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ダイナミックケイパビリティとは?重要性や向上するためのコツも解説

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ダイナミックケイパビリティとは?重要性や向上するためのコツも解説

目次

    ダイナミック・ケイパビリティを取り入れた経営

    皆さんは、ダイナミック・ケイパビリティをご存じでしょうか?

    現代では、既存の経営資源を有効活用する考えと、新しい技術を採用する姿勢を企業内で取り入れる能力が求められており、このような能力のことをダイナミック・ケイパビリティと言います。

    将来が不透明な時代で生き残っていくためには、新しい技術と既存の経営資源の融合が必要不可欠で、これを間違えると企業の存続が危ぶまれるかもしれません。

    今回この記事では、ダイナミック・ケイパビリティの概要と注目される背景、ダイナミック・ケイパビリティを向上させるコツや課題について解説します。

    1.ダイナミック・ケイパビリティという経営戦略について

    まずはじめに、ダイナミック・ケイパビリティの基本情報について解説します。

    ダイナミック・ケイパビリティの概要

    ダイナミック・ケイパビリティ(Dynamic Capability)とは、2020年中旬に経済産業省と文部科学省、厚生労働省が共同で発表した、「ものづくり白書」の中で取り上げられた経営戦略論のひとつです。

    2020年に発行されたものづくり白書(第1章 第2節 「不確実性の高まる世界の現状と競争力強化」)の中で、ダイナミック・ケイパビリティの意味は「企業変革力」と定義されており、「あらゆる環境変化に対応するために、組織のダイナミック・ケイパビリティが必要である」とされています。

    ケイパビリティ(Capability)とは、能力や才能といった意味があり、ものづくり白書に書かれた言葉を言い換えると、「経営環境や人々の行動スタイルが著しく変化する時代で生き残るために、組織の能力を高める必要があるということになります。

    また、ダイナミック・ケイパビリティの対義語は、オーディナリーケイパビリティです。

    オーディナリーケイパビリティに重心に置いている企業では、既存事業の利益を拡大することや、既存の経営資源を効率に活用することを目指す傾向にあります。

    一般的には、大企業でオーディナリーケイパビリティが高く、中堅企業やベンチャー企業はダイナミック・ケイパビリティが高いと言われています。

    コロナ禍とダイナミック・ケイパビリティ

    ダイナミック・ケイパビリティが注目される背景には、新型コロナウイルスの流行があります。

    コロナ前でも、働き方改革や業務の自動化、AIの発展など人々の働き方や生活スタイルの大きく変化が見られましたが、コロナ禍を迎えた環境はそれまで以前の変化よりも大規模で、インパクトのあるものでした。

    また、新型コロナウイルスの特徴は、感染状況が悪化する時期とタイミングが不定期で、いつ自分たちの環境が変わってしまうかわからない不確実性に満ち溢れた時代と言えます。

    そんなコロナ禍で企業として生き残っていくには、変化した生活スタイルや人々のニーズに合わせられる企業体制の構築、商品・サービスの変更が重要で、まさに変化に対応できる柔軟なダイナミック・ケイパビリティが必要です。

    しかし、組織の体制を変化させるだけでは、時代に合った変化や顧客のニーズに合う商品・サービスは提供できません。

    時代にあった変化や人々が求める変化を柔軟に取り入れられる能力が必要です。

    2.ダイナミック・ケイパビリティの背景にある理論

    次に、ダイナミック・ケイパビリティが生まれる背景になった2つの理論をご紹介します。

    この2つの理論を理解することで、ダイナミック・ケイパビリティの理解がより深まるかもしれません。

    資源ベース理論

    ダイナミック・ケイパビリティが生まれる元になった理論には、1984年にアメリカのマサチューセッツ工科大学で教授だったB・ワーナーフェルト氏が提唱した「資源ベース理論」があります。

    資源ベース理論では、企業が持つ人材やブランド、生産ノウハウや特許などの独自に所有する内部資源の競争優位性が重要とされています。

    この資源ベース理論は、ジェイ B.バーニー氏が取り上げたことで注目されました。

    バーニー氏は、ワーナーフェルト氏の考えに追加して、「資源ベース理論」で重要とされた、資源の競争優位性を高めるための分析手段として、VRIOと呼ばれるフレームワークを活用しています。

    VRIOフレームワークとは、経済的価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の頭文字をとって名付けられ、市場で優位に立てるように用いるフレームワークです。コストや価値などを分析する「バリューチェーン」も、代表的なフレームワークとして挙げられます。

    しかし、ワーナーフェルト氏とバーニー氏が提唱する考えでは、企業の短期的な優位性は保てるものの、中・長期の視点で考えると、内部資源の質向上が逆に企業にとっての柔軟性を損ねてしまうという批判もありました。

    そこで、内部資源の再構築と外的要因の変化を大切にする「ダイナミック・ケイパビリティ」の考えが生まれました。

    競争戦略論

    もう一つの理論は、マイケル E.ポーター氏が提唱した、「競争戦略論」です。

    競争戦略論では、企業のブランドイメージや商品価値を高め、同業他社との差別化を図ることが重要とされています。

    ポーター氏の考えは、「ポジショニング派」と呼ばれ、外的要因が企業の事業運営を左右すると定義しました。

    しかし、競争戦略論を批判する声も多くあり、同じ業界や経営環境が同じ会社でも、異なる経営戦略を取ることで成功している企業が多くあり、この説では説明できない場合があることが露呈されました。

    そのため、外的要因を取り入れる必要があった「資源ベース理論」と、「競争戦略論」をセットで考える「ダイナミック・ケイパビリティ」が誕生したのです。

    3.ダイナミック・ケイパビリティの重要性

    ここからは、ダイナミック・ケイパビリティを高めることがなぜ重要なのかを解説します。

    新型コロナウイルスの流行

    ダイナミック・ケイパビリティが重要になった背景を語るのに、新型コロナウイルスの流行を外すことはできません。

    新型コロナウイルスが世界的に大流行し、1年以上が経過しても未だ収束の目処が立っておらず、この先も世界がどうなるのか不透明な状態です。

    外出自粛やリモートワークの推奨などで、人々の生活様式と働き方が大きく変化し、企業にも大きな影響が生じました。

    こうした不確実性に満ち溢れたコロナ禍では、ダイナミック・ケイパビリティの向上が必要不可欠です。

    様々な技術の進化

    21世紀になってから、様々なものの技術が進化してきました。

    その中でも、デジタル技術やAI技術、乗り物や端末の技術は劇的に変化したものと言えます。

    こうした様々なものの技術進化が、人々の生活を豊かにし、新たな生活様式を生みました。

    今後も、ものの進化は続く見込みとなっており、企業は進化する技術を適度に取り入れ、使いこなせる組織になれるかが大きな焦点となります。

    そういう組織に変化させるためにも、ダイナミック・ケイパビリティの向上が重要です。

    顧客ニーズの変化

    上述したように、世の中には様々な技術進化で溢れています。

    こうした技術進化は、企業の働き方を変化させるだけではなく、顧客のニーズや求める質の高さにも影響しています。

    企業は常に顧客のニーズに応え、顧客から求められる存在でなければ生き残ることはできません。

    日々変化する顧客のニーズに柔軟に対応できる能力、つまりダイナミック・ケイパビリティが求められています。

    働き方の変化

    コロナ禍によるリモートワークの普及だけではなく、働き方改革を推進している日本では、働く場所や手段が大きく変化しています。

    多くの企業で従業員のニーズに応じた働き方を採用し始め、柔軟な働き方を受け入れられるかが現代の企業において重要な焦点になりました。

    企業の方針や組織の編成・再構築を柔軟に行うためにも、ダイナミック・ケイパビリティを向上させる必要があります。

    企業のグローバル化

    近年では、多くの企業が海外の市場にも参画し始め、企業のグローバル化が進みました。

    企業のグローバルが進んだことで、企業を国際競争でも戦えるレベルまで引き上げる必要があり、企業競争の激しさを増しています。

    企業がグローバルな市場でも生き残っていくために、新たに人材を採用し、新しい技術を導入するだけでは不十分です。

    既存の経営資源を再利用・再構築できるかが重要であり、ダイナミック・ケイパビリティの向上が必要と言えます。

    4.ダイナミック・ケイパビリティに必要な3つの能力

    上述したように、近年では、企業にダイナミック・ケイパビリティの向上が求められる時代になりました。

    しかし、どうやって向上・改革すればいいかわからない方も多いのではないでしょうか。

    ここからは、ダイナミック・ケイパビリティを向上させるために必要な3つの能力について解説します。

    以下の3つの能力に意識して、企業内改革を実施していきましょう。

    Seizing(サイジング:捕捉)

    まずひとつ目に、企業内の資源を機会に応じて再構成・再利用する能力のことである、サイジング能力があります。

    サイジング能力を高めるには、外部の状況を的確に捉え、その状況に応じて臨機応変に柔軟な対応を取ることが求められます。

    また、この記事でも紹介したポーターの「競争戦略論」と近い部分があり、外的要因に集中することが重要です。

    Transforming(トランスフォーミング:変革)

    次にトランスフォーミング能力とは、企業が優位性を保つために、社内の資源を再構築・変容させる能力のことを指します。

    トランスフォーミング能力を向上させるには、状況に応じて組織を組み直したり、社内のルールや方針を変更したりする能力が求められます。

    また、組織やルールの変更が行えるだけではなく、それを継続的にかつ迅速に行えるかが、トランスフォーミング能力を高める上で重要です。

    Sensing(センシング:感知)

    3つ目に重要な能力として、センシング能力があります。

    センシング能力とは、同業他社の動向や顧客のニーズ、社会情勢などの企業の経営環境を観察・感知する能力のことです。

    日々変化する経営環境を的確に把握し、組織の編成や再構築するための情報を収集する能力で、サイジング能力とトランスフォーミング能力を向上させるためにはセンシング能力の向上が必要不可欠です。

    5.ダイナミック・ケイパビリティとDXの関連性

    ここからは、ダイナミック・ケイパビリティを向上させるために必要なデジタルトランスフォーメーション(DX)について解説します。

    DXとは?

    DXとは、デジタルトランスフォーメーションの頭文字をとった言葉で、スウェーデンで提唱された考え方です。

    デジタルトランスフォーメーションでは、「デジタル技術の進化によって、人々の生活がより良いものになる」と謳われています。

    また、ダイナミック・ケイパビリティが紹介された、2020年のものづくり白書では、ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためにDXが必要不可欠であると指摘しています。

    DXについて詳しく解説している、「デジタルトランスフォーメーションはなぜDX?意味や定義、事例を解説」の記事もぜひご覧ください。

    ダイナミック・ケイパビリティとDXの関連性について

    では、なぜダイナミック・ケイパビリティの向上にDXが必要不可欠なのか解説します。

    前の章で、ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためには、サイジング能力、トランスフォーミング能力、センシング能力の3つが重要と述べました。

    ものづくり白書では、この3つの能力を向上させるためにデジタル技術が必要であるとされています。

    企業内の資源を機会に応じて再構成・再利用するためにも、データ収集や情報分析を行う必要で、顧客のニーズや他社の動向を把握できるかが企業にとって重要です。

    また、企業の方針や組織家体を変容もデジタル技術によって実現できます。

    つまり、外部状況を的確に把握するためにも、組織を再構築するためにもデジタル技術の活用が必要で、企業で使用するデジタル技術を常に見直し、改善が必要です。

    6.ダイナミック・ケイパビリティの課題

    ここからは、ダイナミック・ケイパビリティを向上させる上で課題となる要素を解説します。

    経営層の能力が問われる

    まずひとつ目の課題として、ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためには経営層の能力が問われる点です。

    不確実性に満ち溢れている現代において、現状を把握し、将来を見据えた経営戦略を考える必要があります。

    これは、経営層の仕事ではあるものの、コロナ禍の不況で倒産した企業は決して少なくありません。

    企業のダイナミック・ケイパビリティが経営層の能力に委ねられている点が現時点で課題と言えます。

    資源は限られている

    ダイナミック・ケイパビリティは、既存の資源で現代に合う組織に再構築する能力が求められます。

    しかし、経営資源が整っていない企業では、資源の再構築をしたくても資源不足に陥る場合があります。

    また、新たな人材の採用を検討しても、人手不足が深刻となっている日本では、人材を確保するのは簡単なことではありません。

    つまり、投資できる資源は限られており、限られた資源の中でダイナミック・ケイパビリティを向上させなければいけないのも、現在の課題と言えます。

    ダイナミック・ケイパビリティに対応できる人材確保が困難

    ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためには、これに対応できる人材を確保する必要があります。

    しかし、企業採用でそういった人材を獲得するのは困難で、また、人材の育成も決して簡単ではありません。

    ダイナミック・ケイパビリティが注目され始めた現代では、人材教育のノウハウが出回っておらず、適切に教育できるかが課題となっています。

    時代の傾向や流れを把握するのが困難

    先が見渡せない時代で、時代の傾向や流れを的確に把握するのは困難です。

    特にコロナ禍では、参画する市場の傾向を掴みきれず、経営戦略を設計するのに苦労している企業も少なくありません。

    こうした先が見渡せない状況は、今後も続く見通しとなっており、市場や経営環境の把握を的確に行い、ダイナミック・ケイパビリティを向上させられるかが大きな課題となっています。

    まとめ

    今回は、ダイナミック・ケイパビリティに焦点を当て、その概要と注目される背景、企業でダイナミック・ケイパビリティを向上させる方法を紹介しました。

    自社のダイナミック・ケイパビリティを向上させるためには、サイジング能力とトランスフォーミング能力、センシング能力の3つを磨くことが重要で、これらをバランスよく向上させましょう。

    また、この3つの能力を効率よく向上させるには、デジタルトランスフォーメーションと呼ばれる考え方を取り入れる必要があり、進化を続けるデジタル技術の取り入れが求められています。

    ダイナミック・ケイパビリティの向上は、経営者の能力に委ねられている部分があり、経営層の負担になる場合がありますが、最新デジタル技術の取り入れや既存資源の有効活用を意識して企業のダイナミック・ケイパビリティを高めてみましょう。

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    HR大学 編集部

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