目は「労働衛生」「関係法令」「労働整理」の3つがあります。
【労働衛生】
労働衛生の共通範囲は次の通りです。
- 衛生管理体制
- 作業環境要素
- 作業環境管理
- 作業管理
- 健康管理
- 健康の保持増進対策
- 労働衛生教育
- 労働衛生管理統計
- 救急処置
職場の衛生環境を安全に保つための知識や、従業員の健康管理に必要な知識が求められます。
【関係法令】
関係法令の共通の範囲は次の通りです。
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- これらにもとづく命令中の関係条項
労働関連法に関する知識が必要となります。
【労働生理】
労働生理の範囲は次の通りです。
- 人体組織及び機能
- 環境条件による人体の機能の変化
- 労働による人体の機能の変化
- 疲労及びその予防
- 職業適性
労働生理については、第一種、第二種ともに試験範囲は変わりません。
第一種特有の試験範囲
第一種では有害業務に係る分野が試験範囲に追加されます。
【労働衛生】
労働衛生では「職業性疾病」が追加されます。第一種に限られているのは有害業務が原因で発症する病気があるためです。
【関係法令】
関係法令では「作業環境測定法及びじん肺法」が追加されます。こちらも有害業務に関係する分野になります。
第二種特有の試験範囲
第二種には有害業務に係る分野が入りません。第二種衛生管理者は、人体に有害が及ぶ業務と関連の少ない業種のみで衛生管理者になれるためです。ただし、有害業務に関する基礎として「有害業務に係る労働衛生概論」が、第一種にはない試験範囲として追加されています。
【まとめ】人材管理をカンタン・シンプルに
今回は、衛生管理者試験について解説しました。人事担当者として知っておくべき労働関連法について網羅的に学べる資格試験なので、人事担当者は受験を考えてみてはいかがでしょうか。
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HR大学 編集部
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