#人材管理
2023/09/06

人事異動の目的とは?主な種類や時期、メリット・デメリットについて解説

目次

    人事異動について、詳しく把握しきれていない企業も多いのではないでしょうか。特に、立ち上げたばかりのベンチャー企業や、少ない人員で運営している中小企業などは人事異動の詳細まで理解しきれていないかもしれません。

    人事異動について把握しておくことは、企業としてはもちろん従業員の働きやすさやモチベーションにもかかわります。そこで今回は、人事異動の目的や種類、人事異動の多い時期について説明します。

    人事異動のメリット・デメリットや拒否権、実施手順についても触れているので、人事異動に関する疑問や課題を抱えている企業の方はぜひ参考にしてください。

    「従業員のスキルやニーズの見える化ができず、社員の適正に合った配置をできていない」
    「人事異動後のフォローができておらず、異動・配置の振り返りができていない」
    など、お悩みの方も多いのではないでしょうか。

    顧客満足度No.1*のタレントマネジメントシステム、HRBrainは人材データの一元管理を実現し、客観的なデータをもとに最適な異動や配置を可能にすることで、「人材配置」における課題を解決します。

    HRBrain タレントマネジメントの詳細についてもっと知りたい方はこちらからご覧ください。
    ▶︎HRBrain タレントマネジメント を今すぐ見る
    ※ITreviewカテゴリーレポート 「タレントマネジメント部門」(2022Spring)

    人事異動とは?

    そもそも人事異動とはどのようなものなのか、詳細を把握しきれていない企業も多いでしょう。ここでは人事異動について、目的・種類・時期の観点で詳しく説明します。

    人事異動の目的

    人事異動は、適材適所の人材配置を実現するために実施されます。既存の部署で思うような成果が上げられていない従業員が、人事異動により活躍するようになるといったケースも少なくありません。

    適正のある部署で業務に取り組めることで成果につながりやすくなるため、従業員はもちろん企業にもメリットがあります。

    適材適所だけでなく、新規事業を成功させるための配置変更として人事異動が行われる場合もあります。新たに立ち上げた事業やプロジェクトに適した人材を選出・配置することで、企業戦略の成功が期待できるでしょう。

    人事異動は、人材育成の効果も期待できます。人事異動を通じて新しい業務にかかわることで、従業員はこれまで身につけられなかったノウハウを取得できます。

    また、人事異動でベテラン従業員を育成担当として配置する場合もあるでしょう。育成担当を適所に配置することで、部署全体のレベルアップが期待できます。

    さらに人事異動には、マンネリ化を防止する効果もあります。長い期間同じ業務ばかり続けているとどうしても慣れが出てしまい、業務に対する意欲が低下する可能性があります。

    マンネリ化によりモチベーションが下がり、業績に影響が出ることも少なくありません。また長い期間同じ部署にいることで外部から干渉されづらくなり、不正をはたらいてしまうケースもあります。

    マンネリ化や不正防止の観点でも、人事異動が重要視されるといえるでしょう。

    人事異動の種類

    人事異動には、主に以下の種類があります。

    1. 転勤
    2. 昇格・降格
    3. 職種変更
    4. 出向
    5. 転籍

    転勤は、部署だけでなく勤務地そのものが変わる人事異動です。住所変更が必要になる規模の転勤もあれば、自宅から通える範囲の転勤もあります。

    昇格や降格といった、等級の変更も人事異動に該当します。成果を上げたことが評価され、現在の立場よりも上位の階級に異動することが昇格の特徴です。反対に、何らかの理由や思うように成果が出なかったことが原因で、階級が下がってしまうことを降格と言います。

    職種変更は、同じ企業内での部署異動が主に挙げられます。事務職から総合職への異動、一般職から管理職への移動など、業務内容が大きく変化する人事異動のことです。

    ここまで解説した3つは、企業内で実施される人事異動を指します。対して、別の企業とかかわる人事異動についても解説します。

    まず挙げられるのが、出向です。現在の企業と雇用関係を結んだ状態で、他社に勤務する形態を指します。

    もうひとつが、転籍です。雇用契約を解消し、別の企業と新たに契約を結び直すことを指します。自分の意志で実施されることも多く、実際は「転職」と捉えられることの多い人事異動です。

    人事異動の多い時期

    人事異動は、年度末や半期ごとに実施されやすい傾向にあります。企業によっては時期を問わず行われますが、一般的に多い時期は年度末や半期ごとといえるでしょう。

    なぜ年度末や半期ごとの人事異動が多いかというと、企業にとっての節目となるタイミングであるためです。

    キリの良いタイミングで異動を告知できれば、従業員も気持ちを切り替えやすいでしょう。また企業にとっても、人事異動が実施されるまでの目標設定を明確にしやすい利点があります。

    人事異動にはメリット・デメリットがある

    ここでは、人事異動による主なメリットとデメリットについて紹介します。人事異動のメリットとデメリットを把握しておくことで、より客観視した人事異動を実施できるようになるでしょう。

    人事異動のメリット

    人事異動には、企業・従業員双方にとってメリットがあります。企業目線でのメリットは以下の通りです。

    • マンネリ化防止による業績向上

    • 適材適所の実現

    • 育成・教育体制の見直しにつながる

    • 従業員の成長促進

    • 組織全体の活性化

    一方、人事異動による従業員のメリットには、以下が挙げられます。

    • 部署に縛られない幅広い知見・技術が身につく

    • 環境が変わることによるモチベーションアップ

    • 異動してきた従業員から新たなノウハウを吸収できる

    • 理想とするキャリアプランの実現

    企業・従業員のメリットを把握したうえで、適切な人事異動を検討・実施しましょう。

    人事異動のデメリット

    人事異動によるデメリットを、メリットと同様に企業・従業員目線で紹介します。企業目線でのデメリットは、以下の通りです。

    • 引き継ぎの時間を確保しなければならない

    • 従業員の希望に沿った異動を検討しなければならない

    • 適材適所の配置につながらない異動を実施した場合は業績が下がることもある

    • 転勤などを補助するコストがかかる

    • コアメンバーが抜けることによる業績悪化が懸念される

    • 望まない異動がきっかけで離職につながる可能性がある

    • 専門性の高い人材の育成がストップしてしまう

    人事異動による従業員側のデメリットには、以下が挙げられます。

    • 異動後しばらくは業務に慣れない

    • 経験や適性に合わない部署に配属される可能性がある

    • モチベーションが下がる可能性もある

    • 異動自体をネガティブなものと捉えてしまう

    • 人間関係を再構築しなければならない

    • 転勤が発生する場合もある

    上記に挙げたデメリットも把握したうえで、より適切な人事異動を実施できるようにしましょう。

    従業員は人事異動を拒否できるのか?

    原則、ほとんどの企業で人事異動の拒否は認められていません。異動命令を就業規則として定めている企業であれば、正当な理由がない限り拒否できないものと考えて良いでしょう。

    仮に従業員が異動を拒否したとしても、よほどの理由がない場合は認めないことを推奨します。望まない人事異動を受け入れた従業員が、不公平に感じてしまうためです。あくまでも「業務上の命令」として、強気な姿勢で従業員に異動の旨を伝えましょう。

    ただし、従業員が異動を拒否できないからといって、軽率な理由での異動は決定しないようにしましょう。企業に対する不信感にもつながるため、人事異動は慎重に検討してください。

    正当かつ納得感のある人事異動を実施するためにも、人事部門や経営層とで打診を繰り返しましょう。「本当に必要な異動なのか」「別の従業員が適している異動ではないのか」など、人事異動そのものが「失敗」と捉えられないようにする配慮が大切です。

    また、従業員と直接異動にかかわる面談を進めることもおすすめです。そもそも異動を望んでいるのか、受け入れられるのかを事前に確認しておくことで、企業・従業員双方が納得できる人事異動を実施できるでしょう。

    人事異動が無効になる場合もある

    人事異動は、就業規則に定められている場合は拒否できないことがほとんどです。ただし、必要性・合理性のない異動であれば拒否できる場合があります。

    例えば、従業員を自主的に退職させるため、あえて適性のない部署に異動させることが挙げられます。こういった例は職権濫用として判断され、異動自体が無効になる可能性もあるでしょう。

    人事異動はあくまでも、企業・従業員にとってメリットがあるかどうかを重視しなければなりません。不正に人事異動を実施しないためにも、無効になる場合について把握しておきましょう。

    人事異動の実施手順

    人事異動は、以下の手順で実施されるのが一般的です。

    1. 人材データの照会
    2. 移動対象者の決定
    3. 従業員に合意を求める
    4. 内示
    5. 異動後のフォローを実施する

    人事異動の基本的な手順を把握しておくことで、自社で実施している人事異動の課題に気づけるかもしれません。以下では、それぞれの実施手順について詳しく説明します。

    1.人材データの照会

    人材データには、現場で不足している人材や、異動することで活躍が期待できる人材などの情報が該当します。また、現場で挙がっている要望や優秀な人材の情報を吸い上げることで、適切な異動につながる人材データを集められます。

    人材データは、最新のデータを照会する必要があることを覚えておきましょう。最新の人材データを照会したうえで、異動の必要性について検討してください。

    2.異動対象者の決定

    最新の人材データを照会したら、データに基づいて異動対象者を選定しましょう。選定後すぐ対象者に伝えるのではなく、まずは異動対象者が所属する部署の責任者に打診することを忘れてはいけません。

    また、異動先の責任者に確認を取ることも大切です。異動前後の部署を管理する責任者の同意を得なければ、異動自体が頓挫してしまいます。

    3.従業員に合意を求める

    対象者の異動が責任者間で認められたら、異動対象となる従業員に直接合意を取りましょう。現在在籍している部署の責任者が、面談を通じて異動に対する合意を取るのが一般的です。

    面談では、異動後の仕事内容などを説明しましょう。異動のスケジュールや、現在の部署で異動前に実施しておくべきことをすり合わせる必要もあります。

    従業員が異動に対して納得できない場合、その理由をヒアリングしたうえで再度異動を検討し直す必要もあるでしょう。面談を複数回繰り返して説得する場合もあれば、経営層や人事部に差し戻す場合もあります。

    仮に異動拒否が発生した際の対応は、経営層や人事部の裁量によって大きく変化します。異動に対する了承が従業員から得られない場合は、しばらくの間従業員と経営層・人事部との板挟みになることを認識しておいた方が良い かもしれません。

    4.内示

    異動が快諾され、正式に決定した段階で内示します。人事異動の内示は、一週間から一か月前を目安にしましょう。

    内示後は、部署内での引き継ぎや育成を強化してください。場合によっては、引き継ぎや育成期間を逆算して内示する必要があります。

    また、転居を伴う異動の場合は、従業員に準備期間を与えなければなりません。十分な準備期間を与えないと、引き継ぎや育成にも影響するため注意が必要です。

    5.異動後のフォローを実施する

    人事異動は、実施しただけで終わりではありません。異動した従業員が異動先で十分に能力を発揮できるようになるまで、フォローする必要があります。

    異動先の業務を効率的に習得するため、研修などを手配するのが異動後のフォローとしておすすめの方法です。また、異動を実施したことでどのような効果があったか検証することも大切です。

    本当に効果のある異動だったのか、従業員をフォローしながら検証することで新たな課題発見や解決につながるでしょう。

    人事異動をより適切に実施するためのポイント

    より適切に人事異動を実施するためには、以下のポイントを把握しておくことが大切です。

    • 納得しやすい人事異動のルールを定めておく

    • 理由を明確に伝える

    • 経営方針や現場の意見を重視する

    上記のポイントを把握し、意識しておくことで人事異動に関する従業員とのトラブルを防止できるでしょう。

    納得しやすい人事異動のルールを定めておく

    就業規則に人事異動のルールを定めておくことで、人事異動が原則拒否できないものになります。拒否できないものであることを従業員が把握しておけば、異動そのものを不服に感じられることは少なくなるでしょう。

    人事異動に関するルールが曖昧だと、従業員が納得いかない場合に無効となる可能性があります。また、人事異動に関する明確なルールを、入社前や入社直後に伝えておくことも大切です。

    正当な理由以外で人事異動を拒否できないことを従業員に理解してもらうことで、より納得度の高い人事異動を実施できるでしょう。

    理由を明確に伝える

    現在の部署にやりがいを感じている従業員の場合「なぜ自分が異動なのか」と強く感じるでしょう。人事異動そのものをネガティブなものと捉えてしまい、離職につながってしまう可能性もあります。

    人事異動に関する誤解が発生しないよう、明確な異動の理由を伝えてあげましょう。異動先に求められている成果について触れ、モチベーションを保ちながら異動できるよう配慮することが大切です。

    また、異動後の業務について、できるだけ詳しく説明してあげることも大切です。異動後に何をすれば良いかわからない状態では、従業員の不安を煽ってしまうでしょう。

    異動後に実施する業務の内容や、どのような適性があってその業務を任せたいのかをはっきり伝えることで、異動に対する納得感にもつながります。

    経営方針や現場の意見を重視する

    企業の経営方針に沿った人事異動であるかどうかを、経営層や人事部が重要視することが大切です。経営方針を実現するための人事異動でなければ、企業・従業員どちらにもメリットのない異動になってしまいます。経営方針に沿った人事異動のできない環境であれば、まずは土台から見直す必要も出てくるでしょう。

    人事異動はあくまでも、現場の従業員が対象となることも忘れてはいけません。従業員の意志を尊重し、理不尽な異動と捉えられないように配慮する必要があります。

    また、異動対象者が抜けた後の不安などを、あらかじめヒアリングしておくことも大切です。異動対象者が現在の部署にまだ必要であることがわかった場合は、異動自体を再検討しなければなりません。

    人事異動は、企業・従業員双方の納得がなければ適切に実施されません。経営方針や現場の意見を尊重しつつ、最適な人事異動を実施しましょう。

    まとめ

    人事異動は、適材適所の実現や人材育成、マンネリ化防止などの観点から実施されます。転勤や昇格・降格など、いくつかの種類に分かれているのも特徴です。

    人事異動は一般的に、年度末や半期ごとに実施されます。企業にとって最適な時期で人事異動を実施できるよう、事前に準備しておきましょう。

    人事異動には、企業・従業員どちらにもメリットとデメリットがあります。メリットとデメリットを把握しておかないと、納得感の得られない人事異動になってしまいます。

    また、正当な理由がない人事異動は、従業員に拒否される可能性があります。場合によっては無効になることも覚えておきましょう。従業員が納得し、モチベーションを保てる異動になるよう、配慮することが大切です。

    今回は、人事異動を適切に実施する手順や、成功につながるポイントも紹介しています。自社にとって最適な人事異動を検討・実施するために、ぜひ今回紹介した内容を参考にしてください。

    HR大学編集部
    HR大学 編集部

    HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。