経営戦略から読み解く戦略人事の立案方法を徹底解説!
- 戦略人事とは。オペレーション人事との違い
- 戦略人事とは
- オペレーション人事との違い
- 経営戦略を実現する戦略人事
- 経営戦略と人事理念の関係
- 戦略人事を考える基本となる企業理念とは
- 戦略人事における経営戦略とは
- 戦略人事における人材戦略とは
- 戦略人事の立て方
- 人事理念の立て方とポイント
- 人事戦略の立て方とポイント
- 行動指針の重要性
- 育成方針の重要性
- 採用方針の重要性
- 戦略人事の事例
- 経営戦略と採用・評価・処遇を一体となって構築
- まとめ
- 人事理念の管理・戦略人事をカンタン・シンプルに
経営環境が激しく変化する時代において、戦略人事という考え方はいまや必須といっても過言ではありません。しかし、いきなり戦略人事を立てろと言われてもどうしていいかわかりません。ここでは、その戦略人事の立て方を徹底解説します。
戦略人事とは。オペレーション人事との違い
戦略人事とは、従来のオペレーション中心の人事と何がちがうのでしょうか。戦略人事の概念について解説していきます。
戦略人事とは
戦略人事とは、戦略的人的資源管理(英語Strategic Human Resources Management)のことです。事業戦略を実現するために、人事戦略はどうあるべきかという考え方です。米ミシガン大学のデイビット・ウルリッチ教授が、1997年に「MBAの人事戦略」の中で、提唱しました。
現代社会は事業環境の変化が激しく、変化に対応した企業のみが生き残っていく時代です。事業ドメインを変えていくには、「ヒト」「モノ」「金」「情報」のリソースを適切に集中させます。その際に「ヒト」資源をどのように戦略にマッチさせていくのかを考えるのが戦略人事です。
オペレーション人事との違い
従来の人事は、給与や労務管理などの必要な定型のオペレーション業務を行います。どちらかというと就業規則に照らした管理や、前例を重視したオペレーションを実施します。事業部門で異動や体制が決まり、その結果を人事が発令をかけたり転勤手続きをしたりするのが従来の人事です。一方で戦略人事とは、さらに積極的に事業戦略にかかわります。
経営戦略を実現する戦略人事
たとえば、新規事業に積極的にドメインをシフトしていくという戦略を立てた場合の人事戦略はどのように変わるでしょうか。そこでは、新規事業での評価軸を検討する必要があったり、処遇制度の再構築が必要になります。人員体制の再構築も必要なり、採用戦略も立てなければなりません。このように、オペレーションではなく、事業戦略を実現するための人事戦略を考えるのが戦略人事です。
経営戦略と人事理念の関係
戦略人事を立てていく上で、経営戦略を理解することはとても重要なことです。しかし、経営戦略を理解するだけでいいのでしょうか。ここでは、企業理念から経営戦略、人事戦略までのつながりを説明していきます。
戦略人事を考える基本となる企業理念とは
戦略人事を考える基本となるのが企業理念です。企業理念とは、創業者が会社に託した想いであり、企業の社会的存在価値を示したものです。経営方針や行動規範を社内外に向けて発表することで、企業の社会的責任を示します。企業理念を作成し明文化する目的は3つあります。
- 経営判断の基本となる考え方を明示することで、経営判断に迷ったときの原点に立ち戻ることができる。
- 従業員に浸透させることで、行動を明確化し、価値観を共有することができる。
- 顧客や市場に発信することで、社会的な責任を明確化し、ブランド構築につながる。
このように、企業理念はある意味普遍的なものであるといえます。戦略人事を立てる上での、基本的な考え方です。
戦略人事における経営戦略とは
経営戦略とは、「企業が競争環境の中で持続的に存続する方針、または戦略」と定義されています。企業競争が激化する中、生き残るためには経営資源を有効に活用しなければなりません。しかし「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の経営資源は限りがあります。よって、選択と集中を繰り返しながら、この経営資源をどのように分配するかを決めていきます。戦略人事を立てる上では、この「ヒト」資源をどのように使うかを戦略に合わせて考えます。
戦略人事における人材戦略とは
人材戦略とは、経営戦略を実現するために、社員の採用から登用、育成に関する戦略と定義されています。経営戦略を実行するには、戦略実現に必要な人材が社内で適切に配置され、その能力を発揮している必要があります。このような状態を実現するために、採用から登用、育成を行うことが人材戦略の目的です。このように人材戦略は、経営戦略と密接に関係しています。
戦略人事の立て方
戦略人事を立てる場合に、どこから手をつけていいのかわからないという声があります。ここでは、基本となる4つのポイントとして「人事理念」「人事戦略」「行動指針」「採用と育成」について説明します。
人事理念の立て方とポイント
人事理念とは、経営戦略を実行するための人材マネジメントの基本的な考え方です。人事理念は、経営理念を基本とし、経営戦略と人事制度をつなぎ合わせる機能をもっています。
人事理念を立てるポイントは、企業が求める人材像の明確化です。経営戦略を実現する社員とは、どのような人材であるかを明確にします。たとえば、5年後に世界的に有数のゲームプロダクション会社になるといった経営戦略を立てた場合はどうでしょうか。そこで求められる人材像とは、「チャレンジ精神をもった人材」や「国際感覚をもった人材」です。この求める人材を採用し育成して配置していくことが戦略的に人事を行っていく基本です。
つまり戦略人事を行った将来における人材像に他なりません。戦略人事を立てる上で、この求める人材像を具体化した人事理念の策定は必要不可欠なことです。
人事戦略の立て方とポイント
人事理念によって明らかになった人材を、採用し、評価して登用し育成する具体的な方法が人事戦略です。人事戦略とは、経営戦略を実行する人材を、次の4つのポイントで検討することです。
- 必要な人材は、社内で調達できるのか。新規採用を行うべきかどうか。
- 必要な人材は、どのように評価し決定するのか。評価制度は現行のままでいいのか、見直すのか。
- 必要な人材の処遇はどのようにするのか。何によって処遇が決定するのか。
- 必要な人材の育成はどのように行うのか。
人事戦略で大切なことは、経営戦略実行のために社員全員が全力で力を発揮することです。そのために、必要な人材とはどのような社員か、そうなるためには、社員は何を頑張ればいいのかを明示することが重要です。
行動指針の重要性
人事理念と人事戦略を策定した後、それを社内に浸透させることが必要です。そのために必要なのが、行動指針です。
人事理念では、どのような人材を求めているのかを明確にしました。人事戦略では、会社は、その人材をどうやって輩出していくのか制度を検討しました。
行動指針では、社員自身が「どうすべきか」を明確にしたものです。たとえば、新規事業にドメインをシフトする経営戦略を立てた企業があります。そこでの人事理念では、「新しいことにチャレンジしていく人材」が優とされました。
人事戦略のゴールは、新規事業への人材リソースを集中し、社員がそこに向かって全力で頑張ることです。この場合の行動指針は、次のようなものです。
- 失敗を恐れずに何事にもチャレンジする。
- 与えられるのを待つのではなく、自らが考えて行動する。
このように、経営方針に合わせて人事理念を策定し、その人事理念に合わせて行動指針を策定します。
育成方針の重要性
経営戦略を実行実現するために必要なものは、"その会社で働く社員"であることは言うまでもありません。戦略人事を新たに立てるということは、現在の人事制度の改革は必須になってくるでしょう。
改革を実行する段階で、社内に動揺が走ることはあらかじめ予想されることです。人は変化に対しては、必ず不安を感じるものです。そこで重要になるのが育成方針です。
既存の社員をどのように新しい変化に対応させるかは、育成方針として明確にしておく必要があります。育成方針は、社員に対し"このメンバーでやっていくぞ"というメッセージにもなります。新規事業にシフトする場合に、その新しい技術やサービスに対して、それを実行する社員を育成していくことをまず宣言します。
次に、既存の社員を「スキル」「能力」「量」で分析をしていきます。新たにシフトする事業に対する「スキル」「能力」「量」が不足するという課題に対して具体的な施策を検討します。この課題を明確にすることで、それをもとにした研修計画などが立案され、育成方針が具体化していきます。
採用方針の重要性
育成方針によって、「量」が分析され、不足するという課題が見つかった場合には、採用方針を立てます。採用方針は、これまで検討してきた求める人材像や、「スキル」「能力」といった分析を利用します。
戦略人事の事例
ここまでは経営戦略と人事戦略とのつながりを説明してきました。では、実際に、その実例をみていきましょう。
経営戦略と採用・評価・処遇を一体となって構築
楽天株式会社は、インターネットサービスを展開する企業です。創業当初は、ECモールを中心とした事業でしたが、現在では、楽天トラベルや各種のオンライン事業を手掛けています。
2016年、楽天株式会社は、経営戦略を"Global Innovation Company"と定めました。Global Innovation Companyになるための戦略人事を次のように策定しています。
1.経営戦略を実現する人材像を「イントラプレナー」と定める。イントラプレナーとは、組織に所属しながらも柔軟な発想とつながりをもち、世にイノベーションを生み出す人材を指します。
2.このイントラプレナーを育成するために、あらゆる面での人事戦略を実行しています。採用では、グローバル標準の手法を導入し、通年採用を実施しています。配置や異動では、評価と研修が一体となった運用を実施しています。育成では、「楽天主義」を実践できる人材を育成するプランを構築しています。評価では、グループ全体で統一された評価基準を採用しています。処遇では、給与や賞与だけでなく、インセンティブなどの別観点での制度を構築しています。環境では、社員が働きやすく、さまざまな働き方にあったニーズに応える制度を構築しています。
このように、楽天株式会社では、経営戦略を実現する社員像を明確化し、その人材をどのように採用し評価し登用して処遇するかを一体となって構築しています。
まとめ
戦略人事とは、経営戦略の実現に必要な人材を、どのように配置し、社員に頑張ってもらうかを考える人事です。まず、手をつける一歩は、経営戦略を理解し、どういった人材が必要なのかを人事理念に落とし込むことです。経営戦略を読み解き、必要な人材像を明確化し、戦略人事を立案していきましょう。
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