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2025/06/04

組織開発コンサルティングとは?導入のメリットやサービス内容、成功事例を解説

組織状態の把握から分析・課題抽出までワンストップで実現

目次
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変化の激しい時代、組織に求められるのは「成果を出すこと」だけでなく、「人と組織がともに健全に成長していく仕組み」を持つことです。

しかし実際には、「部門間の連携がうまくいかない」「従業員の主体性が感じられない」「変化に対応できる組織づくりに課題を感じている」といった声が多く聞かれます。

そうした複雑な組織課題に対して、根本からアプローチし、組織の持続的な成長を支援するのが組織開発コンサルティングです。

本記事では、組織開発コンサルティングの定義や人材開発との違い、導入のメリット、具体的なサービス内容、成功事例までを詳しく解説します。

「自社でも取り入れるべきか検討している」「どんな支援が受けられるのか知りたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

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組織開発コンサルティングとは?

組織開発コンサルティングとは、組織の健全性や効果性を高め、持続的な成長を支援する専門的なサービスです。​

このコンサルティングでは、組織内の課題を明確にし、行動科学の知見を活用して、組織の構造や文化、人間関係など多角的な側面からアプローチします。​具体的には、従業員満足度調査やインタビューを通じて現状を診断し、課題に応じた施策の立案と実行を支援します。​

組織開発コンサルティングは、組織の持続的な成長をサポートし、企業が変革を遂げる際の重要なパートナーです。

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組織開発コンサルティングの定義と目的

組織開発コンサルティングの目的は、組織内の人間関係や文化、構造、戦略などに変革をもたらし、持続可能でレジリエンスのある組織文化を創出することにあります。​

具体的には、コミュニケーションの活性化、メンバーの主体性向上、ビジョンの共有などを通じて、組織全体のパフォーマンスを高めることを目指します。​

また、外部のコンサルタントが介入することで、客観的な視点から組織の課題を明確化し、効果的な解決策を提案・実行することが可能です。​

組織開発と人材開発(HRD)との違いは?

組織開発としばしば比較される概念に「人材開発(Human Resource Development)」があります。

人材開発は、主に従業員「個人」のスキルや知識、能力を高めることに焦点を当てています。たとえば、新入社員向けの研修、管理職向けのリーダーシップ研修、特定の業務スキルを習得するためのOJT(On-the-Job Training)などが人材開発の代表的な活動です。

一方で、組織開発は「組織全体」の関係性や相互作用、仕組みに焦点を当てます。従業員同士の関係、チームや部門間の連携、コミュニケーションの流れ、意思決定プロセス、組織文化といった、個人ではなく「人と人との間」や「組織システム全体」に働きかけるのが特徴です。個々の能力を高めるだけでなく、それらが組み合わさった時に最大限の効果を発揮できるような、よりよい組織環境や仕組みづくりを目指します。

なぜ今、組織開発コンサルティングが必要なのか?

近年、組織開発コンサルティングの重要性がこれまで以上に高まっており、その背景には現代の企業を取り巻く環境の急速な変化があります。

たとえば、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展によるビジネスモデルの変化、グローバル化に伴う競争の激化、リモートワークの普及に代表される働き方の多様化などが挙げられ、企業に対して常に新しい課題を突きつけているのが現状です。

従来の組織構造や働き方、コミュニケーションのあり方では、変化に対応しきれなくなっているケースも少なくありません。

「新しい働き方に合わせたコミュニケーション方法が確立できない」「従業員の価値観が多様化し、組織としての一体感をどう醸成すればよいかわからない」「変化に対応できる柔軟な組織文化を作りたいが、社内だけでは限界がある」といった声に対して、組織開発コンサルティングは有効な解決策を提供します。

外部の専門家は、客観的な視点と豊富な経験、専門知識をもとに、組織の現状を的確に分析し、それぞれの企業に合った変革プランを策定・実行するのが特徴です。

これにより、組織は変化への適応力を高め、従業員のエンゲージメントを向上させ、イノベーションを生み出しやすい土壌を育むことができます。変化の激しい時代を勝ち抜き、持続的な成長を遂げるために、組織開発は有効な経営戦略のひとつとして注目されているのです。

組織開発コンサルティング導入の3つのメリット


組織開発コンサルティングを導入することで企業が得られる主なメリットは、以下の3つです。

<組織開発コンサルティング導入の3つのメリット>

  • 組織の課題を客観的に把握できる

  • 専門知識やノウハウが得られる

  • 組織開発を円滑に進められる

組織の課題を客観的に把握できる

組織開発コンサルティングを活用するメリットのひとつは、自社が抱える組織課題を客観的な視点から正確に把握できる点です。

組織の中にいると、日々の業務に追われたり、部署ごとの立場や人間関係にとらわれたりして、問題の本質が見えにくくなることがあります。「なんとなく組織の雰囲気が悪い」「生産性が上がらない」と感じていても、その根本的な原因がどこにあるのかを特定するのは難しいものです。

外部のコンサルタントは、特定の部署や個人の利害に影響されない中立的な立場から、組織全体を俯瞰して診断を行います。従業員へのアンケート調査やインタビュー、各種データの分析といった手法を通じて、多角的に情報を収集し、時には組織内部では気づかなかった、あるいは見て見ぬふりをしていたような課題やその根本原因を明らかにします。

自社だけで課題の全体像や真因を掴むことに難しさを感じている場合、専門家による客観的な診断は、的確な改善策を見つけるための重要な第一歩となります。

専門知識やノウハウが得られる

組織開発コンサルタントが持つ専門知識や、様々な企業を支援する中で培われた豊富なノウハウを活用できる点もメリットです。

組織開発は、行動科学や心理学、経営学など、多様な学術的知見にもとづいたアプローチです。効果的なサーベイの設計・分析方法、参加者の主体性を引き出すワークショップの運営技術、組織変革を推進するための理論やフレームワークなど、専門的な知識やスキルが求められます。これらを全て自社の担当者が学び、実践していくには、相応の時間と労力が必要です。組織開発コンサルタントは、これらの専門知識と実践経験を兼ね備えています。

例えば、「従業員のエンゲージメントを高めたい」という課題に対して、最新の研究に基づいた効果的な施策や、他社での成功・失敗事例を踏まえた実践的なアドバイスを提供できます。心理的安全性の高め方、効果的な1on1ミーティングの導入支援、あるいはアプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)のような専門的な対話手法を用いたワークショップの企画・運営なども可能です。

自社だけで最適な手法を選んだり、効果的な進め方を考えたりすることに不安がある場合、専門家の知見とノウハウを活用することで、より確実かつ効率的に組織開発の取り組みを進められます。

組織開発を円滑に進められる

組織開発コンサルタントの支援を得ることで、変革プロセスをよりスムーズに進められる可能性が高まります。

組織開発は、多くの場合、これまでの仕事の進め方や慣習、時には組織文化そのものを変えることを伴います。そのため、変化に対する従業員の不安や抵抗、あるいは部門間の利害対立などが起こりやすく、プロジェクトが停滞してしまうケースも少なくありません。

また、目標設定から計画策定、関係部署との調整、進捗管理、効果測定といった一連のプロセスを実行するには、多くの手間と高度なプロジェクトマネジメント能力が求められます。

外部のコンサルタントは、こうした変革プロセスを円滑に進めるための「ファシリテーター(促進役)」としての役割を果たします。たとえば、変革の必要性や目指す姿について従業員にわかりやすく説明し、理解と協力を得るためのコミュニケーション計画を立てて実行を支援します。

ワークショップなどを通じて、立場の異なる関係者間の対話を促し、建設的な意見交換や合意形成をサポートします。プロジェクト全体の進行を管理し、遅延や問題発生時には適切な対応策を助言することも重要な役割です。特に、経営層の意向と現場の実情との間にギャップがある場合に、その橋渡し役として機能することも期待できます。

社内で組織変革を進めることに不安がある、あるいは過去に同様の取り組みで苦労した経験がある企業にとって、専門家の伴走支援は、組織開発を成功に導くための大きな力となるでしょう。

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組織開発コンサルティングの主要な4つのサービス内容

組織開発コンサルティングが具体的にどのような支援を提供するのか、主要なサービス内容について紹介します。

<組織開発コンサルティングの主要な4つのサービス内容 >

  • 組織の現状診断と課題の明確化

  • コミュニケーション活性化と関係性向上の支援

  • リーダーシップ開発とマネジメント層への研修

  • 組織開発の社内定着サポート

組織の現状診断と課題の明確化

組織開発コンサルティングにおける最初のステップであり、非常に重要なのが「組織の現状診断と課題の明確化」です。

多くの企業が組織に対して漠然とした問題意識を持っていても、その本質的な原因や、どこから手をつけるべきかの優先順位付けに悩むケースは少なくありません。組織内部にいると、日々の業務や慣習、人間関係などによって視野が狭まり、客観的に自社の状況を把握することが難しくなるためです。組織開発コンサルタントは、第三者の専門的な視点から、組織全体を網羅的に診断します。

具体的には、従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイといったアンケート調査、経営層から現場スタッフまで様々な階層への個別インタビューやグループディスカッション、業務プロセスや会議の観察、各種データの分析など、多様な手法を組み合わせて実施されます。

これにより、「最近、若手の離職が多い」といった表面的な問題から、「部署間の情報共有が不足しており、若手社員が業務を進める上で必要な情報にアクセスできず孤立感を深めている」といった、より具体的で本質的な課題とその背景にある構造的な要因まで深く掘り下げて特定します。

この正確な現状認識と課題の明確化が、その後の効果的な組織開発施策を立案するための基礎となります。

コミュニケーション活性化と関係性向上の支援

組織開発コンサルティングにおいて、組織内の「コミュニケーション活性化」と「良好な人間関係の構築」は、中心的なテーマのひとつです。

組織の活力を生み出し、生産性を高めるうえで、従業員同士が円滑に意思疎通を図り、互いに協力し合える関係性は不可欠な土台となります。しかし、多くの組織では、部門間の壁による連携不足、上司と部下の間の対話不足、価値観の多様化による相互理解の困難さ、リモートワーク導入に伴うコミュニケーションの質の低下といった課題を抱えています。

組織開発コンサルタントは、こうした課題の背景を分析し、組織の特性や文化に合わせたコミュニケーション改善策や関係性向上のための取り組みを支援する存在です。たとえば、チーム内の相互理解を深め、一体感を醸成するためのチームビルディング研修やワークショップを企画・運営したり、建設的で生産的な議論を促す会議ファシリテーションの技術を提供したりします。

また、部下の成長とエンゲージメント向上に繋がる1on1ミーティングの導入や質の向上をサポートしたり、従業員が安心して意見を言える「心理的に安全な場」を作るための対話セッションを実施したりすることも重要な支援内容です。組織全体の風通しを良くし、従業員がポジティブな関係性の中で主体的に働ける環境づくりをサポートします。

リーダーシップ開発とマネジメント層への研修

組織開発を成功に導くためには、経営層や管理職といったリーダーの役割が極めて重要です。組織の変革を力強く推進し、目指すべき方向へとメンバーを導いていく力が求められます。

組織開発コンサルティングでは、こうしたリーダーシップ能力の開発や、マネジメント層のスキルアップを目的とした研修プログラムの提供も主要なサービスのひとつです。従来の管理職研修が業務管理スキルに重点を置くことが多いのに対し、組織開発におけるリーダーシップ開発では、変化への対応力、ビジョンを語り共感を呼ぶ力、多様なメンバーの意見を引き出し活かす対話力、部下の自律的な成長を支援するコーチングスキルなどが重視されます。

コンサルタントは、まず企業の現状の課題や将来のビジョン、そして理想とするリーダー像を明確にした上で、最適な研修プログラムを設計・実施します。

具体的には、以下のような研修や働きかけを行います。

リーダーシップ開発とマネジメント層への研修
  • 変革期におけるリーダーのマインドセット研修

  • 部下との信頼関係を築くためのコミュニケーション・トレーニング

  • 目標達成に向けたチームマネジメント力の強化

  • 次世代を担うリーダー候補の育成プログラム

  • 経営幹部向けの個別エグゼクティブコーチング

組織の中核となるリーダー層の意識と行動が変わることで、組織全体の変革が加速し、より良い組織文化が醸成されることが期待できます。

組織開発の社内定着サポート

組織開発コンサルティングの目的は、単に一時的な問題を解決することだけではありません。

導入した施策や変革が組織文化としてしっかりと根付き、将来的には外部の支援がなくとも、組織自身が継続的に課題を発見し、改善していける状態を目指します。そのため、施策の導入支援だけでなく、その後の「社内定着サポート」も重要なサービス内容です。

せっかく時間とコストをかけて組織開発に取り組んでも、コンサルタントが離れた途端に元の状態に戻ってしまっては意味がありません。コンサルタントは、組織開発の取り組みの効果を定期的に測定・評価するための仕組み作りをサポートします。

また、組織内で主体的に変革を推進していく人材を発掘・育成するための研修や、組織開発の考え方や手法が社内に浸透し、組織文化の一部となるような働きかけも行います。

これにより、組織開発の成果を持続させ、組織が自ら学び、成長し続けるための基盤を強化できます。一時的な対症療法ではなく、組織の体質改善と持続的な成長を目指す上で、この定着サポートは非常に重要です。

組織開発の2つのアプローチ方法

組織開発を進めるうえでの代表的な2つのアプローチ方法について紹介します。

<組織開発の2つのアプローチ方法>

  • 診断型組織開発:組織診断に基づくアプローチ

  • 対話型組織開発:対話を通じたアプローチ

アプローチの違いを理解し、自社にあったアプローチでコンサルタントに力を借りながら組織開発を進めましょう。

診断型組織開発:組織診断に基づくアプローチ

診断型組織開発とは、組織の現状を客観的に把握するためのデータ収集と分析を行い、その結果にもとづいて課題を特定し、解決策を計画・実行していくアプローチのことです。

組織が抱える問題を効果的に解決するためには、まずその問題を正確に理解することが重要であるという考えに基づいています。このアプローチの最大の特徴は、アンケート調査(サーベイ)やインタビュー、業績データなどの客観的な情報を重視する点です。

これらのデータを用いて組織の状態を「見える化」することで、具体的な根拠に基づいた課題特定と改善策の立案が可能になります。たとえば、全従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを実施し、「特定の部門や階層でエンゲージメントが低い」「コミュニケーションに対する満足度が全体的に低い」といった組織全体の傾向や具体的な問題点を数値で把握できます。

そして、その診断結果をもとに、なぜエンゲージメントが低いのか、なぜコミュニケーションに課題があるのか、さらなる分析やヒアリングを行い、原因を特定します。最終的には、特定された課題に対して最も効果的と考えられる研修プログラムの実施、業務プロセスの見直し、情報共有ツールの導入といった具体的な改善策を計画し、実行に移します。

データという客観的な事実に基づいて組織開発を進めたい場合に適した方法といえるでしょう。

対話型組織開発:対話を通じたアプローチ

対話型組織開発とは、ワークショップやミーティングといった「対話の場」を意図的に設け、メンバー間の相互作用を活性化させることを通じて、組織自身が課題を発見し、解決策を生み出していくプロセスを重視するアプローチです。

組織の力は、仕組みや制度といったハード面だけでなく、従業員同士の信頼関係やコミュニケーションの質、一人ひとりの当事者意識といったソフトな側面によって大きく左右されるという考えに基づいています。このアプローチでは、メンバー同士がオープンに意見交換を行い、互いの考えや価値観を理解し合うプロセスそのものが、組織の変化を生み出す原動力となると考えます。

具体的な手法は、以下の通りです。

  • ワールドカフェ:少人数でカフェのようなリラックスした雰囲気の中で対話を行う

  • AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー):組織の良い点や成功体験に着目し、それを未来に向けて発展させることを目指す

  • フューチャーサーチ:多様な立場の人々が集まって組織の未来像を描き、実現に向けた行動計画を立てる

これらの対話の場を通じて、普段はなかなか言えない本音や新しいアイデアが共有されたり、異なる部署のメンバーとの間に協力関係が生まれたり、組織全体としての目標に対する一体感が高まったりすることが期待されます。

従業員の主体性や創造性を引き出し、関係性の質を高めながら、組織の内側から変革を生み出していきたい場合に有効なアプローチです。

組織開発の7つの手法

組織開発で用いられる代表的な手法について、それぞれの特徴や目的、具体的な進め方などを解説します。

主な手法は、以下の7つです。

<組織開発の7つの手法>

  • サーベイフィードバック

  • AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)

  • ナレッジ・マネジメント

  • ファミリー・トレーニング

  • サクセッションプラン

  • チームビルディング

  • コーチング

サーベイフィードバック

サーベイフィードバックとは、組織開発における代表的な手法のひとつです。具体的には、従業員エンゲージメント調査や組織文化診断といったアンケート調査(サーベイ)を実施し、組織の現状に関するデータを収集します。

そして、その集計・分析結果を、組織のメンバー(経営層、管理職、一般従業員など)に共有し、結果についてともに話し合い、課題発見や改善策の立案、実行へとつなげていく一連のプロセスを指します。この手法のメリットは、まず組織の状態を客観的なデータとして「見える化」できる点です。

事実にもとづいた議論が可能となり、組織内で現状に対する共通認識を持つことができます。さらに重要なのは、結果のフィードバックと対話のプロセスです。メンバー自身がデータに触れ、自分たちの組織について考え、意見を交わすことで、課題に対する当事者意識が高まり、改善活動への主体的な参加が促されます。

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)とは、「Appreciative Inquiry」の略称で、組織や個人が持つ「価値(Appreciative)」を「探求(Inquiry)」することに焦点を当てた組織開発の手法です。

従来の問題解決型のアプローチが「何が問題か」「原因は何か」を問うのに対し、AIは「組織が最も活き活きしていたのはどんなときか」「私たちの強みは何か」「理想の未来はどのような姿か」といった肯定的な側面に注目します。組織が本来持っているポジティブなエネルギーや成功体験、リソースに着目し、それを未来に向けて増幅させていくことを目指します。

このアプローチにより、メンバーは問題点ばかりを指摘されるのではなく、自分たちの持つ力や可能性を再認識し、前向きな気持ちで変革に取り組めるのが特徴です。

一般的には、「4-Dサイクル」と呼ばれるプロセスで進められます。

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
  1. Discovery:組織や個人の強み、価値を発見する段階
  2. Dream:発見された強みをもとに、組織が目指したい理想の未来像を描く段階
  3. Design:その理想像を実現するための具体的な仕組みや行動を設計する段階
  4. Destiny/Deliver:設計されたプランを実行に移し、理想の未来を実現していく段階

対話を中心としたワークショップ形式で進められることが多く、参加者のポジティブな感情や創造性を引き出す効果が期待できます。

ナレッジ・マネジメント

ナレッジ・マネジメントとは、組織の中に存在する知識や情報、ノウハウを組織全体で効果的に共有し、活用するための考え方や活動全般を指します。個々の従業員が持つ経験や専門知識は、組織にとって非常に価値のある資産です。

しかし、それらが個人に留まっていたり、特定の部署だけで共有されていたりすると、組織全体の力としては十分に活かされません。

ナレッジ・マネジメントでは、これらの知識を誰もがアクセスしやすい形に整理したり、OJTや勉強会などを通じて経験や勘といった言葉にしにくい知識を伝承したりする仕組みを構築します。これにより、業務の効率化や、生産性の向上、新しいアイデアの創出、人材育成の促進などを目指します。

ファミリー・トレーニング

​ファミリー・トレーニングとは、組織や部署全体で階層を問わず全員が参加するワークショップ形式の研修です。​

この研修の目的は、職場の課題を共有し、解決策をともに考えることで、組織風土の改善や従業員の意識変革を促進することです。​全員参加型であるため、普段接点の少ない社員同士のコミュニケーションが活性化し、組織全体の一体感や協力体制が強化されます。​

また、職場の問題点を事前に把握し、全員が発言しやすい環境を整えることが、研修の効果を高める鍵となります。

サクセッションプラン

サクセッションプラン(Succession Planning)とは、企業の将来を見据え、経営層や部門長といった重要な役職(キーポジション)の後継者を計画的に育成し、準備しておくための取り組みや計画のことを指します。

人材マネジメントや経営戦略の領域で重要視される考え方です。企業の持続的な成長と安定のためには、リーダーが交代する際にスムーズな引き継ぎが行われ、経営が滞らないように備えておくことが不可欠です。

サクセッションプランでは、まず将来の組織に必要なリーダー像やポジションを明確にし、その候補者となりうる人材を早期に特定します。特定された候補者に対して、必要な知識、スキル、経験を積ませるための育成計画を個別に作成し、実行していきます。

リーダーシップ研修への参加、異なる部門や役割を経験させるジョブローテーション、経営層によるメンタリング、難易度の高いプロジェクトへの任命などが具体的な手法です。

チームビルディング

チームビルディングとは、チームとしての一体感を高め、メンバー間のコミュニケーションを促進し、相互の信頼関係や協力体制を強化することを通じて、チーム全体の目標達成能力や生産性を向上させることを目的とした様々な取り組みや活動のことを指します。

組織においては、個々のメンバーが高い能力を持っていても、チームとしてうまく連携し、協力し合うことができなければ、期待される成果を上げることは難しくなります。チームビルディングは、メンバーが互いの個性や役割を理解・尊重し、共通の目標に向かって効果的に力を合わせられるような土壌を作るための重要なアプローチです。

具体的には、以下のような手法があります。

  • チームの目標や役割分担を明確にするためのミーティング

  • お互いをより深く知るための自己紹介ワークショップ

  • 共通の課題解決に協力して取り組むグループワーク

  • 職場を離れて行う体験型研修やスポーツ・レクリエーション活動

  • 定期的なチームランチや懇親会

チームが形成されてから成果を出すまでには、一般的にいくつかの発達段階(形成期、混乱期、統一期、機能期など)を経るといわれており、その段階に応じた適切なチームビルディング活動を行うことが効果的とされています。

新しいチームの立ち上げ時や、チーム内の連携に課題を感じる場合に有効な手法です。

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コーチング

コーチングとは、一対一の対話を中心に、相手の話を深く聴き、効果的な質問を投げかけることによって、相手の内側にある考えや感情、潜在的な能力に気づきを与え、自発的な行動を促し、目標達成を支援するコミュニケーション技術のことです。

教えたり指示したりするのではなく、相手自身が答えを見つけ出し、自ら行動を起こせるようにサポートする点に特徴があります。組織開発の分野においても、コーチングは非常に重要な手法として位置づけられています。なぜなら、従業員一人ひとりの主体性や自律性を高めることが、組織全体の活性化や学習能力の向上に不可欠だからです。

具体的な活用場面としては、まず管理職が部下との1on1ミーティングなどでコーチング的な関わり方を実践し、部下の内発的動機付けや成長を支援するケースが挙げられます。

また、次世代リーダー候補者など特定の対象者に対して、専門の外部コーチや内部コーチが育成を目的としたコーチングを提供することもあります。さらに、メンバー同士がお互いにコーチングし合う「ピアコーチング」を取り入れ、組織全体に対話と相互支援の文化を根付かせようとする動きもあります。

組織開発コンサルタント自身が、クライアント企業の経営者やプロジェクト担当者に対して、変革を推進するためのコーチングを行うこともあります。

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組織開発の5つのフレームワーク

組織開発を理解し、実践するうえで役立つ代表的なフレームワークを5つ紹介します。

<組織開発の5つのフレームワーク>

  • タックマンモデル

  • マッキンゼーの7S

  • OKR (Objectives and Key Results)

  • MVV (Mission, Vision, Value)

  • クルト・レヴィンの3段階モデル

組織開発コンサルティングの手法を理解するためにも、フレームワークを知っておきましょう。

タックマンモデル

タックマンモデル

タックマンモデルとは、チームが形成されてから解散するまでの一連の流れの中で、一般的に経験するとされる5つの発達段階を示したフレームワークです。チームビルディングやチームマネジメントの分野で広く知られています。

チームの状態は常に一定ではなく、時間や経験とともに変化していくものです。このモデルを理解することで、自分たちのチームが現在どの段階にあるのかを客観的に把握し、その段階特有の課題や必要なアプローチを考えるヒントを得ることができます。

具体的には、以下の5つの段階で構成されています。

  1. 形成期(Forming):メンバーが集まり、互いの様子をうかがいながら関係性を模索する初期段階
  2. 混乱期(Storming):目標や役割、進め方などを巡って意見の衝突や対立が起こりやすい段階
  3. 統一期(Norming):チーム内のルールや共通認識が生まれ、協力体制が整い始める段階
  4. 機能期(Performing):チームとして最も成熟し、メンバーがそれぞれの役割を理解し、目標達成に向けて効果的に機能している段階
  5. 散会期(Adjourning):プロジェクトの終了などによってチームが解散する段階

各段階の特徴を理解し、例えば混乱期には対話を促す場を設けるなど、段階に応じた適切な働きかけを行うことが、チームの健全な成長と成果達成につながります。

マッキンゼーの7S

マッキンゼーの7S

マッキンゼーの7Sとは、組織を分析し、その有効性を評価するための代表的なフレームワークのひとつです。

組織は単一の要素で成り立っているのではなく、相互に関連し合う複数の要素で構成されているという考えにもとづいています。このフレームワークでは、組織を7つの要素に分解し、それぞれの要素が互いにどの程度整合性が取れているか、一貫性があるかを確認します。

7つの要素は、「ハードのS」と呼ばれる3つの要素と、「ソフトのS」と呼ばれる4つの要素に分けられます。

要素

詳細

ハードのS

戦略(Strategy)
組織構造(Structure)
システム(Systems)

ソフトのS

共有価値観(Shared Values)
スキル(Skills)
人材(Staff)
スタイル(Style)

組織が効果的に機能するためには、これら7つの要素が互いに矛盾なく連携し、支え合っている状態が理想とされます。たとえば、新しい戦略を導入する際には、その戦略に合わせて組織構造やシステム、必要な人材のスキル、評価制度などを整合させていく必要があります。

このフレームワークを活用することで、組織の現状を多角的に診断し、問題の根本原因や改善すべき点を構造的に特定できるでしょう。

OKR (Objectives and Key Results)

OKRとは「目標管理」のこと

OKR(オーケーアール)とは、「Objectives and Key Results」の略称で、目標設定と進捗管理のためのフレームワークです。

主に、組織全体の目標と、部署や個人の目標を連動させ、高い目標達成を目指すために用いられます。Googleをはじめとする多くの先進企業が導入していることで注目を集めています。OKRの特徴は、まず達成したい野心的な「目標(Objectives)」を定性的に設定することです。これは、従業員の意欲を高めるような、魅力的で少し挑戦的なものが望ましいとされます。

次に、その目標が達成されたかどうかを測定するための具体的な「主要な成果指標(Key Results)」を、通常3~5つ設定します。Key Resultsは、必ず数値で測定可能なものでなければなりません。そして、組織全体のOKRが設定された後、各チームや個人が、その組織OKRに貢献する形で自身のOKRを設定します。これにより、組織のトップから現場まで、目標の方向性が揃いやすくなります。

また、OKRは比較的短いサイクルで見直しと再設定が行われることが多く、変化の速いビジネス環境への適応力を高める効果も期待されます。

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MVV (Mission, Vision, Value)

MVVモデル

MVV(エムブイブイ)とは、組織運営や組織開発において非常に重要とされる3つの要素、「ミッション(Mission)」「ビジョン(Vision)」「バリュー(Value)」の頭文字をとった言葉です。

  • ミッション:その組織が社会において果たすべき使命や存在意義

  • ビジョン:組織が将来的に目指す理想の姿や到達したい目標

  • バリュー:ミッションやビジョンを実現するために、組織として大切にする価値観や、従業員に求められる行動指針を具体的に示したもの

MVVは、組織のアイデンティティそのものであり、あらゆる企業活動の根幹となる考え方です。明確なMVVが組織全体で共有され、従業員一人ひとりに浸透していると、日々の業務において「自分たちは何のために働いているのか」「どこを目指しているのか」「何を大切にすべきか」という共通認識を持つことができます。

これにより、従業員のエンゲージメントが高まり、組織としての一体感が醸成され、結果として組織全体のパフォーマンス向上につながります。

組織開発コンサルティングにおいても、このMVVを新たに策定したり、時代に合わせて見直したり、そして従業員に深く理解・共感してもらうための浸透策を考えたりすることは、非常に重要な支援テーマのひとつです。

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クルト・レヴィンの3段階モデル

クルト・レヴィンの3段階モデル

クルト・レヴィンの3段階モデルとは、組織や個人が変化を経験し、新しい状態に適応していくプロセスを理解するための基本的な考え方を示したモデルです。

社会心理学者のクルト・レヴィンによって提唱された古典的な変革モデルであり、多くの組織変革論の基礎となっています。このモデルでは、変革のプロセスを大きく3つの段階に分けて捉えます。

  1. 解凍(Unfreeze):現状維持しようとする力を弱め、変化の必要性を認識させ、変化を受け入れる準備を整える段階
  2. 変化(Change/Move):研修を実施したり、新しいツールを導入したり、役割を変更したりといった具体的な変革活動が行われる段階
  3. 再凍結(Refreeze):変化した新しい状態が一時的なもので終わらず、組織の日常的なやり方として定着し、安定するように働きかける段階

組織変革を進めるうえで、この3つの段階を意識することは、よりスムーズで効果的な変革を実現するために役立ちます。

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組織開発コンサルティング会社の3つの選び方

組織開発コンサルティング会社を選ぶ際に押さえておきたいポイントについて解説します。

主な選び方のポイントは、以下の3つです。

<組織開発コンサルティング会社の3つの選び方>

  • 自社の課題に適した専門性を持ったコンサルタントを選定する

  • 実績や経験から見て優れたコンサルタントの選定をする

  • 料金体系・契約条件を確認する

自社の課題に適した専門性を持ったコンサルタントを選定する

組織開発コンサルティング会社を選ぶうえで、まず最も重要となるのが自社の課題とコンサルタントの専門性が合っているかです。

組織開発と一口にいっても、その対象領域は広く、コンサルティング会社やコンサルタントごとに得意とする分野は異なります。たとえば、組織全体の文化変革や理念浸透を強みとしている会社もあれば、リーダーシップ開発や次世代リーダー育成プログラムに特化している会社、従業員のエンゲージメント向上やコミュニケーション改善を専門とする会社、人事制度の設計・見直しに詳しい会社など、多種多様です。

もし、自社が抱える課題が「部門間の連携不足」であるのに、個人のスキルアップ研修を主とするコンサルタントを選んでしまっては、根本的な解決にはつながりません。期待する効果を得るためには、まず自社が組織開発を通じて何を解決したいのか、どのような状態を目指したいのかという「課題」と「目的」を明確にすることが不可欠です。

そのうえで、その課題解決に対して最も高い専門知識やスキル、そして経験を持っているコンサルティング会社やコンサルタントを見極める必要があります。各社のウェブサイトや提案資料を比較検討し、自社のニーズに最適な専門性を持っているかを確認しましょう。

実績や経験から見て優れたコンサルタントの選定をする

コンサルタントの専門性に加えて、これまでの実績や経験も選定における重要な判断基準となります。

組織開発は、企業の文化や従業員の働き方に深く関わる、影響の大きな取り組みです。そのため、単に理論に詳しいだけではなく、実際に様々な組織の課題解決を支援し、具体的な成果を上げてきた実績を持つ、信頼できるコンサルタントを選ぶことが重要になります。

過去の実績や経験は、そのコンサルタントの実力を測るための客観的な指標です。選定の際には、まずコンサルティング会社のウェブサイトや資料に掲載されている導入事例を確認しましょう。特に、自社と同じ業界や企業規模、類似の課題を持つ企業での支援実績があれば、より具体的なイメージを持ちやすくなります。

また、過去のクライアントからの推薦状やお客様の声といった情報も参考になります。可能であれば、候補となっているコンサルタントに、過去のクライアントを紹介してもらい、直接話を聞く機会を設けることも有効です。その際には、プロジェクトの成果だけでなく、コンサルタントの関わり方、コミュニケーションの取り方、問題発生時の対応など、具体的な仕事ぶりについて確認するとよいでしょう。

提案内容だけではなく、客観的な実績や第三者の評価を多角的に検証することが、失敗しないコンサルタント選びにつながります。

料金体系・契約条件を確認する

組織開発コンサルティングを依頼することを決めたら、契約を結ぶ前に料金体系と契約条件を詳細に確認し、内容について双方で明確に合意しておくことが重要です。コンサルティングにかかる費用は、プロジェクトの内容や期間によって大きく異なりますが、一般的には高額になるケースも少なくありません。

そのため、費用対効果をしっかりと見極める必要があります。また、契約内容の認識にずれがあると、後々「想定していなかった費用を請求された」「期待していたサポート内容が含まれていなかった」といったトラブルに発展する可能性もあります。

料金体系は、コンサルタントの稼働時間に応じて費用が発生する「時間単価制」、プロジェクト全体で費用が決まっている「プロジェクトフィー制」、成果に応じて報酬が決まる「成果報酬制」などがあります。

どの体系が自社に適しているか検討するとともに、提示された金額にどこまでの業務が含まれるのか、交通費や資料作成費などの諸経費は別途発生するのかなど、費用の内訳を詳細に確認しましょう。

契約書は、依頼する業務の範囲、提供される成果物、プロジェクトの期間とスケジュール、費用の支払い条件、情報の取り扱い(秘密保持)、契約の解除条件などは必ず確認が必要です。

少しでも不明な点や曖昧な点があれば、遠慮なく質問し、納得できるまで説明を受け、最終的には書面で内容を確定させることが安心してプロジェクトを進めるための鍵となります。

組織開発の体系的プロセス(診断・計画・実行・評価)

組織開発が一般的にどのようなプロセスで進められるのか、流れを体系的に解説します。

組織開発は、以下のような4つのフェーズで進められます。

<組織開発の体系的プロセス(診断・計画・実行・評価)>

【診断】組織の現状を多角的に把握し、課題を明確化

【計画】目標設定と戦略策定、具体的なアクションプランの作成

【実行】計画に基づいた施策の実施と進捗管理

【評価】組織開発の成果測定と改善点特定

【診断】組織の現状を多角的に把握し、課題を明確化

組織開発を進めるうえでの最初のステップは、「診断」フェーズです。これは、現在の組織がどのような状態にあるのかを客観的かつ多角的な視点から正確に把握し、取り組むべき本質的な課題を明確にすることを目的としています。

なぜなら、現状を正しく理解しないまま改善策を進めても、的確な効果を得ることは難しいからです。人間が健康診断を受けるように、組織もまずは健康状態をしっかり把握することが重要です。

この診断フェーズでは、さまざまな手法が用いられます。

  • 従業員サーベイ:従業員の意識や満足度を探るためのアンケート調査

  • インタビュー:経営層や管理職、現場の従業員など異なる立場の人々から直接話を聞く

  • フォーカスグループディスカッション:特定のテーマについて少人数で深く議論する

これらの方法を通じて集められた情報を整理・分析し、「コミュニケーションの流れに問題はないか」「リーダーシップは適切に発揮されているか」「組織文化は目指す方向性と合っているか」「業務プロセスに非効率な点はないか」といった観点から、組織の強みと弱み、そして解決すべき具体的な課題を特定していきます。

【計画】目標設定と戦略策定、具体的なアクションプランの作成

診断フェーズで組織の現状と課題が明確になったら、次に計画フェーズへと進みます。

このフェーズでは、組織開発を通じて「最終的にどのような状態を目指すのか」という具体的な目標を設定し、その目標を達成するための戦略と、具体的な行動計画を策定します。目標が曖昧なままでは、関係者がどこに向かって努力すれば良いのか分からず、取り組みが効果的に進みません。目標を設定する際には、「SMART」と呼ばれるフレームワークが役立ちます。

SMARTの法則
  • Specific(具体的な)

  • Measurable(測定可能な)

  • Achievable(達成可能な)

  • Relevant(関連性がある)

  • Time-bound(期限が明確な)

次に、設定した目標を達成するために、どのような組織開発の手法を用いるか、どの範囲から取り組みを開始するかといった戦略を立てます。

そして最後に、その戦略を実行するための具体的なアクションプランを作成します。「誰が(担当者)」「いつまでに(期限)」「何を(具体的な行動)」「どのように(手段)」行うのかを明確にし、必要な予算や人員といったリソース(資源)の配分も計画に盛り込みます。

【実行】計画に基づいた施策の実施と進捗管理

計画フェーズで具体的な目標とアクションプランが策定されたら、いよいよ実行フェーズに移ります。

この段階では、立てられた計画に基づいて、組織開発のための具体的な施策を実行していきます。どんなに優れた計画も、実行されなければ意味がありません。計画倒れに終わらせず、着実にアクションを起こしていくことが重要です。

実行される施策の例としては、リーダーシップ研修の開催、新しいコミュニケーションツールや情報共有システムの導入、チームの連携を強化するためのチームビルディング活動、働きがいを高めるための人事制度の改定などが挙げられます。

施策を実行する際には、ただ行うだけでなく、計画通りに進んでいるか、意図した効果が出始めているかなど、その進捗状況を定期的に確認し、関係者間で共有することが大切です。また、組織開発の実行段階では、当初は想定していなかった新たな課題が見つかったり、変化に対する従業員からの戸惑いや抵抗が生じたりすることも少なくありません。

そのため、状況の変化に応じて計画を柔軟に見直したり、従業員の不安に寄り添いながら丁寧なコミュニケーションを心がけたり、リーダー自身が率先して新しい行動を示すといった対応も、このフェーズを成功させるためには不可欠となります。

【評価】組織開発の成果測定と改善点特定

組織開発のプロセスにおける最後の重要なフェーズが評価です。この段階では、実行してきた組織開発の取り組みが、当初設定した目標に対してどの程度の成果を上げたのかを客観的に測定・評価し、その結果から学びを得て、今後の改善点や次のステップを明らかにします。

組織開発は一度きりのイベントではなく、継続的な改善プロセスです。そのため、実施したことの結果をきちんと振り返り、次に活かすための評価は欠かせません。

評価を行う際には、計画フェーズで設定した目標がどの程度達成されたかを検証します。たとえば、施策実施前と実施後で、従業員エンゲージメントサーベイのスコアがどう変化したか、離職率は改善したか、特定の業務の生産性は向上したかなどを比較・分析します。

従業員へのインタビューやアンケートを通じて、「働きがいを感じるようになったか」「チーム内のコミュニケーションは円滑になったと感じるか」といった実感値や具体的な意見(定性的データ)を収集することも、成果を多角的に理解する上で重要です。

評価結果にもとづき、今回の取り組みの成功要因や、うまくいかなかった点、今後改善すべき点を明確にし、組織全体で共有します。この評価からの学びが、組織開発の取り組みをさらに効果的なものにし、組織の持続的な成長へとつながっていきます。

組織開発が失敗する3つの理由

組織開発の取り組みが残念ながら失敗に終わってしまう主な理由について解説します。

失敗の主な理由は、以下の3つです。

<組織開発が失敗する3つの理由>

  • 目標設定が曖昧なまま進めてしまう

  • 実行段階での問題を改善しない

  • 経営層のコミットメント不足

組織開発コンサルティングを利用する前に、失敗が起きないように対策を講じましょう。

目標設定が曖昧なまま進めてしまう

組織開発の取り組みが失敗に終わる最も一般的な原因のひとつとして、達成すべき目標が曖昧なままプロジェクトが開始・進行してしまうことが挙げられます。

「組織の風通しを良くしたい」「従業員のモチベーションを高めたい」といった目的意識を持つこと自体は大切ですが、具体的に「どのような状態になれば目標達成と言えるのか」が不明確だと、関係者全員が同じ方向を向いて力を合わせることが難しくなります。

目指すべきゴールが曖昧なため、どのような施策を打つべきかの判断基準も曖昧になり、結果として効果の薄い施策にリソースを費やしてしまったり、取り組みが中途半端に終わってしまったりする可能性が高まります。

たとえば、「コミュニケーション活性化」を目標とする場合でも、「部署間の情報共有の頻度を月〇回以上にする」「従業員サーベイにおけるコミュニケーション満足度を〇点向上させる」「1on1ミーティングを全管理職が月1回以上実施する」のように、具体的で測定可能な指標(KPI)を設定することが重要です。

組織開発を成功させるためには、プロジェクト開始前に「何のために組織開発を行うのか」「具体的な目標は何か」を明確に定義し、それを関係者全員で共有することが、失敗を避けるための重要な第一歩となります。

実行段階での問題を改善しない

組織開発の計画を実際の行動に移す実行段階において、発生する様々な問題や課題、特に従業員からの抵抗や反発に適切に対処せず、計画を修正・改善することを怠ることも、失敗につながる大きな要因です。

どんなに緻密に計画を立てたとしても、実際に組織開発の施策を実行してみると、想定外の事態や問題が発生することは避けられません。新しいプロセスやツールに対する現場の戸惑い、変化に対する不安や抵抗感、計画と現場の実情との間に生じるズレなどが表面化します。

これらの問題から目を背け、「計画通りに進めること」だけを優先してしまうと、従業員の不満や不信感が高まり、協力が得られなくなったり、導入した施策が形だけで実質的に機能しなかったりする危険性があります。

「制度は決定事項だから」と一方的に進めるのではなく、説明会を追加で開催して疑問に答えたり、必要であれば評価シートのフォーマットを一部見直したりするなど、現場の声を踏まえた柔軟な対応が求められます。

また、変化に対して強い不安を感じている従業員に対しては、個別に話を聞く機会を設けたり、必要なスキル習得のためのトレーニングを提供したりといったサポートも重要です。組織開発の実行フェーズにおいては、計画を絶対視するのではなく、常に現場の状況に注意を払い、予期せぬ問題や抵抗に対して真摯に向き合い、柔軟に計画を修正・改善していく姿勢を持つことが、プロジェクトを成功に導くうえで不可欠です。

経営層のコミットメント不足

組織開発の取り組みに対して、経営層(社長や役員などのトップマネジメント)が本気で関与せず、十分な支援やリーダーシップを発揮しない「コミットメント不足」も、プロジェクトが失敗に終わる主要な原因となります。

組織開発は、多くの場合、組織の仕組みや文化といった根幹部分に影響を与える大きな変革活動です。このような全社的な変革を成功させるためには、組織のトップである経営層自身が、その必要性を誰よりも強く認識し、「会社を変える」という強い意志と覚悟を持ってプロジェクトを主導することが不可欠です。

経営層の関与が薄かったり、言動に一貫性がなかったりすると、従業員は「経営層はこの取り組みを重要視していないのではないか」「どうせまた掛け声だけで終わるのではないか」と感じてしまい、変革に対する協力姿勢や本気度が著しく低下します。

組織開発を本気で成功させたいのであれば、経営層自身がプロジェクトの「顔」となり、その重要性を繰り返し社内に発信し、率先して変革に向けた行動を示し、必要な支援を惜しまないという強いコミットメントを示すことが何よりも重要です。

組織開発の2つの成功事例

HRBrain 組織診断サーベイ 資料ダウンロード

組織開発は、目に見える制度や仕組みだけでなく、人と人との関係性や組織文化といった目に見えないものに働きかけることで、組織全体の力を引き出すアプローチです。

しかし実際には、抽象的で成果が見えづらいといった理由から、導入に踏み切れない企業も少なくありません。

そのような中、組織開発を戦略的に取り入れ、大きな成果につなげた企業も存在します。ここでは、組織開発を通じて実際に課題を乗り越えた2つの企業の成功事例を紹介します。

<組織開発の2つの成功事例>

  • 従業員に寄り添うサーベイ運用。 2,000名規模の組織改善の取り組みとは

  • 自社に最適なオリジナル研修を設計。 社員の成長と高い満足度を実現した独自の1on1研修とは?

従業員に寄り添うサーベイ運用。 2,000名規模の組織改善の取り組みとは

はるやま商事株式会社_導入事例

はるやま商事株式会社では、コロナ禍でのお客様ニーズにともなう業務の変化による離職率の増加を課題に感じており、エンゲージメントサーベイの実施を検討していました。
他社のサービスでエンゲージメントサーベイを実施したものの、自社にあった調査を実施できなかった背景があり、カスタマイズ性や分析に優れたHRBrainの導入に踏み切りました。

サーベイの結果を効果的に活用するために、結果から考えられるギャップを明らかにする勉強会を開催し、具体的なアクションプランを策定しやすくなっています。

現場に向けた相談会も実施しており、サーベイに協力してくれる従業員を手厚くサポートする体制づくりにも力を入れ、サーベイを起点にエンゲージメント向上のために取り組んでいるのも成果のひとつです。

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自社に最適なオリジナル研修を設計。 社員の成長と高い満足度を実現した独自の1on1研修とは?

JA三井リース株式会社_導入事例

JA三井リース株式会社では、1on1ミーティングを導入していたものの、体系的な1on1研修プログラムが存在せず、マネージャー向けに個別で動画視聴型の研修を行っていたため、理解度や視聴ペースにばらつきが生じていました。また、従業員体験(EX)の可視化も不十分であり、社員一人ひとりのキャリア形成支援や意見・要望を引き出す仕組み作りが急務でした。

そこで、HRBrainと連携し、徹底した現場ヒアリングをもとに自社に最適化したオリジナルの1on1研修プログラムを設計します。

既存の社内施策との重複を避けるため、他の研修との棲み分けにも配慮しながら内容を細部までカスタマイズしたり、研修受講者の声やEXサーベイの結果をもとに回を重ねるごとにプログラム内容をアップデートしたりしたことで、ロールプレイングや自己分析を組み合わせたインタラクティブな構成を採用しました。

受講者満足度の高い1on1研修を実現し、従業員間のコミュニケーション活性化にも成功しています。マネージャー間での横のつながりが強まり、従業員体験向上にも寄与するとともに、研修を通じて得られたデータを今後の人材育成や事業成長に活かすための基盤づくりが進み、会社全体のエンゲージメント向上に大きく貢献する成果を上げました。

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組織開発コンサルティングは、組織の課題解決と成長を支援

組織開発コンサルティングは、組織の健全性と効果性を高めるために、構造・文化・人間関係といった多面的な課題にアプローチする専門サービスです。企業を取り巻く環境が急速に変化する今、柔軟で持続可能な組織をつくるための重要な経営戦略として、その注目度が高まっています。

もし、組織内に見えにくい課題を感じていたり、変革を進めたいがどこから手をつければいいかわからないという場合は、外部の専門家に相談することで、新たな視点と確かな手法を得られます。組織の未来をよりよくしたいと考える経営者や人事担当者の方は、ぜひ一度組織開発コンサルティングの活用を検討してみてください。

株式会社HRBrain 宮本幸輝
宮本 幸輝
  • 株式会社HRBrain コンサルティング事業部 組織・⼈事コンサルタント

大学卒業後、コンサルタント企業に入社し、大手家電メーカーや製薬企業に人材マネジメントや研修を提供。また50名〜500名規模企業への⼈事評価制度構築⽀援など組織開発領域を幅広く携わる。

その後、医療業界のネットベンチャー2社のジョイントベンチャーの立ち上げに携わり、自社組織の開発にも貢献。

総合経営コンサルティング会社に移り、50名の⽼舗企業からベンチャー企業、IT(2000名)規模の⼈事制度構築⽀援を複数経験。その他にも経営戦略コンサルや⼤⼿⽯油卸企業の店舗組織変⾰プロジェクトにも参画。

現在は、HRBrain コンサルティング事業部で組織人事コンサルタントとして活躍中。
人事戦略策定から人事評価制度コンサルティング領域まで年間約20社以上を支援する。

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