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2023/09/04

ナラティブとは? ナラティブアプローチとビジネスへの活用方法を解説

目次

    ナラティブとは

    ナラティブとは

    ナラティブとはストーリーに近い言葉です。ここではナラティブの意味や、ストーリーとの違いを紹介します。

    ナラティブとは

    ナラティブ(narrative)とは「物語」「語り」「話術」と訳され、ビジネスシーンだけでなく、医療や臨床心理、教育などの現場でも使われています。日本でも映画やドラマの「ナレーション」という言葉が定着していますが、これはナラティブの「語り」から派生した言葉です。

    ナラティブは1960年代、フランス構造主義によって物語の役割について関心が高まり、ストーリーとは別の文芸理論上の用語として出てきた言葉と言われています。現在はもともとの文学や言語学の理論を超え、さまざまな場面で使われるようになりました。

    ナラティブとストーリーの違い

    ストーリーは物語の筋書きのことです。主人公やその他の登場人物をメインに、話が展開されていきます。ほとんどの場合、起承転結で物語が完結するのが特徴です。比べてナラティブの場合は、語り手が物語を展開していきます。語り手が物語の主人公となり、完結していなくても構わない自由な物語のイメージです。

    ナラティブアプローチとは?

    ナラティブアプローチとは?

    「ナラティブアプローチ」は、1990年代に臨床心理学の分野から生まれました。ここではナラティブアプローチの意味と、ビジネスシーンでの活用方法を解説します。

    ナラティブアプローチとは?

    ナラティブアプローチとはカウンセリング時に、患者自身に自分の物語を語らせ、問題の原因となっている否定的な思い込みを発見し、それを肯定的な内容に書き換えることで、抱えている問題を解決しようとするアプローチのことです。カウンセラーとの対話で、患者自身がネガティブに捉えていた過去の経験や、思い込みを肯定的な価値観に置き換える手法を使うことで、負の影響を軽減できると考えられています。また患者に「物語=ナラティブ」にして話させることで、自分自身が忘れていたことや、気がついていなかった問題点などを発見することもできます。

    心理療法士のエプストンとホワイトは患者を支配する思い込みの物語を「ドミナント・ストーリー」と名付けました。ドミナント・ストーリーとは患者が思い込んでしまっている、主にネガティブなストーリーです。たとえば「自分は親に嫌われている」「男は弱音を吐いてはいけない」など、患者自身が感じている精神的な苦痛のベースになるものを指します。ナラティブアプローチでは、こういったドミナント・ストーリー(患者が思い込んでしまっている、主にネガティブなストーリー)を聴きだし、ポジティブな価値観に書き換えていきます。

    カウンセラーによるナラティブアプローチの過程では、ドミナント・ストーリー(患者が思い込んでしまっている、主にネガティブなストーリー)から精神的問題点を可視化し、患者自身で問題点を客観視できるようにします。そこでどうしてそう苦痛を感じるのか、問いかけを繰り返します。先の例を使うと「どうして男は弱音を吐いてはいけないと思うのですか?」と聞くことで、どうしてそのようなストーリーを信じるようになったのか原因を探っていきます。問いかけを繰り返すことで、「弱さを見せるのはダメなことだというのは、親に思い込まされていただけ」で、実際「弱さを見せることは悪いことではない」と患者がわかればポジティブなストーリーに置き換えていけます。

    苦痛の原因になっているドミナント・ストーリー(患者が思い込んでしまっている、主にネガティブなストーリー)を見直すための質問を投げることで、別の角度から見たポジティブなストーリーが生まれます。これを「オルタナティブ・ストーリー」と呼びます。カウンセラーとの対話で、患者の苦痛の素であるドミナント・ストーリーをオルタナティブ・ストーリーに変換していくことが、ナラティブアプローチの目的です。

    ナラティブアプローチがビジネスで活用される場面

    ではナラティブアプローチがビジネスで活用されるのはどのような場面でしょうか。ナラティブアプローチは、ビジネスにおいて、上司と部下や、従業員と企業カウンセラーなどの関係で使用されます。例えば、「上司に嫌われている」と部下が思っているとします。「どうしてそう思うのか?」を考えた時に、「仕事をたくさん押し付けてくる」からと負のドミナント・ストーリーを語ったとします。これが「信用して期待されているから、仕事を任せてもらえている」と置き換えられれば、ナラティブアプローチは成功です。

    またキャリアコンサルティングの場面でもナラティブアプローチは有効です。コンサルタントの一方的なアドバイスではなく、対象者のストーリーを深く聞くことで、本来やりたかった事や生きがいを感じるキャリアを一緒に探していくことができます。

    ナラティブアプローチのポイント

    ナラティブアプローチする場合には次の3つのポイントに気をつけます。

    • 傾聴する

    • 問題を外在化させる

    • 話し合う

    ナラティブアプローチに欠かせないのが、「傾聴」です。上司と部下の場合は、まずは上司として「傾聴」する事で、部下のドミナント・ストーリーをしっかりと聞き出すことが必要になります。部下に相談された場合に、上司が話を最後まで聞かず、途中でアドバイスをはじめてしまうのは正反対のアプローチです。しっかりと上司は話を傾聴して、部下の中で問題となっているドミナント・ストーリーを集めていく必要があります。

    次に上司は問題点を「外在化」させることで、部下が問題と客観的に向き合えるように促します。ただ上司として部下にアドバイスを与えるのではなく、質問することで、部下が自分自身の中にある負のドミナント・ストーリーを、違った角度から考えられるように促し、オルタナティブ・ストーリーに置き換える機会を作ります。

    最後にしっかりと上司と部下で「話し合う」ことが大事になります。上司は部下と対話することで、部下の中にあったドミナント・ストーリーが前向きなオルタナティブ・ストーリーとして置き換えられていくのを助け、置き換えが完了したことを確認して完了になります。

    ナラティブマーケティングとは

    ナラティブマーケティングとは

    ナラティブという言葉や概念が広く使われるようになり、ビジネスにおいても「ナラティブマーケティング」として活用されるようになりました。ここではナラティブマーケティングに関して解説します。

    ナラティブマーケティングとは

    ナラティブマーケティングとは、顧客自身の物語にアプローチしていくマーケティング戦略のことです。従来は作り手や売り手側のストーリーで商品を販売していました。具体的には、どうやって作られたのか、高品質の材料である、開発に何年かかったかなどの情報を商品の販売に活用する手法です。これに対して、ユーザーの物語を想像することで、そこにどんなベネフィットを付加できるのかということを訴えていくのがナラティブマーケティングです。

    たとえば英会話のスクールが、「格安、TOEIC900越え講師のみ、今なら700点保証」などと謳うのではなく「スクールに入ることで、主人公であるユーザーの未来の可能性がどのように広がるのか?」を物語として語ってアプローチをします。

    ストーリーテリング型マーケティングとの違い

    これまでの販売方法では、ストーリー型、もしくはストーリーテリングマーケティングが主流でした。これらは作り手の想いを伝えるコミュニケーションでしたが、それでも主役は売り手側でした。高度経済成長期の頃のように、ただ認知をあげれば売れた「連呼型」よりは、一歩踏み込んだ手法ですが、それでも「商品の本質がユーザーに分かりにくい」「ユーザーの好感を得にくい」などの問題点が残っていました。この問題点を解決したのが、次世代のマーケティング手法であるナラティブマーケティングです。

    ナラティブマーケティングのメリット

    ナラティブマーケティングのメリットは大きく3つあります。
    1つ目のメリットは、ユーザー自身を主人公にしたアプローチをするため、ユーザーは商品やサービスにより親近感を覚えるという点です。そのため、商品に対しての好感度も上がりやすく、リピート率が高くなるというメリットがあります。

    2つ目のメリットは、物事をよりユーザー目線で考えるため、よりユーザーに響く商品の開発ができるということです。たとえば「この化粧品は高品質の材料を使っているにもかかわらず、バイヤーの努力でこんなにもの低価格を実現した」と表現するのがストーリーマーケティングだとすると、「あなたの肌に寄り添い、これから何十年もあなたの若さのパートナーになる」とユーザーが主役になった提案をするのが、ナラティブマーケティングです。

    3つ目のメリットは商品の本質がユーザーに届きやすくなるということです。「高品質材料」の原材料をいくら訴えても、ユーザーは「そうなんだ」で終わりです。会社としては「これだけの高品質なものを、これだけ安く売れるなんて凄い」と思っているかもしれませんが、その凄さは、ユーザーには届きづらいです。「高品質材料」がもたらす、ユーザー主役の未来を語る方が商品の本質をより理解してもらいやすく、商品の本質がユーザーに届きます。

    ナラティブマーケティングの活用事例

    ナラティブマーケティングの活用事例

    ここでは企業のナラティブマーケティングの事例を紹介します。すでに多数の企業がナラティブマーケティングを取り入れて実践しています。ナラティブマーケティングはこれからますます需要が高まっていくと思われます。ぜひ参考にしてみてください。

    事例1:無印良品

    無印良品を展開する株式会社良品計画は、SNSを使ったナラティブマーケティングの国内での先駆者と言えます。Instagramで商品を紹介する際に、社員の声がどう反映されたのか紹介し、無印が掲げる理想やストーリーにユーザーが参加できる「巻き込み型」のナラティブマーケティングを展開しています。

    例えば新商品のサーキュレーターを紹介するときに「前カバーが外せます」と紹介しても、「外せるから掃除がしやすい」ということはあえて言わないそうです。そういった発見はユーザーに任せ、ユーザーが物語を作る「余白」を残すようにしているとのことです。そうすることで、「外せるから掃除がしやすい」といった発見をしたユーザーは、自分の物語として勝手にその情報を「拡散」します。この結果ユーザーの拡散で店頭から商品が無くなる現象も起きています。無印の商品を紹介すると、ファンの多さからフォロワーが獲得しやすいこともあり「無印良品」の商品を専門で紹介するアカウントが数多くあります。「消費者の共感」をマーケティングの軸にして、SNSでユーザーとwin-winの関係が築けている好例だと言えます。
    (※参照)ネットショップ担当者フォーラム:「消費者の共感」を生む無印良品のデジタルマーケティング」より

    事例2:SUBARU

    「SUBARU」を販売する国内の車メーカー株式会社SUBARUは、ナラティブマーケティングをトータルで展開しおり、テレビCMだけでなく小説も公開しています。テレビCMはドラマ仕立てにした「あなたとクルマの物語」とユーザーを主体にした内容になっています。
    主人公はユーザーで、車に関わった思い出を振り返っていくような物語が展開されていますが、SUBARUの企業理念などの物語は入っておらず、あくまで脇役に徹している印象です。
    設定の主人公にユーザーが近ければ近いほど、自分の物語として引き込まれてしまいます。
    (※参照)SUBARU:「あなたとクルマの物語」より

    【まとめ】1on1とナラティブアプローチ導入で従業員の育成を

    ナラティブに関して、ビジネスシーンで使われるナラティブアプローチからナラティブマーケティングまで紹介してきました。特にナラティブアプローチは人材育成の場面で今後活躍しそうですね。

    またナラティブアプローチとあわせて取り入れたいのが「1on1」のアプローチです。上司と部下など1対1で行う人事評価を、よりシステマチックに効果的に行うのが1on1のアプローチです。今後の少子化で優秀な人材の採用や育成はますます重要になっていくでしょう。最近はクラウド型の人事評価システムにすることで、1on1のアプローチも簡単にコストもおさえて導入することが可能になりました。

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    HR大学編集部
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