#人事評価
2023/11/14

人事評価制度のつくり方 事前に把握しておきたいポイント

目次

    会社の成長に伴って「そろそろ人事評価制度を整備しなければ……」と焦りを感じ始める方も多いかと思います。しかしながら、いざ制度を構築するとなると、何から検討を始めればよいのか、どういったことに注意する必要があるのかなど、全体感を掴むことが難しいのが人事評価制度です。

    そこで本記事では人事評価制度を作るにあたって、どういった項目を検討する必要があるかについて、基本をまとめました。事前に押さえておくべきポイントを把握するため、ぜひ参考にしてください。

    ゼロから作る人事制度設計マニュアル

    人事評価の目的

    まずそもそも人事評価の目的は何でしょうか?目的を明確化することで、何を重視して評価制度を設計するべきかの指針となります。会社の経営戦略や組織の課題などによって目的は異なります。
    人事評価の一般的な目的は、①処遇を決めるため、②人材の育成のため、③より良い採用を行うため、④企業文化を作るための大きく4点です。ほかにも評価の目的と扱われるものもありますが、今回は主な目的である先程の4点について説明します。

    人事評価の目的

    処遇を決めるため

    まず1つ目は、基本給与やボーナスをどのように分配するかを決めるために評価をするという考え方です。

    どうすれば処遇が良くなるのかという基準が曖昧であれば、従業員の不満が溜まり、離職の大きな原因になります。処遇の良い従業員と悪い従業員の差を明らかにし、その差を納得してもらうために評価制度が整備されていることが重要です。

    人材の育成のため

    次に人材育成のために人事評価制度をつくるという考え方があります。仕事の中で何に注力するべきか、どういった能力を付けていくべきかということを評価制度によって明確化し、共通認識として持つことで、会社の求める方向に人材を育成しやすくなります。

    より良い採用を行うため

    人事評価制度を整備し、どういった従業員が評価されるかを明確化することで、採用時のミスマッチを防ぐことができます。実際に企業によっては、採用面談の際に自社の評価制度の詳細を説明し、どうすれば入社後に活躍ができるか、待遇が良くなっていくかというイメージをすり合わせを行っています。

    企業文化を作るため

    最後に、企業カルチャーを作っていくという目的です。企業独自の価値観であったり、行動規範を浸透させるために、企業文化にマッチした行動を評価します。「バリュー」や「クレド」といった形で価値観や規範を明文化している企業では、そういった「バリュー」や「クレド」にどれだけマッチした行動を取れたかを評価を行っています。

    これら4点が、うまく意識されていない人事評価制度を利用しているのであれば、評価制度の再設計を視野に入れてみるのもおすすめです。
    多くの企業で人事評価制度の設計経験がある人事コンサルタントにぜひ現状を相談してみて下さい。取るべきアクションややらなければいけないことが明確になるはずです。

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    人事評価の目的について、更に詳しく知りたい場合は、こちらで解説しております。
    効果的な人事考課とは?業績アップにもつながる3つのポイントを解説

    人事評価項目の設定

    人事評価項目の設定

    人事評価の目的が決まれば、実際に「何を評価するか」を決めます。主な項目は下記の3つです。

    成果評価

    成果評価は、主に、売上や利益など仕事の結果を評価するものです。例えば、営業であれば目標売上に対してどれだけ売上結果が出たかを定量的に評価します。

    仕事の結果が数値として出ることが少ない企画職や総務職では、「どういった課題ができたか」といった定性的な評価が中心になります。

    能力評価

    能力評価は、求められる仕事を遂行するために必要な能力や知識、資格を持っているかという点で評価をする方法です。

    企業によっては能力評価に似た「コンピテンシー評価」という形で評価を実施しています。これは従来の能力評価が、どんな能力や資格を「保有」しているかに重きを置いたものであるのに対して、コンピテンシー評価とは、高い成果を上げている社員の行動特性をインタビューなどで明らかにし、定義したものです。持っている能力ではなく、それを発揮した結果を現れるものを評価項目にしたものです。例えば、「事業目標に基づいた営業戦略を立て、個々のメンバーの目標にブレインクダウンし達成に導くことができる」など従来の能力評価よりも具体的であることが特徴です。

    情意評価

    仕事に対する姿勢を評価対象にしたものが情意評価です。例えば、「チームの方針に合った行動を行い、チームに対して有益な情報共有を積極的に行う」という風に、仕事に対する責任性や周囲とのチームワークなど、仕事を取り組む上で理想的な状態を決め、どこまで近い取り組みができたかを評価するものです。

    ▼「コンピテンシー」についてさらに詳しく
    コンピテンシーとは?活用メリットやデメリット、導入の流れを解説

    評価項目のウエイトの設定

    何を評価するかという評価項目を決定した後は、それぞれの評価項目のウエイト(比重)を決定していきます。ウエイトの配分は、等級や役職だけでなく、部署や職種ごとにもウエイトを調整します。等級や役職が上になると業績や成果で見られる比重が高まり、成果で図りにくいバックオフィスの部署や年次の低い社員に対しては、能力や情意面での評価を強めるなどの調整を行います。

    最終的には、そもそもの評価制度の目的に沿うようになっているかという視点を持つことが大切です。例えば「処遇を決めること」が大きな目的であれば、成果の基準を可能な限り明確化し、成果のウエイトは大きくなります。一方で人材の育成が大きな目的であれば、能力や情意の部分をしっかりと評価する必要があります。

    評価ウエイトの内容も企業によって様々です。
    事業全体の数値目標に関する評価を重視する企業や、理念への共感部分を重視する企業もあります。人事評価制度を設計する際には、どのようなウエイトでこの制度を運用するかを十分に決める必要があります。

    更に詳しく評価制度の設計について知りたい場合は、こちらのURLから確認できます。
    【人事コンサルタント監修】ゼロから作る人事制度設計マニュアル

    具体的に、どのような評価ウエイトが合っているか、相談してみるのもおすすめです。
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    多面評価(360度評価)のメリット・デメリット

    評価項目が決まれば、誰が誰を評価するかを決める必要があります。その際に、多面評価(360度評価)を行うべきか、検討される企業も多いと思います。

    360度多面評価について、詳しく知りたい場合は、こちらから確認できます。
    360度評価(多面評価)とは?メリットとデメリットや評価項目とフィードバック方法を解説

    多面評価とは、人事評価において従来の上司や人事からの評価だけでなく、同僚や部下からの評価も結果に反映させる方法です。一見、客観性が増え、良いことが多そうな多面評価も、メリットとデメリットが存在するため、よく検討する必要があります。

    多面評価のメリット・デメリット

    多面評価(360度評価)のメリット

    多面評価のメリットは評価の客観性が増すということです。上司など、評価者からしか見えなかった部分以外に、同僚や部下から見た被評価者の行動が評価できます。例えば上司の前では良い働きをしているものの、同僚や部下との仕事の進め方に難がある場合など、改善すべき部分が発見しやすくなります。

    また、人材育成の観点で同僚や部下からのフィードバックを受ける仕組みを作ることで、被評価者が自分の良い点や改善点をより把握することができるメリットもあります。例えば、評価者である上司よりも密に仕事をしている従業員が部下であった場合には、上司よりも部下の方が適切なフィードバックを与えられることもあります。

    多面評価(360度評価)のデメリット

    多面評価(360度評価)で発生しうるデメリットとしては、部下や同僚からも評価されることによって不必要な気遣いが生まれることです。社内でいわゆるゴマすりが行われたり、上司が部下に対して厳しく指導をすることができない現象が発生する可能性があります。

    また、評価業務のタスクが増えることも考慮する必要があります。具体的には、実際の関係性を考慮しつつ誰が誰を評価するのかという設計が必要なほか、評価するメンバーが増える分評価シートの取りまとめの工数が発生します。人事担当者の作業が増えることに加え、メンバーについても、通常業務に加え評価を行うタスクが発生してしまうため、その運用がきちんとなされるのか、その労力を使う必要があるのかということの検討が必要です。

    上記のメリット・デメリットや自社の組織の状況を鑑みながら、人事評価を実施する目的に多面評価か通常の評価形式のどちらがマッチしているかを検討する必要があります。

    更に詳しく評価制度の設計について知りたい場合は、こちらのURLから確認できます。
    【人事コンサルタント監修】ゼロから作る人事制度設計マニュアル

    評価をする担当者の選び方

    どのような形式の人事評価でも誰が誰を評価するかということは、評価結果を大きく左右する部分となります。ここでは、評価者の選定の際に重要な点をご紹介します。

    現場を見ている直属の上司が行うことがマスト

    基本的ですが、通常の評価でも多面評価でも最も重要なのは、必ず被評価者の現場の働きを見ている直属の上司が評価を行うことです。評価制度の構築にあたって重要なのは、従業員の納得が得られる仕組みであることです。自分の働きを分かってくれていないという不満がでないためにも、現場を見ている直属の上司が評価を行うべきです。

    冷静に判断のできる人

    評価をする立場のメンバーを選ぶ上では、冷静に判断ができる人を選ぶことも重要です。

    「自分の部下は遅くまで残って頑張っているから」という理由で高い評価を付けてしまったり、効率よく仕事を終わらせて変える人を評価しないようになってしまったりすると、生産性の悪い人が評価されるという結果を招いてしまいます。評価をする立場の人は、事前に決めた評価基準を元に、ドライに評価を下すことが求められます。

    多面評価の際にはより注意が必要

    また、多面評価の際には、より一層注意を払う必要があります。実際の働きを知っている人を入れることが必要です。

    懸念されることとしては、例えば、被評価者と評価者が個人的な確執があり、通常よりも厳し目に評価をしてしまったりといったことです。逆に普段の働きぶりを全く知らないため、可もなく不可もない評価になってしまうということもあります。現場のメンバー間の現状をよく知った上で設計をしなければ多面評価のメリットである「客観的で公平な意見を取りれる」ということができなくなるので注意が必要です。

    これらの条件を満たしていても、人事評価の評価者になる資格が十分にあるとは言い切れません。そのために「評価者研修」と呼ばれる制度が一般的です。

    評価者研修について更に詳しく知りたい場合は、こちらの記事で確認できます。
    人事評価制度研修はなぜ必要?研修の目的や被評価者メリットについて解説!

    自分が評価をする際に気をつけたいこと

    ここまで制度を設計する部分についてお話してきましたが、いざ自分が評価をする立場になった際に注意しておきたい点についても最後に少し触れておきます。

    私情を交えない、客観的データや行動で判断する

    評価の際には私情を交えないことです。被評価者との人間関係が良くないと同じ行動をしていても、どうしても悪い評価をしてしまうことがあります。

    人間であればどうしても個人的な好き嫌いはあるものですが、評価の際にはなるべく定量的なデータや行動から評価を行うことが重要です。

    評価基準のすり合わせの実施を行って精度を上げる

    また、評価者同士のすり合わせを行うことが重要です。従業員の評価を終えた後、評価確定前に評価者を行うマネージャーや人事担当者が集まり、どういった根拠でどういった評価を行ったかを共有します。それを行うことで、評価の甘辛を調整したり評価基準の標準化ができるようになります。

    直近の行動だけでなく、評価期間全体で判断する

    また、直近の行動だけでその期を判断してしまうことがあります。例えば、10月~3月が評価期間で3月末にその評価を行う場合、2月3月の行動を元にしか判断がされていないという具合です。こういった事態を防ぐためには、毎週や毎月被評価者と目標のすり合わせを行ったり、評価項目に対する進捗を見える化することが必要です。

    更に詳しく評価制度の設計について知りたい場合は、こちらのURLから確認できます。
    【人事コンサルタント監修】ゼロから作る人事制度設計マニュアル

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    また、人事コンサルタントのサポートから新しく人事制度を導入したものの、制度の運用が上手く行かず、新たに別の人事コンサルタント企業に依頼することで、課題が解決した事例もあります。

    人事制度に関する課題を感じた際には、一度HRBrain コンサルティングへの相談を検討してみてはいかがでしょうか。

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    ※2023年9月時点

    HR大学編集部
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