人材管理
2021/11/04
社員資格管理とは?目的、導入事例、システムの選び方まとめ
目次
本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。
この記事では社員資格管理、そのメリット、社員資格管理に適したソフトの選び方などを紹介します。
社員資格管理とは
社員資格管理とは、従業員が持っている資格を管理することです。
資格と一口に言っても、「国家資格」「公的資格」「民間資格」があります。
その一例を紹介します。
国家資格
- 社会保険労務士
- 中小企業診断士
- 税理士
公的資格
- 簿記検定
- ビジネスマネジャー検定
- メンタルヘルス・マネジメント検定試験
民間資格
- ケアストレスカウンセラー
- マーケティング・ビジネス実務検定
従業員が持っている資格を社内で活用するためにも、資格管理は必要です。
管理項目は社員の持っている資格の名前、資格番号、資格の取得年月日、更新期限、受けた資格試験の結果の履歴、などが挙げられます。
社員資格管理の背景・理由
ではなぜ今、「社員資格管理」に注目が集まっているのでしょうか。
その背景について説明します。
人材データの分散
専用のシステムを導入していない企業の多くは、人材データを紙やエクセルで管理をしています。
そのため「どこにどんなデータがあるか把握できない」「効率的な人材の活用かできない」という状況に陥っています。
そのため、データを一元化する必要性に迫られています。
人材データの管理の煩雑さ
そのような状態では、人事担当者・経営層は人材データの活用ができません。
近年では、社員資格管理を含む人材データの一元管理を可能にする「タレントマネジメントシステム」が注目を集めています。
最適な人材が発掘できない
「特定のスキルや資格を持った従業員を可視化することができない」ことは、経営にとって致命的です。
なぜなら、社内にピッタリの資格・スキルを持っている従業員がいるにも関わらず、その人材を眠らせたまま「コストをかけて新しく人を採用をする」ことが起こりえるからです。
従業員にとっても、せっかく取得した資格を活用できる場を失うことになります。
このような機会損失をなくすためにも「社員資格管理」は必要とされています。
社員資格管理をするメリット
続いて、社員資格管理をするメリットをお伝えします。
人材育成
従業員が業務に必要な資格を取得すると、専門性が深まりスキルアップに繋がるだけでなく業務の効率化、仕事へのモチベーションアップが見込めます。
従業員が取得した資格、それに伴う知識を、部署の従業員に引き継ぐこともできます。
資格を保有する社員が検索できる
人事担当者は、業務に適した資格を持つ人材を、データから検索しやすくなります。
そのため新規のプロジェクトを立ち上げる際など、社内から適した人材をピックアップできます。
また、特定の分野について知見のある人材を集めることにも役立ちます。
適材適所
社員資格管理を徹底することで、適材適所の人員配置が可能になります。
会社は新規で人を採用をするコストが抑えられるだけでなく、従業員にとっても資格の役立てられる部署への貢献はエンゲージメントの向上、業績アップに繋がります。
資格が失効する前にアラートが出せる
社員資格管理をすることで、従業員が持っている資格の有効期限が可視化されます。
有効期限が近づいたら、会社側でも「更新忘れ」がないよう注意を促すことができます。
また業務に必要な資格を把握することは、会社にとっても重要なリスク管理のひとつです。
人事評価で資格手当の計算ができる
企業によっては、資格手当を導入しています。
月給に手当を加算をする場合、また資格合格時にお祝い金などとして支給される場合の2通りがありますが、どちらにしてもシステムと紐づいていると支給の漏れがありません。
社員資格管理の方法
では、具体的に社員資格はどのように行えばよいのでしょうか。
エクセル、そして社員資格管理ソフトで行った場合の2通りを紹介します。
エクセル
エクセルで社員資格管理を行う際に参考となるのが、厚生労働省の「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」です。
職種別(事務系職種)、業界別(IT業界、製造業)にエクセルのファイルが用意されています。
エクセルでの社員資格管理・スキル管理を詳しく知りたい方は、以下の参考記事から詳細を確認できます。
参考リンク:スキル管理とは?必要性や方法、スキルマップの作り方について解説
社員資格管理ソフト
社員資格管理の機能は、「タレントマネジメントシステム」と言われる機能の一部として入っている場合があります。
ちなみに、近年注目されている「タレントマネジメントシステム」とは、自社の従業員が保有するスキル・ノウハウを一元管理し、配置転換や人材育成といった人事戦略に反映させる仕組みのことです。
先程は、厚生労働省が配布しているエクセルの無料テンプレートを紹介しましたが、個別にファイルを更新するには非常に手間がかかります。
従業員が部署異動の際にもスムーズにデータを引継ぎ、また継続的に更新を行うためにも、一元化したシステム「タレントマネジメントシステム」の活用をおすすめします。
社員資格管理ソフトの選び方
では、その社員資格管理ソフトはどのように選べばよいのでしょうか。
以下、項目別に細かく紹介します。
機能
社員資格管理ソフトは、先程に述べたように「タレントマネジメントシステム」の一機能として入っている場合が多いです。
そのため「社員資格管理ソフト」として使用することを目的とするのであれば、その目的に合致したシステムを選ぶことが重要です。
ほかにはこのような機能がついていることが一般的です。
人事管理データベース機能一覧
- 人事データベース
- 人事評価
- 組織図ツリー
- 組織分析
- アンケート
集計・分析ができる
有資格者の検索と集計、また部署の分布や分析ができる機能があれば、従業員の資格取得に向けて計画を立てやすくなります。
以下のように抽出、分析機能がついているのか、確認しましょう。
有資格者の集計・分析機能
- 有資格者の一覧化
- 資格別の人数
- 年齢別の有資格者の分布
- 有資格者の部署ごとの分布
これらのデータを出すことで会社の人材の強み・弱みがわかり、次の一手に活かすことができます。
サーバ不要のクラウド型とオンプレミス型
社員資格管理ソフトのシステムには、クラウド型とオンプレミス型があります。
クラウド型とは、インターネットを経由して、システム提供会社が所有するサーバを借りる方法です。
そのため自社でサーバを設置する必要がなく、使用人数による月額料金での利用が一般的です。
メリットは、初期コストを抑えられることです。
デメリットは、項目がすでに設定されているため、カスタマイズ性に制限があることです。
次に紹介するオンプレミス型は、自社にサーバを設置して運用する方法です。
カスタマイズがしやすい点がメリットですが、クラウド型に比べ導入にコストがかかる点がデメリットです。
まずは「お試しで」ということであれば、初期コストが少額なクラウド型の導入がおすすめです。
また近年では、その手軽さからクラウド型がトレンドとなっています。
オンラインで閲覧・編集できる
クラウド型の場合、オンラインで閲覧・編集が可能です。
パソコンに限らず、スマホなどの端末から閲覧・編集が可能なため、従業員が手軽に自身の資格・スキルについて記載することができます。
資格だけでなく学習管理も可能
会社が実施している研修や、eラーニング講座の受講履歴などを管理する機能も搭載さている場合があります。
従業員の学習の進み具合のチェックをするだけでなく、未受講者にリマインドメールを一括でシステムから送信することもできます。
さらに社内で実施したテスト項目の正誤についても確認できれば、従業員の間違いが多かった項目を見つけ出し、その部分を重点的にフォローアップする研修を別途計画することもできます。
費用
社員資格管理ソフトを導入する場合、その導入の費用が企業規模に合っているのか、という点も重要です。
クラウド型の場合、使用人数によって月額が変更になる場合が一般的です。
また費用を抑える方法としては、初期は基本的な機能のみ導入し、本格運用の段階になってから、オプションを追加するという方法もあります。
操作性
社員資格管理ソフトを選ぶ際に、操作性は重要です。
いくらスマホなどの端末からアクセスしやすいといっても、直観的な操作ができないソフトは、従業員にとって使いづらいことこのうえありません。
操作性に優れた社員資格管理ソフトを導入しましょう。
社員資格管理をする際の項目
では、具体的に社員資格管理ソフトにはどのような項目を設定すればよいのでしょうか。
基本項目
- 従業員の氏名
- 従業員番号(あれば)
- 従業員の所属先(部署名)
- 持っている資格
- 資格番号
- 資格の取得年月日
- 資格の更新年月日
- 資格の更新期限(失効日)
- 資格の概要
これらの基本項目だけでなく、資格の画像データも合わせて管理できると正確な把握が可能です。
取得済の資格
従業員が記載するのは「業務に関連する資格」だけではありません。
「業務外の資格」についても記載してもらいましょう。
会社で部署が新設される場合、その分野に知見のある人が求められます。
すでに社内に適した人材がいるにも関わらず、新規で人を採用することは採用コストだけでなく、損失に繋がります。
「今後、持っている資格が活かせる場が出てくるかもしれない」と会社側が説明することで、取得済みの資格を記載するモチベーションが高まります。
また従業員の特性・興味のある分野、以前のキャリアを把握することにも役立ちます。
取得を目指している資格
「取得済の資格」だけではありません。
「取得を目指している資格」についても記載しましょう。
1on1ミーティングなどで、進捗確認をする際に便利な項目となります。
また、こうした項目が設定されることで、従業員が「どんなことに関心があり、どのようなキャリアアップを望んでいるのか」ということが可視化されます。
それは今後の人員配置の参考にもなります。
また、過去受けた資格の結果についても履歴が記載できると、その成長ぶりを確認することができます。
資格以外のスキル・趣味の特技など
資格に限らず、持っているスキルや趣味の特技などについても触れられる項目があると便利です。
近年は動画編集に関するスキルに注目が集まっています。
趣味で動画編集ソフトを使用している従業員もいるかもしれません。
それらのスキルを有効に活用することができます。
社員資格管理の運用の流れ
では、どのように社員資格管理の運用を開始すればよいのでしょうか。
流れについて説明します。
作成者を設定する
まずは、項目を決定する作成者を設定します。
業務、資格について精通している部署の上司が適任でしょう。
運用ルールを決める(閲覧の権限設定)
また、作成者だけではなく「誰がなにを管理するのか」「この従業員の資格情報は誰まで(どの範囲まで)公開するのか」など、運用にまつわることも一緒に決定しましょう。
資格管理やスキルは、個人情報に相当します。
情報の取り扱いや、公開範囲にはくれぐれも注意しましょう。
ミニマムスタート
社員資格管理は、部署ごとなど、小さな単位で開始するのがおすすめです。
なぜなら一斉スタートで大々的に行ってしまうと、途中で内容の修正、軌道修正がしにくくなるからです。
記入するルールがたびたび変更してしまうと、従業員はどのルールが正しいのか混乱します。
また個人情報に関することですから、会社に対しても不信感を抱いてしまう場合があります。
項目を決定する
先に述べた「基本項目」を参考に、社員資格管理ソフトに記載する項目を決定します。
また、資格以外にもスキルのレベルの設定を行いましょう。
スキルのレベルは、具体的かつ5段階程度で評価できるよう設定するのがおすすめです。
更新のタイミングを決める
社員資格管理は、従業員が記載して「それで終わり」ではありません。
資格は常に更新されるべき情報です。
それには定期的なデータ更新が欠かせません。
社内によりますが、半期に一度、四半期に一度、また取得したタイミングで必ず記入する、など運用ルールに加えて決定しておくのがよいでしょう。
社員資格管理の活用例
アイフル株式会社
アイフル株式会社には、約1600名の正社員が在籍しています。
しかし、この1600名のスキルや経験、異動歴などの情報が体系的にまとまっているデータベースがありませんでした。
そこで導入したのがHRBrainの「タレントマネジメントシステム」です。
アイフル株式会社では、スキルを持つ従業員を可視化・発掘し、適性のある部署に配置する必要性を強く感じていました。
社員のポテンシャルを見逃さない社員資格管理・スキル管理の取り組みを、積極的に行っています。
参考リンク:アイフルが考える金融DXの推進と人材育成・配置
株式会社ポピンズホールディングス
株式会社ポピンズホールディングスは、全国に320カ所を超える保育所・学童施設の運営を中心に、ナニーさん/シッターさんの派遣事業を行っています。
「お子様の可能性を広げる」ことをコンセプトに掲げているため、「お子様の興味関心」といったデータや、その提供者になりうる、「社員・パートナーさんのスキル・経験」といったデータを活用する必要があります。
そのためにHRBrainの「タレントマネジメントシステム」を導入しました。
参考リンク:保育現場のDXを実現する、タレントマネジメント推進のポイント
まとめ
社員資格管理とは、従業員が持っている資格を管理することです。
管理項目は社員の持っている資格の名前、資格番号、資格の取得年月日、更新期限、受けた資格試験の結果の履歴、などが挙げられます。
そのためにはエクセルではなく、社内を横断的に管理、可視化できる「タレントマネジメントシステム」の活用が便利です。
社員資格管理が求められるようになったのは「人材データの分散」、「最適な人材が発掘できない」という問題点からです。
社員資格管理には、以下の利点があります。
- 人材育成
- 資格を保有する社員が検索できる
- 適材適所
- 資格が失効する前にアラートが出せる
- 人事評価で資格手当の計算ができる
社員資格管理には、取得済の資格だけでなく取得を目指している資格、資格以外のスキル・趣味の特技についても記載項目を設けておくとよいでしょう。
それらのスキルを有効に活用することに繋がります。
社員資格管理の運用で特に重要なことは、閲覧の権限をどこまで設定するかなど、ルールを決めることです。
また最初から大々的にスタートさせるのではなく、小さくスタートすることがおすすめです。
そうすることで、軌道修正がしやすくなります。
アイフル株式会社、株式会社ポピンズホールディングスでは、従業員のスキル管理のために、HRBrainの「タレントマネジメントシステム」を導入しました。
社員のポテンシャルを見逃さないためにも、「タレントマネジメントシステム」の導入は有効です。
人材管理
HR大学 編集部
HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。
