#労務管理
2023/09/20

労務トラブルとは?解決の流れやトラブル防止の注意点を解説

目次

    労務部は、従業員が健康・安全に働けるよう、職場の環境づくりや人員・勤怠などの、労働に関する管理を行う部署です。

    また、労務部では、労働に関するトラブルに対応しなければならない場合があります。
    特に近年、不況による長時間労働やサービス残業、ハラスメントの発生など、労務トラブルは増加傾向にあります。
    また、個人の労働観の多様化も、労務トラブルの増加の要因と言えます。
    さらに、トラブルの原因は、勤怠・休暇に関することから労働災害まで多岐に渡ります。

    では、具体的な労務トラブルの内容にはどのようなものがあるのでしょうか。
    そして、実際に労務トラブルが起きた場合、企業はどのように対処すれば良いのでしょうか。
    この記事では、労務トラブルの内容や対応方法、事前に労務トラブルを防止するための注意点について解説します。

    労務とは

    労務とは、従業員の労働に関する各種の事務業務や管理業務のことを指します。
    労務部が行う具体的な業務内容には、以下のようなものがあります。

    • 勤怠管理

    • 給与計算や年末調整

    • 各種社会保険の手続き

    • 福利厚生の管理・手続き

    • 安全・衛生管理

    労務の仕事はどれも、従業員が健康で安全に働くことができる環境を整えるものです。
    法令に関連する業務を行うことが多いため、各種の法令に関する十分な知識が必要です。
    また、ひとつひとつの業務をミスや漏れがないように行う正確さも重要です。

    労務の業務は一見すると、人事の業務とほぼ同じように見えます。
    労務の仕事は、従業員の勤怠管理や給与計算、安全・衛生管理など、従業員を取り巻く労働環境に関するものです。
    言ってみれば、対組織の業務と言えます。
    それに対し、人事の仕事は採用や研修の実施、人事評価など、直接従業員と関わるものが大半です。
    労務が対組織の業務であるのに対し、人事は対個人の業務であると言えます。

    主な労務トラブルの例

    労務部の仕事は、従業員の労働環境を守るものです。
    そうした労務にまつわるトラブルとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
    以下で5つに分けて説明します。

    労働時間・休暇取得に関するトラブル

    労務トラブルの一つに、従業員の労働時間や、休暇の取得に関するものがあります。
    法律において労働時間は「1日8時間、週40時間」、休⽇は「毎週少なくとも1回」とされています。
    この基準を超える場合は36協定の締結・届出が必要となっています。
    36協定を結んだ場合でも、時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」と定められています。

    具体的なトラブルの原因としては、上記にある法定労働時間を超えて仕事をしている、取得できるはずの有給休暇を取らせてもらえない、などの内容があります。
    近年では、「働き方改革」の考え方が浸透してきているため、従業員側も労働時間や休暇に関する不満に敏感になっています。

    時には、取引先に対する納期があるなどの理由で、やむなく長時間仕事をしなければいけない場合もあるでしょう。
    しかし、長時間労働や休暇に関する不満は、従業員の働きがいや健康に影響するものです。
    心身を十分に休めないまま働き続ければ、生産性や集中力の低下などに繋がる可能性があります。
    また、従業員が自身の判断で所定の残業代を請求しない、いわゆる「サービス残業」をしている場合もあります。
    この場合、サービス残業をするという判断は従業員自身の判断です。
    しかし、一方で、企業が規定の残業代を支払っていないことに変わりはありません。
    自主的なサービス残業も含めて、従業員が規定を超えた長時間労働をしていないかどうかを労務部で十分に管理することが求められます。

    適切な休暇の取得も、心身のリフレッシュのために重要です。
    休息の他、育児や介護といった理由での休暇取得が必要な場合もあるでしょう。
    有給休暇の取得は、従業員が当然に持つ権利です。
    従業員が休暇の取得を希望している場合は、上司・労務部共にできる限り希望に沿えるよう、丁寧に対応しましょう。

    各種ハラスメントに関するトラブル

    セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどの各種ハラスメントに関する労務トラブルもあります。
    ハラスメントは、従業員の精神面のコンディションに大きく影響します。
    ハラスメントに関する悩みを従業員が抱え込んでしまうと、心身に不調をきたす可能性があります。
    モチベーションが低下し、業務への集中力や生産性が低下する可能性があります。
    この状態で放置、看過すると、疾病の発症や退職などにも繋がりかねません。

    また、近年では、モラル・ハラスメントやマタニティー・ハラスメントなど、ハラスメントの種類が広がっています。
    ハラスメントに対する意識が高まっていることから、ハラスメントを周囲に気づかれないように隠れて行う人もいるでしょう。
    その結果、ハラスメントを受けた従業員が誰にも気づかれず、相談もできずに自分だけで悩みを抱え込むことになりがちです。

    従業員が万が一ハラスメントの被害に遭った際には、労務部が相談窓口となることが大切です。
    社内に相談窓口がなければ、従業員は弁護士や労働基準監督署などの外部に相談するしかなくなり、より大きな問題に発展してしまいます。
    まずは、ハラスメントに悩んだ際に労務が相談窓口として受け入れられることを、従業員へ広く周知することが重要です。
    そのうえでハラスメントを起こさない環境の整備を行っていく必要があります。

    給与などの賃金に関するトラブル

    従業員の賃金に関するトラブルも重大な問題です。
    具体的な賃金に関するトラブルの例には、経営不振による給与未払いや残業代の不払い、業績悪化による賃金カットなどがあります。
    従業員は日々、会社で業務を遂行し、その報酬として給与を得て生活を送っています。
    所定の給与が支払われないことは、従業員の生活が成り立たなくなることに繋がります。

    給与の未払いが発生した場合、本来の給与の他に遅延利息や賠償金の支払いが必要になることがあります。
    また、残業代の不払いも法令違反とみなされるため、注意が必要です。
    従業員から訴訟を起こされれば、企業イメージの低下にも繋がるため、残業代を含む賃金の支払いは日頃から十分に管理しましょう。

    労働災害に関するトラブル

    従業員が自社での業務に起因して怪我をしたり疾患を患ったりした場合に、労働災害として認められることがあります。
    具体的な例には、通勤中や労働中の事故による身体の負傷や、長時間労働やハラスメントによる精神疾患などがあります。
    労働災害労災と認められた場合、従業員本人への補償金の支払い義務が発生します。
    その他にも労働力としての貴重な人材を失う、企業イメージが低下するなどのリスクを生んでしまいます。

    万が一、労働災害が発生してしまった場合は、十分に話し合いの場を設け、迅速に所定の手続きを行うことが大切です。
    不誠実な対応をしてしまうと、本来自社が負う必要のない責任を負担することになったり、争いが長引いてしまったりする可能性があります。

    解雇に関するトラブル

    対応に特に苦慮するものに、解雇に関するトラブルがあります。
    本来、従業員は労働基準法によって、簡単に解雇されることがないようになっています。
    しかし、企業では従業員の横領やハラスメント、取引先とのトラブルや無断遅刻・欠勤などの理由により、やむなく従業員を解雇することがあります。
    そして場合によっては、解雇された従業員が解雇の理由に納得できないケースが起こり得ます。

    現代では、インターネットの普及によって、従業員側が簡単に解雇に関する情報を集めることができます。
    そのため、以前と比べて、自身の解雇が不当なものであったとの訴えを起こしやすくなっています。
    訴訟などに発展すれば、企業イメージの低下に繋がることが考えられます。
    また、仮に解雇が無効と判断された場合、企業は従業員が得られたと考えられる給与分の支払いをしなければなりません。
    あらゆるリスクを避けるためにも、たとえ従業員側に問題があったとしても、解雇については慎重に判断することが大切です。

    労務トラブルへの対応の流れ

    もしも、実際に労務トラブルが発生した場合、企業はどのように対応すれば良いのでしょうか。
    以下では、労務トラブルへの対応の流れについて解説します。

    関係者からトラブルの詳細を聞く

    労務トラブルが発生した場合、まずはトラブルの当事者から丁寧に話を聞きましょう。
    まずは、具体的にどのようなトラブルが起こっているのかを確認します。
    次に、なぜそのトラブルが起こったのか、原因について聞きましょう。
    そして、原因発生から現在までの経緯を時系列的に確認します。
    また、並行して当該従業員の普段の働き方について、勤怠の記録などを参照し、情報を揃えます。

    当事者からの状況確認は、トラブルが起こってから早い段階で丁寧に行うことが大切です。
    最初の対応を怠ると、当事者の不信感が募り、トラブルをさらに悪化させることになりかねません。
    当事者から確認した状況については、全てを詳細まで記録に残しましょう。

    外部の第三者・専門家に意見を聞く

    状況を確認した後は、企業としてどの範囲まで責任を負うべきなのかを確認しておくことが大切です。
    なぜなら、責任の範囲を把握することで、企業として解決の着地点を見定めることに繋がるからです。
    責任の範囲については、弁護士・社会保険労務士などの法律の専門家に相談します。
    顧問契約している弁護士がいる場合、早めに確認すると良いでしょう。
    相談した結果を踏まえて話し合いを重ね、できる限り当事者同士で解決できることが理想的です。

    しかし時には、企業側と従業員などの当事者間で、言い分にずれが生じる場合もあるでしょう。
    そのような場合は、外部の第三者に間に入ってもらうことになります。
    外部の第三者の例には、労働基準監督署や労働委員会などがあります。
    第三者に入ってもらっても解決が難しい場合、訴訟や調停などに進む場合もあります。

    労務トラブルを防止するための注意点

    労務トラブルは、対応に多くの時間や労力を必要とします。
    また、自社の労務トラブルについてマスコミなどで報じられれば、企業としての信用を失うだけでなく、従業員のモチベーションの低下、今後の採用において優秀な人材の応募が減ることなどの大きなリスクが予想されます。
    そのため、労務トラブルは可能な限り、防止に努めることが大切です。
    それでは、労務トラブルを防止するためにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
    以下で4つに分けて説明します。

    雇用契約書や就業規則を整備する

    労務トラブルには、従業員が雇用契約を詳細まで把握していなかったり、就業規則を理解していなかったりするために発生するものがあります。
    契約や規則に関する認知のずれを防止するためにも、雇用契約書や就業規則を十分に整備することが大切です。
    また、企業が従業員に対して何らかの処分を下さなければならない場合にも、その根拠となるのは雇用契約書や就業規則です。
    そのため、就業規則などは定期的に見直しを行い、何らかの処分や争いの際に自社にとって不利になる要素がないかを確認しておくことが重要です。

    法律や就業規則を従業員に周知する

    整備した雇用契約や就業規則は、ただ作成するだけではその効力を発揮しません。
    内容について従業員に周知し、理解してもらうことが大切です。
    雇用契約や就業規則を十分に把握・理解してもらうことが、労務トラブルの防止に大きく影響します。

    周知については、自社に合う方法で行いましょう。
    具体的な方法として、法律や就業規則などについて学習するための研修の実施や書面での通知、掲示板への貼り出しなどがあります。
    また、一度周知するのみではなく、従業員がいつでもその内容を確認できる状態にしておくことが大切です。
    具体的には、就業規則をホームページ上で従業員が自由にアクセスできる電子データにしておく方法などがあります。

    労働災害の防止を徹底する

    企業には、従業員が安全に業務を遂行できる環境を整備する安全配慮義務があります。
    安全配慮義務を遂行することが、労災の防止に繋がります。
    まず、従業員の心身の健康維持のために、長時間労働や残業、休日出勤の防止などに取り組む必要があります。
    また、怪我の防止も重要です。
    作業に使用する道具を慎重に選定する、作業の流れを記載したガイドラインを充実させるなどして、怪我に繋がるリスクを管理することが大切です。

    証拠の改ざんや隠蔽をしない

    万が一、労務トラブルが発生した場合、その後の対応が企業のイメージに直結します。
    そのため、当事者に対しては誠実・丁寧に対応することが大切です。
    企業としては、損失をできる限り小さくしたい、企業の信用を落としたくないという気持ちがあるでしょう。
    だからといって労務トラブルに関する証拠を改ざんしたり、隠蔽したりすることは許されません。
    具体的な証拠の改ざん・隠蔽の例としては、労働時間を少なく見せるためにタイムカードを実際の労働時間より早めに切らせるなどの行為があります。

    もし改ざんや隠蔽が発覚した場合、企業として書類送検などの厳しい処分を受けることになります。
    普段から正確な労務管理を行い、コンプライアンスを浸透させるための取り組みを行うことが大切です。

    労務管理システムの活用が有効

    労務管理には、勤怠管理や給与計算、安全衛生管理など幅広い業務があります。
    特に従業員数が多い企業では、従業員ひとりひとりに関するデータを集約・管理するために、多くの労力が必要になります。

    そこで、労務管理システムを活用すると、業務の効率化が可能になります。
    労務管理システムは、勤務時間や勤怠状況、社会保険加入に関する管理をサポートするツールです。
    毎年必要になる年末調整や新入社員の入社に関する手続きも、専用のシステムで簡潔に管理できるため、業務を効率的に行えます。
    労務管理システムによって業務にかかる工数を削減できれば、余った時間を他の業務に割くことができます。
    業務に余裕が生まれることにより、従業員ひとりひとりへの対応が丁寧にできれば、労務トラブルの防止に繋がることが期待できるでしょう。

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    ※ITreviewカテゴリーレポート「労務管理部門」(2022Fall)

    まとめ

    労務は、勤怠管理や給与計算、労働環境の安全・衛生管理など、対応する業務の幅が大変広いものです。
    そのため、時にあらゆる原因で労務トラブルが起こる場合があります。
    賃金や労働災害などに関する労務トラブルは、発生しないことが一番です。
    しかし万が一、労務トラブルが起こってしまった場合には、企業として当事者へ誠実・丁寧な対応をすることが大切です。
    また、普段から雇用契約や就業規則の整備を心がけ、整備した内容は従業員へ十分に周知しましょう。
    企業側の普段の取り組みと、従業員側の理解とが労務トラブルの防止に繋がります。

    HR大学編集部
    HR大学 編集部

    HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。