人事制度を改革するメリットは?基本手順や注意点とあわせて解説!
- 人事制度とは
- 人事制度を構築する要素
- 評価制度
- 報酬制度
- 教育制度
- 等級制度
- 人事制度を改革する手順
- まずは現状を把握して課題を明確にする
- 明確にした課題をもとに制度の見直しを実施する
- 人事制度を改革すべきタイミング
- 企業方針を変更するとき
- 企業規模が拡大したとき
- 人事制度の改革によるメリット
- 従業員の目標が明確になる
- 従業員のモチベーションが向上する
- 企業目線での評価基準が明確になる
- 人事制度改革の注意点
- 公平性の確保を忘れない
- 適切なフィードバックを実施する
- 人事制度の改革を成功させるためのポイント
- まとめ
人事制度には、従業員への評価をより公平にできるメリットがあります。正当に評価できることで従業員のモチベーションも上がり、企業全体での生産性向上が期待できるでしょう。
しかし、自社の人事制度に課題があると感じている企業も多いのではないでしょうか。課題を把握していても、解決するための方法までは立案できていない企業もあるかもしれません。
より適切な人事制度を定めるためには、既存の人事制度を自社の課題やニーズにあわせて改革する必要があるでしょう。今回は人事制度の基本に触れながら、人事制度を改革する手順やタイミングについて紹介します。
また、人事制度を改革するメリットや注意点、成功につながるポイントをトレンドも交えながら解説しています。現状の人事制度の課題を感じている企業は、今回紹介する内容をぜひ参考にしてください。
人事制度とは
企業を運営するうえで重要な経営資源である「ヒト・モノ・カネ」のうち、もっとも重要とされる「ヒト」を管理するための制度を人事制度といいます。ただ管理するだけでなく、管理を通じた「活性化」を目的にしているのが特徴です。
従業員の採用・定着を目的とし、ヒトにかかわるさまざまな制度や取り組みを「人事制度」と総称しています。また、ヒトを管理することで、モノ・カネの活性化にもつながります。
人事制度は、ヒトの管理を通じて企業全体の資源に影響を与える制度であることを覚えておきましょう。
人事制度を構築する要素
人事制度は、主に以下4つの要素で構築されています。
- 評価制度
- 報酬制度
- 教育制度
- 等級制度
ここでは、人事制度を構築する4つの要素について詳しく説明します。
評価制度
従業員の上げた成果や態度などを評価する仕組みのことを、評価制度といいます。評価の対象となる期間をある程度定めたうえで評価するのが特徴です。一般的には半年、もしくは1年ごとに実施します。
自己評価・一次評価・二次評価を実施し、評価に関する会議を経て確定するのが一般的な評価プロセスです。
評価制度を導入・実行する場合は、まずなにをもって従業員を評価するのかを定めます。成果なのか、もしくは勤務態度なのか。もっとも重視したい判断材料を洗い出しましょう。
報酬制度
従業員の報酬に関するルールのことを報酬制度といいます。報酬制度は、以下の要素で構成されるのが一般的です。
基本給
賞与
各種手当
退職金
報酬は従業員の生活にかかわる重要な要素です。また、正当な報酬をモチベーションに業務を遂行する従業員もいるでしょう。
企業・従業員双方にとって「利益」となる、正当な報酬制度を定める必要があります。
教育制度
教育制度は従業員の教育はもちろん、育成側である管理職が正しい評価能力を身につけられるようにするための制度です。正しい評価能力を身につけるために、評価者としての研修を企画・実施することもあります。
また教育制度は評価制度や報酬制度など、企業として設定した人事制度を従業員に周知するための制度としても活用されます。
等級制度
等級制度とは、評価制度・報酬制度・教育制度のベースとなる制度のことです。人事制度を構築する土台として、等級を設定します。
その後、等級ごとの要件を定めるのが一般的です。等級要件は、各等級に該当する従業員に対し、企業として求める能力・役割を表します。
職能・役割・職務の3つに区分される等級要件は、昇格・降格の判断や育成の方針として活用できる重要な要素です。自社に最適な等級要件を精査し、納得度の高い等級制度を確立しましょう。
人事制度を改革する手順
人事制度は、上記で解説した4つの要素から構築される制度です。基本的な制度であるがゆえに、市場ニーズや企業運営の動きにあわせて改革する必要も出てくるでしょう。人事制度は、主に2つのプロセスを経て改革を進めるのが一般的です。
- まずは現状を把握して課題を明確にする
- 明確にした課題をもとに制度の見直しを実施する
ここでは、人事制度を改革する基本プロセスについて紹介します。自社の人事制度と照らし合わせたうえで、改革を検討・実行しましょう。
まずは現状を把握して課題を明確にする
自社の人事制度がどのような内容で、どのように実用されているかを把握しましょう。現状を踏まえた課題を洗い出すことで、人事制度の改革内容が明確になります。人事制度の課題を抽出するための手段には、以下が挙げられます。
業績・人件費の相関関係を調査する
評価者(管理職など)に向けてヒアリングを実施する
従業員アンケート・ヒアリングを実施する
自社と他社の報酬内容を比較する
人事制度の現状を調査し、課題を抽出したら、自社の人事制度にどのような改革が必要か検討しましょう。ただし、課題のみに目を向けるのではなく、あくまで経営理念に沿った制度として改革することが大切です。
明確にした課題をもとに制度の見直しを実施する
現状把握で浮き彫りになった課題をもとに、人事制度を構築する要素を見直しましょう。人事制度を改革する際は、まず「等級制度」から見直すのがおすすめです。等級制度を見直すことで、評価制度・報酬制度・教育制度を改革するためのベースを構築できます。
自社の等級制度が経営理念や業務内容に合致しているかを再確認し、必要に応じて変更しましょう。等級制度を新たに設定したうえでほかの要素も見直して、企業・従業員がどちらも納得できる改革を実施してください。
人事制度を改革すべきタイミング
自社の人事制度に不備が見つかったからといって、闇雲に実施することは避けましょう。人事制度の改革は、適切なタイミングを理解したうえで実施することが重要です。
一般的には、企業方針を変更する際や企業規模が拡大した際に人事制度を改革します。ここでは、人事制度を改革すべきタイミングについて説明します。
企業方針を変更するとき
業務内容の変更などに付随し、企業としての「環境」が変わる際に人事制度を改革します。特に規模の大きい企業の場合、方針の変更に沿った人事制度を確立しないと、企業と従業員に認識のズレが生じます。
また、市場ニーズが変化することで、人事制度の改革が求められる場合もあるでしょう。新型コロナウイルス感染拡大によって高まった新しい働き方へのニーズなどを参考に、市場の変化に対応した人事制度に再構築する必要があります。
企業方針や市場ニーズの変化に応じ、柔軟性のある改革を進めていくことが、安定した経営を続けることにつながるかもしれません。
企業規模が拡大したとき
業績が好調で企業規模が拡大した際は、既存の人事制度を改めて確認しましょう。企業規模が拡大すると従業員数も増えるため、既存の人事制度では対応しきれない場合があります。
また、従業員数が増えるとひとりひとりに対する評価の時間配分が難しくなります。評価者の負担や正当な評価を実現するためにも、より効率的な人事制度に変化させることが大切です。
企業規模が拡大したにもかかわらず人事制度の改革を進めない場合、人材管理そのものが疎かになってしまいます。「正当に評価されない」といった理由で、従業員のモチベーションが下がる危険性もあるでしょう。
人事制度の改革によるメリット
既存の人事制度を改革することによるメリットは、主に以下の3つです。
従業員の目標が明確になる
従業員のモチベーションが向上する
企業目線での評価基準が明確になる
ここでは、人事制度の改革による主なメリットについて説明します。人事制度を改革するメリットを把握し、自社の人事制度をどのように改革すべきか検討しましょう。
従業員の目標が明確になる
従業員や市場のニーズに応じて人事制度を改革することで、企業としての評価体制が定まります。自社の経営理念や目標に準じた人事制度を構築すれば、従業員自身が目指すべき成果を把握しやすくなるでしょう。
反対に十分な改革が進められていない人事制度では、なにを目標に業務を進めていくべきかが明確になりません。他社の事例などを参考に、自社の従業員が明確な目標を持てる人事制度を確立しましょう。
従業員のモチベーションが向上する
適切な改革が進められている人事制度の構築されている企業であれば、従業員の働きやすさを確保できます。上記でも触れたように、目標が明確になりやすいことが理由です。
自身の成果がどのように評価されるか理解できれば、日々の業務や目標に対するモチベーションが向上するでしょう。適切な評価を受けられる企業だと認識されれば、企業全体での定着率や生産性も向上するかもしれません。
企業目線での評価基準が明確になる
人事制度を改革することで、従業員に求めているものを企業側が把握しやすくなります。そのため、より正当かつ明確な評価基準を確立できるでしょう。
企業が求める成果が明確になれば、より効率的に業務を進めるための基準も明確になります。評価基準を明確にすることで、従業員の目標意識やモチベーションにも好影響を与えます。
企業目線での評価基準を明確にすることは、企業・従業員にとっての「相互作用」が期待できるといってよいでしょう。
人事制度改革の注意点
人事制度を改革する際は、以下2つのポイントを意識しておくことが大切です。
公平性の確保を忘れない
適切なフィードバックを実施する
ここでは、人事制度を改革する際の注意点について詳しく説明します。人事制度の改革を失敗させないための事前知識として、改革における注意点を理解しておきましょう。
公平性の確保を忘れない
従業員の上げた成果が正当に評価されるよう、公平性のある人事制度を意識することが大切です。漠然とした人事制度ではなく、役職・職歴・勤続年数など、さまざまな要素を取り入れた適切な人事制度を確立しましょう。
人事制度の公平性を確保するためには、曖昧になっている評価基準を見直すことも大切です。評価基準を明確にすることは、従業員の目標設定やモチベーション向上にもかかわります。
また、単に成果を評価するだけでなく、成果に至るまでのプロセスを公平に評価できる制度かどうか見直す必要があります。与えられた評価に対し、従業員が納得できる人事制度の改革を意識しましょう。
適切なフィードバックを実施する
人事制度を改革するうえでは、評価後の対応も重要です。評価に対する適切なフィードバックを実施することで、次回の評価に向けた目標設定が明確になります。
また、従業員が自身の課題を把握する機会にもなるため、モチベーションアップにもつながるでしょう。より成果につながりやすい目標を設定できることで、従業員はもちろん企業にもメリットがあります。
評価者がフィードバックを実施する際は、以下のポイントを意識することが大切です。
ポジティブなフィードバックを積極的に伝える
ネガティブなフィードバックは今後の対策も視野に入れて実施する
評価内容に対し、ポジティブとネガティブをうまく使い分けてフィードバックすることが大切です。適切にフィードバックが実施されない環境では、目標やモチベーションなどさまざまな観点が曖昧になるため注意してください。
人事制度のトレンド
近年注目されている人事制度に、ジョブ型人事制度が挙げられます。ジョブ型人事制度とは、自社に合致した人材の採用を進める制度のことです。
自社の業務に必要な適性をもっていることを条件に採用を進めることで、その後の育成がしやすくなるメリットがあります。また、正当な評価・報酬を与えやすくなるのもジョブ型人事制度のメリットです。
ジョブ型人事制度は、昨今注目されているリモートワーク・テレワークの拡大により注目されています。日々の業務を直接確認・把握できないことで、従来の人事制度が機能しなくなった企業が増えているためです。
現段階ではもちろん、アフターコロナに向けた取り組みとしてジョブ型人事制度を取り入れている企業も増えています。
HR大学では、ジョブ型人事制度に関する内容も詳しく説明しています。ジョブ型人事制度の導入を検討している企業は、以下の記事も参考にしてください。
「ジョブ型人事制度とは?メンバーシップ型とどう違う?メリット・デメリットや導入背景を紹介」
「ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違いやメリット・デメリットを解説」
人事制度の改革を成功させるためのポイント
最後に、人事制度の改革を成功させるために重要なポイントについて説明します。
まず大切なのは、人事制度のベースとなる「等級制度」から見直すことです。等級制度の内容が曖昧だったり、自社に適していなかったりすると、その後の改革も思うように進められません。自社の求める成果や市場ニーズなど、さまざまな観点を加味したうえで等級制度から見直してください。
等級制度を見直したあとは、評価制度・報酬制度・教育制度を見直します。従業員の上げた成果を正当に評価し、成果に基づいた報酬を与える制度に改革しましょう。また、よりよい評価・報酬につなげるため、評価者・従業員双方を対象にした教育制度を再構築することも大切です。
等級制度をはじめ、人事制度を構築する基準を見直すために重要なのは、制度としての「曖昧さ」です。曖昧な制度では従業員が納得しづらいため、目標設定やモチベーションの観点でデメリットがあります。なにをもって評価するのか・されるのかを明確にすることで、企業・従業員双方が納得できる人事制度を確立できるでしょう。
また近年では、人事制度の改革をより効率化するためのテクノロジーが進歩しています。AIやクラウドシステムなどを活用し、人の手だけでは補いきれない部分を充実させるのも人事制度の改革に重要なポイントです。
ここまで触れたポイントを理解し、実施することで、人事制度の改革における成功率がアップするでしょう。
まとめ
今回は、自社の人事制度における改革について紹介しました。人事制度は、評価・報酬・教育・等級の4つで構築される制度のことです。
人事制度を改革する際は、これら4つの要素を客観視し、従業員や市場のニーズに応えられるものであるかどうかを考えなければなりません。
ただし、闇雲に改革を進めるのではなく、企業方針の変更や企業規模の拡大など、適切なタイミングがあることも覚えておきましょう。
人事制度の改革を進めることで、目標や評価基準がより明確になったり、モチベーションが向上したりとさまざまなメリットがあります。公平性の確保や適切なフィードバックの実施など、事前に把握しておくべき注意点を理解したうえで、人事制度の改革を進めましょう。
自社の人事制度に課題を感じているものの、自社のリソースや知識だけでは改革を進めきれないと感じている企業も多いでしょう。HRBrainでは、人事評価の課題を解決できるコンサルティングを提供しています。
人事制度の改革を進めきれていないと悩んでいる企業は、HRBrainのコンサルティングを利用してみてはいかがでしょうか。
おすすめ記事
- セルフモチベーションとは?意味や職場と従業員が上げる方法やメリットを解説#人材管理2024/12/09
- 社内コミュニケーションとは?重要性や活性化に向けた取り組みや成功事例について解説#人材管理2024/11/25
- 職場の人間関係で大切なことは?人間関係が悪い職場の特徴と改善策について解説#人材管理2024/11/21
- コンセンサスとは?意味とアグリーメントやオーソライズとの違いと社内で合意を得るためのポイントを解説#人材管理2024/11/19
- 職場の人間関係で大切なことは?人間関係が悪い職場の特徴と改善策について解説#人材管理2024/11/18
- コアコンピタンスとは?意味とケイパビリティとの違いや企業例を簡単に解説#人材管理2024/11/06