#人材育成
2021/10/28

コンコルド効果とは?ビジネスシーンでの使い方や、身近な事例を紹介

目次

    コンコルド効果とは、投資を進めると損失が出ると分かっていたとしても、これまで投資した資源を惜しみ、投資継続してしまう心理バイアスで、東京オリンピック2020をきっかけに注目されている言葉です。この記事では言葉の意味や身近な事例について説明します。

    コンコルド効果とは

    コンコルド効果とは

    今、コンコルド効果という言葉に注目が集まっています。コンコルド効果は心理学上の言葉ですが、言葉が生まれた背景から、経済でも広く使われる言葉になっています。

    注目のきっかけは東京オリンピック2020の開催ですが、そもそもコンコルド効果とはどのようなものなのでしょうか。

    ここではコンコルドの効果の意味と語源、日常生活におけるコンコルド効果の事例について説明します。

    コンコルド効果とは

    コンコルド効果とは、このまま投資を進めると損失が出ると一定のタイミングで分かったとしても、これまでに投資した資源を惜しみ、投資を継続してしまう心理的傾向のことです。自身の先入観や、他社の影響を受けることで非合理的な意思決定をしてしまうことを「認知バイアス」といいます。

    コンコルド効果も、この認知バイアスの一種です。

    コンコルド効果の由来

    コンコルド効果の由来は、1970年ごろにフランスとイギリスが共同開発した、超音速旅客機コンコルドです。

    マッハ2を超す速度を記録した同機は、定期国際航空路線に就航した唯一の超音速旅客機でした。ただしコンコルドは、乗客定員数の少なさや燃費の悪さなどの問題から、採算が取れないことが開発途中で判明していました。

    しかし、それまで費やした費用を惜しみ、開発は中止されず、遂には運航をスタートします。その結果、騒音問題、オゾン層の破壊などの環境問題やオイルショックなどの影響もあり、最終的に開発会社は膨大な損失を出して倒産しました。

    このような失敗になぞらえて、損失が出るとわかっていながら投資を続けてしまうことを「コンコルド効果」と呼びます。

    コンコルド錯誤とサンクコスト

    コンコルド効果は、コンコルド錯誤(さくご)、またはコンコルドの誤謬(ごびゅう)とも呼ばれています。

    錯誤とは内心と実際の行動が食い違っており、しかもその食い違いに自分自身が、気が付いていない状態のことを指します。

    「コンコルド効果」と社会心理学や恋愛心理学で使われる言葉ですが、別の分野では「サンクコスト効果」とも呼ばれています。

    サンクコストとは埋没費用のことで、投資した資源(金、時間、労力)など、取り返すことができないコストのことを指します。サンクコストの多寡は、事業開発や投資の継続を判断するための材料になるといわれています。

    コンコルド効果の事例

    コンコルド効果の事例

    では次に、コンコルド効果の身近な例について説明します。コンコルド効果は心理的バイアス、つまり思考の癖と言えますので、私たちの日常のあらゆるシーンに潜んでいます。

    ギャンブル

    コンコルド効果の最たる例がギャンブルです。ギャンブルをする人の心理としては、投資した資源が返ってくる見込みが低いにもかかわらず、「これまで使った分を取り返そう」と躍起になって更なる追加コストを生み出しています。そのことを理解しながらも、「次は当たるかも」と言う射幸心からギャンブルをやめることができず、結果的に大きな損害を出すことになります。こうした状況から抜け出したくても抜け出せない、辞めたくても辞められないというのはコンコルド効果の典型的な例と言えます。

    スマホゲーム

    課金要素のあるゲームにも、同様にコンコルド効果が働きます。昨今のスマホゲームはいわゆる「ガチャ」と呼ばれるような課金要素を持ち、「特別なアイテムを手に入れたい」、「次は出るに違いない」という心理状態をユーザー側に生み出します。また、対戦要素やランキングにより、「一番になりたい」、「他人に勝ちたい」という要素もサンクコストを増大させる原因となります。

    恋愛

    恋愛におけるコンコルド効果は、「この相手と付き合い続けても未来がない」と分かっているにもかかわらず、これまでにかけた時間やお金、自分の年齢を考えて、ずるずると関係を続けてしまい、結果的に前にも進めなくなってしまうことです。また、相手にはその気が無いにも関わらず、振り向いて貰うためにアタックし続けることもコンコルド効果の一部と言えます。

    事業

    ビジネスシーンでは、例えば充分な収益が見込めなくなった事業やプロジェクトにも関わらず、これまでかけたコストを考え、撤退の決断ができないといったことがあります。他にも、「会社が傾いたとしても、長く働いてきた職場だから辞めたくない」、「せっかく苦労して資格を取得したので、資格に関係ない仕事に就くのは勿体ない」などの思考がコンコルド効果といえます。

    また、社内で新規事業開発部門を立ち上げた際に、収益が上がるプランが無いにも関わらず撤退の判断が出来ず、結果として会社に損害を与えてしまう、といったケースもあります。

    コンコルド効果を防ぐためには

    コンコルド効果を防ぐためには

    では、コンコルド効果を防ぐためにはどのような点に注意すればいいのでしょうか。

    コンコルド効果は心理バイアスですので、こうした思考の癖があるのだということを認識するだけでも大きな効果があります。また、次のような具体的な手法を取ることで、コンコルド効果に陥ることを防ぐことが出来ます。

    ゼロベース志向

    ゼロベース志向とは、一度ゼロに立ち返り、白紙の状態から物事を考え直す思考方法のことです。

    プロジェクトが停滞したり、アイディアが枯渇したりした時などに、敢えて最初から考え直すことで、活路を開くことが出来ます。

    「この事業・プロジェクトをどうするのか」ではなく、「この事業・プロジェクトは本当に必要なのか」「どういう成果があるのか」「採算は取れるのか」を検討すると、冷静な判断がしやすくなります。一度コストをかけた事業・プロジェクトでは「コストを回収したい」という想いが生まれやすくなります。

    ゼロベース志向で「今」を一度忘れることで、そういったバイアスから自身を解放し、新たな一歩を踏み出すことが出来ます。

    損切り

    損切りとは、金融用語で値下がりした株式などを売却し、損失を確定するという意味です。

    損切りはロスカットとも言われ、これ以上損失が大きくなる前に見切りをつけ、損失を覚悟して手放すことです。

    コンコルド効果を防ぐためには、あらかじめ投資する金額を決めたり、投資を続ける期限を決めたりするなど、損切りをするポイントを決めておくのが効果的です。もしも損切りをすることになったとしても、ただ損失を後悔するのではなく、その間に得たものに注目し、投資した意味を見出すようにしましょう。

    損益計算

    損益を計算することは、コンコルド効果を防ぐために有効です。撤退や事業縮小の判断に踏み切れない場合は、損益を計算し、数字の面から現状を把握しましょう。コンコルド効果の影響化では、投資したコストを惜しむ気持ちが大きいため、正常な判断ができません。

    事実に基づいた数字だけを使い判断することで、冷静で客観的な視点を取り戻すことが出来ます。

    東京オリンピック2020とコンコルド効果

    東京オリンピック2020とコンコルド効果

    2021年に行われた東京オリンピック2020にも、実はコンコルド効果が働いていたのでは、という声が挙がっています。

    東京オリンピック2020がコンコルド効果と言われる理由

    新型コロナウィルス感染拡大が広がる中、東京オリンピック直前に、開催の是非を問う議論が、メディアに大きく取り上げられました。

    世論では「中止・延期」の世間の声が多い中、政府・東京都はオリンピック開催を宣言します。国民の同意を得られないまま、大会を強行開催した判断の裏には、多額のサンクコストがあったと言われています。

    東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の最新予算では、1兆6440億円が計上されており、開催に伴うインフラの整備などを合わせると投資した予算は更に大きくなります。これら巨額の投資がコンコルド効果を引き起こし、中止の判断が出来なかった可能性があるともいわれています。

    コンコルド効果に陥ってしまったら

    仮に東京オリンピック2020がコンコルド効果だとして、どうすれば防ぐことが出来たのでしょうか。

    前述の通り、ゼロベース志向で考えることで新型コロナウィルス感染拡大の状況から開催が難しいと判断することは可能だったと思いますが、それはあくまで一つの視点から見た結論に過ぎません。国全体を巻き込む大きな事業ですので、正確な損益計算を出すことも不可能でしょう。

    さらに国際的な影響や、政治的な背景などを絡めると正確な判断はかなり難しいと言えます。

    【まとめ】人材管理・タレントマネジメント・育成・評価をカンタン・シンプルに

    コンコルド効果についてまとめました。コンコルド効果は心理的バイアスの一つですので、こうしたバイアスが働くことがあるのだということを認識するだけも、発生防止に役立ちます。

    自身の事業や業務に立ち返り、コンコルド効果が働いていないかという視点で考えるのもおすすめです。

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    HR大学編集部
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