#人事評価
2024/04/26

360度評価とは?メリットとデメリットや評価項目とフィードバック方法を解説

目次

    360度評価は、立場の異なる複数人の従業員が、多面的に評価を行う評価方法で、直属の上司ひとりによる一般的な人事評価に比べ、評価の「公平さ」や「客観性」が得られる評価方法です。

    また、360度評価は「能力開発の手法」として誕生したことから、人材育成や人材の能力開発、従業員の自己改善を促す手法としても注目されています。

    360度評価を導入する目的や、メリット、デメリット、評価項目の設定方法と具体例、フィードバック面談の方法などについて解説します。

    360度評価実施マニュアル

    360度評価とは?

    360度評価とは、評価対象者に対して、上司、同僚、部下など立場の異なる複数人の従業員が、多面的に評価を行う評価方法で「多面評価」「360度フィードバック」とも呼ばれます。

    また、自分自身を客観的に評価することも360度評価に含まれます。

    一般的に、人事評価は、直属の上司が評価者となるのに対して、360度評価は、上司や同僚などあらゆる視点から業務の成績はもちろん、勤務態度や姿勢の評価を行うため、「自己評価」と「他者評価」とのギャップを知ることもでき、評価の「公平さ」や「客観性」が得られます。

    360度評価とは

    360度評価は「評価」と名前がついていますが、もともとは「能力開発の手法」としてアメリカで誕生しました。そのため、360度評価は昇給や報酬への反映よりも、人材育成に重きを置いていて、人材の能力開発を目的とした手法としても注目されています。

    360度評価が導入されるようになった背景には、「ワークスタイルの多様化」と「組織構造の変革」があげられます。

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    360度評価が注目される理由

    360評価が注目されるようになった背景について確認してみましょう。

    360評価が注目されるようになった背景には、主に2つの理由があります。

    360度評価が注目される理由

    • ワークスタイルの多様化

    • 組織構造の変革

    ワークスタイルの多様化

    360度評価が注目されるようになった背景には、「ワークスタイルの多様化」があげられます。

    これまで評価は、上司が部下に対して直接的に行うことが、一般的な方法でした。

    しかし、リモートワークの導入や、働き方改革によって、労働時間や勤務場所の自由度が高まるなど、ワークスタイルが多様化し、出社を前提とした、上司ひとりによる従来の評価制度だけでは、納得度の高い公平な評価をすることが難しくなってきてます。

    上司ひとりだけでなく、同僚などさまざまな立場からの声を評価に反映することで、評価対象者は公平で適切な評価がなされていると感じることができます。

    また、360度評価を取り入れることで、上司が直接見られない従業員の行動や特性、作業工程、作業過程、成果などを評価できるようになります。

    このように、360度評価は、ワークスタイルの多様化による、新しい働き方に適応できる評価であるという点で注目されている評価制度です。

    組織構造の変革

    360度評価が注目されるようになった背景には、「組織構造の変革」があげられます。

    企業の組織構造が、年功序列の考え方が強く反映された「ピラミッド型組織」から、成果主義の「フラットな組織」へと変革してきていることをうけて、さまざまな企業で、360度評価が注目されるようになりました。

    従来の人事制度は、年功序列の考え方が強く反映され、評価の際に、従業員の成果よりも年齢や勤続年数が重視されていたため、従業員の評価への納得度が低下していました。

    年功序列が色濃く反映された評価から、従業員の実力に見合った「成果主義」の評価をするために、360度評価を取り入れる企業が増えたといえます。

    従来主流だった年功序列制度は成果を出しても評価に反映されにくいため、従業員の評価への納得度は低下します。

    従業員の実力を適切に評価する成果主義が主流になり、多面的に評価できる360度評価への注目度が高まっています。

    360度評価の主な目的

    360度評価を実施する主な目的について確認してみましょう。

    360度評価の主な目的

    • 客観的で公正な評価を行うため

    • 人材育成のため

    • 行動規範や企業理念の浸透のため

    • 従業員満足度向上のため

    客観的で公正な評価を行うため

    360度評価は、上司ひとりの評価ではなく、多面的な評価を行います。

    そのため、評価対象者の行動や特性を正しく把握できるだけでなく、より客観的で公正な評価ができ、評価対象者は評価に対してより納得感を得やすくなります。

    上司ひとりの評価の場合、評価のバラつきや、上司との人間関係によって、バイアスがかかってしまう場合があります。特に、上司との関係が良好でない場合、評価対象者は評価に不安を抱えてしまうことがあります。

    また、プレイヤーとしては能力が高く、上司から高い評価を受けている従業員でも、チームプレーが苦手で、同僚や部下からの評価が上司からの評価ほど高くはない場合もあります。

    その場合、上司ひとりの視点での評価では、従業員の能力を多面的に評価することが難しくなってしまいます。

    そのため、評価対象者に対して多面的な評価を行う、360度評価が実施されます。

    人材育成のため

    360度評価は、直属の上司からの評価だけでなく、多面的な評価を通して、さまざまな意見をもらえます。

    同僚や上司からだけでなく、部下から上司を評価することも、360度評価に含まれています。

    このように、立場の異なる従業員から評価を受けることで、周囲が自分をどのように見ているのか、どのような能力が不足しているのかが明確になります。

    360度評価は、特に部下が上司を評価する場合に、効果が発揮されます。

    部下の立場から上司を評価すること自体に戸惑いを感じる場合もありますが、360度評価を取り入れ、部下が中立の立場で上司を評価することで、上司は部下との関わり方を見つめ直す機会となり、上司自身の成長にもつながります。

    また、360度評価では「自己評価」も行うため、「自己評価」と「他者評価」とのギャップに気づくことができます。

    さまざまな立場の人から評価を受けることで、より客観的に自分と向き合うことができ、改善行動や人材育成につながるため、360度評価が実施されます。

    行動規範や企業理念の浸透のため

    360度評価を行うことで、日頃から周囲の人を観察し積極的に関わる習慣が生まれます。

    また、行動規範や自社の理念紐付いた質問事項を設定することで、評価を通して価値観の浸透を図ることもできます。

    行動規範に沿った仕事ができているかどうかは、数値で判断することができません。

    しかし、360度評価を通して、複数の従業員の視点から行動規範を守れているかの評価をすることで、行動規範に沿った仕事ができてるかの判断ができるようになります。

    また、上司のみが行動規範の評価を実施する場合、適切な評価を実施できない可能性があります。

    特に、リモートワークが主流の企業では、上司は部下の行動を細かく確認することが困難です。

    部下に関する限られた情報で評価を実施してしまうと、評価の信憑性が低下してしまいます。

    同僚などさまざま立場から行動規範に関する評価を実施するために、360度評価が実施されます。

    ▼「行動規範」とは

    「行動」を通じた基準や規則のこと。360度評価は、行動規範を守れているかを判断する目的で取り入れられることもあります。

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    従業員満足度向上のため

    上司ひとりによる、従来の評価体制では、従業員が上司に対して不満を抱いてしまう場合があります。さらに、成果や行動を鑑みた評価が実施されていない場合、従業員の評価への納得度が低下し、従業員満足度は下がる一方です。

    360度評価を取り入れ、複数人に評価されることによって、自身の評価が多面的になり、評価に対する納得度も上がります。

    また、評価を通して自身を客観視することができるようになり、今まで気づいていなかった評価ポイントや努力すべき点を見つけやすくなります。

    これらの発見は、仕事への「モチベーションの向上」や「キャリアアップ」に役立つでしょう。

    360度評価は匿名で実施されることが多いため、仕事の成果や日々の行動などに基づいて、従業員間で率直に評価をしあうことが可能です。

    評価に対して従業員が真摯に向き合う体制が整えば、従業員満足度の向上につながるでしょう。

    また、部下による評価を受けた上司も、部下の働きやすさの向上を検討する機会となります。

    360度評価は、上司と部下の双方の従業員満足度を向上させる目的でも取り入れられる評価制度です。

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    360度評価のメリット

    360度評価を導入することで、さまざまなメリットが期待できます。

    360度評価を導入することで得られるメリットについて確認してみましょう。

    360度評価のメリット・デメリット

    360度評価のメリット

    • 評価に対する納得感が高まる

    • 自発的に改善行動が促される

    • 帰属意識の醸成を図れる

    • 社内コミュニケーションが活性化する

    評価に対する納得感が高まる

    360度評価は、上司ひとりの評価による従来の人事評価とは異なり、異なる立場の複数の従業員による評価のため、「客観性」や「公平さ」が高まり、評価対象者の評価に対する「納得感」が高まります。

    評価結果によっては、評価対象者にとって好ましくない場合もありますが、上司ひとりの意見ではなく、複数の従業員による評価であった場合は、評価結果を受け入れることができる可能性が高まります。

    自発的に改善行動が促される

    360度評価のフィードバックを通して、評価対象者は、「自己評価」と「他者評価」のギャップを知ることができ、自己認識を正すきっかけが得られます。

    多面的な評価によって、自身の強みと弱みや、自分自身が何をいかし、何を改善すべきなのかを客観的に把握でき、「自発的な改善行動」を行うことができるようになります。

    また、上司ひとりの評価では気づけなかった、同僚や部下、顧客それぞれの目線での従業員の強みや弱みを把握するきっかけにもなるため、人材育成の方針を改善したり、具体的な改善行動を想定しやすくなり、これまでの認識を改めるきっかけにもなります。

    帰属意識の醸成を図れる

    360度評価によって、正当な評価がされていると感じられることで、従業員のモチベーションの向上や、他の従業員への信頼感が高まります。

    評価者として人事評価に参加することで、自身の意見が尊重されていると感じられたり、組織との関わりを強く感じることができ、組織の一員であるという自覚を持つことができるようになります。

    また、360度評価を通して、コミュニケーションの活性化や、組織との一体感を感じることで、従業員の帰属意識の醸成を図ることは、「従業員エンゲージメントの向上」につながります。

    さらに、従業員エンゲージメントが高まることで、生産性の向上や、従業員の成長、職場の雰囲気の改善やコミュニケーションの活性化、離職率の低下などのメリットが得られます。

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    社内コミュニケーションが活性化する

    360度評価を通して、社内コミュニケーションが活性化されるメリットがあります。

    360度評価は、部下から上司への率直な意見を拾い上げることができます。

    また、360度評価の「フィードバック面談」や「1on1ミーティング」を通して、上司と部下とのコミュニケーションの機会が増えます。

    上司と部下とのコミュニケーションが増えることで、部署内での人間関係を把握することもできるようになるため、従業員間での人間関係の問題にも気付けるようになります。

    また、社内のコミュニケーション不足が課題で、活発なコミュニケーションを企業風土として根付かせていきたいと考えている場合、積極的なコミュニケーションを行動規範として、360度評価の評価項目に取り入れることで、根付かせて行くことも可能です。

    360度評価のデメリット

    360度評価にはさまざまなメリットがある一方で、複数の従業員が評価に関わることから、運用工数がかかるなどのデメリットもあります。

    360度評価のデメリットについて確認してみましょう。

    360度評価のデメリット

    • 運用の手間が増える

    • 不適切な評価が行われる可能性がある

    • 上司が部下に厳しくなくなる可能性がある

    運用の手間が増える

    360度評価は、ひとりの評価対象者を複数名で評価するため、評価シートの作成や回収、集計にかかる工数が通常の人事評価と比較して多くなります。

    従業員のなかには、通常の業務に追われながら、慣れない評価作業を行うことに負担を感じてしまうこともあります。

    また、360度評価実施後の評価結果やフィードバックシート、面談履歴といった、数多くのデータ管理をどのように行っていくのかも課題になります。

    そして、360度評価に限ったことではありませんが、人事評価に記載されたシートには対象者への評価が記載されており、取り扱いには注意が必要で、「匿名性をどう担保するのか」という点も運用上の課題になります。

    不適切な評価が行われる可能性がある

    360度評価では、これまで評価を行ったことがない従業員も、評価を行うことになります。

    そのため、主観が評価に影響を与え、不適切な評価が行われてしまう可能性があります。

    初めて評価を行う従業員は、客観的な評価に慣れていないため、業務とは関係のない主観的な評価や、感情に左右されて評価を行ってしまう恐れがあります。

    親しい同僚や関係値が良好な上司には良い評価をつけ、逆に関係値が良好ではない同僚や上司には厳しい評価をつける従業員が出てくる可能性もあります。

    また、評価に慣れていないため、評価対象者全員に「肯定的な評価」を付けておけばよいだろうと考えてしまう場合もあります。

    360度評価は匿名の場合が多いですが、それでも、自分の行った評価が評価対象者にバレてしまわないかという恐れから、率直な評価を行えない場合もあります。

    上司が部下に厳しくなくなる可能性がある

    360度評価では、上司も部下から「評価される立場」になります。

    一般的に、部下は上司の業務の全ては把握していないため、部下は日頃の上司の部下に対する指導の印象のみで評価を行ってしまいがちです。

    そのため、厳しい指導をする上司は、評価で不利な立場に立たされてしまう場合があるため、評価を気にして、上司が部下に厳しくなくなってしまう可能性があります。

    360度評価は、周囲の従業員から評価を受けるため、今までの業務や人間関係に影響を与えることがあります。

    ▼「360度評価の失敗を防ぐ方法」についてさらに詳しく
    360度多面評価って意味あるの?バレない?失敗を防ぐための準備とは

    360度評価のデメリットを解消する方法

    360度評価を導入する際は、「運用の手間が増える」「不適切な評価が行われる可能性がある」「上司が部下に厳しくなくなる可能性がある」といった、360度評価のデメリットを解消するための対策を事前に検討しておくと良いでしょう。

    360度評価のデメリットを解消する方法として、意識しておくべきことについて確認してみましょう。

    360度評価のデメリットを解消する方法

    • 360度評価の導入目的を従業員に説明し理解を得る

    • 360度評価の研修を実施し適切な評価ができるようにする

    • 360度評価システムを導入し運用工数を削減する

    360度評価の導入目的を従業員に説明し理解を得る

    360度評価は、同僚や部下などさまざまな立場から評価が実施される点で、従来の評価制度とは大きく異なります。

    そのため、360度評価の導入目的を従業員に説明せず導入を進めてしまうと、従業員の困惑を招いてしまいます。

    360度評価の導入が決まったら、まず最初に、従業員全体に360度評価について周知する機会を設けましょう。

    360度評価の導入背景や目的、評価項目と評価の反映方法などを正しく理解できるよう、丁寧な説明が必要です。

    目的意識もなく形式的に360度評価を実施してしまうと、従業員同士で示し合わせて評価し合うといった、360度評価の本来の導入目的から逸れた事象が発生してしまう恐れがあります。

    360度評価のデメリットをカバーするためには、従業員に360度評価の目的をしっかりと理解してもらうことが重要です。

    360度評価の研修を実施し適切な評価ができるようにする

    360度評価は上司だけでなく、同僚や部下などのさまざまな従業員が評価に関わります。

    従業員の中には、他者を評価をした経験がなく、誰かを評価すること自体に戸惑ってしまう従業員もいるでしょう。

    評価を実施した経験のない従業員に対しては、評価方法に関する研修を実施するようにしましょう。

    評価時に重要視する項目や主観的な判断を行わないなどの注意事項を指導することで、効果的に360度評価を実施することができるでしょう。

    360度評価の目的でもある育成の観点で、効果がじゅうぶんに発揮されるよう、研修の実施など、評価の質を高められるような工夫をするようにしましょう。

    360度評価システムを導入し運用工数を削減する

    360度評価は、ひとりの評価対象者を複数名で評価するため、評価シートの作成と回収、集計などにかかる工数が、通常の人事評価と比較して多くなってしまいます。

    360度評価は評価後のフィードバック面談や、1on1での改善アクションの進捗確認が大切になります。他者からの評価や面談履歴を確認する場合、紙やエクセルファイルなどの管理では、データが一元管理されておらず面談記録をさかのぼって確認することが難しく、正確なフィードバックをすることができない場合もあります。

    また、360度評価は社内の複数の従業員が評価を行うため、匿名性の担保が大切になってきます。匿名性が担保されていると、従業員が安心して評価を行える環境を整えるためにも、360度評価システムを導入することをおすすめします。

    ▼「360度評価システム」についてさらに詳しく
    360度評価システムとは?導入のメリットと比較ポイントまとめ

    360度評価が効果的な企業

    360度評価を導入することで、特に効果がでやすい企業の特徴について確認してみましょう。

    360度評価が効果的な企業

    • 上司ひとりの視点では適正な評価がしきれない環境

    • 社内コミュニケーションや風通しに課題を感じている

    上司ひとりの視点では適正な評価がしきれない環境

    • ひとりの上司が抱える部下の人数が7名以上おり上司ひとりでの評価が難しい

    • 上司が忙しいなどの理由で「部下の状態が把握できない」状況が発生し部下から不満が出ている

    • 上司がプレイングマネージャーのため部下の行動観察にじゅうぶんな時間を割けない

    • 評価対象者が組織横断のプロジェクトに参加しているため上司が行動を把握しにくい

    などの理由でひとりの上司が評価対象者の行動を把握しにくい状況にある場合、複数の従業員の視点から評価を行う、360度評価は有効な評価手段といえるでしょう。

    社内コミュニケーションや風通しに課題を感じている

    • 成果主義でお互いへの関心が薄く従業員同士の協力姿勢が見られない

    • 積極的な発言が少なく「言われたことをやればいい」という風潮がある

    • 社内のコミュニケーションが希薄であることが離職率の高さにつながっている

    • 上司と部下や従業員同士のコミュニケーションが希薄

    特に、部下から上司への意見を拾い上げられるため、社内コミュニケーションに課題を感じている場合には、360度評価は効果的なツールと言えるでしょう。

    また、コミュニケーションの活性化は、人材の定着や成果を発揮しやすい組織づくりに欠かせない要素です。

    活発なコミュニケーションを企業風土として根付かせていくための仕組みづくりとして、360度評価を導入することも有効です。

    360度評価の導入手順

    360度評価の導入手順について確認してみましょう。

    360度評価の導入手順

    1.360度評価の導入目的を明確にする

    360度評価の導入目的が、育成ではなく評価を目的とする場合は、人事評価への落とし込み方を検討します。

    2.360度評価の導入範囲を決める

    360度評価を全社で導入するのか、管理職のみを対象とするのかなどを決定します。

    3.360度評価の実施方法を検討する

    360度評価を紙ベースでのアンケート形式で実施するか、オンラインでの実施にするかなどを検討します。

    4.評価項目を設定する

    評価者全員が理解できる内容を評価項目として設定します。

    5.360度評価の実施を従業員に周知する

    360度評価を実施する目的や効果を従業員に周知します。

    6.360度評価を実施する

    360度評価の実施期間の設定もこの段階で設定します。

    7.360度評価の評価内容を集計する

    8.360度評価の評価内容の分析とフィードバックを実施する

    360度評価の評価内容を分析し、従業員へのフィードバック面談を実施します。

    1〜8の手順を客観的に分析し、次回の360度評価で実施すべき施策を検討します。

    360評価は一度実施したら終わりではなく、導入手順にしたがって「PDCA」サイクルを回しながら、継続的に360度評価を実施することで、より精度の高い評価を実施することができるようになります。

    360度評価の導入で重要なポイント

    360度評価の導入を成功させるために、重要なポイントについて確認してみましょう。

    360度評価の導入で重要なポイント

    • 360度評価の試験的な運用

    • 360度評価の研修の実施

    • 360度評価の評価項目の設定

    • 360度評価のフィードバックと解決策の実施

    360度評価の試験的な運用

    360度評価を導入する際は、まず管理職を対象として試験的な運用から始めることを推奨します。

    導入当初から全従業員を対象に360度評価を実施してしまうと、準備に相当な時間と工数を必要としてしまいます。

    360度評価の研修の実施

    360度評価を導入する際は、従業員向けに導入背景や目的、評価項目と評価の反映方法などを周知する説明会の実施や、他者を適切に評価するための研修を実施しましょう。

    従業員が360度評価の目的を理解しないまま評価を実施してしまうと、360度評価は形骸化し、実施する意味が薄くなってしまいます。

    360度評価の評価項目の設定

    360度評価を実施する際は、まずは評価項目を設定しましょう。

    目安として評価対象者1名に対しての評価が「10分程度」で完了できる項目量が適切です。

    評価項目が膨大になってしまうと、評価に相当な時間を要してしまい、360度評価の実施自体が従業員の負担になってしまいます。

    ただし、評価項目を絞りすぎることは避けましょう。

    評価項目数が少なすぎると、具体性や網羅性のない評価になってしまいます。

    360度評価のフィードバックと解決策の実施

    360度評価を導入し実施する際は、フィードバックの内容を「行動計画」に落とし込めるよう、フォローする必要があることを念頭に置いておきましょう。

    360度評価は、評価後の「フィードバック」と、解決策である「行動計画」の決定と実施が非常に大切です。

    360度評価の評価結果を漠然とフィードバックするだけでは、次の評価までの目標が明確になりません。

    また、フィードバックの内容を誤って認識してしまうと、見当違いの対策を実施してしまう可能性があるので、注意しましょう。

    360度評価の具体例

    360度評価で設定する評価項目について、具体例を確認してみましょう。

    360度評価の評価項目は「行動状態」を示す内容を設定

    360度評価の評価項目を設計する際は、「行動状態」を示す内容を設定するようにし、成果(結果)だけではなく、結果に至るまでのプロセス(行動)を評価するようにしましょう。

    リーダーシップ(部下⇒上司)

    「十分なリーダーシップを持っているか」というのではなく、具体的な行動を示すような項目を設定しましょう。

    • 常に目標とする方向性や方針を部下に説明しているか

    • 組織の成果や成長のために先頭に立って行動しているか


    協調性(一般職⇔一般職もしくは上司)

    「協調性があるか」というのではなく、具体的な行動を示すような項目を設定しましょう。

    • 意見の異なる同僚とも協力して仕事を進めているか

    • 周囲のメンバーの立場や状況を考えながら業務をおこなっているか

    360度評価の項目例:HRBrain 360度評価システム

    360度評価の項目例として「HRBrain 360度評価システム」の360度評価項目を確認してみましょう。

    管理職の評価(部下⇒上司)

    組織戦略(部門ミッションの理解、部下の役割明示)

    • 期待される役割を部下に対して具体的に告げているか

    部署内コミュニケーション

    • 仕事のことで気軽に話しかけることができるか?

    人材育成

    • 育成機会の提供、業務に対するフィードバックをされているか?

    一般職の評価(一般職⇔一般職もしくは上司)

    メンバー間のコミュニケーション

    • 周囲との会話はどの程度あるか?

    仕事の進め方

    • 目標達成のために有効な施策を考え、実行しているか?

    仕事の判断の仕方

    • 行動規範にそった適切な判断ができているか?

    360度評価システムの評価項目は、実施目的や社内の状況に合わせて、自由にカスタマイズすることができます。また、あらかじめ設定されている、設問テンプレートを活用することも可能です。

    HRBrain 360度評価システム

    360度評価の評価項目を設定する際のポイント

    360度評価の評価項目を設定する際のポイントについて確認してみましょう。

    360度評価の評価項目は、ベンチャー企業や中小企業など組織の状況によっては短期間で変化をすることがあるため、柔軟に変更できるようにしましょう。

    360度評価は業務時間に実施されるため、評価項目が多すぎたり、評価に時間が掛かってしまうものは、評価者である従業員の負担にもなってしまうため、適していません。

    ですが、逆に評価項目数が少なすぎると、網羅性に欠けてしまい、適切な評価ができない可能性もあるので、注意するようにしましょう。

    360度評価をの評価項目を設定する際のポイント

    1. 評価対象者1名に対して10分程度で回答できる項目量を設定する
    2. 管理職と一般社員で異なる評価項目を設定する
    3. 評価項目の数を多くしすぎない
    4. 回答は「どちらとも言えない」を含む5段階で評価する
    5. 選択式の設問と自由記入の設問を設ける

    また、項目ごとにウェイトを変更するかなどの検討も含めて設計するようにしましょう。

    360度評価のフィードバックのポイント

    360度評価は、もともと人材育成や能力開発を目的とした評価方法です。

    そのため、360度評価を実施しただけでは、360度評価の持つメリットを得ることができません。

    360度評価実施後は、1on1でのフィードバック面談の機会を設けるようにしましょう。

    フィードバック面談をすることで、評価対象者は自身を客観的に見ることができるようになります。

    また、フィードバック面談の際に、評価を確認できるシートがあると、改善点を踏まえた具体的な改善策を「行動計画」へと落とし込むことができ、有意義なコミュニケーションを取ることができるでしょう。

    さらに、フィードバック面談の際に、押さえておくべき3つのポイントについて確認してみましょう。

    フィードバック面談のポイントとコメント例

    • 主観を入れず事実だけを伝える

    コメント例「この項目は、自身の評価が5に対して、周囲の評価は2から3とギャップがあります。」

    • 要因については評価対象者本人に考えさせる

    コメント例「周囲の評価が2から3だった要因が何か思い当たりますか?」

    • 具体的な改善策を「行動計画」に落とし込む

    コメント例「具体的に、今日から何を変えていったら良いと思いますか?」

    特に、社内コミュニケーションやメンバー育成に課題を感じている場合は、人事評価のタイミングだけでなく、月1回などの頻度で「1on1ミーティング」を実施し、「行動計画」の進捗について確認するようにしましょう。

    ▼「1on1ミーティング」についてさらに詳しく
    1on1とは? 従来の面談との違いや効果を高めるコツ
    1on1ミーティング入門書

    ▼「フィードバック面談」についてさらに詳しく
    フィードバック面談とは?マイナス評価の部下への伝え方も解説!

    360度評価の導入事例

    360度評価を導入している企業の、具体的な導入事例について確認してみましょう。

    アサヒビール株式会社

    アサヒビール株式会社では、2010年から360度評価を導入しています。

    360度評価導入当初は、組織長や部門長クラスを対象としていましたが、現在では部下がいる管理職やチームリーダーにも対象を広げ、年1回の頻度で360度評価を実施し、「強い管理職と職場づくり」を目的に、人材育成の制度として活用しています。

    質問項目は、WILL(意思の表明)、SEE(問題の感知)、THINK(戦略の構築)の3分野で構成される「ビジョンマネジメント」と、PLAN(業務の計画)、DO(業務の遂行)、CHECK(成果の検証)、ACTION(業務の改善)の4分野からなる「ジョブマネジメント」に関する質問の全24項目で構成され、5段階で評価をします。

    評価者は上司、部下、同僚の合計10人以内で、人事部が指名し、評価は匿名で誰が回答したかはわからないようになっています。

    また、360度評価の実施後に、「リーダーミーティング」を実施し、同じ職種の従業員15名前後で集まり、今後自らが実施する「アクションプラン」を立てることでマネジメント力の向上を図っています。

    アサヒビール株式会社

    株式会社ディー・エヌ・エー

    株式会社ディー・エヌ・エーでは、マネジメント層を対象に、評価ではなくマネージャーとしての人材育成(能力開発)を目的として、360度評価を導入しています。

    同社の360度評価で特徴的な点は、実名制である点です。

    これは、行動規範の一つである「発言責任」(率直に思ったことはなんでも言う)に則って、包み隠さず正々堂々と意見を伝えるようにしているためです。

    360度評価の「マネージャーとしての評価軸」は

    • ゴールを示す

    • 適切に任せる

    • 支援をする

    • 結果を出す

    • インテグリティ(誠実さ)が高い

    の5点の実践度についてコメント付きで評価を実施します。

    360度評価を実名制にすることで、改善サイクルが早まり、その後のコミュニケーションも活発になるという利点があります。

    株式会社ディー・エヌ・エー
    従業員とともに | 【DeNA】サステナビリティ

    ▼「インテグリティ」についてさらに詳しく
    「インテグリティ」を知っていますか?組織に求められる「誠実さ」の重要性

    アイリスオーヤマ株式会社

    アイリスオーヤマ株式会社では、人事評価と人材育成の両面で「公正さ」を重視して、2003年から「360度評価」を導入しました。

    「360度評価」導入当初は、人材育成ツールとして管理職のみを対象としていましたが、5年後には、パートや契約社員を含めた全社員に対象を拡大しました。

    また、主任級以上の幹部社員用と、一般社員用で評価項目や運用方法、利用目的を変えて運用をしています。

    幹部社員については人事評価と人材育成に「360度評価」を利用し、年1回の「リーダー研修」の結果と「360度評価」の結果をもとに、人事評価委員会で査定を行い、幹部社員の昇格と降格を決定しています。

    幹部社員用の質問内容は「業務力」「実力」「指導力」「人間力」の4分野に分かれ、設問数は計12問、評価者は10〜30人を人事部が選出します。

    企業情報|アイリスオーヤマ
    人事評価制度

    360度評価実施マニュアル

    360度評価は数ある評価制度の1つです。評価制度を見直す際には、自社の状況と照らし合わせながら、最適な評価制度を構築する必要があります。

    360度評価は、評価対象者に対して、上司・同僚・部下などの、立場のことなる人が多面的に評価を行うため、評価に対する納得感や評価を通して人材育成や能力開発を行うことが可能です。

    「360度評価マニュアル」では、360度評価の実施目的やメリット、開始までのステップを解説しています。

    360度評価実施マニュアル

    360度評価実施マニュアルで分かること

    • 360度評価とは

    • 360度評価のメリットと実施にかかる課題とは

    • 360度評価を成功させるための3つのポイント

    • 360度評価の運用を3STEPで解説

    • 360度評価STEP別チェックシート

    • 360度評価システム/コンサルティングサービス紹介

    360度評価の成功を「360度評価システム」で

    360度評価は多くのメリットがある一方で、実施や運用に多くの時間か工数がかかり、データ管理が難しい、他の人事評価と比較して成果が見えるまでに時間が掛かるなどのデメリットもあります。

    360度評価を成功させるために、「360度評価システム」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

    「HRBrain360度評価」は、360度評価の導入、効率化、データ活用までを実現します。

    HRBrain360度評価の3つのポイント

    • 設問設定から集計・可視化までを効率化

    評価シートの設定や配布・集計までをクラウド上で完結し、業務効率化を実現します。

    また、未回答者へのアナウンスも行えます。設問テンプレートも完備しているので、初めての運用でも安心です。

    • 収集したデータを他の人材データと一元管理

    人材データベース機能で「360度評価」で収集したデータをスキル等の人材データと一元管理することが可能です。マネジメント層の育成や人材育成、人事評価への反映もできるので、評価制度の向上にもつながります。

    • 設問設計から集計までがオールインワン

    設問設計からデータ分析までをオールインワンで行えるので、「360度評価」実施後のフィードバックや行動計画の作成、研修の実施にも役立ちます。

    ※コンサルティング支援、研修の有料オプションあり

    HRBrain360度評価の主な機能

    • 柔軟な評価設定機能

    • 回答管理機能

    • 個人ごとの結果閲覧機能

    • スコア集計機能

    • CSVインポート機能

    • スマホ対応機能

    HR大学編集部
    HR大学 編集部

    HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。