組織風土改革とは?導入のメリットから具体的な進め方5ステップを解説
自社に最適な人事評価制度設計から運用まで、専門家が伴走支援
- 組織風土改革とは
- 組織風土と組織文化の違い
- 組織風土の4つの種類
- ブリリアンス型|良好な組織風土
- 仲良しクラブ型|成果への意識は低い
- ギスギス型|成果への意識が高く社内の雰囲気が悪い
- 腐敗型|社内の雰囲気が悪く成果への意識も低い
- 組織風土改革が必要な組織の共通点
- 組織風土改革を行う4つのメリット
- 従業員エンゲージメント向上につながる
- 生産性が向上する
- 社員の定着率向上と採用力強化につながる
- 経営理念が現場に浸透しやすくなる
- 組織風土改革の具体的な進め方
- ステップ①現状の組織風土を把握する
- ステップ②問題点と課題を抽出する
- ステップ③組織風土改革の必要性を周知する
- ステップ④アクションプランの策定・実行
- ステップ⑤定期的な評価・改善を繰り返す
- 組織風土改革を成功に導く5つのポイント
- 経営陣が率先して改革に取り組む姿勢を見せる
- 改革・施策は段階的に進める
- 継続的な評価とフィードバックを繰り返す
- 現場の社員の声を反映させる
- チーム連携・モチベーション維持を意識する
- 組織風土改革を実施した企業の成功事例
- キリンビール株式会社
- 三菱電機株式会社
- トヨタ自動車株式会社
- 組織風土改革をプロに依頼するなら「HRBrain コンサルティング」
- 自社の課題を洗い出して組織風土改革をはじめよう
「最近、社員の元気がない」「部署間の連携がうまくいかない」と感じていませんか?会社の雰囲気や習慣である「組織風土」に原因があるかもしれません。
組織風土改革は、単なるスローガンではありません。社員のやる気を引き出し、会社の成果を大きく伸ばすための重要な取り組みです。
本記事では、組織風土改革の基本から具体的な進め方、成功事例まで、あなたの会社の未来を変えるヒントをわかりやすく解説します。効率的に導入するのにおすすめのサービスも紹介するため、組織風土改革を検討している場合には、ぜひお役立てください。
組織風土改革とは
組織風土改革とは、企業や組織が持つ独自の雰囲気や習慣を変え、よりよい方向へ導くための取り組みです。近年では、社員の自律性や主体性を高めるため、単なる制度変更ではなく、職場の空気やコミュニケーションのあり方を見直す必要性が高まっています。
たとえば、「意見を出すと否定される」という空気があれば、社員はチャレンジを避けるようになります。そこで、上司の接し方を変えたり、価値観を共有する場を設けたりして、社員が安心して意見をいえる環境をつくるのです。
また、組織風土改革は経営理念やビジョンの押しつけではなく、社員との共創によって成り立つのが特徴です。現場の声を反映しながら改革を進めることで、全員が納得して行動できる風土が育まれます。 このように、制度だけでなく人や関係性に着目して改善を図るのが、組織風土改革の本質です。
以下では、組織風土改革とは何かを理解するために、よく似た概念とされる「組織文化」との違いを解説します。
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組織風土と組織文化の違い
組織風土と組織文化は似ている言葉ですが、それぞれ異なる意味を持っています。
組織風土 | 組織文化 | |
---|---|---|
概念 | 従業員が日々肌で感じる職場の空気や暗黙のルール | 企業が長年培ってきた共有される価値観や信念 |
具体例 | 「この会社は風通しが良い」「上司に相談しやすい」などの肌で感じる感覚 | 会社の理念やビジョン、共有されている価値観、それらに基づく意思決定のプロセスなどが含まれる |
組織文化は企業の根幹であり、組織風土はそこから生まれた日常の現れです。
組織風土を変えることは、やがて文化の変化にもつながりますが、まずは日々の行動や雰囲気を見直す必要があります。 改革を進める際は、この違いを理解したうえで、組織風土の可視化・改善から着手することが効果的です。
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組織風土の4つの種類
組織風土は、会社の雰囲気や社員の意識によって以下の4つの種類に分けられます。
ブリリアンス型|良好な組織風土
仲良しクラブ型|成果への意識は低い
ギスギス型|成果への意識が高く社内の雰囲気が悪い
腐敗型|社内の雰囲気が悪く成果への意識も低い
自分の会社がどのタイプに当てはまるか考えてみましょう。
ブリリアンス型|良好な組織風土
ブリリアンス型は、「人間関係の質」と「成果への意識」がともに高い、もっとも理想的な組織風土です。
このタイプの組織では、社員が主体的に行動し、自らの成長と組織の成果を両立させています。また、心理的安全性が高いため、意見を自由に交わし、失敗を恐れずに挑戦できる環境が整っているのが特徴です。
たとえば、新しいプロジェクトがはじまる際には、部署や役職に関係なく自由に意見が飛び交い、全員でよりよいアイデアを追求します。
失敗をおそれずに挑戦できる環境があり、たとえ失敗したとしても、それを学びの機会として次に活かせます。このような組織では、社員のモチベーションが高く保たれ、会社の業績も継続的に向上しやすい傾向があります。
仲良しクラブ型|成果への意識は低い
仲良しクラブ型は、社員同士の人間関係は良好であるものの、成果への意識が低い組織風土を持つタイプです。社員間のコミュニケーションは活発で、職場の雰囲気も和やかですが、目標達成に対する強いコミットメントが不足している場合があります。
たとえば、飲み会や社内イベントは頻繁に行われ、社員同士の絆は強いものの、仕事の目標達成よりも人間関係の維持を優先しがちです。そのため、新しいアイデアが提案されても、実行に移すまでには時間がかかったり、責任の所在が曖昧になったりすることがあります。
この状況から脱却するには、良好な人間関係という強みを活かしつつ、適切な目標設定や、個人の貢献とチームの成果を公正に評価する制度の導入が有効です。仲の良さを保ちつつも、成果にこだわる姿勢を組み込むことで、健全な緊張感とやりがいのある職場づくりが可能になります。
ギスギス型|成果への意識が高く社内の雰囲気が悪い
ギスギス型は、成果への意識は高いものの、社内の雰囲気が悪い組織風土を持つタイプです。このタイプの組織では、目標達成や競争が重視されるあまり、社員同士の協力関係が希薄になったり、足の引っ張り合いが起こったりすることがあります。
また、上司からの一方的な指示が多く、社員の意見が通りにくい環境でもあります。このような組織では、社員は精神的なストレスを感じやすく、離職率の増加も否定できません。
この風土の改革で最優先すべきは、心理的安全性の確保です。管理職を対象としたコーチング研修によるリーダーシップの変革、信頼関係を構築するための1on1ミーティングの質の向上、感謝や称賛を可視化する仕組みの導入などが急務となります。
腐敗型|社内の雰囲気が悪く成果への意識も低い
腐敗型は、社員が無気力・無関心で人間関係も険悪、かつ成果への意識も低いという、もっとも問題の多い組織風土を持つタイプです。この組織では、社員のモチベーションが全体的に低く、業務に対する意欲が失われています。
また、パワハラや不正が黙認されるなど、職場の信頼関係も崩れている可能性があるでしょう。このような環境では、優秀な人材が流出し、組織全体が停滞してしまいます。
腐敗型の改革には、経営トップが強い覚悟でリーダーシップを発揮することが重要です。ビジョンの再定義や評価制度の見直し、社員との対話機会の増加などを通じて、信頼と誠実さを回復させる必要があります。
組織風土改革が必要な組織の共通点
組織風土改革が必要とされる組織には、以下のような課題が発生しています。
社員のモチベーションが全体的に低い
部署間の連携が希薄
離職率が高い・採用が困難
ハラスメントやいじめなどの人間関係のトラブルが頻繁に発生している
上記のような課題の根底には、業種や規模を問わず、多くの企業に見られる3つの根深い共通点が存在します。
それは「心理的安全性の欠如」「理念の形骸化」「コミュニケーションの断絶」です。
たとえば、心理的安全性が欠如した職場では、社員は失敗をおそれて本音を言えず、建設的な対話は生まれません。日々の行動指針として機能していなければ、従業員は仕事への意義を見失います。
さらに、部門間のコミュニケーションが断絶すれば、協力体制は崩壊し、組織全体としての課題解決能力は著しく低下します。もし自社で「会議で役職者の意見ばかりが通る」「1on1が単なる業務報告の場になっている」などの状況が見られるなら、組織風土改革を検討する時期が訪れているといえるでしょう。
組織風土改革を行う4つのメリット
組織風土改革を行うことには、以下の4つのメリットがあります。
従業員エンゲージメント向上につながる
生産性が向上する
社員の定着率向上と採用力強化につながる
経営理念が現場に浸透しやすくなる
組織風土改革を通じて社員同士の信頼関係が深まれば、個々が自律的に動けるようになり、目標に向けた一体感も生まれるでしょう。
従業員エンゲージメント向上につながる
組織風土改革がもたらすメリットのひとつが、従業員エンゲージメントの向上です。
従業員エンゲージメントとは、単なる従業員満足度ではなく、社員一人ひとりが持つ仕事への熱意や貢献意欲です。改革を通じて、社員が尊重され、挑戦を歓迎され、仕事の意義を実感できる環境を構築することで、エンゲージメントは根本から高まります。
具体的には、上司との1on1ミーティングで安心してキャリアプランを相談できたり、失敗をおそれずに新しい提案ができたりする環境は、心理的安全性を高め、エンゲージメントを直接的に引き上げます。
エンゲージメントが高まると、社員は自ら課題を見つけて解決しようと努めるようになり、結果として企業全体のパフォーマンス向上に効果的です。
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生産性が向上する
良好な組織風土は、職場の雰囲気を改善するだけでなく、組織全体の生産性向上にも貢献します。部署間の見えない壁が解消され、円滑な情報共有や迅速な意思決定が可能になることがその理由です。
また、社員が安心して意見を交換できる環境では、新しいアイデアが生まれやすくなります。業務プロセスを改善するための提案が積極的に行われたり、問題が発生した際にチーム全体で協力して解決にあたったりすることで、より効率的な働き方の実現が可能です。
さらに、社員のモチベーションが高まることで、一人ひとりの業務に対する集中力が増し、結果として業務の質とスピードが向上します。これにより、残業時間の削減や、より少ないリソースで大きな成果を生み出すことになり、組織全体に好循環を生み出すでしょう。
社員の定着率向上と採用力強化につながる
組織風土改革を行うことは、社員の定着率を高め、採用力を強化するうえでも効果的です。
働きやすい組織風土が形成されると、社員は会社に留まりたいと感じるようになります。具体的には、人間関係の悩みや過度なプレッシャーが軽減され、ワークライフバランスが改善されることで、社員の離職意向が低下します。
定着率が高い会社は、対外的にもよい評判が広がり、優秀な人材の獲得にも有利です。企業イメージが向上することで、採用活動においても、より多くの質の高い応募者を集めることができ、企業の競争力強化にも貢献するでしょう。
人的資本経営が重視される今、組織風土改革はもっとも効果的な人材戦略のひとつといえるでしょう。
経営理念が現場に浸透しやすくなる
組織風土改革を進めることで、経営理念が現場に浸透しやすくなるというメリットもあります。経営理念とは、企業がどのような価値観を持ち、社会に対してどのような貢献を目指すのかを示すものです。
たとえば、全社ワークショップで現場の声を吸い上げて理念をアップデートしたり、理念を具体的な行動指針に落とし込んだカルチャーブックを作成・共有したりする取り組みは有効な手段です。
理念が浸透することで、経営層が細かく指示せずとも、全員が同じ方向を向いて自律的に動くチームが実現します。
組織風土改革の具体的な進め方
組織風土改革は、闇雲に改革を始めても、かえって混乱を招いたり社員の反発を招いたりする可能性があります。ここでは、組織風土改革を効果的に進めるための5つのステップを紹介します。
ステップ①現状の組織風土を把握する
ステップ②問題点と課題を抽出する
ステップ③組織風土改革の必要性を周知する
ステップ④アクションプランの策定・実行
ステップ⑤定期的な評価・改善を繰り返す
組織風土改革を成功させるためには、計画的かつ段階的に進めましょう。
ステップ①現状の組織風土を把握する
組織風土改革の最初のステップは、現状の組織風土を正確に把握することです。なぜなら、現状を正しく認識することで、どこに課題があるのか、どのような方向に改革を進めるべきかが明確になるからです。
具体的には、まずは組織サーベイやアンケートを実施し、従業員の満足度や心理的安全性、上司への信頼などを部署別・階層別で定量的に把握します。「会社の方針について自分の意見を言える機会があるか」「仕事の成果が正当に評価されているか」などの具体的な質問を含めるとよいでしょう。
そして、数値だけでは見えない「なぜ」を深掘りするため、社員への定性インタビューで現場の生の声を集めることも重要です。また、必要に応じて、第三者の専門家による客観的な組織診断を導入することも有効です。
ステップ②問題点と課題を抽出する
現状の組織風土を把握したら、次のステップとして問題点と課題を明確に抽出することが重要です。課題が曖昧なままでは、効果的な改革策を立てることができません。
重要なのは、問題点と課題を区別することです。
たとえば、「若手の離職率が高い」というのは目に見える問題点ですが、これに場当たり的に対処しても根本解決にはなりません。
離職率が高い理由をデータから深掘りし、たとえば「成長機会が不足している」「公正な評価制度が機能していない」などの本質的な課題を設定することで、効果的な対策が検討できるようになります。
具体的な分析アプローチとして、サーベイ結果における「期待度は高いが満足度は低い」項目に着目するギャップ分析が有効です。これは従業員が強く望んでいるにも関わらず満たされていない、改革の優先順位が高い領域であることを表しています。
すべての課題に一度に取り組むことは難しいため、インパクトが大きい部分や実行可能性が高い部分などの軸で課題に優先順位をつけながら取り組む必要があるでしょう。
ステップ③組織風土改革の必要性を周知する
問題点と課題を明確にしたら、次のステップは組織風土改革の必要性を全社員に周知することが重要です。社員全員が改革の意義を理解し、主体的に関わろうとすることで、改革の成功が見えてきます。
そのためには、経営トップが自らの言葉で、データで示された現状の危機感と、改革によって実現したい未来のビジョンを情熱的に語ることが必要です。さらに、一方的な説明で終わらせず、説明会や社内報、社内SNSなどを活用して繰り返しメッセージを発信することが重要です。
社員が「自分たちの問題」として捉え、改革に前向きな姿勢を持てるよう、丁寧な説明と対話を通じて理解と共感を促すことが成功のポイントとなります。
ステップ④アクションプランの策定・実行
組織風土改革の必要性が全社員に周知されたら、具体的なアクションプランを策定し、実行に移します。
たとえば、「部署間の連携強化」が課題であれば、「定期的な合同会議の実施」「情報共有ツールの導入」などの具体的な施策を盛り込みます。その際には、それぞれの施策について、誰が、何を、いつまでに、どのように行うのかを明確に定義しましょう。
また、施策の目標達成度を測るための具体的な指標(KPI)を期間として設定することも重要です。実行時には、部署ごとに、小さな成功体験を積み重ねることからはじめ、徐々に改革の範囲を広げていくスモールスタートも有効な方法です。
ステップ⑤定期的な評価・改善を繰り返す
組織風土改革は一度行ったら終わりではなく、定期的な評価と改善を繰り返すことが重要です。組織風土は、事業環境の変化や人の入れ替わりによって常に変化するものであるため、継続的にメンテナンスしなければ、いずれ元の状態に戻ってしまいます。
そのためには、改革の進捗と効果を定点観測し、得られたデータを基に計画を修正・改善していく継続的な改善サイクルを、組織の新たな文化として定着させる必要があります。
具体的な仕組みとして、毎月または毎四半期にサーベイを実施してエンゲージメントスコアの変化を追いかけて進捗を可視化することが有効です。これらの評価結果に基づいて、必要に応じてアクションプランを修正したり、新たな施策を導入したりします。
この改善サイクルを回し続けることこそが、変化に強い組織をつくるうえで欠かせないポイントです。
組織風土改革を成功に導く5つのポイント
組織風土改革を成功に導くためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、意識すべき5つのポイントについて解説します。
経営陣が率先して改革に取り組む姿勢を見せる
改革・施策は段階的に進める
継続的な評価とフィードバックを繰り返す
現場の社員の声を反映させる
チーム連携・モチベーション維持を意識する
経営陣が率先して改革に取り組む姿勢を見せる
組織風土改革を成功させるためには、経営陣が率先して改革に取り組む姿勢を見せることが重要です。なぜなら、経営層が本気で改革を推進しようとしなければ、従業員は「一時的なものだろう」と感じ、協力的な姿勢を示さない可能性があるからです。
具体的には、経営陣自らが改革の旗振り役となり、その必要性や目指す方向性を繰り返し従業員に伝える必要があります。経営会議で改革の進捗を定期的に共有したり、従業員向けのメッセージで自らの言葉で改革へのコミットメントを表明したりすることが有効です。
また、経営陣自身が率先して新しい働き方や行動様式を実践し、模範を示すことも大切です。改革を指示する前に、まず自らが新しい文化のロールモデルとなり覚悟を決めることが、組織全体を動かす原動力となります。
改革・施策は段階的に進める
組織風土改革を成功させるためには、改革や施策を段階的に進めることが重要です。なぜなら、一度にすべてを変えようとすると、社員が変化に対応しきれず、混乱や反発を招く可能性があるからです。
まずは、変革に前向きなリーダーがいる部署を「パイロット部署」として選び、具体的な目標を掲げて新しい手法を試験導入します。その成功事例をその他の部署にも共有し、横展開していくのです。
段階的に進めることで、社員は変化に慣れ、改革への抵抗感を減らしながら、着実に組織風土改革をよい方向へ導けるでしょう。
継続的な評価とフィードバックを繰り返す
組織風土改革は、「実行したら終わり」のプロジェクトではありません。制度を実行したらまず行うのは、改革の目標達成度を定期的に確認し、進捗状況の評価です。
定期的な社員アンケートやエンゲージメント調査を行い、社員の意識や満足度の変化を数値で把握します。その結果に基づいて、何がうまくいき、何がうまくいっていないのかを分析したうえで、その課題を解決するための改善策を検討し、次のアクションにつなげます。
社員に対しても、進捗状況や改善策について定期的にフィードバックを行うことで、改革への参加意識を高め、主体的な行動を促すことにつながるでしょう。
現場の社員の声を反映させる
組織風土改革を成功させるうえで、現場の従業員の声を積極的に反映させることは重要なポイントです。なぜなら、実際に日々業務を行っている現場の従業員が一番、組織の課題や改善点を知っているからです。
現場の知恵やアイデアを取り入れることで、施策の質が高まるだけでなく、従業員自身が改革を自律的に進めてくれるようになります。
具体的には、意見箱の設置や定期的な社員アンケート、少人数での座談会などを開催し、社員が自由に意見を述べられる機会を提供します。その後、その意見が実際にどのように改革に反映されたのかを社員にフィードバックすることも大切です。
「社員が自律的に動く組織」を目指すなら、まず改革のプロセスそのものを従業員と協働しながら進める意識を持ちましょう。
チーム連携・モチベーション維持を意識する
組織風土改革を成功させるためには、チーム連携を強化し、社員のモチベーションを維持することを常に意識する必要があります。また、成果を急ぐあまり部署間の競争を煽ると、協力体制が崩壊し、改革の目的とは逆行してしまいます。
ポジティブな感情や連帯感が、困難な変革を乗り越えるためには重要です。具体的な方法として、改革の進捗をデータだけで報告するのではなく、奮闘するチームの物語として共有する「ストーリーテリング」は、感情的な共感を広げるうえで効果的です。
改革の進捗管理と同等に、関わる人々の感情のマネジメントにも注力することが、改革を成功に導きます。
組織風土改革を実施した企業の成功事例
ここでは、実際に組織風土改革に取り組み、大きな成果を上げた国内企業の成功事例を3社取り上げて解説します。
キリンビール株式会社
三菱電機株式会社
トヨタ自動車株式会社
各社がどのような課題に直面し、いかにしてそれを乗り越えたのかを具体的に知ることで、自社の改革プランを検討する実践的なヒントを見つけてみてください。
キリンビール株式会社
キリンビールは、社長自らが率先する全社的な「対話」を通じて、「お客様本位」という原点を再浸透させ、業績のV字回復とエンゲージメント向上を両立させました。
同社はビール市場でトップシェアを誇る企業でしたが、徐々に業績が低迷し、2001年に首位の座から陥落してしまいました。これを機に「お客様のことを一生懸命考える風土にしよう」と、組織風土改革に着手しています。
具体的な取り組みとして、社長自らが若手社員や労働組合と直接対話する場である対話集会を全国の支店各地で設け、経営層と現場の信頼関係を構築していきました。あらゆる場面で伝えることで、次第に従業員まで意識改革の輪が広がり、新商品の発売、ヒットにつながりました。
この成功事例は、経営トップが現場とのコミュニケーションに本気で時間を投資し、率先して行動する姿勢が組織に一体感をもたらしたという教訓として参考になるでしょう。
【参考】
三菱電機株式会社
三菱電機株式会社は、全社的に組織風土改革に取り組んでいます。この改革は、品質不適切行為問題が発生した際に、閉鎖的な組織風土が一因とされたことを契機にはじまりました。
組織風土改革が最優先の課題として「上にものが言える風土」「失敗を許容する風土」「共に課題を解決する風土」の醸成を目指して、社長がプロジェクトリーダーとなり、改革を進めました。
具体的には、各拠点を訪問して従業員向け説明会を順次開催することで、トップメッセージを通じて経営層が率先して変革への意思を示し、社員一人ひとりが「自分ごと」として問題意識を持つよう促しました。
また、計画策定業務や会議等の⾒直し、評価基準を明示することで透明性を高めました。これらの取り組みを通じ、開かれた風土の構築と信頼回復を目指しています。
【参考】
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車は、長年にわたり持続可能な組織風土改革を実施してきた代表的な企業です。組織全体で持続的改善を行う「カイゼン」の文化を浸透させたことでも有名です。カイゼンとは、「現状に満足せず、今よりもっと良くする」という意味を持ち、作業や業務の中にあるムダを排除して作業や業務のやり方を変える活動を指します。
また、会社のリアルな姿を伝えるオウンドメディア「トヨタイムズ」も、トップの想いや会社の方向性を全従業員に直接届けられるという点で重要な役割を果たしています。
このような改革により、トヨタはグローバル市場での競争力を高め、持続的成長を実現しているのです。
【参考】
組織風土改革をプロに依頼するなら「HRBrain コンサルティング」

自社の組織風土改革を検討しているものの、何から手をつければよいかわからないと感じる企業も少なくありません。そのような場合、プロのコンサルティングサービスに依頼することも有効な手段です。
HRBrain コンサルティングは、組織人事の専門家集団として、企業の組織風土改革を強力にサポートしています。経営層へのヒアリングや現場の意見を取り入れながら、各企業の状況に合わせた等級制度、評価制度、報酬制度を設計します。
このサービスの大きな特徴は、制度の構築から運用、そして効率化を実現するクラウドシステムの導入までをワンストップで提供できる点です。さらに、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定支援やスキルマップの作成など、幅広い支援も可能です。
組織風土改革を確実に成功させたい場合には、ぜひ一度お気軽にご相談ください。詳細については公式ホームページもご覧いただけます。
自社の課題を洗い出して組織風土改革をはじめよう
組織風土改革は、社員のモチベーション向上、生産性向上、人材の定着、経営理念の浸透といった、企業に多くのメリットをもたらします。
もし、貴社が従業員エンゲージメントの低さ、部署間の連携不足、離職率の高さなどの課題を抱えているのであれば、それは組織風土改革を始めるべきサインかもしれません。
まずは、自社の現状の組織風土を正確に把握し、具体的な問題点と課題を洗い出すことから始めましょう。
もし、自社だけでの推進が難しいと感じる場合は、プロのコンサルティングサービスを活用することも有効な手段です。貴社に合った方法で組織風土改革に取り組み、持続的な成長を実現していきましょう。