#人材管理
2023/09/06

従業員情報の可視化とは?実施するメリットや流れ、注意点を解説

目次

従業員に関する情報を管理することは、適正な企業の運営において非常に重要です。
しかし、従業員数が多い企業では、従業員に関する情報が膨大になり、管理に多くの手間がかかってしまうでしょう。
従業員情報の管理に工数をかけ過ぎないためには、その方法の効率化が必要になります。
効率よく従業員の情報を管理するためには、多くの従業員情報を整理し、可視化できるようにすることが大切です。
この記事では、従業員情報を可視化することのメリットや実施の流れ、可視化をする上での注意点などについて説明します。

従業員の情報とは

従業員の情報とは、具体的に何を指すのでしょうか。
まず挙げられるのは、従業員ひとりひとりの氏名や性別、住所、生年月日などの基本情報です。
基本情報には、従業員本人の所属部署や雇用形態、役職、等級、入社年月日、退社年月日なども含まれます。
さらに、社会保険や税金に関係することから、従業員の家族に関する内容も重要な基本情報と言えます。
基本情報以外にも、これまでの職歴や学歴、自社内での所属部署の履歴や人事評価の履歴、受賞歴などが従業員情報にあたります。
従業員情報には、本人が元々持っていた情報と、自社への入社後に加わった情報とがあり、その種類は大変多岐にわたります。

従業員情報の可視化によるメリットとは

従業員の情報には、氏名や住所といった基本情報から、所属部署や人事評価の履歴といった自社で蓄積してきた情報まであります。
それらの従業員情報を可視化することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、5つに分けて説明します。

人事業務の効率化

従業員情報を可視化すると、人事業務が効率的に行えるようになると考えられます。
膨大な従業員情報を可視化するためには、必然的にデータベースを構築し、そのデータベース上で情報を管理することになります。
これまで紙ベースで従業員の情報を管理していた企業では特に、データベース化することにより、データの抽出が迅速に行えるようになるでしょう。
たとえば、特定の従業員に関する情報の取り出しや、一定の条件に該当する従業員を自社全体から抽出することなどがそれにあたります。
特に、一定の条件に該当する従業員を迅速に抽出できることは、効率的かつ効果的な人員配置にも役立つと考えられます。
また、そのような作業への工数を削減できれば、他の人事業務に時間を充てることができるでしょう。

正確な人事評価

可視化した従業員情報は、人事評価の際に活用することができます。
根拠となるデータがない状態で自身の評価をされてしまうと、従業員は上司の感覚で評価をされているのではないかと感じてしまう場合があります。
また、上司の好みに左右されて、平等な評価がされていないのではと感じることもあるでしょう。

一方、業務上の実績や保有スキルなどの従業員情報が可視化されていれば、どのような情報に基づいて評価をされているのかが明確になります。
それにより、評価をされる従業員にとって評価が納得しやすいものとなるでしょう。
公平で正確な評価を受けられることによって、従業員のモチベーション向上に繋がっていくことも期待できます。

効果的な人材育成

上司の感覚で行われたり、全員に同じ内容で行われたりする人材育成は、あまり効果的とは言えません。
本来の人材育成は、個々の従業員がどのようなスキルをどのレベルで身につけているかを把握し、本人に合った計画を立てて実施されることが理想的です。
また、育成の過程においても、従業員が目標にどの程度近づけているかを随時確認できることが望ましいでしょう。

可視化された従業員の保有スキルや目標達成度などの情報は、上司から部下への指導に役立ちます。
そのような従業員ひとりひとりに合わせた指導・教育を行えることによって、人材育成がより効果的なものになるでしょう。

採用プロセスの見直し

新しい人材の採用は、自社の事業成長にとって重要な要素です。
一方で、採用にかかるコストがあまりに大きくなると、事業を圧迫する場合があります。
また、採用担当者の考え方や経験によっては、採用応募者に対する評価に偏りが出てしまうこともあるでしょう。

そのような状況を避け、均質的な採用活動を行う際にも従業員情報の可視化が役立ちます。
従業員に関する情報を可視化できれば、どのようなスキルや実績を持つ従業員が活躍しているかを把握しやすくなります。
また、勤続年数の長い従業員にどのような特徴があるかを検証することもできるでしょう。
従業員情報が役立てられれば、採用の際に自社で活躍できそうな人材、貢献してくれそうな人材を見極めやすくなります。
このように、採用担当者の感覚に頼らない、精度の高い採用のためにも、従業員情報の可視化は重要になるでしょう。

​​離職率の低下

従業員情報には、従業員の退職に関係する情報も含まれます。
そのため、退職した従業員の離職前の勤怠状況などを可視化することが可能です。

退職した従業員の勤務状況の特徴などを分析できれば、離職を考えている従業員のサインに気付きやすくなる可能性があります。
また、離職防止に向けた具体的施策を検討する際のヒントが得られる場合もあるでしょう。
ひいては、従業員の離職率の低下に繋がることが期待できます。

可視化するべき従業員情報とは

従業員に関する情報には氏名や業務上の実績など、さまざまな種類があります。
では、特に可視化するべき従業員情報にはどのようなものがあるのでしょうか。
以下で3つに分けて説明します。

社内の人員構成

従業員ひとりひとりの所属部署を集約できれば、現在どの部署にどれくらいの人員がいるのかをひと目で把握できます。
また、各従業員の保有スキルや実績を把握できれば、必要なスキルを持つ人材が各部署に十分に配置されているかを可視化できるでしょう。
さらに、従業員情報には従業員ひとりひとりの役職や職種も含まれます。
それにより、各部署に特定の役職や職種の人員が偏っていないかを把握することが可能です。

また、家族構成を把握できれば、各部署に子育てをしながら働いている従業員がどのくらいいるかを可視化できます。
子育て中の従業員のフォローなどによって、他の従業員に負荷がかかり過ぎていないかを注視・サポートできれば、従業員満足度や離職率などの低下に繋がることが期待できるでしょう。

人事評価に関する情報

人事評価は、業務における従業員ひとりひとりのやりがいに大きく影響します。
そのため、正確で明瞭な情報に基づいた評価を行うことが重要です。
そのような公平な評価のためには、過去の人事評価の履歴の他、業務での実績や受賞歴、取得した資格やスキルの可視化が有効と言えます。

また、可視化から一歩踏み込んで、過去の人事評価に関するデータを分析できれば、自社に合った人事評価の枠組みを作るためのヒントが得られるでしょう。
明確な根拠と指標に基づいた人事評価が行われれば、従業員のモチベーションの向上にも繋がるでしょう。

入退社に関する情報

従業員の入社や退社に関する情報は、離職防止や採用の分野で役立ちます。
たとえば、一定期間内に退職した従業員の割合を可視化すれば、離職率を把握できます。
また、退社した従業員の離職理由も大切な情報の一つです。
離職理由を知ることができれば、その理由に対する改善策を講じることができます。
改善策を講じることによって、同じ事情を抱える従業員が働きやすい環境が作られ、離職の防止に繋がることが期待できます。

さらに、従業員ひとりひとりの入社時の志望動機も重要です。
たとえば、自社に長く在籍している従業員の志望動機を可視化・分析します。それをもとに採用募集の際の文言に反映させれば、自社に合う人材が集まる可能性があがるでしょう。
このような従業員情報の活用により、効率的な採用活動が実施できるでしょう。

従業員情報可視化の流れとは

実際の従業員情報の可視化は、どのような流れに沿って行えばよいのでしょうか。
ここでは、4つの段階に分けて説明します。

自社内の課題を明確にする

従業員情報の可視化を行うことが目的になってしまっては、その効果を十分に得ることができません。
目的を明確にするためにも、まずは自社における人事上の課題を明確にすることが大切です。
課題の例として、「どのようなスキルを持つ人員が各部署にどのくらいいるのか把握できない」「人事評価における根拠が曖昧で、従業員の納得感が得られない」などがあります。
より効果的に従業員情報を可視化するためにも、自社の課題を細かな点まで洗い出しましょう。

目的を明確にする

自社の課題を把握できたら、そこから何を目的にするかを明確にしましょう。
具体的な目的の例として、「離職率の低下」や「人事業務の効率化」、「従業員にとって納得感のある人事評価」などがあげられます。
一定期間の離職率や人事業務における工数などの具体的な数値を目標値に設定するのも良いでしょう。

目的が決まっていない状態で従業員情報を集めても、本来必要な情報を集められていない、逆に不要な情報が集約されてしまうといったことになりかねません。
目的をはっきりさせることにより、具体的にどのような情報が必要なのかが掴めるでしょう。
また、必要な情報が既にあるのか、新たに集める必要があるのかどうかを確認することも大切です。
工数をかけて集めた情報を無駄にしないためにも、最初の目的の設定をしっかりと行いましょう。

データの収集を行う

自社の課題や目的を定められたら、次はいよいよ従業員情報の収集を行います。
従業員数や項目数などから情報量が非常に多くなりそうな場合は、事前に計画表やマニュアルを作り、それに沿って行うと良いでしょう。

また、あらかじめ設定した目的を達成するためにも、目的に沿った情報を集めることが大切です。
氏名や住所などと異なり、元々あった従業員データから入手できない情報も中にはあるでしょう。
そのような情報についてはアンケートなど、最適な方法で収集していきます。

従業員情報の分析や運用方法の見直しを行う

従業員情報の集約・可視化ができたら、それらの情報を活用するために分析をするのも良いでしょう。
たとえば、人事評価が著しく低い部署がある場合、人員配置のミスマッチが起きていないかを検証することなどがそれにあたります。

また、従業員情報の可視化を継続的に実施していくために、より効率的に情報を収集する方法がないか見直しを行うことも有効です。

従業員情報の可視化における注意点

従業員情報の可視化にあたり、注意するべき点にはどのようなものがあるのでしょうか。
以下で3点に分けて説明します。

従業員の理解・協力を得る

従業員情報の可視化にあたっては、情報収集の対象となる従業員の理解を得ることが重要です。
自社の従業員の情報は、ひとりひとりの個人情報であることに変わりはありません。
家族構成などのプライベートな情報まで把握されることに、従業員が拒否感を抱く場合もあります。
また、情報の種類によってはアンケートやインタビューなどで情報を集めることもあるでしょう。
業務時間を割いて、そのような情報集約に協力することに従業員が難色を示すこともあるかもしれません。

円滑に従業員情報を集めるためには、自社の課題を解決するために情報収集を行うことを事前に十分に周知することが大切です。
また、情報の可視化による従業員側のメリットや、収集する情報の範囲についても説明し、理解と協力を得ることが重要です。

加えて、従業員ひとりひとりの個人情報を大切に扱っていく姿勢を示すことも大切です。
「パソコンの画面に従業員に関する情報を表示したまま離席しない」など、従業員情報を扱う際のルールをあらかじめ定めておきましょう。

目的を明確にする

従業員情報の可視化に限らず、工数がかかる作業はどうしても作業自体が目的化してしまいがちです。
しかし、従業員情報を可視化する本来の目的は、情報を集めることではなく、それらの情報を可視化して何を達成したいかにあります。
目的を明確にするために、まずは自社の課題を把握しましょう。

たとえば、自社の課題が「離職率が高い」ことであれば、従業員情報の可視化の目的は「離職の原因が何にあるのかを調べる」ことになるでしょう。
その場合、必要な情報は「退社した従業員の離職原因についての情報」になります。
このような目的の明確化により、より効率的な情報収集・可視化ができると考えられます。

膨大なデータを正確に分析する

従業員の情報には氏名・住所を始め、過去の実績、保有スキルなど多くの種類があります。
そのため、特に従業員数が多い企業では、従業員に関する情報が非常に膨大になることがあります。
しかし、目的を達成するためにも、情報は正確に取りまとめることが大切です。

従業員情報を効率的に収集・可視化するために、デジタルツールを活用する方法もあります。
Excelなどの表計算ソフトの使用も一つの方法ですが、Excelの知識に熟練した人でないと、情報の取り扱いに余分な工数がかかってしまう場合もあります。
また、Excelのみでは高度な従業員情報の管理・分析はできません。

現在、従業員情報の可視化をサポートする専用のシステムが多く提供されています。
そのようなシステムには、従業員情報の分析や活用を前提に作られているものも多くあります。
従業員情報を集約するだけではなく、将来的にはデータベース化して活用したいと考えている場合は、そのような専用のシステムを導入してみると良いでしょう。

「HRBrain タレントマネジメント」では、従業員情報の一元管理や保有スキルの見える化を効率的に行えます。
また、従業員に関するデータを自由にソートし、特定の条件での従業員をリスト化することも可能です。
「HRBrain タレントマネジメント」についての詳細なご案内はこちらからご覧いただけます。
https://www.hrbrain.jp/talent-management

まとめ

従業員に関する情報には、氏名などの基本的な内容はもちろん、これまでの実績や人事評価の履歴などさまざまなものがあります。
これらの情報をばらばらに集めるのではなく、目的を持って集約・可視化することにより、採用や人材配置、離職率の低下などさまざまな場面で活用することができます。
また、効率的に従業員情報を収集するためには、従業員の理解が欠かせません。
情報収集の目的やメリットを丁寧に説明し、情報の提供に協力してもらえるように働きかけましょう。
情報量が膨大になる場合には、専用のシステムを活用することも、効率的な従業員情報の可視化に有効です。

HR大学編集部
HR大学 編集部

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