採用マーケティングとは?メリット・デメリットや具体的な進め方を解説
候補者体験を設計し採用決定率を向上
- 採用マーケティングとは?
- 採用マーケティングが注目されている背景
- 採用マーケティングに取り組むメリット
- 優秀な人材へのリーチが可能になる
- 採用コストの最適化を図れる
- 企業ブランディングの向上が期待できる
- 採用マーケティングに取り組むデメリット
- 施策の実行に伴う運用工数が増える
- 成果が出るまでに時間がかかる
- 採用マーケティングの進め方【5ステップ】
- 1.自社のポジションを把握する
- 2.ペルソナを設定する
- 3.キャンディデイトジャーニーを設計する
- 4.ファネルに基づいてチャネルを最適化する
- 5.KPIを定め、PDCAサイクルを回す
- 採用マーケティングの主な手法と成功ポイント
- オウンドメディアの運営
- ダイレクトリクルーティング
- ソーシャルリクルーティング
- タレントプールの形成
- リファラル採用
- 採用イベント・ウェビナーの開催
- 採用マーケティングに活用したいフレームワーク
- まとめ
採用に注力しているものの、「応募が集まらない」「求める人材から応募が来ない」といった課題に直面している企業は少なくありません。
昨今は求人数に対して求職者が少ない売り手市場といわれており、求人媒体へ掲載するだけでは、十分な母集団形成や質の高いマッチングが難しいのが現状です。
こうした状況を打開する方法として注目されているのが、採用マーケティングです。
本記事では、採用マーケティングの概要に加え、具体的な進め方や施策を解説します。採用活動を仕組みから見直したいとお考えの担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
採用マーケティングとは?
採用マーケティングとは、採用活動に対して、商品・サービスの販促活動で用いられるマーケティングの考え方やプロセスを応用した手法のことです。自社で働く魅力をターゲット(求職者)に戦略的に訴求し、採用効率の改善を目指します。
従来の採用活動は、求人媒体への掲載や人材紹介会社の活用といった待ちの姿勢が主流でした。一方、採用マーケティングでは、転職潜在層を含む採用ターゲットに対して継続的に情報を発信し、自社への認知・関心・応募へとつなげる能動的なアプローチを行います。
採用マーケティングが注目されている背景
採用マーケティングが注目されるようになった背景には、主に3つの要因が挙げられます。
採用競争の激化
採用手法の多様化
働き方の多様化
少子高齢化にともない労働人口が減少する日本では、慢性的な人材不足が続いています。企業が人材を選ぶ買い手市場から、人材が企業を選ぶ売り手市場へシフトしており、限られた労働力をめぐる採用競争は年々激化しているのが実情です。
また、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、新たな採用手法も浸透しつつあります。多様な選択肢の中から自社に合った施策を選び、 効果的に活用することが求められるようになりました。
求職者が仕事に求める価値観や働き方も多様化しており、ターゲットのニーズを理解したうえで、それぞれに響く情報を発信することが求められています。
こうした採用環境の変化を背景に、従来の求人広告に頼らない戦略的な採用マーケティングの重要性が高まっています。
採用マーケティングに取り組むメリット
採用マーケティングを取り入れることで、企業は以下のメリットを得られます。
優秀な人材へのリーチが可能になる
採用コストの最適化を図れる
企業ブランディングの向上が期待できる
優秀な人材へのリーチが可能になる
採用マーケティングのメリットのひとつが、転職市場に出ていない優秀な人材へのリーチが可能になる点です。
従来の求人広告は、求人媒体を閲覧する転職顕在層へのリーチに限られるため、転職潜在層にアプローチすることは困難です。
採用マーケティングでは、オウンドメディアやSNSを活用して企業の魅力を継続的に発信し、転職潜在層に直接アプローチします。求職者と中長期的な関係を築くことで、転職意向がまだ顕在化していない優秀な人材との接点を確保しやすくなります。
採用コストの最適化を図れる
採用マーケティングによって採用効率が向上すれば、求人広告費や人材紹介会社への支払いなどの外部コストを抑えられる可能性があります。
自社のオウンドメディアやSNSを活用すれば、多額の費用をかけずに転職潜在層へアプローチできる点が強みです。また、継続的に取り組むなかでコンテンツやノウハウが蓄積されれば、施策の精度向上にもつながります。
企業ブランディングの向上が期待できる
採用マーケティングは、企業ブランディングの強化にもつながります。従来のように求人媒体や人材紹介会社を通じた採用活動では、情報の発信主体が第三者となるため、自社の魅力を正確かつ十分に伝えにくい側面がありました。
一方、採用マーケティングなら、仕事内容や社員のリアルな声といったコンテンツを自発的に発信することが可能です。企業の価値観やカルチャーを求職者に直接届けることで、応募意欲の向上だけでなく企業イメージの醸成も期待できます。
こうした情報発信は採用ターゲットへの訴求にとどまらず、顧客やパートナー企業をはじめとするステークホルダーからの信頼向上にも寄与します。
採用マーケティングに取り組むデメリット
多くのメリットがある採用マーケティングですが、取り組むにあたっては以下のデメリットも考慮しておく必要があります。
施策の実行に伴う運用工数が増える
成果が出るまでに時間がかかる
あらかじめ課題を把握しておくことで、より現実的な計画を立てやすくなります。
施策の実行に伴う運用工数が増える
採用マーケティングの導入により、人事担当者をはじめとする関係者の業務負担が増加する場合があります。
オウンドメディアの更新やSNS運用、求職者への返信対応など、自社で担う業務が新たに発生するためです。運用ルールや役割分担をあらかじめ明確にしておかなければ、工数が想定以上に膨らむおそれもあります。
特に導入初期は負荷が高まりやすいため、必要に応じて体制を強化する、もしくは無理のない運用設計を行ったうえで段階的に取り組むことが重要です。
成果が出るまでに時間がかかる
採用マーケティングは、取り組みを開始してすぐに成果が現れる施策ではありません。たとえばSNSを活用する場合でも、情報発信を継続しながらフォロワーを増やし、企業の認知度を高めていかなければならず、一定の時間がかかります。
そのため、短期的な採用ニーズに対しては求人広告や人材紹介会社を活用し、採用マーケティングは中長期的な戦略として位置づけて取り組む必要があります。
採用マーケティングの進め方【5ステップ】
採用マーケティングを進める基本的な流れは、以下の5ステップです。ここでは、各ステップの内容を順番に解説します。
- 自社のポジションを把握する
- ペルソナを設定する
- キャンディデイトジャーニーを設計する
- ファネルに基づいてチャネルを最適化する
- KPIを定め、PDCAサイクルを回す
【関連コンテンツ】
1.自社のポジションを把握する
採用マーケティングをはじめるにあたり、まずは市場における自社の立ち位置を把握する必要があります。自社の強みと弱みを明確にすることで、求職者に響くメッセージや訴求ポイントを具体化できます。
市場環境を整理する際に有効なのがSWOT分析です。以下の4項目をもとに、自社を取り巻く内外の状況を整理しましょう。
Strength(強み) | 人材・ノウハウ・技術・組織体制など、競合に対して優位性のある要素 |
Weakness(弱み) | 競合と比較して劣っている点や、不足している経営資源 |
Opportunity(機会) | 市場の成長、技術革新、社会トレンドなど、自社にとって追い風となる外部要因 |
Threat(脅威) | 市場環境の悪化や競争激化、法規制など、自社にとってリスクとなる外部要因 |
分析の精度を高めるには、顧客や従業員へのアンケートやヒアリングを実施し、多角的な視点を取り入れることが重要です。特定の担当者の主観に偏らないよう、複数の意見を踏まえて客観的に情報を整理しましょう。
2.ペルソナを設定する
自社分析の次に行うのが、ターゲットとなる求職者像の具体化です。そのために設定するのがペルソナです。ペルソナは、自社にとって理想的な求職者像を詳細に言語化した人物像を指します。
ペルソナを明確にすることで、ターゲットへの理解が深まり、訴求すべきメッセージや選定すべき施策が具体化できます。
ペルソナを設計する際は、以下の項目を参考にしてください。
ペルソナの属性 | ペルソナの設計項目 |
|---|---|
新卒・中途共通 | ・年齢 |
新卒採用 | ・部活動 |
中途採用 | ・現在の仕事内容 |
また、趣味や価値観、家族構成といったパーソナリティも可能な限り書き出しておくと、より立体的な人物像を描けます。初期段階では質より量を意識し、幅広く情報を洗い出すことが、精度の高いペルソナ設計につながります。
【関連コンテンツ】
3.キャンディデイトジャーニーを設計する
ペルソナを設定したら、キャンディデイトジャーニーを設計します。キャンディデイトジャーニーとは、ターゲットが自社を認知してから内定承諾に至るまでの行動や思考、感情の変化を時系列に落とし込んだものです。
一般的に、以下のフェーズで構成されます。
認知(求人広告やSNSなどを通じて自社を知る段階)
興味(求人情報や発信内容を見て関心をもつ段階)
応募(他社と比較検討したうえで応募を決める段階)
選考(面接や面談を通じて相互理解を深める段階)
内定(内定を受け、入社を決断する段階)
重要なのは、各フェーズでターゲットが抱える感情や疑問を可視化し、次の段階へ進みやすい導線を設計することです。
フェーズごとに、ターゲットのニーズは異なります。たとえば認知の段階では、事業内容や実績、企業理念、待遇などの基本的な情報が求められます。一方、興味から応募にかけては、社員インタビューやキャリア相談会の実施など、より具体的な情報提供や接点づくりが有効です。
認知段階の求職者にいきなり「面接にお越しください」と訴求しても、行動にはつながりにくいでしょう。キャンディデイトジャーニーを活用して求職者の状態を整理することで、フェーズごとの最適なアプローチを設計できます。
4.ファネルに基づいてチャネルを最適化する
キャンディデイトジャーニーを設計し、求職者の認知から応募に至るプロセスをファネル構造で捉えたら、各フェーズに適した採用チャネルを選定・最適化します。
ファネルとは、商品・サービスを認知してから購入に至るまでの行動プロセスを段階的に図示したマーケティングの考え方で、採用マーケティングにも活用されるフレームワークです。
また、採用チャネルとは、ターゲット層にアプローチするための施策や使用する媒体の総称です。オウンドメディアやSNSの運用、会社説明会の開催などが代表例として挙げられます。
ファネルごとの主なチャネルは以下のとおりです。
ファネル | 採用チャネル |
|---|---|
認知フェーズ | SNSや動画コンテンツ、会社説明会などを通じて情報を発信する |
興味・応募フェーズ | カジュアル面談やインターンシップで求職者と企業の理解や共感を深める |
選考・内定フェーズ | 丁寧なフォロー体制を整え、選考辞退の防止や承諾率向上につなげる |
入社後フェーズ | エンゲージメントを高め、リファラル採用へ展開する |
ファネルに応じて採用チャネルを設計することで、求職者の心理状態や検討度合いに即したアプローチが可能になります。その結果、応募率や承諾率の向上といった成果につながり、採用活動全体の最適化が図れます。
5.KPIを定め、PDCAサイクルを回す
採用マーケティングの成果を高めるには、KPI(数値化された中間目標)を設定したうえで定期的に効果測定を行い、PDCAサイクルを回し続けることが重要です。KPIを可視化することで、目標との差異や改善すべきポイントを客観的に把握できます。
採用マーケティングで活用される主なKPIは、以下のとおりです。
自社へのエントリー率
Webサイトのページビュー数
メールの開封率
説明会参加率
面接実施率
採用単価
入社後の定着率・離職率
KPIを管理するにあたり、単に数値を追うのではなく、その背景にある要因まで分析する視点が欠かせません。たとえば、メールの開封率が低い場合、件名の訴求力不足やペルソナとのミスマッチが原因として考えられます。数値の変動要因を掘り下げることで、より的確な改善策を導き出せます。
なお、正確なデータを得る手段として、ATS(採用管理システム)の活用もおすすめです。人的リソースに余裕がない企業でも、効率的にデータを収集・管理できます。
【関連コンテンツ】
採用マーケティングの主な手法と成功ポイント
ここからは、採用マーケティングの具体的な手法と、成功のポイントを確認していきましょう。
オウンドメディアの運営
ダイレクトリクルーティング
ソーシャルリクルーティング
タレントプールの形成
リファラル採用
採用イベント・ウェビナーの開催
オウンドメディアの運営
オウンドメディアとは、自社が運営するブログや採用サイトなどのメディアのことで、企業の価値観や事業への想い、職場の雰囲気を伝える有効なツールです。応募を検討している求職者からの信頼感や共感を生みやすく、企業への理解を深めるきっかけになります。
また、コンテンツを継続的に更新することで検索エンジンからの流入も期待でき、求職者との接点を中長期的に増やせるのもメリットです。
オウンドメディアを運営するにあたって、採用ターゲットに響くテーマを継続して発信することが大切です。更新が途絶えると検索順位の低下や求職者の関心離れにつながるため、無理のない更新頻度を設定し、継続的に運用できる体制を整えておきましょう。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者に直接コンタクトを取り、選考への参加を促す採用手法です。転職サイトのデータベースやSNSなどを活用し、スキルや経験が自社の要件に合致する人材へ個別にアプローチします。
売り手市場が続くなか、転職意欲の高い顕在層だけでなく、まだ転職活動をしていない潜在層にもリーチできる点が特長です。企業側から能動的に人材へアプローチできるため、従来の求人掲載型の採用と比べて、より精度の高いマッチングが期待できます。
成功のポイントは、スカウトメッセージの内容を求職者ごとに最適化することです。テンプレートをそのまま送るのではなく、求職者の経歴やスキルに触れたメッセージを送ることが、開封率や返信率の向上につながります。
ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングとは、FacebookやInstagram、YouTubeなどのSNSを活用して求職者と接点を持つ採用手法です。企業がSNSアカウントを通じて情報を発信し、求職者に直接アプローチできるのが強みです。人材紹介会社を介さずに求職者とコミュニケーションを取れるため、企業の魅力や価値観をタイムリーに届けられます。
ソーシャルリクルーティングの成功には、採用情報だけに偏らない情報発信が必要です。社員の日常やプロジェクトの裏側、企業文化を伝えることで、求職者の共感や親近感を生み出しやすくなります。一方的な宣伝にならないよう、発信内容の設計を工夫することが、継続的な関心につながります。
タレントプールの形成
タレントプールとは、内定辞退者や過去の応募者、退職した元社員など、自社と接点を持った人材の情報をまとめたデータベースのことです。特定の人材に対して継続的なコミュニケーションをとり、将来的な採用につなげます。転職潜在層との関係性を長期的に育てられるため、採用マーケティングの中核を担う施策のひとつといえるでしょう。
多くの求職者は、常に転職活動をしているわけではありません。そのため、接点を持った時点ですぐに採用につながらなくても、関係性を維持しておくことで将来の採用機会を広げられます。
タレントプールの形成で重要なのは、求職者との接点を途切れさせないことです。定期的な情報発信やイベントへの招待を通じて関係を維持し、転職意向が高まったタイミングで自社を想起してもらえる状態をつくることが求められます。
リファラル採用
社員の紹介によって応募者を募るリファラル採用は、ミスマッチを防ぎやすい採用手法です。紹介者を通じて企業の実情や職場の雰囲気が事前に共有されるため、入社後のギャップが生じにくなります。インセンティブ制度を整えることで社員の協力も得やすくなり、採用コストを抑えながら質の高い人材の確保が可能になります。
成功の鍵となるのは、いかに社員が紹介しやすい環境を整えられるかです。報酬制度を設計するだけでなく、社員が自社に誇りを持てる職場環境を築けているかが成果に大きく影響します。
社員のエンゲージメントが高い企業ほど紹介数が増えやすく、結果としてリファラル採用の活性化につながります。
採用イベント・ウェビナーの開催
インターンシップや合同説明会といった採用イベント、またはウェビナー(オンラインセミナー)も求職者との接点を広げるのに有効な施策です。Webサイトや求人情報だけでは伝えにくい企業の雰囲気や働く人の価値観を直接伝えられるため、企業理解を深めてもらう機会として活用できます。
成果を高めるには、一方的な企業説明に終始しない設計が必要です。社員との座談会やQ&Aセッションを設け、求職者が率直な疑問を解消できる場を用意することで、企業への信頼感や親近感が高まり、イベント参加後の応募意欲向上につながります。
採用マーケティングに活用したいフレームワーク
採用マーケティングを効果的に進めるには、感覚だけに頼らず、フレームワークを活用した体系的な分析が欠かせません。採用市場の状況や求職者の心理を整理することで、自社の立ち位置や課題が明確になり、より精度の高い施策を立案しやすくなります。
採用マーケティングで頻繁に用いられるフレームワークが、3C分析です。3C分析は、3つの観点で環境を整理します。
Customer(市場・求職者)
Company(自社)
Competitor(競合)
求職者のニーズや競合企業の動向、自社の強み・弱みを多角的に分析することで、採用市場における自社の立ち位置を客観的に把握できます。
なお、前述したSWOT分析やペルソナ設計、キャンディデイトジャーニーも、採用マーケティングに活用される代表的なフレームワークです。これらを組み合わせることで、採用戦略の精度をさらに高められます。
【関連コンテンツ】
まとめ
採用マーケティングとは、商品やサービスの販促活動で用いられるマーケティングの考え方やプロセスを、採用活動に応用した手法です。自社で働く魅力を戦略的に訴求することで、採用効率の向上やミスマッチの防止を目指します。
なお、採用マーケティングには継続的な情報発信やデータ分析、求職者との関係構築など、一定の工数が必要となる施策も少なくありません。自社リソースだけで対応するのが難しい場合は、ATS(採用管理システム)といったツールの活用も有効な選択肢です。
ツールを導入することで、応募者情報の一元管理や選考プロセスの可視化、定型業務の自動化が可能になります。限られたリソースでも採用活動を効率的に進められるため、採用マーケティングの成果を最大化しやすくなるでしょう。







