#人材育成
2024/04/15

行動指針とは?企業理念との違いや作り方と例文や浸透方法を解説

目次

    行動指針とは、会社のあるべき姿を体現するために、会社が定める具体的な行動の規範を意味します。

    行動指針を定めることは、「会社の一体感」と「従業員のモチベーションの向上」を生み、さらに「対外的なブランディング」にもなります。

    しかし実際に行動指針の作成を試みてみると、どのような言葉にするべきなのか、社内になかなか浸透しないなどの課題が生まれてしまう場合があります。

    この記事では、行動指針とはどのようなものなのか、企業理念やクレドとの違いや、行動指針の作り方と企業事例、行動指針の社内への浸透方法について解説します。

    行動指針を従業員に浸透させる人事評価

    行動指針とは

    行動指針とは、個人や組織が行動を起こす際に参考にする基準や原則のことです。

    ビジネスにおける行動指針とは、会社のあるべき姿を体現するために、会社が定める具体的な行動の規範を意味します。

    会社のあるべき姿は「企業理念」の形で対外的に示されますが、企業理念を体現する具体的な行動として「行動指針」がまとめられています。

    行動指針が求められる背景

    技術変化のスピードが早くなり、同業他社との競争が加熱する現代において、会社に所属する従業員全員が同じ方向を向いてビジネスを成長させることは決して簡単なことではありません。

    そのため行動指針を改めて作成し、従業員のモチベーションを高め、会社の成長を促す動きが増えています。

    会社のあるべき姿を体現する行動指針が明確に定められていると、経営者も従業員も仕事の根幹に据えるべき価値観を見失わずに済みます。

    自社ならではの行動指針を作成し、ビジネスを加速させる体制の基礎としていきましょう。

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    行動指針の類語について

    行動指針には、さまざまな類語が存在しますが「企業理念を体現する具体的な行動の規範を定めたもの」と理解するのが適切です。

    行動指針の類語について確認してみましょう。

    行動指針と企業理念(経営理念)

    企業理念(経営)とは、会社および経営のあるべき姿を定めたものです。

    行動指針と行動理念(行動規範)

    行動理念(行動規範)とは、企業理念を体現する具体的な行動の規範を定めたもので、行動指針と同じ意味で使われることが多い言葉です。

    行動指針とクレド

    クレドとは、ラテン語で「信条」を意味し、行動指針として使われる場合と企業理念として使われる場合がある言葉です。

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    行動指針を定めることで得られるメリット

    行動指針を定めることで得られる3つのメリットについて確認してみましょう。

    行動指針を定めることで得られるメリット

    1. 会社に一体感が生まれる
    2. 従業員のモチベーションが高まる
    3. 対外的なブランディングになる

    会社に一体感が生まれる

    行動指針を定める1つ目のメリットは、「会社に一体感が生まれる」ということです。

    行動指針は会社のあるべき姿を普段の行動に落とし込んだものであり、経営者および従業員の行動の規範となります。

    行動指針が会社に浸透することで、経営に携わらない従業員であっても常に会社のあるべき姿を意識した行動ができるようになり、会社に一体感が生まれます。

    また、上司と部下といった組織における個々の関係においても、日々の業務および指示の根底に行動指針が一貫して存在することで、立場の違いを超えて従業員が目指すべき方向が定まることで一体感が生まれます。

    従業員のモチベーションが高まる

    行動指針を定める2つ目のメリットは、「従業員のモチベーションアップ」です。

    行動指針は従業員に対して「日々の業務について、どの方向を向いて、どのように行動すべきか」を明確にし、従業員が業務について、そもそものゴールを見失う事態を防ぎます。

    つまり、自らの向かうべきゴールが不明確なまま上司の指示に従って目の前の業務をこなす、といった状況を回避することができます。

    また、行動指針が定められることで上司から部下に対する指示にも一貫性が生まれ、一貫性のない指示に振り回されて従業員がモチベーションを低下させるという状態も回避できるようになります。

    対外的なブランディングになる

    行動指針を定める3つ目のメリットは、「対外的なブランディングになる」ということです。

    行動指針は社内に向けて明示されますが、並行して社外へのアピールにも使えます。

    つまり、会社がどのような価値観を根底に置いているのかを、取引先や顧客に伝えられるのです。

    競争の激しい現代において、行動指針は自社のアイデンティティの1つとして、見込み顧客や取引先が商品やサービスを選ぶ際の手がかりになります。

    行動指針の例文

    会社のあるべき姿を落とし込んだ行動指針は会社の経営を効率化します。企業が実際にどのような行動指針を定めているか2つの企業の行動指針の例文について確認してみましょう。

    行動指針の例文:サッポロビール株式会社

    シンプルでありながら示唆に富んだ行動指針の事例として、サッポロビール株式会社の行動指針と行動指針のゴールである企業理念をあわせて確認してみましょう。

    企業理念

    新しい楽しさ・豊かさをお客様に発見していただけるモノ造りを

    行動指針

    カイタクしよう

    カイタクしよう、心を動かすアイデアを

    カイタクしよう、お酒の次の未来を

    カイタクしよう、深く愛されるブランドを

    カイタクしよう、社会との共鳴を

    (参考)サッポロビール「企業理念体系・ビジョン

    従業員の目線で行動指針を見ると、「社会におけるお酒の新しいあり方を模索しながら、お客様の心を動かして、お客様から深く愛されるブランドになるような行動」が求められていると理解できるでしょう。

    また「カイタク」というキーワードを繰り返し使用して、従業員に浸透しやすい工夫もされています。

    シンプルな行動指針を定める際の参考になるでしょう。

    行動指針の例文:楽天グループ株式会社

    会社の個性が強く表れている例文として、楽天グループ株式会社の行動指針と行動指針のゴールである企業理念をあわせて確認してみましょう。

    楽天グループでは、行動指針を「楽天主義」という単語で表し、そのうえで「ブランドコンセプト」と「成功のコンセプト」として行動指針の詳細を定めています。

    企業理念

    イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする

    行動指針「ブランドコンセプト」

    大義名分 -Empowerment-

    品性高潔 -気高く誇りを持つ-

    用意周到 -プロフェッショナル-

    信念不抜 -GET THINGS DONE-

    一致団結 -チームとして成功を掴む-

    行動指針「成功のコンセプト」

    常に改善、常に前進

    Professionalismの徹底

    仮説→実行→検証→仕組化

    顧客満足の最大化

    スピード!!スピード!!スピード!!

    (参考)楽天グループ「楽天主義

    楽天グループの行動指針はキャッチーでありながら、日々の仕事のヒントが盛り込まれています。

    特に「成功のコンセプト」に定められる5つの内容からは、楽天グループが「スピーディーな挑戦と改善を徹底している」ことがうかがえます。

    行動指針を「ブランドコンセプト」と「成功のコンセプト」の2つに分けて、「ブランドのあり方」と「従業員が成功するために求められる働き方」を示す形は参考になるでしょう。

    行動指針の作り方

    行動指針は社内および社外に対して、会社のあるべき姿を伝える機能を有するため、第三者に伝わりにくい内容を作成することは避けなければなりません。

    マーケットにおいて自社を際立たせる行動指針の作り方と、気をつけるべき3つのポイントについて確認してみましょう。

    行動指針の作り方

    1. 会社のあるべき姿を明確にする
    2. 会社のあるべき姿を体現するために必要な行動を定める
    3. キャッチーな言葉に置き換える

    会社のあるべき姿を明確にする

    行動指針を設定する目的は、会社のあるべき姿を体現するためにあるため、行動指針を作成する際は、まずは会社のあるべき姿を明確にする必要があります。

    会社のあるべき姿は、社会に対して会社が提供したい価値を端的にイメージするところから考えましょう。

    あるべき姿はあくまでゴールなのでシンプルなものを作成し、あるべき姿を分解しながら行動指針を定めていきましょう。

    会社のあるべき姿を体現するために必要な行動を定める

    会社のあるべき姿を明確にした後は、あるべき姿を体現するための行動指針の要素を定めていきます。

    行動指針の要素

    • 顧客に何を提供したいのか

    • 顧客にどのような状態になってほしいのか

    • 自社はどのような価値観を持っているのか

    • 従業員にどのような姿になってほしいのか

    • 避けたい事項(搾取・家庭の犠牲など)

    行動指針はフォーマットがなく自由に作成できるため、行動指針の要素を手がかりにしつつ、自社に必要な要素を盛り込んでいくようにしましょう。

    キャッチーな言葉に置き換える

    行動指針の要素が出揃ったら、最後に、内容をキャッチーな言葉に置き換えていきます。

    どのような言葉を選択するかは、自社のアイデンティティを維持しながら、社内および社外に伝わりやすい言葉を選ぶということを基準にしましょう。

    用いる言葉が複雑な場合、人によって解釈が分かれてしまう恐れがあります。

    会社として伝えたい内容に軸を定め、体言止め、箇条書き、四文字熟語などを用いながら行動指針をわかりやすくしていきましょう。

    行動指針を反映させた「人事評価」の設計方法

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    行動指針を浸透させる方法

    作成した行動指針を社内に浸透させる3つのコツについて確認してみましょう。

    どんなに良い行動指針を作っても、社内の従業員に浸透しなければ意味がありません。行動指針が日々のビジネスの中に根付くように積極的に浸透させていきましょう。

    行動指針を浸透させる方法

    1. 従業員が行動指針に触れる機会を増やす
    2. 従業員の評価と行動指針を紐付ける
    3. 従業員同士で行動指針についてディスカッションする場を設ける

    従業員が行動指針に触れる機会を増やす

    行動指針を浸透させる1つ目のポイントは、「従業員が行動指針に触れる機会を増やす」ことです。

    具体的には、「オフィスの見やすい位置に行動指針を記載する」「会社のホームページに行動指針を記載する」「社員証に行動指針を記載する」「定期的なブラッシュアップと周知を実施する」ようにします。

    まずは従業員が行動指針を物理的に目にする機会を増やし、そのうえで定期的なブラッシュアップと周知により行動指針に意識を向ける機会を作るということを繰り返すことで、行動指針が会社に浸透していきます。

    従業員の評価と行動指針を紐付ける

    行動指針を浸透させる2つ目のポイントは、「従業員の評価と行動指針を紐付ける」ことです。

    従業員の評価が行動指針に基づいて実施されることを明確にすることで、従業員は自ずと行動指針に基づいて日々の業務を行うようになり、結果として会社に行動指針が浸透していきます。

    待遇に関する評価と紐付けるのはもちろんのこと、上司から部下にフィードバックをする際も行動指針に基づいたフィードバックが実施されるような体制を作っていきましょう。

    月間優秀者などの受賞制度についても行動指針に基づいた選定がなされると、平等かつ説得性の高い評価ができます。

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    「行動指針」と「人事評価」の紐づけに

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    評価の納得度にを向上させる具体的な方法

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    従業員同士で行動指針についてディスカッションする場を設ける

    行動指針を浸透させる3つ目のポイントは、「従業員同士で行動指針についてディスカッションする場を設ける」ことです。

    行動指針そのものをブラッシュアップするディスカッションでなくとも、日々の業務が行動指針に沿って行われているかについて従業員自身に振り返ってもらうようなものでも良いでしょう。

    従業員が積極的に行動指針について考えを巡らせる機会を設けることが重要です。

    また、ディスカッションの際はトップダウンで従業員の言動を封じるような場は相応しくないため、従業員が自由に行動指針についてディスカッションできる雰囲気を作る必要があります。

    行動指針は会社の一体感とモチベーション向上に欠かせないもの

    行動指針とは、会社のあるべき姿を体現するために、会社が定める具体的な行動の規範を意味します。

    行動指針を定めることは、「会社の一体感」と「従業員のモチベーションの向上」を生み、さらに「対外的なブランディング」にもなります。

    競争の激しい現代のマーケットを生き抜くためにも、行動指針を作り会社に明確な芯を生むことが求められています。

    また、行動指針はあくまで人に伝わってはじめて価値を持つため、わかりやすく、キャッチーな言葉を用い、従業員が行動指針に触れる機会を増やすことで、会社に浸透させていきましょう。

    上司から部下に対する指示、会社から従業員に対する評価も行動指針に基づいたものになると、従業員は自ずと行動指針を念頭に置いて行動するようになり、会社として大きく成長できるはずです。

    「HRBrain人事評価」では人事評価プロセスの見える化によって「行動指針の浸透」や「評価の納得度の向上」を促進します。

    さらに、人事評価コメントやフィードバック面談の履歴などのデータをクラウド上で管理することで、評価プロセスのブラックボックス化や、評価のバラつきなどを防ぐことが可能になります。

    また、目標設定や目標に対しての進捗管理、従業員のスキルデータや育成記録なども、一元管理できるため、人事評価プロセスの透明化と合わせて、従業員の成長記録の蓄積も可能になります。

    HRBrain人事評価の特徴

    • 制度や目的に合わせたテンプレートが豊富

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    • 企業ごとのプロセスに合わせて承認フローや項目を自由に設定

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    HR大学編集部
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