組織コミットメントとは?3つの種類と高める注意点を解説
組織状態の把握から分析・課題抽出までワンストップで実現
- 組織コミットメントとは?定義と類似用語との違い
- ビジネスシーンにおける組織コミットメントの意味
- エンゲージメント・モチベーションとの違い
- 組織コミットメントの3つの種類
- 情緒的コミットメント
- 存続的コミットメント
- 規範的コミットメント
- 組織コミットメントを高めるメリット4選
- 社内のコミュニケーションが活性化する
- 生産性が向上する
- 社員の離職率が低下する
- イノベーション促進・チーム力向上につながる
- 組織コミットメントを高める5つの具体策
- 企業理念やビジョンを共有する
- 働きやすい職場環境を整える
- 能力・スキルを活かした人員配置を行う
- ボトムアップが認められる仕組みを整える
- 従業員同士のコミュニケーションの活性化を図る
- 組織コミットメントを高める際の3つの注意点
- 変化を拒む保守的な組織になってしまう
- 過度な忠誠心により不正を助長するおそれがある
- 存続的コミットメントによりモチベーションが低下する
- 組織コミットメントを測定するなら「HRBrain 組織診断サーベイ」を活用しよう
- 組織コミットメントを正しく理解して効果的に向上させよう
評価制度を整えても離職率が上がらず、エンゲージメント調査をしても原因が特定できないといった悩みを抱えていませんか?
その課題を解決する鍵は、従業員の貢献意欲を示す「組織コミットメント」にあります。この記事を読めば、その理論と実践方法が明確になるでしょう。
本記事では組織コミットメントの定義やエンゲージメントとの違い、理論の3要素を用いた尺度での分析、離職を防ぎコミットメントを高める方法を解説します。
組織コミットメントの測定に欠かせないツールである『HRBrain 組織診断サーベイ』も紹介するため、従業員が主体的に動く強い組織を築きたい人はぜひ参考にしてみてください。
組織コミットメントとは?定義と類似用語との違い
組織コミットメントとは、企業と従業員が長期的な関係を築くにあたり、重要とされる要素のひとつです。
ここでは、組織コミットメントの定義を正しく理解し、混同されがちなエンゲージメントやモチベーションといった類似用語との違いを解説します。本当に解決すべき課題を発見し、効果的な打ち手を考えるための参考にしてみてください。
ビジネスシーンにおける組織コミットメントの意味
ビジネスシーンにおける組織コミットメントとは、従業員が所属する企業に対して抱く心理的な絆の強さや、組織のために貢献したいという自発的な関与の度合いを示す概念です。これは、単なる業務の遂行意欲ではなく、組織の方針や価値観に共感したうえで自発的に貢献したいという姿勢を含みます。
たとえば、ミッションに共感して入社した社員が自ら積極的に行動するのは、組織コミットメントが高い状態です。企業がこの状態を維持できれば、離職防止やモチベーション向上の施策を打ちやすくなります。
組織診断ツールでコミットメントの度合いを可視化することで、組織の課題や改善点も見えやすくなるでしょう。
エンゲージメント・モチベーションとの違い
組織コミットメントはエンゲージメントやモチベーションと混同されることがありますが、以下のようにそれぞれ意味が異なります。
概念 | 詳細 |
---|---|
エンゲージメント | 仕事や組織に対するポジティブで満足のいく状態 |
モチベーション | 特定の目標達成に向けた、比較的短期的なやる気や動機づけ |
組織コミットメント | 組織そのものに対する長期的で安定した愛着や関与を指す |
これらの違いを理解せずに施策を打つと、「仕事は面白いが、会社の理念には共感できない(高エンゲージメント/低コミットメント)」という優秀な人材の離職を防ぎにくくなる状況に直面します。
それぞれの違いを正確に理解したうえで、組織コミットメントに焦点を当てて分析することが、問題解決への最短ルートとなるでしょう。
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組織コミットメントの3つの種類
組織コミットメントには、「情緒的コミットメント」「存続的コミットメント」「規範的コミットメント」という3つのタイプがあります。
この3つの違いを理解することで、各従業員の思考や行動の背景を正しく読み取り、効果的な人材マネジメントや職場改善につなげることができます。ここでは、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
情緒的コミットメント
情緒的コミットメントとは、会社やメンバーに対する愛情や愛着に基づいて形成される理想的な心理状態です。
このコミットメントが高い従業員は、与えられた業務をこなすだけでなく、組織の目標に対して自ら進んで貢献しようとします。
情緒的コミットメントが高い従業員は、個人の高いパフォーマンスにつながるだけでなく、周囲の士気を高めてイノベーションの創出を促進するなど、組織全体によい影響を及ぼします。
ビジョンの共有やコミュニケーションの促進が、このタイプのコミットメント向上に効果的です。
存続的コミットメント
存続的コミットメントとは、「今、会社を辞めると経済的に損をする」という打算的な計算に基づいて組織に留まる心理状態です。
人事担当者が最も注意すべきなのが、このコミットメントです。存続的コミットメントは、損得勘定に基づいて形成されるため、福利厚生や労働条件などが影響しやすい点が特徴です。そのため、労働時間や労力に対して対価や報酬が見合わないと判断されると、存続的コミットメントは大きく低下するおそれがあります。
存続的コミットメントが高いだけでは、健全な組織運営とはいえないため、制度や待遇に依存しすぎないように情緒的なつながりや成長を実感できる環境を整える工夫が求められます。
規範的コミットメント
規範的コミットメントとは、「会社から受けた恩があるから、ここに留まるべきだ」という忠誠心や倫理観、義務感に基づいた心理状態を指します。理屈や理由などは関係なく、従業員が無条件で会社の決まりごとに従おうとする状況です。
このタイプのコミットメントが高いと、多少の不満があっても組織に忠誠心を持って働き続ける傾向があります。
とくに、日本企業では「新卒で採用してもらった恩義」「上司に育ててもらった義理」などの形で馴染み深い感覚かもしれませんが、そのような義務感が過剰になるとストレスや燃え尽き症候群につながるリスクもあります。
規範的コミットメントを健全に保つには、従業員が自ら意義を感じられるような業務設計やフィードバックの仕組みが必要です。
組織コミットメントを高めるメリット4選
組織コミットメントを高めることで得られるメリットは、主に以下の4つです。
社内のコミュニケーションが活性化する
生産性が向上する
社員の離職率が低下する
イノベーション促進・チーム力向上につながる
これらの効果を得ることで、持続可能で強い組織づくりが可能になります。以下でひとつずつ詳しく解説します。
社内のコミュニケーションが活性化する
組織コミットメントが高い職場では、従業員間の信頼関係が醸成され、社員同士のコミュニケーションが活性化します。
その理由は、社員一人ひとりが「この組織をよりよくしたい」という共通の目標意識を持つことで、周囲と協力しながら仕事を進める意識が自然と高まるためです。その結果、他者への協力や積極的な情報共有を行うようになり、誰もが安心して本音を話せる心理的安全性の高い組織文化が自然と育まれます。
こうした風通しのよい職場環境は、あらゆる業務の潤滑油となり、課題の早期発見や解決にもつながるでしょう。
生産性が向上する
組織への愛着や責任感が強まることで、業務の生産性も高まります。なぜなら、コミットメントの高い従業員は、与えられた役割や業務内容をこなすだけでなく、その期待を超えて自発的に仕事へ取り組むようになるからです。
たとえば、目標達成に向けた行動が増えたり、工夫や改善提案が活発になったりするなど、日常業務の質が自然と上がります。結果として、ミスの減少や業務のスピードアップにつながり、組織全体のパフォーマンス向上にも好影響をもたらします。
そのため、組織コミットメント向上への投資は、人的資本の価値を最大化し、収益性を高めるための重要な要素です。
社員の離職率が低下する
組織コミットメントが高まると、社員の離職率の低下が期待できます。従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるようになるため、転職や退職の意向が自然と減少するからです。
一般的に、社員1名が離職した場合の損失は、単なる採用コストだけでなく、育成にかけた費用や後任者が育つまでの生産性低下などを含め、膨大な費用がかかります。そのため、仮に離職率が数パーセント改善するだけで、企業によっては多額のコスト削減効果が期待できます。これは経営層にとってインパクトのある効果です。
また、社内での人間関係が良好であるほど、働きやすさや安心感も感じやすくなります。人材の定着は採用コストや教育コストの削減にもつながるため、経営面で大きなメリットとなるでしょう。
イノベーション促進・チーム力向上につながる
組織コミットメントが高い組織では、従業員が安心して挑戦できる組織文化が醸成され、イノベーション促進やチーム力の向上にも寄与します。なぜなら、従業員が組織の発展に主体的に関わろうとする姿勢を持つことで、新しいアイデアや改善提案が活発に出るようになるからです。
たとえば、ある部署の一社員がはじめた改善の取り組みが、「これは会社全体のためになる」と他部署のメンバーも自主的に協力し、最終的に全社的なイノベーション・プロジェクトに発展することも考えられます。
企業の持続的な成長は、既存事業の効率化だけでは実現できません。従業員の自律性と創造性を育みながら、新しい価値を創造し続ける能力こそが組織の未来を切り開く力となります。
組織コミットメントを高める5つの具体策
組織コミットメントを高めるには、以下の5つの施策が効果的です。
企業理念やビジョンを共有する
働きやすい職場環境を整える
能力・スキルを活かした人員配置を行う
ボトムアップが認められる仕組みを整える
従業員同士のコミュニケーションの活性化を図る
これらの取り組みを実施することで、従業員の組織への愛着や貢献意欲を引き出すことができるようになります。
企業理念やビジョンを共有する
組織コミットメントを高めるうえで重要なのが、企業の理念やビジョンの共有です。ただし、経営層からの一方的な伝達であってはなりません。従業員一人ひとりが自分ごととして解釈し、共感できるような双方向のコミュニケーションの場を設けることが重要です。
なぜなら、従業員は何のために働いているのか、という仕事の目的に深く共感したときに、心から貢献意欲を抱くからです。
具体策としては、トップが直接語りかけるタウンホールミーティングの開催や、自分たちの業務がビジョン達成にどう貢献しているかを議論するワークショップの実施が有効でしょう。目指すべき未来像を共有することが、従業員の情緒的コミットメントを育む第一歩になります。
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働きやすい職場環境を整える
働きやすい職場環境の整備は、組織コミットメントを高める基本施策です。従業員が安心して仕事に集中できる環境が整っていれば、自然と組織への満足度や信頼感が向上します。
具体的には、フレックスタイム制度やテレワークの導入、業務の属人化防止などは、働きやすさを重視する現代に合った取り組みです。導入すべき施策を決定するためには、まず上司と部下の1on1ミーティングで的確に意見をヒアリングすることが挙げられます。部下が安心して、キャリアやプライベートの悩みを話せる信頼関係を構築するのも管理職の重要な仕事です。
適切な環境を整えることで、業務へのストレスが軽減され、結果として企業への定着意識も高まります。
能力・スキルを活かした人員配置を行う
従業員の能力やスキルに合った人員配置を行うことも、組織コミットメント向上につながります。
なぜなら、人は自分の能力が認められ、それを発揮して誰かの役に立っていると感じるときに貢献意欲が湧くからです。会社が自分の成長やキャリアに関心を持ち、投資してくれているという実感は、長期的な信頼関係につながります。
企業ができる具体策としては、従業員が自らの意志で希望の部署やプロジェクトに応募できる社内公募制度や社内FA制度の導入が効果的です。
適材適所の人材配置は、会社が一方的に決めるものではありません。従業員と対話し、個人の成長と組織の成長が同じ方向を向いていることを示すことが、自発的な貢献意識や成長意欲を引き出すきっかけになります。
ボトムアップが認められる仕組みを整える
従業員からの改善提案や意見が経営層に届き、実際に業務や組織運営に反映されるボトムアップの仕組みを制度として整えることも、組織コミットメントを高めるために有効な手段です。
従業員が自分の意見やアイデアが組織の運営に反映されると実感できれば、より主体的に働くようになります。
具体的な方法としては、社内提案制度やアイデアコンテスト、定期的なフィードバックミーティングの実施などが効果的です。また、意見に対して上司が感謝や称賛を示す文化を築くことも、制度の定着に役立ちます。
ここで重要なのは、すべての提案を採用することではありません。フラットな視点で提案を検討しながら、会社は現場の声に耳を傾けているという姿勢を見せることが、従業員の信頼を勝ち取り、「この会社をよくしたい」というコミットメントにつながります。
従業員同士のコミュニケーションの活性化を図る
従業員同士のコミュニケーション活性化も、職場を単なる仕事場から、帰属したいコミュニティへと変える重要な要素となります。
なぜなら、信頼関係が築かれた職場では、心理的安全性が高まり、安心して働ける環境が整うからです。困ったときに助け合える仲間や、尊敬できる上司の存在は、金銭的な報酬以上に、従業員がこの会社に居続けたいと思う強い動機となります。
具体策としては、新入社員や若手社員に対し、他部署の先輩社員が相談役となるメンター制度の導入が挙げられます。これは業務上の不安解消と社内ネットワーク構築を同時に実現可能です。
また、部署や役職の異なるメンバーとの交流を会社が金銭的に補助する「シャッフルランチ」や、オンラインで気軽に雑談できる場を設けることも効果的です。コミュニケーション施策は、単発のイベントで終わらせずに日々の業務の中に組み込み継続することで、組織全体の結束力を高め、情緒的コミットメントを育む土壌となるでしょう。
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組織コミットメントを高める際の3つの注意点
組織コミットメントを高めることには多くのメリットがありますが、取り組み方を間違えると逆効果になることもあります。
ここでは、実行前に押さえておくべき3つの注意点をご紹介します。
変化を拒む保守的な組織になってしまう
過度な忠誠心により不正を助長するおそれがある
存続的コミットメントによりモチベーションが低下する
これらのリスクを理解したうえで、バランスのとれた施策を行うことが重要です。
変化を拒む保守的な組織になってしまう
組織への一体感や忠誠心が過度に高まると、組織内に異論を唱えにくい同調圧力が生まれ、全体が現状維持を好み、変化を拒む保守的な体質になる危険性があります。
従業員が現状の組織に強い愛着を持つと、外部の新しいアイデアや手法を受け入れづらくなることがあります。過去の成功体験に固執し市場の変化に乗り遅れてしまった老舗企業や、会議で誰もが内心「無理がある」と感じていてもリーダーの意向に反対できずに失敗するプロジェクトは、この典型例です。
このリスクを防ぐには、リーダーが意識的に多様な意見や健全な批判を歓迎する組織文化を構築する必要があります。そのためには、会議であえて反対意見を述べる役割を指名する、定期的に外部の専門家を招いて組織の常識を客観視する、などの取り組みを行うことが有効です。
過度な忠誠心により不正を助長するおそれがある
会社のためにという過度な忠誠心や一体感は、ときに個人の倫理観を麻痺させ、組織ぐるみの不正を助長する危険性もあります。組織のためにという思いが強くなりすぎると、「ルール違反でも黙認する」「上司の指示には逆らえない」などの心理が働きやすくなるからです。
目標達成のために数字を改ざんしたり、内部告発をためらったりするケースは、忠誠心が高い組織で起こりやすい傾向にあります。
このようなリスクを防ぐためには、倫理観やコンプライアンス教育の徹底とともに、「正しいことをする勇気」が尊重される風土づくりが求められます。
存続的コミットメントによりモチベーションが低下する
従業員を待遇や安定性といった外的要因だけでつなぎとめる存続的コミットメントの高い組織は、長期的な従業員のモチベーション低下と組織全体の活力停滞を招きます。
辞めたいけれど、経済的な理由で辞められないと感じている従業員は、仕事への情熱や貢献意欲を完全に失っている状態です。モチベーションが下がった状態の従業員は、自分だけでなく周囲の意欲的な従業員の士気まで下げてしまう負の伝染を引き起こします。
組織のモチベーション低下を防ぐためには、情緒的・規範的コミットメントをバランスよく育むと同時に、従業員が「ここで働きたい」と思えるような職場環境を整えることが大切です。
組織コミットメントを測定するなら「HRBrain 組織診断サーベイ」を活用しよう

組織コミットメントを高めるには、まず現状を正しく把握することが重要です。そのために役立つのが、HRBrainが提供する「組織診断サーベイ」です。
HRBrainの組織診断サーベイは、従業員エンゲージメントを可視化し、組織の課題解決を支援します。従業員のエンゲージメントやコミットメントを可視化でき、エンゲージメント向上の阻害要因を的確に把握できる点が特徴です。
サーベイの設問は自由にカスタマイズ可能で、部署や役職、年齢など多角的なクロス分析や他社比較ベンチマーク、テキストマイニングなどの高度な分析機能を備えています。これにより、自社特有の課題を深く掘り下げ、具体的な改善アクションへとつなげられます。
組織改善を科学的に進めたい企業にとっては有効な手段であるため、興味がある場合には、ぜひ以下から資料をダウンロードしてみてください。
組織コミットメントを正しく理解して効果的に向上させよう
組織コミットメントは、従業員が自らの意志で組織に関わり続けたいと感じる心理的なつながりを指します。情緒的・存続的・規範的の3種類を正しく理解することで、企業は自社の課題を可視化し、効果的な施策を打ち出せます。
一方で、取り組みを誤るとモチベーション低下や不正の温床となる可能性もあるため、注意点を踏まえたうえで施策を進めることが重要です。
現状を客観的に把握したい場合は、「HRBrain 組織診断サーベイ」のようなツールを活用し、定量的なデータに基づいた改善がおすすめです。組織コミットメントの向上は、従業員の定着や生産性向上、イノベーションの促進など多くの効果につながります。ぜひ本記事の内容を参考に、自社に最適な施策を検討してみてください。