人材育成
2022/11/02
クレドとは何か。導入メリットから作成手順、浸透方法までを紹介
目次
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クレドは、企業をより成長させられる手段として注目を集めています。特に、従業員の成長を促す目的で、導入する企業が増えてきています。クレドの概要や導入するメリットについて知り、作成手順や浸透方法への理解を深めましょう。
クレドの基礎知識
クレドとはどういったものなのでしょうか。概要や導入事例などを見ていきましょう。
クレドとは
『クレド』とは、ラテン語で『志・約束・信条』を意味する言葉で、『企業全体の従業員が心掛けるべき信条や行動指針』のことをいいます。
企業経営サイドにとって、クレドは、従業員の個人的な目標とは異なり、企業全体に共有されるものです。また、言葉として掲げられるだけでなく、従業員それぞれの具体的な行動にまで反映されるべきものとされます。
企業が掲げるスローガンのようなものであることから、クレドは『企業理念』とよく比較されます。
企業理念は、企業が存在する意義や価値・目的などを指し、多くは抽象的な表現で示され、創業当時から引き継がれるものです。一方で、クレドは企業理念をより具体化し、簡潔な文章で示されます。また、企業の成長や時代の変化に合わせて、内容が変化する場合があります。
クレドの必要性
2000年代に入り、企業の不祥事が相次いで発覚しました。
海外の大手企業が不祥事により経営破錠し、日本でも金融不祥事や食品偽造などの問題がメディアで取り上げられ話題となりました。
不祥事の多発を受け、日本では2006年に、企業の内部統制を強化する『金融商品取引法』や、法令違反を告発した労働者保護を目的とする『公益通報者保護法』が施行され、企業のモラル意識が求められるようになりました。
企業が従業員の意識や行動を改革し、自主性をより高めていくために必要な手段として、クレドを取り入れた経営の重要性が見直されています。
クレドの導入事例
日本の大手IT企業『楽天』は、『成功の5つのコンセプト』と題し、五つの項目で示されたクレドを掲げています。
楽天のクレドは、別に定められた企業理念を達成するために、組織のゴールや従業員がとるべき行動を明確に表したものです。
クレドと言えば世界的に有名なのが世界各地に店舗を展開する『リッツカールトンホテル』のクレド。顧客満足を最優先に考えられて作られており、多くの競合他社が存在する中でも、自社が持つ価値を明確に示す意味が込められています。
医薬関連製品を主に取り扱う『ジョンソン・エンド・ジョンソン』のクレドは、多くの企業が手本として参考にするほど、質の高い内容として知られているクレドです。組織が責任を負うべきことについて示され、従業員がクレドに関し定期的に議論を行い、モチベーションの向上に役立つよう作られています。
類似用語も理解しておこう
ビジョンやミッション、バリューなど、クレドと類似した用語もいくつかあります。意味や違いを確認しておきましょう。
ビジョン
『ビジョン』は、企業の目標や方向性を表現したものです。ビジョンの語源は『見ること』であり、ビジョンを意志ある将来の見通しと表すこともできます。
例えば、『業界で1番になる』というビジョンは、業界内で目指すポジションを表しています。『社員満足度100%』のような組織のあり方や、『働きやすい社会を作る』のような社会貢献的なものも立派なビジョンです。
ビジョンは基本的に単独では存在せず、ミッションや経営理念を前提として作られます。また、ビジョンは、全ての従業員が共通に認識すべきものです。
ミッション
『ミッション』の語源は『任務・使命』であり、ビジネス用語としてのミッションは、企業が果たすべき使命や存在意義を指します。
企業が社会において何のために存在するのか、誰に対しどのような価値を与える存在なのかを、文章として具体的に示したものといえるでしょう。
一般的に、『顧客に高品質な製品を提供する』『先進的な技術やアイデアにより世の中の問題解決に貢献する』というような内容のミッションが掲げられます。
ミッションは、企業活動の原動力になり得るものです。例えば、マーケティングにおける『顧客提供価値』の概念は、突き詰めるとミッションに行き着きます。
バリュー
『バリュー』は『価値』を語源とし、企業の価値観や信条、従業員の考え方や働き方の指標になるもの、またはこれらの土台となるものを指す言葉です。
バリューと関連したものとして、『コアバリュー』があります。コアバリューは企業の本軸となり得る価値観を示し、コアバリュー経営では以下のようなことを目指します。
・組織を構成する全てのメンバーが持つべき共通の価値観を設定する
・共通の価値観を持つことで、組織全体の結束力を高める
無意識に行われるような判断などを含め、企業が重視する価値観にフォーカスしたものが『バリュー』であり、その中でも軸となる価値観が『コアバリュー』と呼ばれます。
クレド作成のメリット
より良いクレドを作成するためには、クレドによりもたらされるさまざまなメリットを理解することが重要です。
理念やゴールの明確化
一般的に、企業はそれぞれ独自の『経営理念』を掲げていますが、経営理念が示すものは抽象的であることがほとんどです。
また、企業が目指す『ゴール』も経営理念と同様に、その多くが目的地だけにフォーカスし示されています。
クレドは、これら経営理念やゴールにおいて、目的を達成するための行動を明確化したものであることが特徴です。
経営理念やゴールに対し、クレドは企業やチームが進むべき方向性を具体化し、従業員の行動規範などまで掘り下げて示したものになります。
また、簡潔な文章で表現されており、わかりやすいことも、クレドの持つメリットといえるでしょう。
他社との差別化
クレドは、経営戦略を社内外において明らかにする側面があるため、競合他社との差別化を図ることができる手段にもなります。
例えば、高品質な製品の提供を目指す内容をクレドに盛り込めば、他社と比べ高級なイメージを明確に示せるでしょう。
一方で、リーズナブルな製品をメインに展開する場合は、安さへの挑戦をクレドで示せば、業界内で自社が目指す道を明らかにできます。
同一の分野においても価値観の多様化が進む中で、クレドに自社のバリューを明確に反映することは、メンバーの意識改革にも関わる大きなメリットです。
人材教育
クレドを組織内に周知徹底させることは、主体的に行動できる人材の育成にも役立ちます。
近年におけるIT技術やインフラの発達により、ビジネスシーンでは以前にも増して『速さ』が求められるようになりました。
これまでのトップダウン形式では迅速な対応ができなくなっているため、現場の従業員にも自発的に考え行動する姿勢が求められています。
とは言え、組織である以上、統一された判断基準も必要です。そこで、クレドを導入することにより、意思決定における行動の基準や価値観を、企業と個人が共有できるようになります。
従業員それぞれが、極端な個人プレーに走ったり判断や行動に迷ったりすることを防ぎ、企業にとって有益な人材として働ける環境を作れることが、クレドの持つメリットの一つです。
モチベーションの向上
クレドを作成することで、従業員のモチベーションを上げる効果も期待できます。
クレドは企業側が一方的に作成するものではなく、個々の従業員も納得して作られる内容となっています。そのため、従業員が自らの思考や判断に基づき行動しやすくなり、結果として従業員の主体性を高める有効な動機付けとなるのです。
また、クレドは、従業員も参加する定期的なミーティングなどで議論の対象となり、必要であれば文言の追加や削除も行われるべきものだとされています。
従業員が自社のクレドと向き合い議論を交わすことで、自社をより良くするためにはどうすればよいか考える重要な機会を得ることにもなるため、クレドの存在自体が必然的に従業員のモチベーションを上げることになるともいえます。
クレドの作成手順
クレドの内容は企業によってさまざまですが、作り方はある程度一般化されています。クレドを作成する基本的な手順を理解しましょう。
方法やスケジュールの設定
最初に、クレドを作成する目的や理由を明確にし、具体的にどのような方法で作るのかを決めておきましょう。
「組織にとって良さそうなものだから」などといった曖昧な理由で着手してしまうと、中身が伴わなかったり、完成に至らなかったりする可能性があります。
また、クレドの作成は、組織の上層部だけでなく従業員も参加して行われることが必要とされるため、効率の良いスケジュールの作成も重要です。
誰が、いつまでに、どのようなことをすべきかなどをできるだけ細かく設定し、要点を押さえて無駄のないプロセスを進めていきましょう。
経営陣や従業員へのアンケート
クレドは企業理念を前提に作成されるため、経営陣が考える判断基準や価値観、将来のビジョンなどは、クレドの作成において必要不可欠なものとなります。
経営陣がクレドの作成ミーティングへ参加することが困難な場合は、事前にアンケートを実施した上で、経営陣の考えをまとめておくことが重要です。
従業員へのアンケートも、事前に済ませておきましょう。全社員を対象とするのが理想ですが、人数が多い場合は部署ごとに担当者を設置し、意見をまとめることが必要です。
社内アンケートを実施する際は、できるだけ熱意のこもった声が集まるよう、自社におけるクレド導入の重要性についてあらかじめアナウンスしておくとよいでしょう。
クレドにとって重要なのは、経営理念ではなく現場の意見です。従業員のアンケート結果がうまく反映されているものこそが、質の高いクレドといえます。
文章化と配布
経営陣や従業員へのアンケートが集まったら、内容をまとめて文章化します。読み手として意識すべき対象は、経営陣や顧客ではなく、従業員です。
文章にする際は、簡潔で分かりやすく、企業の独自性が現れている具体的な内容にしましょう。
内容がまとまり明文化できた後は、いつでも取り出して目を通せるように、名刺サイズ程のカードを作成し、全従業員に配布するとよいでしょう。
日々の業務内で判断に迷った際、すぐに読めて頼りになる存在であってこそ、クレド本来の価値が発揮されている状態だといえます。
額に入れて飾るような扱いではなく、組織内全てのメンバーが携帯できる形にして配布することで、企業にメリットをもたらすツールになるでしょう。
クレド作成の注意点
クレドを作成する際に注意すべきポイントを解説します。何のために導入するのかということに対し、理解を深めることが重要です。
目的や意義の共有
クレドは、企業全体で価値観を共有するものであるため、企業側からの一方的な押し付けと受け取られないよう、作成する目的や意義を、しっかりと従業員に対し説明する必要があります。
クレドの作成にあたり全従業員に実施するアンケートの中で、それぞれの考えを確認し、場合によっては直接意見交換ができる場を設けてもよいでしょう。
どのような形であれ、従業員に対し、「自分たちも参加して一緒に考え、決めたこと」だと把握してもらう点が重要です。
また、クレドの内容と実際に行われることの間に矛盾が生じ反感を買わないためにも、経営陣と従業員が同じ目的や意義をしっかりと共有できるように心掛けましょう。
行動に移せること
クレドを作成する際、実際に企業が行っていることや、行うことができること以外は、文言に取り込むべきではありません。
経営陣や従業員にとって、企業内での活動における希望や理想が多数存在する状態は、ある意味当然のことであり、望ましいことでもあります。
しかし、あまりにも理想が高すぎて現実離れした行動理念を盛り込んでしまうと、企業のイメージを悪化させたり、従業員の一体感や積極性を損なうおそれがあります。
経営陣と現場で働く従業員の意見をしっかりとすり合わせ、あくまでも行動に移せる範囲の内容をクレドに反映することが大事です。
よくある失敗例
クレドの作成や運用に関し、起こりがちな失敗例、対処法を確認しておきましょう。
トップダウンでの作成
経営陣に組織内の絶対的な決定権がある場合は、経営陣にとって都合の良い文言ばかりがクレドに盛り込まれてしまう可能性があるため、従業員の賛同を得られないままクレドの導入が失敗に終わるおそれがあります。
クレドは従業員主体で作成されるべきものであるため、トップダウンではなく、ボトムアップで作られ運用されなければなりません。
良質なクレドを導入することで、経営陣の労働や能力とは一切無関係に、企業が成長軌道に乗る可能性を高められます。
経営陣は、導入自体に対する決定権だけを与えられればよく、作成には極力意見しないという意識を持てるかどうかが、成功と失敗を分けるボーダーラインともいえるでしょう。
目的や成果の非共有
クレドを導入するにあたり、作成の目的を社内に浸透させることは重要ですが、クレドの運用中に成果を随時報告することも大事なポイントです。
クレドの運用担当者や従業員にとって、十分な成果が出ている実感があったとしても、そのことが経営陣にまでうまく報告できていなければ、無駄な活動と捉えられてしまう可能性もあります。
また、組織内において成果報告をスムーズに行うためには、導入段階で目的やゴールの浸透がしっかりと行われていることが大前提です。
作成時だけでなく運用中に至っても、クレドの目的や成果の共有を強く意識し、実際にいつでも誰でも確認できるようなシステムを構築することが重要といえるでしょう。
クレドを浸透させるには
クレドは作成して終わりではなく、全ての従業員に浸透させ、指標に合った行動を取ってもらうことが最終的な目標です。
組織内においてクレドの周知徹底を図る方法を紹介します。
カード配布や掲示
クレドを導入している企業の多くは、内容を記載したカードを作成し、従業員に配布しています。カードなら携帯しやすいうえ、必要なときにすぐ内容を確認できるメリットがあります。
カードを作る場合は、コピー用紙のようなものではなく、できるだけ高品質な材質の紙を使いましょう。
デザインにもこだわったり、経営陣が直接手渡ししたりすることで、従業員に対しクレドの重要性をより伝えやすくなります。
また、カードとは別に、外部の人にも目に付くような場所に掲示することで、企業のクレドに対する本気度を組織内外に示せるでしょう。
朝礼や全社メールの活用
企業にとっての朝礼は、業務開始前であることや全員が集う場であることなどから、できるだけ実施すべきものとされています。
朝礼を通じてクレドを繰り返し読み上げることは、組織内にクレドを浸透させる手段として非常に有効であり、従業員の意識を高めることにもつながるでしょう。
また、朝礼を実施しない企業でも、全社メールなどを活用すれば従業員へのアプローチが可能になります。社内のあらゆる通信方法を活用し、クレドの周知徹底に努めましょう。
サービスの活用や制度づくり
クレドを効率よく浸透させる方法としては、社内SNSなどもオススメです。
社内SNSにより、従業員がクレドに基づいた行動を実施したかどうかについて、簡単に確認し評価することが可能です。
クレド作成を成果につなげる
クレドは、企業全体の従業員が心掛けるべき信条や行動指針を明文化したものです。導入にあたっては、目的や意義を明確にし、組織内の意見をまとめ、ボトムアップによる作成が重要です。
クレドは従業員が実践に移すことで意味を持つものであるため、企業内への浸透作業も大切です。より企業が成長できるよう、全社一丸となってクレドの作成や運営に取り組んでみましょう。
クレドを周知させる方法
クレドを浸透させるには、社員間のコミュニケーションを活性化させることが大切です。「HRBrain」では、柔軟な権限設定ができる人材データベースの活用により、社員の相互理解を深め、社員間のコミュニケーションを活性化させることを実現します。
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