ERPを人事業務に役立てるためには?システム導入のポイントを解説
- ピープルアナリティクスにERPが必要な理由
- ERPとは何か?
- 人事領域にERPが必要な理由
- ERP活用による戦略人事/タレントマネジメントとは
- 競争力を高める戦略人事への転換
- 最適な配置と能力開発をするタレントマネジメント
- 【形態別】クラウド/オンプレミス型の人事系ERP比較
- クラウド型ERP
- オンプレミス(パッケージ)型ERP
- 【費用別】定額制/ユーザー制の人事系ERP比較
- 定額制(月間/年間制)ERP
- ユーザー制人事系ERP
- ERP導入の注意点
- 導入の目的・目標を明確にする
- システム化する業務を決める
- 機能が自社の特徴に合っているか確認する
- ERP導入の失敗事例と成功事例
- 失敗事例:機能が多過ぎてコスト高になる
- 成功事例:育成・配置の最適化、業務効率の改善
- ERPは、企業の生産性を向上させる
- 【まとめ】人材管理・タレントマネジメント・ピープルアナリティクスをカンタン・シンプルに
近年、人事業務の意思決定に効果的な手段として、ピープルアナリティクスというデータ活用手法が注目を集めており、そのシステム基盤として、ERPの導入が必要不可欠になっています。
そこで今回は、ERPを実際に導入する際のポイントについて解説します。
ピープルアナリティクスについて詳しく知りたい方は「ピープルアナリティクス~Googleが注目する人事の問題解決手法~」をお読みください。
ピープルアナリティクスにERPが必要な理由
ピープルアナリティクスを行う上でERPが、必要な理由を解説します。
ERPとは何か?
ERPとは、英語でEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、もともとは企業における経営資源の配分計画を意味していました。
近年、経営資源の情報を収集し、データベース化するシステムそのものをERPと呼ぶようになりました。そのためERP=基幹システムという認識が一般的に定着しています。
人事基幹システムについて詳しく知りたい方は「人事領域の基幹システムとは?背景から人事システム導入までを解説」をお読みください。
人事領域にERPが必要な理由
デジタル技術の進化、経済のグローバル化により、今の企業にはITを駆使した経営資源の効率化が求められるようになっています。
その傾向は、人事領域においても例外ではなく、従業員という経営資源一人ひとりの能力を向上させ、生産性を高めることが人事の責務になっています。
そのための手段として、人に関するデータベースである人事系ERPの導入が必要になっているのです。
人事領域のシステムとして、クラウド型システムの導入もおすすめです。従業員データの一元管理・分析に役立つ、クラウド型人材管理システムについて、さらに詳しく学びたい方のために「人事評価システムを使うべき3つの理由」をご用意しました。ぜひご活用ください。
ERP活用による戦略人事/タレントマネジメントとは
ERPを効果的に活用することにより、戦略人事への転換、タレントマネジメントの導入が可能になります。ERPと両者の関連性を解説します。
競争力を高める戦略人事への転換
戦略人事とは、その企業が置かれた経営状況に応じ、経営戦略を実現する為に必要な採用・育成・配置等を行う機能のことです。
ERPの導入は、人事の管理業務の効率化につながります。業務を効率化できれば、人や組織を活用しながら、企業の競争力を高めていく戦略型の人事への転換をはかれるでしょう。
戦略人事について詳しく知りたい方は「経営戦略から読み解く戦略人事の立案方法を徹底解説!」と「【人事部必見】「戦略人事」とは?経営戦略を実現する人事を徹底解説します」をお読みください。
最適な配置と能力開発をするタレントマネジメント
タレントマネジメントとは、従業員が持っている能力・スキル・ノウハウ等の情報を一元管理し、戦略的な人員配置や育成を行う取り組みをいいます。
近年のERPは、個人情報だけでなく、能力・スキル・ノウハウ等の情報を登録することにより、従業員の最適な配置や能力開発をシステム上で、効率的にできる機能が備わっています。
タレントマネジメントについて詳しく知りたい方は「タレントマネジメントとは?メリットや目的、導入プロセスについて解説」をお読みください。
【形態別】クラウド/オンプレミス型の人事系ERP比較
ERPはサーバー形態の違いから、クラウド型とオンプレミス(パッケージ)型の2種類があります。それぞれのメリット、デメリットや、導入に適した企業の特徴、代表的な製品を解説します。
クラウド型ERP
クラウド型は、サーバーを自社に置く必要がないサービスです。サービス提供会社が管理運営するクラウドサーバー上にシステム環境が構築されており、ユーザーはその環境を使用します。
【メリット】
社内のサーバー設置が不要な為、短期間で導入できる。
保守作業が不要で、常に最新の機能を使用できる。
【デメリット】
情報流出やサーバー停止に伴う情報消失のリスクがある。
社内の既存のソフトウェアとの連携が難しい。
機能を自社用にカスタマイズできない。
【導入に適した企業の特徴】
短期間でのシステム導入を考えている。
社内のルール改定頻度が少なく、保守作業は法改正によるものがメインである
常に最新の機能を利用したい。
【代表的な製品】
オンプレミス(パッケージ)型ERP
オンプレミス(パッケージ)型は、サーバーを自社に用意する必要があるサービスです。ユーザーはまず、サービス提供会社が販売するパッケージソフトを購入します。そして、社内にあるサーバー上にそのソフトのシステム環境を構築し、使用します。
【メリット】
社内にあるサーバーで情報を管理する為、情報流出のリスクが小さい。
社内の既存のソフトウェアとの連携が比較的、容易である。
機能を自社用にカスタマイズできる。
【デメリット】
社内のサーバー設置が必要な為、導入に一定の時間がかかる。
機能を更新する為に、定期的な保守作業が必要である。
【導入に適した企業の特徴】
社内にサーバーを設置できる。
社内に他社のソフトウェアを導入している。
社内のルールが複雑であり、改定頻度が多く、定期的な保守作業が必要である。
保守作業にかかる工数を確保できる。
【代表的な製品】
【費用別】定額制/ユーザー制の人事系ERP比較
ERPは費用の支払形態の違いから、定額制とユーザー制の2種類があります。それぞれのメリット、デメリット、導入に適した企業の特徴を解説します。
定額制(月間/年間制)ERP
従業員の登録人数に関わらず、定額を支払う形態です。一定の登録人数を見越した価格設定になっており、登録人数の下限を設けているサービスもあります。
価格相場は、年間150万円~300万円(従業員数300名当たり)です。
【メリット】
常に一定額の為、費用を予め、容易に見越せる。
登録人数が増えても、金額は変わらない。
【デメリット】
登録人数が少ない場合、金額は割高になる。
【定額制に適した企業】
従業員の人数が一定以上であり、極端な変動が発生しない。
【代表的な製品】
ユーザー制人事系ERP
従業員の登録人数に応じた金額を支払う形態です。
価格相場は、年間300円~3,000円/人です。
【メリット】
登録人数が少ない場合、金額は割安になる。
【デメリット】
従業員の人数が変動する場合、費用を見越すことが難しい。
登録人数が増える場合、当初想定した費用を超過してしまう。
【ユーザー制に適した企業】
企業規模が小さく、初期費用を抑えたい。
【代表的な製品】
ERP導入の注意点
人事系ERPの導入は、企業の人材管理の基盤であり、企業活動に与える影響が大きいことから、慎重に進める必要があります。ここでは、導入に当たっての主な注意点を解説します。
導入の目的・目標を明確にする
目的が明確でない為、導入に失敗する企業は意外にも数多く存在します。
こうした背景には、システムを導入することにより、どのような経営課題を解決したいのか、明確になっていないことが考えられます。
人事が直面している課題を整理し、解決の方向性を定めることが重要です。
同時に、どのような状態になったら目的を達成したといえるのか、目的と合わせて、具体的な目標値を定めることも必要です。
例えば、課題を「全社の人事業務の効率化」、目標値を「現在の人事業務全体にかかる工数30%減」と定めたとしましょう。
まず、全社の人事業務の内、どの業務に最も工数がかかっているか現状把握を実施します。現状把握が難しい業務の場合、(年間の業務発生頻度)×(一回あたりの工数)で、試算すればよいでしょう。業務ごとの工数把握を行い、工数削減の対象業務を明確にできれば、システムに求める機能が、自ずと決まります。
仮に、人事評価業務の工数が最も多かったとします。その場合、導入候補のERPを、人事評価の業務効率化に強みを持つものに絞り込むことができるでしょう。
システム化する業務を決める
システム導入前に、業務のどの範囲をシステムで対応するか明確にしなかったが為に、業務量が増えてしまうことが考えられます。
導入前に、業務の棚卸を行い、業務のどの部分をシステムで実施するか、決めることが重要です。
業務の棚卸は、抜け漏れをなくす為に、5W1H(誰が・何のために・いつ・どのような業務で・何を・どのような手段で)で実施するとよいでしょう。
システムの機能に合わせて、業務フローを再設計することも検討して下さい。
上記の人事評価業務の例であれば、従業員の目標設定から、人事の評価集約まで、一連の業務プロセスを整理します。
次に、全体の工数を業務プロセスごとに分解し、具体的にどの部分に工数がかかっているか特定します。
仮に、従業員の目標の帳票への入力と人事の評価集約の2つのプロセスに工数がかかっていることが分かったとします。
こうすることにより、2つのプロセスのシステム化を前提に導入候補のERPを絞り込むことができるのです。
機能が自社の特徴に合っているか確認する
導入前に、利用場面の想定が甘く、自社にマッチしないシステムを選定してしまうケースがあります。
システムの機能が自社の組織や業務の状況に合致しているか、形態別、費用別ERP比較の導入に適した企業で解説した内容の他、最低限以下の点は確認したいものです。
登録人数の上限は、自社の今後、中長期のトレンドを踏まえての組織規模に合っているか
従業員、上司、および人事担当者の三者の目線でみたときに使い勝手がよいか
外国国籍の従業員が一定数いる場合、多言語対応しているか
上記の人事評価業務の例であれば、システムの今後、中長期の登録人数規模を把握する為、今後発生する人数変動を押さえる必要があります。
具体的には今後の新卒・キャリア採用の計画やグループ企業であれば、事業再編に伴う転籍等、人数変動を生じさせる事象を把握し、整理することが求められるでしょう。
ERP導入の失敗事例と成功事例
最後に、実際にERP導入を検討する際の参考として失敗、成功の事例を解説します。
失敗事例:機能が多過ぎてコスト高になる
業種:情報通信 従業員数:2,000名
筆者が所属していた会社の事例です(以降、A社と呼称)。A社は、経営課題の整理や業務の棚卸を十分行わずに、機能性に優れたシステムがよいと考え、ERPを導入しました。
その結果、経営が解決したい人事課題や、業務とシステムの機能が乖離しており、システム外の業務が増加。また、多機能であることからシステムをバージョンアップする度に多額な費用が発生することとなってしまいました。
A社失敗の要因は、課題の整理や業務の棚卸を実施せず、システムに求める機能範囲を明確にしなかったことです。
解決策としては、システムの機能範囲を限定したうえで、例えば、シンプルかつ費用を抑えられるクラウド型ERPの導入が考えられるでしょう。
成功事例:育成・配置の最適化、業務効率の改善
社名:双日 業種:卸売業
従業員数:2,500名
株式会社双日は、事前に経営課題の整理、業務の棚卸を実施し、システムに求める機能を明確にしたうえで、ERPを導入しました。
その結果、従業員の能力・スキル等の情報を一元化し、戦略的な育成施策や人員配置に活用できるようになりました。
同時に人事の管理業務を効率化でき、管理業務にかかるコストの圧縮を実現できました。
ERPは、企業の生産性を向上させる
ERPが人事領域に求められる理由、戦略人事・タレントマネジメントとの関連性や形態別・費用別比較、導入の注意点、失敗、成功の事例を見てきました。
ERPは、従業一人ひとりの能力を向上させ、生産性を高めるためのシステムです。自社の経営課題を解決するために、本当に必要な機能に限定したシステムを選ぶことが、導入成功の鍵です。
ERP導入を検討する際は、ぜひご参照ください。
【まとめ】人材管理・タレントマネジメント・ピープルアナリティクスをカンタン・シンプルに
ERPが人事領域に求められる理由、戦略人事・タレントマネジメントとの関連性や形態別・費用別比較、導入の注意点、成功・失敗の事例を見てきました。
ERPは、従業一人ひとりの能力を向上させ、生産性を高めるためのシステムです。自社の経営課題を解決するために、本当に必要な機能に限定したシステムを選ぶことが、導入成功の鍵です。
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