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スキル管理とは?必要性や方法、スキルマップの作り方について解説

スキル管理とは?必要性や方法、スキルマップの作り方について解説

目次

    本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。

    人材を最適に配置するためには、スキルを管理するための仕組みが必要です。「スキル管理」とは、従業員が保有するスキルを可視化し、一元管理できる仕組みを指します。
    今回はスキル管理をする重要性、またスキル管理の具体的な方法「スキルマップ」などについて説明していきます。

    スキル管理とは?

    スキル管理とは、従業員のスキルをデータで一元管理し、一目見てわかるように可視化する仕組みのことです。「誰がどのスキルを持っているのか」を社内で共有することで、人材を適切に配置することができます。

    また、職務上必要となるスキルに対し、基準に達していない従業員を見つけ、研修を行うなど、人材教育にも活用が可能です。

    企業が保有していない人材の補充・採用へと舵取りをすることもできます。企業の成長とコストパフォーマンスの向上に欠かせない活動と言えるでしょう。

    スキルとは?

    スキルとは、主に訓練・学習によって会得した能力・技能のことを指します。

    業務を行ううえでの専門知識・技術だけでなく、管理者に必要な知識・ビジネススキルも含みます。また、他者と良好な関係を築くためのコミュニケーション能力、保有している資格など、幅広い意味で使用されています。

    ポータブルスキル

    従業員に求められるスキルとして、近年よく話題にのぼるのが「ポータブルスキル」です。

    ポータブルスキルとは、日本語に訳すとportable(持ち運びできる)skill(能力)という意味です。業務に必要な専門スキル・知識だけではなく、性格や人柄、コミュニケーション能力という個人スキル全般を指します。

    ポータブルスキルの構成要素を、厚生労働省が提唱する情報をもとに解説すると

    • 専門技術/知識
    • 仕事のし方
    • 人との関わり方

    以上の3つに分けられます。

    専門技術/知識

    業務を遂行するために必要な専門技術・知識のことです。ポータブルスキルの中でも限定的なスキルで、別名「テクニカルスキル」とも呼ばれます。専門性が高い場合は、比例して業界からのニーズも大きいでしょう。

    仕事のし方

    次に、仕事のし方に関する全般のスキルを紹介します。

    仕事の成果をあげるためには「課題を明らかにする」「計画を立てる」「実行する」の3つの要素が重要になります。業界・業種に関わらず仕事を行ううえで大切になるスキルです。

    人との関わり方

    最後は「人との関わり方」についてです。どんな仕事でも、人との関わりは必要です。

    「社内対応(上司・経営層)」「社外対応(顧客・パートナー)」「部下マネジメント(評価や指導)」という3つの「人」に対して、円滑にコミュニケーションが取れるかどうかがポイントとなるスキルです。

    人との関わり方に対してスキルが高い人は、社外・社内において良好な関係を築くことができます。これも立派なポータブルスキルです。

    かつては技能を重視する採用傾向にありましたが、近年ではそれ以外の仕事への取り組み方や、人との関わり方について着目する動きが活発です。

    専門技術を習得し、知識が豊富な人材だったとしても、自社で活躍できるとは限りません。また、例え技能が不足していたとしても、課題発見のスキルが高く、柔軟性がある人材については、採用後の活躍が見込めます。

    スキル管理とは、業務に必要な専門スキル・知識だけではなく、性格や人柄、コミュニケーション能力という個人スキル全般を項目として網羅する必要があります。

    スキル管理とタレントマネジメントの関係性

    スキル管理は、タレントマネジメントの一環です。以下、タレントマネジメントについて説明します。

    タレントマネジメントとは?

    タレントマネジメントとは、自社の従業員が保有するスキル・ノウハウを一元管理し、配置転換や人材育成といった人事戦略に反映させるプロセスのことです。

    タレントマネジメントは、従業員が保有するスキルを最大限に発揮し、よいパフォーマンスを生み出すことを目的としています。

    スキル管理を導入する重要性

    スキル管理をする重要性は、5つあります。

    重要性1:スキルの強み弱みが把握できる

    従業員のスキルを可視化して把握することで、所属する組織のスキルの総量が把握できます。

    そのため、秀でたスキルを持つ人材の活かし方を戦略的に考えることが可能です。また、足りないスキルを補強するための施策(研修など)も効率的に行えます。

    部署にスキルの保有者が少ない場合は、他部署からそのスキルを持つ従業員を異動させるなど、人材の再配置へ舵をきることもできます。

    重要性2:スキルを維持・管理できる

    スキル管理をすることで、スキルを維持するための施策を打ち出すことも可能です。

    スキルには、知識の更新を必要とするものもあります。スキルが時代遅れのものにならないためにも、研修などの施策を行いましょう。

    また、データで一元管理できれば、従業員が部署を異動したとしても、データをシームレスに引継ぎ、管理が可能です。

    そのためにも個別のファイルで管理するのではなく、都度簡単に入力のできるタレントマネジメントシステムの導入がおすすめです。

    重要性3:社内でスキルを持った人材を探せる

    新しい部署を立ち上げる際や、新たなプロジェクトが発足した際、スキルを選定基準として最適な人材をピックアップできます。それだけでなく、アドバイスがほしいときや、社内で知見のある人材を見つける際にも役立ちます。

    また社内で新しい業務が発生した際、新たに人材を採用しなくても、中途入社の従業員がすでに持っているスキルを適用できることがあります。その際、スキルが可視化されていれば、他部署から、異動させることも可能になります。

    社内の人的リソースである人材を、是非活用しましょう。

    重要性4:社内でスキルが継承できる

    継承するべき希少なスキルの発見にも最適です。それらのスキルを早期に発見することで、次世代へと受け継ぐための施策を、いち早く行うことが可能です。

    「定年退職」などで、今後失われる可能性があるスキルについては、事前に継承のための教育計画を組むことができます。

    重要性5:適切な人材が配置可能に

    スキル管理は、適切な人材配置を考えるための頼もしいツールです。

    仮に、Aさんが経理・人事のスキル両方を持っているとします。経理が一時的に人員不足に陥った際、新たに従業員を雇うのではなく、月末月初の忙しいタイミングだけAさんのスキルを活用し経理にヘルプに来てもらうことはできないか、検討が可能になります。

    Aさんが現在所属している部署にとらわれず、保有しているスキルを眠ったままにしないためにも、スキル管理は役立ちます。

    このように、従業員が保持するスキルを可視化することで、適切な人材配置ができます。

    スキル管理をする方法こそスキルマップ

    では、具体的に、どのようにスキル管理を行えばよいのでしょうか。その際に活躍するのが「スキルマップ」です。

    スキルマップとは?

    スキルマップとは、スキル管理を可視化するためのツールです。

    業務に必要な知識・経験・資格などのスキルを洗い出し、従業員がどのレベルにまで達しているのかを一覧化したもののことを指します。

    従業員ひとりひとりのスキル強み・弱みが一目でわかるメリットがあります。それだけでなく、部署全体を通して不足しているスキルの把握も可能です。

    厚生労働省において「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」として無料公開されているので気になる方は、こちらをスキルマップとして活用してみてもいいでしょう。

    このように、一般的なスキルマップの形式としては、縦軸にスキルの分類とスキル、スキルの説明が並び、横軸には従業員ひとりひとりの名前を記載することが多いです。

    また、職種・業種別に項目は異なります。部署に合ったものを用意することが必要です。

    スキルを管理する方法

    さて、では実際にスキル管理のための具体的方法「スキルマップ」の作成や、実際の運用について紹介します。

    スキルマップの作成者

    スキルマップは一般的に、管理者である部署の上司が作成します。上司が部下のスキルを把握し、評価します。

    スキルマップの項目

    スキルマップの項目は、その部署の特性によって異なります。部署の上司は、業務の流れ・内容を考慮し、必要な項目を書き出しましょう。重複・漏れのないよう記載することが必要です。

    厚生労働省のテンプレート

    先程紹介したように、厚生労働省には「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」というページがあり、こちらから無料でダウンロードが可能です。

    職種別(事務系職種)、業界別(IT業界、製造業)にファイルが用意されています。

    事務系職種・スキルマップのテンプレート

    • 人事・人材開発・労務管理・生産管理・ロジスティックス
    • 経営情報、情報システム、営業・マーケティング・広告
    • 企業法務、・総務・広報、経理・資金財務、経営管理分析・国際経営管理、貿易

    業界別・スキルマップのテンプレート

    • エステティック業
    • 警備業
    • 葬祭業
    • ディスプレイ業
    • 外食産業
    • フィットネス産業
    • 卸売業
    • 在宅介護業
    • スーパーマーケット業
    • 電気通信工事業
    • ホテル業
    • ビルメンテナンス業
    • アパレル業
    • ねじ製造業
    • 旅館業

    こちらを元に、自社のオリジナルの項目を追加、また削除をして編集が可能です。

    ダウンロードファイルは、表紙・評価シート・サブツールの3つに分かれていますが、これらのファイルを個別に編集し、情報を最新に保つことは困難です。

    こんなときは、ぜひタレントマネジメントシステムを活用しましょう。

    導入することによって、従業員自身によるこまめな入力・更新が可能です。

    情報システムユーザースキル標準

    上記の厚生労働省のテンプレート以外にも、スキル標準として知られているのが「情報システムユーザースキル標準(UISS)」です。

    IT企業や、ITを活用している自治体がスキルを身に着けられるよう、ITシステムにおける人材配置・育成のための指標を定義しています。

    IT企業の場合は、上記を参考に作成が可能です。

    スキルマップのレベル設定(評価段階)

    スキルマップのレベルをどのように設定するのか、決定する必要があります。

    5段階が適切とは限りません。あまりに大まかすぎると指標としては機能しませんし、細かすぎれば管理に支障をきたします。抽象的なレベルではなく、はじめたばかりでサポートが必要なレベルなのか、それともひとりで実践可能なのか、もしくは人に教えられるレベルであるのか、その職場に合ったレベルを設定することが肝要です。

    スキルの項目は、適切なレベルを設定しましょう。

    スキルマップの評価者とは

    従業員自身、または部署の上司が記載したスキルマップのレベルについて、誰が評価することが適切なのでしょうか。

    従業員自身が記入しっぱなしになることのないよう、部署の上司のチェックは必要です。

    また、直属の上司だけではなく、他部署の上司を評価者に加えることで、見えにくかったスキルが明らかになる場合もあります。

    多角的に評価できるよう、柔軟に評価者を指定しましょう。

    スキルマップの管理者とは

    評価をする部署の上司が定期的に更新をする方法があります。または、スキルマップに担当者をつけて管理するのもひとつの方法です。

    また、定期的に従業員自身が見返し、内容を更新し、上司がチェックするというフローを作成する方法もあります。

    スキルマップの更新時期

    スキルマップは一度作成し、それで終わりではありません。

    また、その部署の業務内容が永久に変わらないことはありえませんし、時代の変化に合わせて変更する必要があります。従業員がスキルアップをした際や、異動によって新たなスキルを習得した場合など、都度適切な修正が必要になります。定期的な見直しが必要ですが、時期を設定しないと更新されないまま放置、ということにもなりかねません。スキル管理を人材配置に戦略的に活用するためには、常に最新の状態が保たれている必要があります。

    人事査定のタイミングに紐づけるなど、記入するための動機づけを行うことや、リマインドをする仕組み作りが大切です。

    「スキル管理のために、スキルマップの導入を考えているけれど、エクセルで管理するとバラバラになってしまって更新が大変……」という場合は、ぜひタレントマネジメントシステムを活用しましょう。

    エクセルで管理する方法もありますが、それでは部署移動の際にスムーズに引き継ぐことが難しいうえに、更新などの管理が煩雑になります。効率よく管理するには、タレントマネジメントシステムの活用がおすすめです。

    従業員が保有しているスキル・資格の管理だけでなく、過去に受講した研修などの履歴も残すことができます。

    スキル管理をすべき重要ポイント

    スキル管理の項目にも関連しますが、とくに重要な記載ポイントを以下紹介します。

    業務上必要なスキル

    業務を遂行するにあたり、必要なスキルをスキルマップに記載する必要があります。専門的な技術・知識などがそれに該当します。

    業務経験・キャリア

    従業員が過去に経験した業務、キャリアを可視化する必要があります。

    新卒で入社した従業員の場合は、在籍した部署で培ったスキル、プロジェクトで果たした役割、受講したセミナー、研修の履歴などを記載します。

    中途入社の従業員の場合は、上記に加えて過去に経験した業務、スキルを記載しましょう。とくに転職を経験した従業員の場合は、前職の経験がほかの部署で役立つ場合もあります。その点を丁寧に反映できると人材活用の幅が広がります。

    資格

    従業員が保有している資格についても把握しましょう。

    また、資格を「いつ」取得したのか(取得年月日)、その有効期限、更新のタイミングなど、資格の期限についても失効しないよう管理する必要があります。

    研修履歴・教育状況

    従業員がどのような研修を受けたのか、その履歴の管理も重要なポイントです。

    同じ内容の受講の重複を防ぎ、弱いスキルを底上げする研修を受講させるなど、フォローが可能になります。

    外部のセミナーなどを受講した場合、そのレポートを提出してもらい、その理解度をスキル管理に記載することもできます。

    重要なポイントについて紹介しましたが、これら業務上必要なスキル以外にも、ポータブルスキルに代表されるように、コミュニケーション能力などの項目を設定することもできます。

    まとめ

    スキル管理とは、従業員が保有するスキルを可視化し、そのデータを一元管理する仕組みのことです。その施策によって、従業員を戦略的に部署に配置することが可能になります。

    既存の部署に当てはめるだけでなく、部署の新設、新規プロジェクトのためのアサインなど、攻めの人材活用にも最適です。

    また従業員ごとのスキルの強み・弱みが一目見てわかるため、弱いスキルに対しては研修などのフォローを行い、積極的なケアが可能です。

    会社として従業員のスキルを最大限に活用するだけでなく、能力の底上げにも役立ちます。

    また資格だけでなく、研修の履歴などの教育状況の把握もできます。

    従業員にとっても、スキル管理の導入メリットがあります。自身の保有するスキルを正当に評価されているという納得感がモチベーション・エンゲージメントを高めることへと繋がります。

    厚生労働省が配布している無料テンプレートなどもありますが、個別にファイルを更新するには手間がかかります。部署異動の際にもスムーズにデータを引継ぎ、継続的に更新を行うためにも、タレントマネジメントシステムの活用をおすすめします。

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    HR大学 編集部

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