#人材育成
2024/04/22

見える化とは?可視化との違いやメリットと業務での活用方法を解説

目次

    見える化とは、仕事における課題や業務内容、または業務指示を明確に目に見える状態にすることを表わす言葉で、仕事での問題の発生を防ぐための取り組みです。

    見える化を導入することは、生産性の向上や人材育成、評価の透明性などさまざまなメリットがありますが、一方で見える化を行う現場の従業員の理解を得ていないとかえって負荷がかかってしまう場合もあります。

    見える化を導入する際は、自動化できることは自動化し「人の手を動かさずに見える化ができないか」を検討するようにすると良いでしょう。

    この記事では、見える化のビジネスでの意味や可視化との違い、見える化のメリット、業務や仕事の見える化の方法や、見える化の実践事例について解説します。

    業務進捗や人材データの見える化に

    見える化とは

    見える化とは、仕事における課題や業務内容、または業務指示を明確に目に見える状態にすることを表わす言葉で、仕事での問題の発生を防ぐための取り組みです。

    古くからトヨタの自動車製造ラインの現場で実施されている「目に見える」生産管理が、見える化の言葉の起源と言われています。

    トヨタの見える化とは

    トヨタで実施されている見える化を活用した、有名な2つの生産方式について確認してみましょう。

    トヨタで昔から実施されている「見える化」の仕組みは、決して複雑なものではなく、むしろ作業者が業務にあたるうえで必要な情報がひと目で分かることに重きが置かれています。

    アンドン式

    トヨタの製造ラインでは、異常が発生すると「アンドン」と呼ばれる電光表示盤にアラートが表示され、関係者が迅速にトラブル対応にあたることができるようになっています。

    機械が異常などで停止した時には「赤」、工具交換や品質確認が必要である時には「黄」、機械の調整操作中には「白」、というように機械の状態により「アンドン」には異なる色が点灯します。

    点灯する色を見れば、関係者は機械の稼働状況や必要な作業が一目でわかるという仕組みです。

    (参考)トヨタ自動車「トヨタ生産方式

    かんばん式

    トヨタでは、「何の部品が、いつ、どれだけ必要か」を記す「かんばん」という管理ツールが活用されています。

    後工程が前工程へ部品を「引き取りにいくタイミング」と「引き取る数量」が明記された「引き取りかんばん」、「生産量」や「生産時期」が明記された「仕掛けかんばん」など、次工程への指示を札に記載し生産ライン上での各工程でかんばんとして回されます。

    かんばんを回すことで生産の停滞や無駄を防ぎ、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ造る・必要なだけ運ぶ」という「ジャスト・イン・タイム」の生産を実現しているのです。

    (参考) トヨタ自動車「かんばん方式

    見える化と可視化の違い

    目に見えないものを見える状態にするという意味では、「見える化」と「可視化」に違いはありません。

    しかし、ビジネスにおける多くの場面では、「見える化」と「可視化」は、異なる目的のために使用されます。

    可視化の目的は「現状を把握し課題の打ち手を考える」ことであるのに対し、見える化の目的は「共通認識を持つことで業務を効率化する」ことにあります。

    さらに、可視化は「課題を洗い出して打ち手を考案できる状態にできるかが重要なポイント」であり、見える化は「現場の人間が迷いなく動けるかが重要なポイント」になります。

    見える化とは仕組みを作ることで、可視化は見える化の前段階であり、可視化するだけで何も対策を講じなければ、問題解決をすること(負の解消)も、生産性を上げること(現状の向上)にも結び付きません。

    可視化とは

    可視化とは、人の目には見えない事象や現象を、映像や表などにして分かりやすく目に見える形にすることです。

    英語で視覚化の意味を持つ「ビジュアライゼーション(visualization)」という言葉で表されることもあります。

    ビジネスシーンでは、「顧客ニーズ」「顧客満足度」「組織課題」のほか「従業員のモチベーション」などが可視化の対象としてあげられ、ビジネスシーンで「可視化」をする目的は、「現状把握をするため」であることが多いでしょう。

    例えば、漠然と「メンバーのモチベーションをあげたい」と思っていても、どのような打ち手が有効なのかは分かりません。

    「メンバーのモチベーションの源はどこにあるのか」を可視化することで、現状不足している「モノ」「コト」を補うためにどんな打ち手を打つべきかが分かります。

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    見える化の業務でのメリット

    見える化を進めることは、幅広いビジネスシーンにおいて業務の効率化や業務改善につながります。

    見える化をすることで業務で得られるメリットについて確認してみましょう。

    見える化の業務でのメリット

    • 組織の生産性をあげることができる

    • ミスやトラブルの抑止をすることができる

    • 属人的な業務を減らすことができる

    • 人材育成に役立てることができる

    • 公平な人事評価ができる

    組織の生産性をあげることができる

    見える化の業務でのメリットは「組織の生産性をあげることができる」ことです。

    見える化によって、業務を進める中でやるべきことや問題点を、組織全員の共通認識として落とし込んでいくことで、特定の誰かが従業員ひとりひとりに細かく指示を出さなくても、作業者が業務を遂行していくことが可能になります。

    また、「いつ、誰が、何を、どうする」という指示を明確にしながら業務を行う仕組みを作ることで、作業者間の連携がスムーズになります。

    「何を伝達するか」を決めることで、連携のためのコミュニケーションに掛けていた工数の削減ができるケースもあります。

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    ミスやトラブルの抑止をすることができる

    見える化の業務でのメリットは「ミスやトラブルの抑止をすることができる」ことです。

    見える化によって、作業者間での連携がスムーズになるということは、伝達の行き違いによるミスやトラブルの抑止効果にも期待できます。

    業務内容や業務プロセスを担当者しか把握していないと、担当者の作業ミスに周囲が気付きにくいというリスクがある他、担当変更や担当者が不在時の代理対応などのタイミングでミスが起こりやすくなります。

    個人ではなく組織として、複眼での作業チェックをすることで仕事の質を上げていくことにつながります。

    属人的な業務を減らすことができる

    見える化の業務でのメリットは「属人的な業務を減らすことができる」ことです。

    見える化をしていない組織では、業務内容を把握しているのが担当者のみという、いわゆる属人化が進みやすくなります。

    業務が属人的になると、必要なタイミングで担当者が休みを取ることができない、という事態にもなりかねません。

    組織内で各担当の業務内容をしっかりと共有することで、何かがあった際の代理対応が可能になります。

    もし、異動や退職などで担当者が変更となる場合でも、スムーズに引継ぎを行うことができるでしょう。

    人材育成に役立てることができる

    見える化の業務でのメリットは「人材育成に役立てることができる」ことです。

    作業者によって業務のやり方や進め方が違う場合、どうしても個人差が起きてしまいがちです。

    例えば、「AさんはBさんよりも作業が早いが、少々正確性に欠けるところがある」「BさんはAさんよりも作業内容が正確だが、少々時間がかかりすぎる」という個人差が起きがちです。

    この場合、AさんはBさんよりも効率的に作業を進めるコツを知っており、BさんはAさんよりも的確に作業を進めるコツを知っている、ということです。

    実作業者が業務で行っている作業内容を見える化し、それぞれの良いところを採用し標準化することで、業務の質をならしていくことができ、人材育成にも役立ちます。

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    経営戦略と連動した人材育成を実現する方法

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    公平な人事評価ができる

    見える化の業務でのメリットは「公平な人事評価ができる」ことです。

    従業員の仕事ぶりを評価し、昇給、昇格、賞与などの処遇を決める「人事評価」では、主観ではなく公平性のある評価が求められます。

    メンバーにとって、自分の働きのどこが良かったのか、どこが足りなかったのか、明確な評価を得ることが仕事へのモチベーションアップにつながります。

    逆に、評価基準が明確でないと評価に納得感が持てずに、モチベーションが下がってしまう可能性があります。

    見える化で従業員の業務プロセスが把握しやすくなれば、客観的で公正な人事評価がしやすくなります。

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    納得度の高い評価を実現する方法

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    見える化の進め方

    組織として業務の見える化を実現するための、見える化の進め方について5つの段階に分けて確認してみましょう。

    見える化の進め方

    1. 見える化導入後の目指す姿を掲げる
    2. 目指す姿の実現に向けて必要なことを明確にする
    3. 「いつ・誰が・何を見るか」が自然と目に入る仕組みを作る
    4. 見るべきものをツールに落とし込む
    5. 実作業の中で適切な仕組みに整える

    見える化導入後の目指す姿を掲げる

    最初に、組織として「どうありたいか」「どうあるべきか」という目指す姿である「目標」を掲げます。

    目標は、可能な限り組織の従業員みんなで話し合って決めると良いでしょう。

    仕組み化するということは、これまでやらなくても業務を遂行できていたのに、やらなければいけないことが増えるという側面を持ちます。

    そのため、実作業を行う従業員が「なぜそれをやらなくてはいけないのか?」ということをしっかりと理解した状態でスタートすることが大切なのです。

    例えば、「仕事が進めやすくなることで、メンバーの業務負荷を軽減したい」「ひとりひとりがスキルアップをして、業務ミッションを達成したい」「個人の頑張りだけでなく、組織としてミスを防ぐための対策をしたい」など、実業務の中で叶えたいことをみんなで話し合い、組織として目指すべき姿を定義します。

    目指す姿の実現に向けて必要なことを明確にする

    目指す姿を具体的に決めたら、目標の実現に向けてどうすれば良いかを検討しましょう。

    検討の手順としては、現状の業務プロセスを可視化したうえで、問題点を洗い出します。

    検討をする際に、現状の業務プロセスを可視化することなく、一足飛びに問題点を考えてしまわないように注意しましょう。

    現状の業務内容を振り返ったうえで、「目標を達成するために邪魔になっているモノ・コトは何か」「今行っている業務プロセスの中で不足していることは何か」といった問題点とあわせて必要な打ち手を絞っていきます。

    「いつ・誰が・何を見るか」が自然と目に入る仕組みを作る

    現状の問題点と必要な打ち手が特定できたら、業務プロセスに「仕組み」として取り入れます。

    仕組み化するためには、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」見るかを具体的に決めて、ある程度の強制力を持たせることがポイントです。

    トヨタの「アンドン」の例では、機械に異常が発生したら光が点灯するため、関係者はわざわざ何かをチェックしなくても異常の発生を視認することができました。

    次工程への指示を札に記載して生産ライン上で回す「かんばん」の例でも、引き取る部品や生産などの必要な情報が自然と作業者の目にとまるように工夫されていました。

    業務遂行の流れの中で「頑張って確認する」のではなく「自然と目に入る」仕組みづくりをすることで、仕組みを形骸化させずに現場に定着することができます。

    見るべきものをツールに落とし込む

    どのタイミングで「誰が」「何を見るか」を決めたら、業務プロセスの中で使うツールに落とし込みましょう。

    見える化を導入するにあたり、活用するツールを選定しましょう。

    見える化で活用するツール

    • 業務フロー:業務遂行の流れを見える化する

    • 業務マニュアル:業務の手順を見える化する

    • チェックリスト:業務遂行にあたり見るべき項目を見える化する

    • 課題管理シート:業務遂行にあたっての課題や問題点を見える化する

    • 業務報告書:従業員の抱えている業務量を見える化する

    ツールを作り、業務の流れの中に組み込むことで、仕組みとして運用しやすくなります。

    ただし、あまりにも、ツールの数を増やし過ぎてしまうと従業員の作業負荷が大きくなってしまうこともあるので注意が必要です。

    実作業の中で適切な仕組みに整える

    業務フローやツールを新しく作り、見える化を導入した後には、必ず導入の成果について振り返る機会を設けるようにしましょう。

    どんなに検討に時間をかけても、実務作業の中では想定外のことが起こる場合もあります。

    また、ツールの導入によって作業が複雑になり、見える化を導入する前よりも効率を下げてしまう可能性もゼロではありません。

    「業務フローを決めたらそれで終わり」ではなく、「やりづらい点はないか」「情報や準備に不足がないか」を現場に確認し、より適した仕組みとなるようPDCAを回すことが大切です。

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    見える化の実践事例

    会社での見える化の実践事例について確認してみましょう。

    見える化の実践事例:目標数値の「見える化」

    営業目標としての訪問件数や受注件数などの目標数値を設定し、見える化をします。

    KPIを数値化し見える化することで、進捗に遅れがあった場合に組織内で適切なフォローを実施することができ、目標達成の可能性を高めることができます。

    ▼「KPI」についてさらに詳しく
    【完全版】人事のためのKPIとは。KGI・SMART・OKRとの違い

    見える化の実践事例:メンバーのタスクの「見える化」

    タスク管理表などを導入して組織内のメンバーが抱えているタスクの「見える化」をします。

    1人の従業員にタスクが集中した際に、別のメンバーにタスクを振り分けるなどの業務バランスのコントロールやタスクの進捗管理にも役立ちます。

    見える化の実践事例:組織課題の「見える化」

    課題管理シートなどで、従業員が日頃の業務遂行の中で困っていることの「見える化」をします。

    粒度を問わず現場の声を拾っていく仕組みを作ることで、リアルタイムで従業員のフォローを実施することができる他、風通しの良い環境づくりにも役立ちます。

    見える化の実践事例:エンゲージメントの「見える化」

    目には見えにくい、従業員のエンゲージメントの「見える化」をします。

    従業員の企業に対する帰属意識や愛着心、貢献意欲を表すエンゲージメントを見える化することで、従業員のモチベーションの把握やメンタル不調の早期発見などのマネジメントに活かすことができます。

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    従業員のエンゲージメントを可視化する方法

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    見える化で大切なことは「共通認識」と「仕組み化」

    見える化を進める上で大切なのは、「共通認識」と「仕組みを根付かせること」です。

    そのためには、わかりやすさや現場の作業負荷を上げないということを念頭に置いて、仕組みを作ることが大切です。

    また、ツール選びでは、自動化できることは自動化し、「人の手を動かさずに見える化ができないか」を検討するようにすると良いでしょう。

    特に、組織状態の改善のためと言っても、直接の業務改善から一歩離れた「組織サーベイ」などに時間を取られることを負担に感じる従業員もいるということを考慮しなければいけません。

    何か新しいことを始める際には、「新たな仕組みや作業を導入する」というプラスの動きだけでなく、実業務の遂行に集中できるように、「従業員に掛かっている作業負荷をマイナスにする動き」を同時に検討することも、快適に働ける環境作りのひとつの方法になることを忘れないでおきましょう。

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    HR大学編集部
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