職群とは?職群の定義や実際の企業での事例を解説
- 職群とは
- 職群に分ける目的とは
- 主な職群の例
- 総合職
- 一般職
- 専門職
- 技術職
- 技能職
- 「職位」「職種」との違いとは
- 職位との違い
- 職種との違い
- 職群を活用した企業の事例
- 株式会社JCB
- ハウス食品グループ本社株式会社
- プロパティエージェント株式会社
- まとめ
企業で働く従業員を分類するものには「職種」「職位」など、さまざまな言葉があります。
「職群」もその一つです。
具体的な意味は企業によって少しずつ異なりますが、一般的に「職群」は従業員が企業の中でどのような立場にいるのか、どのような業務に従事しているのかを表す場合が多いものです。
では、なぜ従業員を職群に分ける必要があるのでしょうか。また、職群に分けることによって、企業・従業員それぞれにどのようなメリットがあるのでしょうか。
実際に職群による分類は、企業内でどのように役立てられるのでしょうか。
この記事では、職群の定義、職群に分ける目的や具体的な職群の名称、実際の企業で行われている職群の分類について解説します。
職群とは
まずは、職群という言葉が何を指すのかを説明しましょう。
職群とは、企業や団体で働く従業員を、職務上の一定の基準で分類したものを指します。
この「一定の基準」の例としては、類似したキャリアを形成する従業員の集団であること、業務の内容が比較的似ている職種の集団であることなどが挙げられます。
具体的な職群の名称は企業によって異なり、「総合職」「一般職」のような名称もあれば、「営業職」「事務職」のように、従事する業務に由来する名称のものもあります。
また、多くの企業では、単に従業員を職群に分けているだけではなく、その分類ごとに等級を設定したり、報酬を定めたりしていることが多くなっています。
職群に分ける目的とは
職群が従業員を一定の基準で分類するものであることを説明しましたが、そのような分類をする目的とは何でしょうか。
企業によってそれぞれ目的が異なる場合もありますが、一般的に職群に分ける最も大きな目的は、それぞれの職群に応じた人事制度を構築するためであると考えられます。
企業内では、さまざまな立場、職種の従業員が働いており、その従業員全員に全社で統一した評価制度・給与制度を適用することは難しいでしょう。
たとえば総合職と一般職、営業職と技術職などを比較してみると、日々担当している業務の種類・幅が大きく異なるため、一つの評価制度・等級制度・報酬制度を用いれば、不公平さや不平等感が生まれてしまうことがあり得ます。
全ての従業員が公平な人事評価・報酬を得られるためには、その特性によって分けられた職群に合った等級・報酬制度を設定することが重要なのです。
主な職群の例
職群とは何か、なぜ従業員を職群に分けるのかを説明してきました。
それでは、具体的な職群の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。
もちろん企業によって職群の名称や分類のやり方はそれぞれです。
ここでは、企業で一般的によく見られる主な職群名とその特徴について説明します。
総合職
総合職という名称は多くの企業で用いられているため、耳にしたことがある人も多いでしょう。
総合職とは企業の利益や価値を生み出し、企業を成長させるために、比較的長期的な期間を想定して育成される従業員を指します。企業内の中核業務を担うポジションと言えるでしょう。
一つの業務に長く従事することもありますが、基本的にはジョブローテーションとして転勤や職種の変更などの異動がある点、企業の幹部候補として管理職へ登用される点などが他の職群とは異なります。
転勤・異動に関しては、同じ総合職の中でも、
転勤がない人
限定された地域内で転勤がある人
日本国内外を対象に、転居を伴う転勤がある人
など、待遇が異なる場合も多くあります。
そして、総合職は比較的重要なポストに配属されるチャンスに恵まれているため、必要な成果をあげる必要はあるものの、他の職群と比べて昇進しやすい環境にあります。
積極的にキャリアアップを目指したい人に向いている職群であると言えるでしょう。
業務の幅が広く、転勤の可能性もあることから一般職に比べて給与が高く設定され、大幅な昇給が見込まれることも特徴です。
一般職
一般職も、多くの企業でよく聞かれる職群名です。
一般職とは、一定の分野で限定的な業務を行う従業員を指し、同じ意味で使われる名称として「事務職」「補助職」といったものがあります。
総合職をサポートする業務を担う立場でもあり、具体的には事務作業・顧客対応などの細かな業務を担当することが多くなります。
事業の中核を担う総合職の人たちがスムーズに業務を進めるために欠かせない存在で、会社にとって必要不可欠な職群と言えるでしょう。
基本的に支店などの事業所単位で採用されることが多く内勤の業務が主であること、異動や転勤が少ないことから、一般職には結婚や出産などによるライフスタイルの変化が多い女性の割合が多くなっています。
業務の範囲が限定されている分、一般的には総合職に比べて給与が低い場合が多いようです。
専門職
専門職とは、事業における特定の分野で専門的な知識・経験を活かして業務にあたる従業員を指します。
その名称は企業によって異なり、「スペシャリスト」や「専任職」などと呼ばれることもあります。
専門職は特定の分野における知識が求められるため、その証明として資格が必要になることが多くあります。
専門職の人が職群を変更することは基本的には少なく、自身の専門分野に特化した業務に長期的に従事することが一般的になっています。
専門的なスキルを持っていることが強みと言えますが、一方で、その専門知識や技術も時代の流れによって更新されて変わっていくため、常に知識やスキルのブラッシュアップが求められる職群であると言えるでしょう。
技術職
技術職とは、理系や工学系を始めとした専門的な技術・知識を元に、ものづくりに関わる業務に従事する人を指します。
特に、物理的・科学的な技術を要する分野で成長・発展する企業においては、技術職は事業全体の基礎を支える重要なポジションと言えます。
専門的な知識を要するという意味では一見専門職と同じように思えますが、ものづくりや点検・修理などの作業を現場で行うための物理的なスキルが必要という点で、専門職とは異なります。
技術職が活躍する業務範囲・業界は建築や電気・機械系、化学・IT関連など非常に幅広く、必要とされる知識もそれぞれの業務で大きく異なります。
専門的スキルを活かす技術職は、あらゆる職群の中でも特に人々の生活に深く関わっており、「ものづくり大国」と言われる日本においてその根幹を担う存在と言えるでしょう。
技能職
技能職とは、主に工場などである一定の決まった業務を技能者として担当する従業員を指します。
名称は技術職と似ていますが、専門的な知識・技術を用いて業務にあたるのが技術職であるのに対して、技能職は特別な専門知識を持たずに製造などの作業に直接あたる人と言えます。
技能職が活躍する具体的な例としては工場でのライン作業や検査組立、機械オペレーターなどが挙げられます。
専門知識を持たないとは言え、技能職は技術職の人たちが考えた製品や社会から求められる製品を実際に体現化させる重要な業務と言えます。
精密な製品を作るために、社内外での技能資格の取得を推進し、技能職の従業員のスキルアップを図っている企業もあります。
「職位」「職種」との違いとは
企業内で従業員を分類する際に、職群と似たものとして「職位」や「職種」といった言葉があります。
一見ほぼ同じ意味のように見えるこれらの言葉ですが、職群とはどのように異なるのでしょうか。
ここでは、職位・職種それぞれの言葉の意味を確認していきましょう。
職位との違い
「職位」は、組織上のポジションを指す言葉です。
企業によっては、「職階」や「役職」などの言葉と同じ意味として使われる場合もあります。
職位を表す具体的な言葉としては、以下のものが一般的に多く使用されています。
主任・・・グループなどの組織をまとめる
係長・・・業務の最小単位である「係」のトップ
課長・・・人事課や営業第一課といった各課の最高責任者
部長・・・課長・係長・主任、そして全体の従業員を取りまとめる管理職
上記の名称に加えて、近年では日本の企業でも「マネジャー」「リーダー」などのカタカナ表記の呼び方も増えてきているようです。
職群が企業全体での立場や担当する業務によって従業員を分類するものであるのに対し、職位は業務内容を問わず、各部署やプロジェクトなどの比較的小さな単位の中での各従業員のポジションを表すものである点が双方の違いと言えるでしょう。
職種との違い
職種は、業務の内容によって分類された職務の名称を指します。
具体的な職種の例としては「営業」や「事務」、「企画」などが挙げられ、業務において必要とする知識の類似性・共通性のある仕事を分類したものと言えます。
「営業部」「企画部」など、部門を構成しているものを職種と考えると分かりやすいでしょう。
職種の名称や分類のやり方には企業によって違いがあり、同じ職種名でも企業によって異なる業務を担当していることもあります。
企業全体での立場や担当業務によって分けられる職群と比較して、職種は具体的な業務内容によって分類される点が異なります。
こちらでは目標設定における職種別のコメント例や書き方を詳しく紹介しています。
人事評価におけるコメントの重要性。職種別のコメント例や書き方を紹介
職群を活用した企業の事例
企業では職群を始め、職位や職種などさまざまな分類分けが存在します。
従業員を職群に分類することは、実際の企業でどのようなメリットを生み、どのように役立っているのでしょうか。
ここでは、実際の企業で行われている職群の分け方とその活用方法についての事例を紹介します。
株式会社JCB
世界中で使用できるクレジットカード「JCBカード」で知られる株式会社JCBでは、職群制度を設けることで、各従業員の志向や希望する働き方に対するキャリア構築を支援しています。
株式会社JCBの職群は「総合職群(G職・GL職)」「習熟職群(S職・SL職)」「専門職群(Ex職・ExL職)」の3つに分かれています。
それぞれの職群の内容は以下のようになっています。
総合職群(G職・GL職)
- G職・・・幅広い領域でキャリアを形成し能力を発揮、成果を創出することにより会社に貢献するリーダー候補となる職群。
- GL職・・・様々な領域において、ビジネスの進化・変革に挑戦することにより、成果を創出するリーダー。
習熟職群(S職・SL職)
- S職・・・知識・スキルの習熟により能力を高め、発揮し、成果を創出することにより会社に貢献する職群。
- SL職・・・特定の領域における高い知識・スキルを活かし能力を発揮、成果を創出することにより、会社に貢献するリーダー。
専門職群(Ex職・ExL職)
- Ex職・・・専門性を有し、専門領域で能力を発揮、成果を創出することにより、会社に貢献する職群。
- ExL職・・・市場・業界価値の高い専門性を有し、能力を発揮、成果を創出することにより、会社に貢献するリーダー。
上記の各職群には、「G1」「S3」「Ex5」など、期待役割に応じた等級が設定されています。
また職群の他、各組織に「部長」「主幹」といったポストも設定されています。
株式会社JCBでは、範囲や領域を限定せずに業務に携わってほしいという想いから、新卒社員の募集を総合職群と習熟職群で実施しています。
入社後に一定の経験を経た後、高い専門性を有し、能力の発揮が期待できると判断された従業員は専門職群を選択できるようになっています。
3つの職群の内、総合職群・専門職群については転居を伴う異動がありますが、習熟職群については原則として転居を伴う異動はないとされています。
また、従業員ひとりひとりが自身に合った働き方を選択できるよう、従業員自身のキャリア志向や環境の変化を踏まえて、会社が認めた場合には職群を転換することが可能になっています。
ハウス食品グループ本社株式会社
食品製造加工・販売で知られるハウス食品株式会社を持つハウス食品グループ本社株式会社
では、役割成果主義を基本とし、
仕事の特性や期待される役割に応じた評価・処遇の実現
自ら考え、自らチャレンジする風土醸成
能力、成果、市場価値に見合ったやりがいのある処遇の実現
を狙いとした人事制度体系を構築しています。
その一つとして、仕事の特性、期待される役割による職群別の資格等級を設けています。
職群は以下のように分けられています。
L職群(リーダー)・・・管理職層
E職群(エキスパート)・・・一般社員層
C職群(クリエーター)・・・一般社員層
一般社員層にあたるものがE職群・C職群と2つあり、
E職群(エキスパート)・・・ある一定の職務領域の中で技能や知識を習熟し、業務の効率化や品質の向上を追求していく職群
C職群(クリエーター)・・・幅広い仕事領域・専門分野で、より広い視野で創造性を発揮して変革に挑戦していく職群
と定義されています。
また、E職群からC職群への転換を希望する従業員を対象に職群転換制度が設けられており、年に1回その認定が行われています。
プロパティエージェント株式会社
不動産クラウドファンディング事業・不動産開発販売事業などからなるDX不動産事業を展開するプロパティエージェント株式会社では、職群分けによる「複線型人事制度」が構築されています。
「複線型人事制度」とは、従来の画一的な人事制度に代わって、企業内に複数のキャリアコースを設定するものです。
複数の選択肢を用意することによって、働く人が主体的にキャリア形成を行えるようになることが特徴です。
プロパティエージェント株式会社での職群の分け方は以下のようになっています。
エキスパート職群・・・専任課長・専任部長(専門技能を培い、現場で能力を発揮する)
ジェネラリスト職群・・・課長・部長(マネジメント・組織運営を担う)
プロパティエージェント株式会社の「複線型人事制度」では、主任などの一定の職位に昇格した後、「ジェネラリスト職群」と「エキスパート職群」の2つの職群から、従業員自身の意向とスキルに応じて希望する職群を選択できるようになっています。
また、結婚等のライフイベントやキャリア設計の変化によって、最初に選択した職群から別の職群に移る「職群転換制度」も設けられています。
プロパティエージェント株式会社では、この職群転換制度を活用して実際にマネジメントに挑戦したり、トッププレイヤーとして現場に戻ったりした従業員がいるなど、従業員がより働きがいをもって仕事に取り組めるよう工夫がされていることが伺えます。
まとめ
企業において職群は、担当する業務を元にした人事制度上の区分けであるだけではなく、従業員ひとりひとりがモチベーションを保ちながら長く働き続けるためにも重要なものです。
職群分けのメリットを最大化させるためには、各企業が企業自身の事業の特徴・特性に合った人事制度を構築し、その人事制度の上で有効な職群の分類を設定することが重要です。
最適な職群分けとそれに応じた各種の制度を充実させれば、従業員の働きやすさややりがい、事業の成長・生産性とを同時に最大化させていくことができるでしょう。