#労務管理
2023/09/06

企業年金とは?企業年金の種類、いつまで・いくらもらえる?簡単解説

目次

    会社が社員のために年金を支給するしくみである企業年金。老後2,000万円問題を背景に、長期資産形成の取り組みとして企業型確定拠出年金などの企業年金が注目されています。

    ここでは、企業年金の概要やしくみや通算制度のほか、受け取り方法などを解説します。

    企業年金とは

    企業年金とは

    企業年金とは、公的年金に上乗せして、企業独自の年金を支給する仕組みのこと。ここでは、企業年金の概要、導入背景を紹介します。

    企業年金とは?

    企業年金とは、公的年金とは別に、企業独自で社員を対象に年金を支給する仕組みであり、いわゆる年金制度の「3階部分」に当たります。

    公的年金は、「1階部分」に基礎年金である国民年金、「2階部分」に被用者年金である厚生年金があり、2階建てとなっています。

    企業年金は、公的年金に上乗せした3階部分の年金となり、「厚生年金」「確定給付企業年金(DB)」「企業型確定拠出年金(DC)」の3つからなります。

    企業年金の歴史は退職金がはじまり!?

    企業年金は、元を辿れば「賃金の後払い」という考えからなります。

    高度成長期に、物価上昇のスピードに合わせて給料の値上げが出来なかった代わりに、退職金として賃金の一部を支払う概念です。

    しかし、退職時に多額の資金が必要なため、退職金を分割して支払う「退職年金」という考えが生まれました。さらに、退職金を分割して支払うことで得た利息相当額を上乗せして支払う「企業年金」が登場したのです。

    企業年金の仕組み

    企業年金の仕組みを理解するには、年金制度全体の理解が不可欠です。ここでは、日本の年金制度体系、3種類の企業年金のほか、企業年金の支給について説明します。

    押さえておきたい、日本の年金制度の体系

    日本の年金制度は、公的年金として、「1階部分」に基礎年金である国民年金、「2階部分」に被用者年金である厚生年金があり、公的年金に上乗せする形で「3階部分」に企業年金が構成されています。

    • 3階部分【企業年金】:確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、確定拠出企業年金(DC)

    • 2階部分【被用者年金】;厚生年金保険

    • 1階部分【基礎年金】:国民年金

    年金制度を詳しく知りたい方は、次の企業年金連合会のサイトをご参考ください。
    (※参考) 企業年金連合会:「企業年金のしくみ/連合会年金

    1階部分【基礎年金】

    基礎年金である国民年金は、日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が対象です。被保険者の種類によって次のように区分されます。

    • 第1号被保険者:自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人など

    • 第2号被保険者:会社員・公務員など厚生年金、共済の加入者

    • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者

    区分の内容を詳しく知りたい方は、次の日本年金機構のサイトをご参考ください。
    (※参考) 日本年金機構:「年金用語集

    2階部分【被用者年金】

    被用者年金である厚生年金は、会社員・公務員および私立学校の教職員で70歳未満の人が対象で、基礎年金の上乗せとして報酬比例年金が支給されます。

    3階部分【企業年金】

    公的年金に上乗せされる形の企業年金は、「確定給付企業年金(DB)」「厚生年金基金」「確定拠出企業年金(DC)」の3種類があります。

    なお、企業年金は、会社で必ず導入するものではなく、一時金である退職金制度のみとしている会社もあります。

    3種類の企業年金概要

    厚生年金基金は現在、運用状況の悪化によって縮小・解散する基金が増えていることから、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金が主流となっています。ここでは、企業年金3種類の概要を説明します。

    確定給付企業年金(DB)

    確定給付企業年金(Defined Benefit)とは、企業と労働者との約束に基づき、年金を受けることができる確定給付型の企業年金制度です。給付額は、運用利回りによらず労働者の勤務期間や給与に基づき計算されるものであり、給付額が確定しています。ただし、基金の運用成績によって掛金が変動し、企業による追加拠出のリスクがあります。

    企業等が企業年金基金を設立する「基金型」と、労使が合意した年金規約を企業等が作成して実施する「規約型」があります。

    厚生年金基金

    企業と労働者との約束に基づき、年金を受けることができる確定給付型の企業年金制度の一つです。企業等が設立する法人の厚生年金基金が、年金資産を管理・運用して年金給付を行います。

    公的年金のうち、老齢厚生年金の一部を代行するとともに、厚生年金基金独自の上乗せを行うものです。

    なお、厚生年金基金は、2014年4月に改正された厚生年金保険法で、厚生年金基金に対して極めて厳しい存続基準が定められたことにより、基金は、解散・代行返上を余儀なくされ、縮小・解散傾向にあります。

    企業型確定拠出年金(DC)

    企業型確定拠出年金(Defined Contribution)とは、企業が拠出した掛金は労働者個人ごとに区分され、掛金と運用収益との合計額が給付額となる企業年金制度です。給付額は、加入者である労働者の運用利回りが反映され、掛金が確定しています。ただし、給付額が確定していないことから、企業による追加拠出のリスクはありません。

    なお、労働者における老後の自助努力を促進する効果のほか、労働者の掛金が課税対象外となるメリットがあります。

    企業年金制度を詳しく知りたい方は、次の企業年金連合会のサイトをご参考ください。
    (※参考) 企業年金連合会:「企業年金のしくみ/連合会年金

    いつまで/いくらもらえる?企業年金

    厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」によると、大学・大学院卒における退職金一時金・企業年金の平均額は次のとおりです。

    【勤続20年以上で45歳以上】

    • 「退職一時金制度のみ」の企業:1678万円

    • 「退職年金制度のみ」の企業:1828万円

    • 「両制度併用」の企業:2357万円

    【勤続35年以上】

    • 「退職一時金制度のみ」の企業:1897万円

    • 「退職年金制度のみ」の企業:1947万円

    • 「両制度併用」の企業:2493万円

    統計結果からは、「退職一時金制度のみ」と「退職年金制度のみ」との比較では、「退職年金制度のみ」の受取額が高く、さらに、「両制度併用」は「退職年金制度のみ」と比較しておよそ500万円程度多い受取額となっています。

    なお、企業年金は企業独自の仕組みや給付となりますので、勤務先企業の退職金規程、退職年金規程を確認するほか、企業年金の運営機関に確認する必要があります。

    運営機関によっては、年金セミナーと題して自身が実際にいくらもらえるかシミュレーションできるサービスを行っていることもありますので、積極的に利用することをお勧めします。

    就労条件総合調査における退職金一時金・企業年金の調査結果を詳しく知りたい方は、次の厚生労働省のサイトにおける平成30年の結果をご参考ください。(※参考) 厚生労働省:「就労条件総合調査

    死亡したときの企業年金

    年金受給者が亡くなられた場合は、その旨をすみやかに企業年金の運営機関に届け出る必要があります。

    届出によって、受給者本人への年金支払いを停止するとともに、残余期間がある場合、遺族給付金を年金、または一時金で遺族に支払うことが一般的です。なお、遺族年金を年金で受け取る場合、終身部分の設定はなく、保証期間までの支給となることが基本です。

    亡くなられた旨の届出が遅れたことにより、年金の過払いとなった金額については、遺族に返還を求められることがありますので、注意が必要です。

    死亡したときの企業年金について詳しく知りたい方は、次の企業年金連合会の年金Q&Aご覧ください。
    (※参考) 企業年金連合会:「年金を受給している方が亡くなられたとき

    知っておきたい企業年金の通算制度

    通算制度

    前職の企業年金の加入期間も通算できる企業年金の通算制度。しかし、制度の内容を知らないと損することもあります。ここでは、企業年金の通算制度、企業年金連合会の通算企業年金について説明します。

    企業年金の通算制度(ポータビリティ制度)

    企業年金通算制度の概要

    企業年金の通算制度(ポータビリティ制度)とは、退職により企業年金を脱退時する際、給付金を脱退一時金で受け取らずに、転職先の企業年金や企業年金連合会へ年金として持ち運ぶことができる制度のこと。

    これにより、転職しても企業年金の加入期間や給付金を通算することができ、将来の年金受給に結びつけることが可能となるのです。

    企業年金通算制度の移転/移換

    企業年金通算制度は、「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「確定拠出年金」「企業年金連合会」の間で年金原資の移転・移管が可能です。

    ただし、確定拠出年金から企業年金連合会への移換はできませんが、この場合は、国民年金基金連合会が実施する「個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo)」へ移換することができます。

    これは、退職後6ヶ月以内に手続きすることが必要です。放置すると、自動的に国民年金基金連合会へ移換されますが、運用が停止するほか手数料も発生します。退職後は、必ず、転職先の確定拠出年金に移換する、あるいは個人型確定拠出年金に移行しましょう。

    企業年金の通算制度を詳しく確認したい方は、次の企業年金連合会のサイトをご参考ください。(※参考) 企業年金連合会:「企業年金の通算制度

    個人型確定拠出年金(iDeCo)について詳しく知りたい方は、次の国民年金基金連合会のサイトをご参考ください。(※参考) 国民年金基金連合会:「iDeCo公式サイト

    連合会の通算企業年金

    企業年金全体の年金通算センターとしての機能を担っている企業年金連合会。

    退職、あるいは基金の解散・制度終了により、脱退一時金相当額などを受け取ることができる企業年金加入者は、年金原資を企業年金連合会に移管することが可能です。これにより、通算年金として終身で受け取ることができます。

    原則、65歳から受け取り可能で、保証期間内に死亡された場合はそれまでの期間に応じた死亡一時金を遺族に支払う仕組みです。

    企業年金連合会の通算年金の特長、留意点を詳しく知りたい方は、次の企業年金連合会のサイトをご参考ください。(※参考) 企業年金連合会:「通算企業年金の特長と注意点

    忘れがち、退職した企業の企業年金

    厚生年金基金や確定給付企業年金のある企業に短期間であっても勤務していた場合、企業年金連合会からの年金を受け取れる可能性があります。

    企業年金連合会の記録は、インターネットや電話で確認することが可能です。

    企業年金連合会の記録について確認したい方は、次の企業年金連合会のサイトをご参考ください。(※参考) 企業年金連合会:「あなたの企業年金、お忘れではありませんか?

    企業年金の受取方法は?

    企業年金の受取方法

    さまざまな独自制度がある企業年金。受け取り方は「年金」と「一時金」の2とおりがありますが、どのように選択すべきでしょうか?

    ここでは、企業年金の受取方法、年金と一時金の選択方法を解説します。

    企業年金の受取方法

    企業年金の受け取り方は、「年金」と「一時金」がありますが、企業によっては受け取り方のルールが定められていることもあります。

    なかには、「年金」と「一時金」を併用して受け取ることが可能な場合や、年金を選択しても一定の条件を満たした場合に一時金に切り替えることか可能なこともあります。必ず、企業年金の運営期間に確認しましょう。

    年金と一時金の選択方法

    企業年金を「年金」で受け取るか、「一時金」で受け取るかにより、所得税の課税方法が変わります。

    定年退職時に一時金として受け取る場合

    税制上、「退職所得」として扱われるため、退職所得控除により税負担が多く軽減されます。勤続年数が長いほど、税負担は軽くなります。

    年金として受け取る場合

    税制上、「雑所得」として扱われるため、年間の年金受取額が大きくなると所得税や社会保険料の負担が増える可能性があります。

    受け取り方の選択方法

    一時金として受け取る場合は、退職所得控除の恩恵を受けることができるので、所得税上では有利に思えますが、端的にそれだけで決めるべきではありません。

    年金には利率が加算されて支給されるほか、公的年金を合わせた所得の課税額が大きなものでない場合、年金が有利となる可能性もあります。

    企業年金の受け取り方を選択するには、公的年金とセットで考え、税額や社会保険料が有利になる組み合わせを考えるべきでしょう。

    また、企業年金の仕組みによっては、特定の受け取り方の場合に適用される制度があることもありますので、企業年金の運営機関に詳しく確認することをお勧めします。

    【まとめ】自身にあった長期資産形成にとの組みましょう。

    本記事では、企業年金の概要やしくみや通算制度のほか、企業年金の有利な受取方法について解説しました。

    企業年金は、老後2,000万円問題を背景に、長期資産形成の取り組みとして企業型確定拠出年金が注目されています。

    企業型確定拠出年金は、本人掛金の課税が対象外となるほか、社会保険料の削減効果もあり、銀行金利を大きく上回る効果が見込める制度といえます。

    勤務先企業が企業型確定拠出年金を導入していなくても、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入が可能ですが、自身にあった長期資産形成にとの組みましょう。

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    HR大学編集部
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