2030年問題とは?企業への影響と具体例、取るべき対策を分かりやすく解説
- 超高齢社会における各年の段階と問題
- 2030年問題と2025年問題の違い
- 2030年問題と2040年問題の違い
- 2030年問題が社会に与える影響
- 経済成長の低迷
- 社会保険料の負担増加
- 雇用に及ぼす影響
- 2030年問題が企業に与える影響
- 人手不足、人材確保の激化
- 人件費の急激な上昇
- 業績悪化のリスク
- 2030年問題で労働力不足が懸念される業界
- 介護・医療業界
- 航空業界
- 観光業界
- IT業界
- 建設業界
- 2030年問題に対して企業が取るべき対策とは
- 働き方改革や副業の推進
- リスキリング・キャリア開発の推進
- 従業員が働きやすい環境を整える
- DX化推進の取り組み
- 従業員満足度を上げる
- 2030年問題にそなえて、各企業で早めの対策を行う
2030年問題は、日本社会の高齢化に伴って労働人口が減少し、多くの企業が労働力不足や競争激化、人件費上昇などの課題に直面する社会的な懸念を指しています。
内閣府の発表によれば、2021年10月時点で日本の総人口に対して65歳以上の人口は3,621万人に上り、高齢化率は28.9%に達しています。
また将来的には高齢者が総人口の約1/3を占めると予測され、少子化も深刻な問題となっています。
これが労働人口の減少や企業への影響をもたらし、2030年問題に対処するため、全ての企業が適切な対策を検討する必要があります。
2030年問題に向けた、従業員の「スキル管理」方法
超高齢社会における各年の段階と問題
2030年問題と2025年問題の違い
2025年問題とは第一次ベビーブームに生まれた団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者になることによって引き起こされる社会的な課題を指します。
これは若い世代が労働市場から離れる時期であり、それに伴う労働力の減少や高齢者サポートにかかる社会保険費用の増加が予測されます。
2030年問題と2040年問題の違い
2025年時点では労働力の担い手であった団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)全員が65歳以上となり、5人に1人が後期高齢者となることです。
そうなると生産年齢人口が6,000万人を下回ることが予想されています。
そのため、社会保険費の負担と医療・介護の需要が2025年問題や2030年問題よりも一層増加すると予想され、具体的な対策がなければ、社会的な問題が一層深刻になるでしょう。
2030年問題が社会に与える影響
2030年問題によって、社会にはどのような影響があるのでしょうか。
ここからは、その影響について具体的にみていきましょう。
2030年問題が社会に与える影響
経済成長の低迷
社会保険料の負担増加
雇用に及ぼす影響
経済成長の低迷
国内の労働人口の減少に伴い、生産活動に制約が生まれ、経済活動が鈍化していきます。
それにより、国内の経済成長率やGDPが低迷していくことが予想されます。
優秀な人材は魅力的な海外労働市場に流出する傾向があり、さらにこれが追い風となり国内市場における生産性の減少をもたらしています。
社会保険料の負担増加
少子高齢化により労働力の減少と高齢化に伴う受給者数の増加により、社会制度の維持が難しくなります。
また高齢人口の進行に伴って、介護および医療にかかる経費も増加する傾向があり、労働者一人あたりが負担する社会保険料の増加が見込まれます。
雇用に及ぼす影響
2030年問題によって引き起こされる社会問題の解決策として、IoTやAIのようなデジタルテクノロジーが発展していくと予想されます。
これに伴い、これらの技術に取って代わられる仕事が増加し、これが失業者を生み出す可能性があります。
そのため、失業者を再び労働市場に組み込むためには、教育への投資が必要です。
2030年問題が企業に与える影響
2030年問題によって、企業にはどのような影響があるのでしょうか。
具体的な例を見ていきましょう。
2030年問題が企業に与える影響
不足人手、人材確保の激化
人件費の急激な上昇
業績悪化のリスク
人手不足、人材確保の激化
2030年問題で15〜65歳の労働人口減少が、企業の深刻な人材不足を招くと予想されます。
またそれに合わせて生産年齢人口の減少が企業の人材不足を引き起こし、激しい人材獲得競争が予想されます。
これに伴い、採用担当者の負担が増加し、優れた人材を見つける難易度が上がる可能性があります。
また競争激化に伴って採用方法にも工夫が求められますが、どの手法も担当者の負担を増やす恐れがあります。
この状況から、人材獲得にはまず採用戦略の強化と魅力的な職場づくりが求められます。
人件費の急激な上昇
人件費の上昇は企業にとって深刻な課題です。
労働力不足が続く中、企業は優秀な人材を獲得するために良い条件を提示する傾向が強まるでしょう。
福利厚生や給与の見直しが有効な手段となりますが、これは人件費増加につながり、企業利益の減少を招く可能性があります。
業績悪化のリスク
企業は人材不足により業績悪化のリスクが高まっています。
営業やプログラミング、カスタマーサービスの担当者不足がサービス品質低下につながり、顧客満足度低下や収益減少を引き起こす可能性があります。
またそれらのスキルはすぐにつくものでもないため、採用の強化と同時に、社内で継続的な育成を行う必要があるでしょう。
2030年問題で労働力不足が懸念される業界
2030年問題による労働力不足は、ほとんどすべての業界で生じると想定されていますが、特にその影響が大きいと想定される業界もあります。
ここからは、影響が大きいと想定される業界とその背景について解説します。
介護・医療業界
医療・介護業界も、2030年に深刻な人材不足が懸念されています。
超高齢化社会のため医療・介護サービスの需要は増加していますが、医師や介護職員、看護師といった医療従事者が不足しており、少子化の影響で人材の増加見込みが立っていません。
航空業界
航空業界も労働力不足が懸念される業界の一つといわれています。
特に専門知識が求められる整備士や航空管制官などのスキル人材が不足しており、それと同時に専門学校への入学者不足も影響しています。その一方で、政府は外国人観光客誘致のための施策を進めていますが、この増加に対応する航空業界のサービス提供者が不足しており、需要と供給のバランスが整っていません。
観光業界
訪日観光客はコロナ前の水準に回復し、需要は増加傾向にありますが、観光業界全体で人材不足が懸念されています。
観光業界はコロナの影響で打撃を受けましたが、2030年の政府の目標は訪日客数6,000万人、消費額15兆円としており、実際に需要は回復してきています。
しかし、団塊世代の退職や離職による労働力不足や、若手不足による影響から、将来的な人手不足が懸念されます。
IT業界
日本のIT業界では、従事者の高齢化が進み、それに伴う労働者不足が深刻な懸念となっています。
一方で、クラウド、ビッグデータ解析、IoT、AIなどの分野は今後ますます需要が急増する見込みです。
現在のIT人材が高齢化していく中で、将来的には需要とのギャップが広がり、深刻なIT人材不足が予想されます。
そのため、早急にIT人材の育成と確保が求められています。
建設業界
建設業界では、専門スキルである建築士、施工管理者、職人などのスキル人材の不足が深刻化しており、今後もそれらが更に加速することが予想されています。
その背景として、長時間かつ肉体労働であることから、厳しい労働条件のイメージも影響して、新しい人材確保が難しい状況が広がっています。
また少子高齢化の影響を受けている建設業界では、今後も人材不足が一層顕著になる見通しです。
2030年問題に対して企業が取るべき対策とは
2023年問題に対して、企業が取るべき対策とはどんなものがあるのでしょうか。
大きく分けて以下のようなものがあります。
2030年問題に対して企業が取るべき対策とは
働き方改革や副業の推進
人材育成に力を入れる
従業員が働きやすい環境を整える
DX化推進の取り組み
従業員満足度を上げる
働き方改革や副業の推進
働き方改革を進める企業は、テレワークやフレックスタイム制など多様な働き方を提供し、労働環境の向上と人材への魅力向上が期待されます。
これにより、育児や介護で出勤が難しい社員に柔軟なスケジュールを実現し、従業員の副業は企業と従業員の両方にメリットがあります。
企業の柔軟な労働環境は、ワークライフバランスの向上や働きがいの向上に寄与し、優秀な人材の確保や定着、企業全体の生産性や競争力向上に寄与します。
これらの取り組みは企業の社会的責任やイメージ向上にも繋がります。
リスキリング・キャリア開発の推進
2030年問題に伴う労働力不足の懸念から、企業がリスキリングやキャリア開発などの支援を行うことが期待されます。
リスキリングは、新たな職務や分野を習得することを指します。
これにより、企業は新しいスキルの獲得を促進し、柔軟な配置転換が可能な環境を整えることができます。
同時に、従業員は全く新しいスキルを身につけ、これによって新たな職種への挑戦が可能となります。
企業と従業員の両者にとって、リスキリングは将来の働き方に対応し、持続可能なキャリアの構築に寄与する重要な要素となります。
▼「リスキリング」についてさらに詳しく
リスキリングとは?実施する意味やリカレントとの違いについて解説
従業員が働きやすい環境を整える
企業にとっては、従業員の働きやすさ向上が重要です。
これは離職予防だけでなく、モチベーション向上や業務の効率化にも寄与します。
具体的な取り組みとしては、リフレッシュ休暇制度や出産・育児補助金、手当の拡充が有効です。
また、テレワークの普及により通勤時間の短縮や従業員の健康促進が進み、従業員の望む働き方を叶え、離職率の低下が期待されます。
DX化推進の取り組み
2030年問題への対策として、DXを活用して人材不足による生産性低下を補う手段が有効です。
DXはアナログ業務をデジタルで処理することで、例えば「紙の資料をペーパーレス化する」などが具体例です。
デジタル化により業務時間の削減や精度向上が期待され、業務の効率向上により従業員は付加価値の高い業務に専念できます。
ただし、DXの推進にはデジタル技術に対応した人材の確保が不可欠であり、導入する部門や業務を選定し、スモールスタートで進めることが重要です。
▼「DX化」についてさらに詳しく
DX化とIT化は違う?DX化のメリットと課題や成功事例を解説
従業員満足度を上げる
現在の労働力不足において、従業員の長期的な雇用を確保するためには、従業員の満足度向上が重要です。
満足度は職場環境、人間関係、仕事のやりがい、福利厚生、給与など多岐にわたります。
従業員の満足度向上は企業の貢献度向上につながり、これが「SPC(サービス・プロフィット・チェーン)」として企業業績向上に結びつきます。
従業員の満足度向上が始まると、顧客満足度も向上し、最終的には企業の業績向上に寄与します。この好循環により、企業は従業員に対する更なる投資を進め、良好なサイクルが生まれます。
▼「従業員満足度」についてさらに詳しく
従業員満足度(ES)とは?満足度構造や向上のための企業の取り組みを解説
2030年問題に向けた従業員の「スキル管理」方法
⇒「今日から始めるスキル管理」資料ダウンロード
2030年問題にそなえて、各企業で早めの対策を行う
2030年問題はすべての企業が向き合うべき問題です。
労働力の不足は企業の生産性や競争力の低下につながる可能性があるため、将来を見据え、人材採用や従業員のリスキリング・キャリア開発を実施していくことが求められます。
「HRBrain タレントマネジメント」は、従業員ひとりひとりのスキル管理やキャリアプラン、目標設定のプロセスなど、あらゆるデータを一元管理し可視化します。
従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、研修などの育成履歴や、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、1on1やフィードバックなどの面談履歴、OKRなどの目標管理とマネジメント業務をクラウド上で一元的に管理できるため、人事業務の効率化が期待できます。
従業員データをもとに、チームの最適化やチームに不足しているスキルや人材のピックアップも可能です。
HRBrain タレントマネジメントの特徴
検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現
運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。
柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を
従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。
人材データの見える化も柔軟で簡単に
データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。
▼「タレントマネジメント」についてさらに詳しく
【完全版】タレントマネジメントとは?基本・実践、導入方法まで解説
タレントマネジメントシステムの課題とは? 目的・導入の課題と成功事例まで
▼「タレントマネジメント」お役立ち資料まとめ
【人事担当者必見】タレントマネジメントに関するお役立ち資料まとめ
おすすめ記事
- アクティブリスニングとは?効果と実践方法や注意点を簡単に解説#人材育成2024/12/02
- ワークショップとは?意味やビジネスでのやり方について分かりやすく解説#人材育成2024/11/11
- ワークエンゲージメントとは?意味と測定方法や尺度と高める方法について解説#人材育成2024/10/16
- メンター制度とは?意味と導入手順やメリットとデメリットやいらないと言われる理由について解説#人材育成2024/10/07
- 意欲的とは?意味と積極的との違いや意欲的に働くことのきっかけやメリットについて解説#人材育成2024/09/26
- eNPS℠とは?意味と質問項目や業種別平均スコアを上げる方法について解説#人材育成2024/09/25