労務管理
休憩とは?労働基準法の休憩時間と人事の労務管理方法を解説
目次
休憩は単なる昼休みではなく、労働基準法で定められている従業員に与えられた時間です。休憩の法律を守ることは会社としての義務と言っていいでしょう。つまり人事の担当者にとって休憩も労務管理の対象となるということです。
今回は、休憩の法律と労務管理の方法について詳しく解説します。
休憩とは
休憩とは「従業員が労働を中断して、自由に使える時間」のことです。休憩時間は従業員の権利として労働から離れることが保障されていなければなりません。
まずは休憩の必要性とその意味を解説します。
休憩の必要性
継続して働くことは疲労の蓄積と集中力の低下を招き、ミスや事故の危険性が高くなります。休憩は労働からの解放により、疲労を回復させ、集中力を高める役割があるため、一定の労働時間を超える場合は休憩が必要になります。
休憩と休息の違い
休憩と似たような言葉で「休息」があります。休息は、仕事や運動を中断し、ゆったりした気分で休んだり、くつろいだりすることです。法律で時間が決められていないため、休息に法的拘束力はありません。
一方休憩は、今行っている仕事や運動を一時的にやめて心身を休めることです。法律で時間が決まっており、法的拘束力があります。
労働基準法における休憩
休憩の定義や時間は労働基準法で定められており、会社は必ず守らなければいけません。休憩の定義は以下の通りです。
- 休憩時間
- 労働時間の途中で与えられる
- 労働から解放させないといけない
- 一斉に与えなくてはならない
それぞれを解説します。
休憩時間
休憩時間は労働時間によって以下ように決まっています。
- 6時間以内:なし
- 6時間超:45分
- 8時間超:1時間
このように、労働時間が6時間以内であれば休憩を与えなくても違法になりません。また、労働時間が8時間を超える場合は1時間の休憩時間が必要です。日本企業のほとんどが休憩1時間である理由は、残業をすれば労働時間が8時間を超えるためです。
ただし、毎日必ず定時に上がれる会社であれば休憩は45分でも問題はありません。
労働時間の途中で与えられる
休憩は「労働の途中」でなければ休憩と認められません。
たとえば、始業前に休憩をしてから仕事を開始したり、仕事が終わってから休憩したりすることは認められませんので注意しましょう。
労働から解放させないといけない
休憩は「労働からの解放」をしていなければいけません。休憩中に仕事をさせることはできないということです。
たとえば、休憩中に上司の命令で来客対応をすることは、休憩時間を自由に使えていないことになり、違法になります。
一斉に与えなくてはならない
休憩は、原則一斉に与えなくてはいけません。ただし、以下の2つについては例外とされています。
- 法律で例外が認められた業種
- 労使協定を結んだ場合
・法律で例外が認められた業種
法律で一斉休憩の例外とされている業種は以下の業種です。
- 運輸交通業
- 商業
- 金融
- 広告業
- 映画
- 演劇
- 通信
- 保健衛生
- 接客娯楽
- 官公署
上記の業種では、一斉に休憩を与えなくても違法とはなりません。
・労使協定を結んだ場合
労使協定において、あらかじめ一斉に休憩を与えない旨や、該当する者の範囲などについて取り決めをしておくと、業種に関係なく一斉に休憩を与えなくても違法とはなりません。
休憩にならない事例
休憩は過去の判例で「休憩と認められなかった事例」があります。
ここからは過去の判例を元にいくつか事例をご紹介します。
電話当番
電話当番は「労働」に該当します。従業員が必ず座席にいることを求められ、かかってきた電話に対応しなければならないことから、労働の解放にならないためです。
ただし、従業員がたまたま電話対応した場合は労働時間になりません。あくまで電話当番として任されている場合に該当します。
仮眠時間
仮眠は労働時間に該当する場合があります。そもそも仮眠とは、通常の睡眠よりも短い眠りとされ、特に夜勤で働いている従業員に設けられています。その仮眠が労働時間に該当するかどうかは「仮眠中に呼び出されたら自分で対応するか否か」決まります。
つまり、仮眠中であっても呼び出されたら自分で対応しなければならない場合は「労働時間」に該当し、仮眠中に呼び出されても別の従業員が対応する場合は「休憩」に該当するということです。
手待ち時間
手待ち時間とは、業務時間中に手が空いたものの、労働から完全に離れずに待機している時間のことをいいます。たとえば、以下のような場合です。
- 飲食店にお客が来ていない時間
- 貨物積み込み係が自動車の到着を待つ時間
- タクシー運転手が利用客を待つ時間
などです。手待ち時間は、従業員が業務をせず、休憩しているように見えますが、仕事が発生した場合はすぐに業務に取り掛からなければならないため、業務から完全に開放されているとはいえません。そのため、手待ち時間は労働時間とみなされています。
休憩の労務管理
人事・総務など、勤怠を管理する部門にとって休憩時間の管理は、給与に直結する重要なものです。
ここからは、休憩の労務管理について解説します。
休憩が取れなかった従業員の対処法
前提として休憩を取らせないことは違法です。しかし現実問題、どうしても休憩が取れなかった日が発生することは確かです。その場合は、休憩時間を労働時間として計算します。
たとえば、9時から18時まで休憩なしで働いた場合は、労働時間が9時間になり1時間の時間外手当が発生することになります。
ただし、休憩を取らないことが常態化している場合は、従業員にとって危険な常態です。早急に改善するように対応しましょう。
タバコ休憩が多い従業員への対処法
タバコ休憩は、指示・命令があるとすぐに対応しなければならない状況であるため「労働時間」として考えられます。
しかし、タバコを吸わない従業員からすると不公平感がでるため、不満がでる可能性があります。そのため、以下の方法を取る企業もあります。
- 非喫煙者に同等の休憩を与える
- 非喫煙者へ「非喫煙手当」を与える
- 喫煙者の人事評価を下げる
・非喫煙者に同等の休憩を与える
非喫煙者に昼休みの休憩とは別に適度な休憩を与える方法です。喫煙者との不公平感をなくし、業務効率も上がる可能性があります。
しかし、昼休みの休憩以外は必要ないという従業員もいるので十分な説明が必要です。
・非喫煙者へ「非喫煙手当」を与える
非喫煙者に対して「非喫煙手当」を支給する方法もあります。タバコ休憩の不公平感をなくすだけではなく、喫煙者への禁煙促進にもなり、健康経営の一部としても有効です。
・喫煙頻度が多い従業員の人事評価を下げる
あまりに喫煙頻度が多い従業員に対しては人事評価を下げる方法もあります。人事評価は賞与や昇給に影響するので、喫煙頻度の抑制につながります。
半休の休憩
原則、半休を使って出勤した場合でも労働時間が6時間を超えた場合は休憩を取らせなければいけません。
たとえば、午前半休を使った従業員が13時から出勤し、20時まで働いた場合は、労働時間が6時間を超えているので、途中で休憩を取らせなければいけません。しかし実務上は昼食を挟まないため、半休を取った従業員が進んで休憩することはほとんどないと言っていいでしょう。そのことから労務管理として以下どちらかの対応が必要です。
- 労働時間が6時間を超える場合は休憩を取るように促す
- 半休を取った従業員が休憩を取っていないことを確認し、賃金を支払う
労務管理上、半休で休憩を取っていないのであれば賃金の支払いが必要です。社内で半休のルールを決めて対応するようにしましょう。
【まとめ】休憩の労働は賃金に直結する
休憩はただの昼休みではなく、労働基準法で定められた時間です。人事担当者は休憩時間が法律で守られているか管理する必要があります。
もし休憩時間に労働をしている場合は、賃金を支払わなければなりません。管理を怠れば、未払い賃金が発生する恐れがあるので注意しましょう。
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HR大学 編集部
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