【実践編】多拠点大企業向けグループウェア選びのポイント、サービスまとめ
- 多拠点企業がグループウェアを導入する目的、メリットとは
- グループウェア導入の目的
- グループウェア導入のメリット
- 多拠点企業の人事情報一元化に役立つグループウェア選定のポイント
- 機能・連携面における選定のポイント
- 無料・有料比較。コスト面における選定のポイント
- 多拠点企業のグループウェアの活用例
- 導入前に検討すべき項目
- X社(仮称/業種:輸送用機器/社員数:15,000名)
- 北陸銀行(業種:金融/社員数:5,000名)
- 企業の活用事例③:・ディー・エヌ・エー(業種:IT/社員数:4,000名)
- グループウェアサービスの紹介まとめ
- 完全無料で使えるサービス
- 有料で使えるサービス
- グループウェアは外部連携を考慮した導入を!
- グループウェアを活用し、企業の経営課題を解決する
情報共有の促進、業務効率の向上およびコミュニケーションの活性化を実現するためのツールとして、グループウェアをどのように選定し、活用していくのか?グループウェア選定のポイントと活用例、具体的なサービス比較について解説していきます。
多拠点企業がグループウェアを導入する目的、メリットとは
企業のDXの取組みの一環としてグループウェアの活用が注目されています。ここでは、多拠点企業が、グループウェアを導入する際の目的、メリットを解説します。
グループウェアの一般的な定義、基本的な機能については、「【人事基礎編】グループウェアとは?多拠点企業の人事業務DX化に活用できるポイントを紹介」にまとめていますので、合わせてお読みください
グループウェア導入の目的
導入の目的は企業が抱えている課題によって異なりますが、「従業員の生産性向上」ひいては「企業業績の向上」が目的であるケースが多いです。さらに、その目的を掘り下げると「情報共有の促進」、「業務の効率化」、「コミュニケーションの促進」の3つに大別されます。特に国内外に多くの拠点、従業員を抱えている企業では、これら3つの目的に強い課題感を抱えています。
2020年代に入り、グローバル経営・グループ経営が進展する中、物理的に距離が離れた従業員どうしが、連携・協力して業務を行うようになってきています。特にコロナ禍においては移動制限やテレワークへの急速な移行もあり、その流れは加速しています。そうした中で、場所を越えて同じ業務基盤を従業員に提供するグループウェアの存在価値はますます高まっていると言えるでしょう。
グループウェア導入のメリット
・海外拠点との情報共有が容易
グループウェアには多言語対応しているものもあり、グループウェアのインターフェースの表記をその拠点の属する国の使用言語に切り替えることができます。これにより、従業員の国籍が異なっても円滑な情報共有ができます。
多拠点における円滑な業務促進
グループウェアにより、多拠点にいる従業員の情報共有の促進、業務効率化を実現できます。
情報共有の促進については、テレワークも含め、物理的に離れた場所にいる従業員どうしが、掲示板、チャット等の機能により、容易にコミュニケーションを取ることができます。また、業務効率化については、スケジュールやプロジェクトの進捗を管理する機能により、上司やリーダーがメンバーの業務の状況を確認し、負荷の高いメンバーから低いメンバーへの業務分担の見直しに素早くつなげることが可能です。
多拠点におけるコミュニケーションの活性化
海外拠点も含め、異なる勤務地、異なる時間に働くメンバー同士がグループウェアでメッセージを円滑かつ即時交換することができます。これにより、組織内のコミュニケーション促進につながります。
多拠点企業の人事情報一元化に役立つグループウェア選定のポイント
多拠点企業において、人事情報を管理する観点、有料か無料かコストの観点からグループウェアを選ぶポイントを説明します。
機能・連携面における選定のポイント
人事情報を管理する機能について、外部ベンダーのシステムとの連携も考慮に入れて、選定する必要があります。
勤怠管理機能の要否
グループウェアには、従業員の就業情報を登録し、集計する機能がついているものが多くあります。勤怠管理機能を使用するかどうかが、グループウェア選定の一つの鍵になります。既存のシステムからグループウェアへの切り替えを行うことで、業務を効率化でき、コスト削減の効果が大きく期待できるのであれば、導入する価値はあります。切り替えた場合に発生する担当者の人件費やシステムの償却費用をどの程度の期間で回収できるか、事前のシミュレーションを行い、機能の要否を検討しましょう。
外部システムとの連携
グループウェアには、他のベンダーがサービス提供している人事業務のシステムとの連携を考慮して開発、改修されているものがあります。グループウェアの勤怠管理機能で集計した就業データを外部の給与システムへ反映したり、逆に給与システムの計算結果をグループウェアのWEB明細機能に反映させることが可能です。既存の社内システムを有効に活用するため、外部ベンダーとの連携可否は必ず確認しましょう。
無料・有料比較。コスト面における選定のポイント
グループウェアには無料のサービスも存在します。ここでは無料サービスの有料サービスとの特徴の比較から、選定のポイントについて説明します。代表的なサービスについては、最後の章の「グループウェアの紹介まとめ」で取り上げていますので、ご参照下さい。
利用人数、利用データ量
無料サービスは利用人数、利用データ量に制限が設けられていることが多いです。価格面のメリットで利用者を集め、途中から有料サービスへ切り替えてもらう狙いがある為です。
セキュリティ機能
利用人数、利用データ量に制限がない完全無料のサービスもありますが、有料版と比べて、セキュリティ機能が簡易的なものであることが多いです。具体的には、社内で個別のアカウントにアクセス制限をかけることができない等のリスクがあります。
ベンダーのサポート体制
無料サービスの場合、有料サービスと比べてベンダーのサポート体制は限定的す。FAQやヘルプページはあるものの、ヘルプデスク等の問合せ窓口がないケースが多いです。システムの操作が苦手な従業員がいる職場では、導入の障害になりかねないポイントとなります。
以上、無料サービスの特徴を有料サービスと比較して見てきました。完全無料のものもありますが、多拠点企業の場合、無料サービスはテスト用と割り切り、自社の課題を解決できる機能を取捨選択した上で、有料サービスに切り替えることが現実的と言えるでしょう。
多拠点企業のグループウェアの活用例
ここでは、多拠点企業がグループウェアを導入する前に検討すべき項目として、目的、要件の整理から導入後の活用まで解説した後、実際の企業事例を紹介します。
導入前に検討すべき項目
導入目的の明確化
グループウェアを何のために導入するか ということを明確にすることが重要です。ここを疎かにすると企業の課題や問題に対応した導入ができず、たとえ導入したとしても従業員がほとんど利用しないという事態になりかねません。時間をかけて社内で議論を尽くす必要があります。
導入範囲の明確化
ここでの範囲は、「業務」の範囲と「対象者」の範囲2種類の意味があります。グループウェアは、機能が増えるほど、コスト高となります。当然、予算には限りがあるため、グループウェアの導入が必要な「業務」と「対象者」の範囲を絞り込む必要があります。
解決したい業務の課題、問題とその対象者の範囲を絞り込んだうえで必要な機能を限定し、グループウェアの選定・導入につなげることが重要です。
X社(仮称/業種:輸送用機器/社員数:15,000名)
※傘下のグループ企業は国内外合わせて150の企業になります(これ以降、X社と表記)。
導入目的
X社は、複数のグループ企業の親会社です。グループ経営の観点から、経営資源である人材の効果的な活用に課題感を抱えていました。その課題に対する答えとして、従業員の生産性を最大限高めるためには、企業の垣根を超えて、従業員を能力が発揮できるポジションに配置する必要があると考えました。
さらには、企業間の人事配置を実現させるために、就業・処遇のルールを共通化することを検討しました。そのためのプラットフォームとして、グループ企業共通のグループウェアの導入が必要になりました。
導入範囲
X社では、グループウェアを適用する「業務」の範囲について当初、勤怠管理機能を有しているグループウェアの導入を検討していました。ところが検討を進める内に、グループ経営の観点から就業管理のルールを、グループ企業Y社(仮称)に合わせた方が、従業員の生産性の向上に最も寄与できるとの判断がなされました。
これを受けて、勤怠管理のツールも同社が導入している外部ベンダーのシステムに合わせた方が良いとの結論が出ました。結果的に勤怠管理機能はグループウェアに必須の要件ではなくなりました。
また同様に「対象者」の範囲については、150社のグループ企業の内、X社とY社を含め、業績が、グループ全体の業績に占める割合が大きい3社の従業員としました。理由は2点あり、1点目は、企業の数を絞ることで、スピード感を持ってグループウェア導入を実現できるため、2点目は、業績の大きい会社に絞ることで、業務効率化によるコスト削減効果を得るためです。
導入後の活用について
グループウェアを導入した3社はその後3年かけて経営統合し、1つの企業体となりました。経営統合前に就業・処遇ルールを統一し、共通のグループウェアを軸に、共通の業務基盤を構築することができました。結果的に、中長期的なグループ経営の方針を捉えた業務基盤のDX化を早期に実現しました。
北陸銀行(業種:金融/社員数:5,000名)
グループウェアの導入による業務のペーパーレス化を実現し、年間1億円のコスト削減を達成した大手地方銀行の事例を紹介します。
導入目的
同行が属する金融業界では、低金利の影響で収益が厳しい状況でした。そのため、業務効率化、コスト削減を柱としたワークスタイルの変革が求められていました。そのような中、非効率な業務の進め方を抜本的に見直す手段として、グループウェアの導入を決定しました。
導入範囲
同行は非効率な業務をグルーピングしました。その結果、紙を使う業務は、印刷・ファイリング・過去の文書の掘り起こし等で、紙やファイルにかかるコスト、それぞれの作業にかかる工数等、多くのムダを生んでいることが分かりました。そこで、申請文書や決裁文書等、社内の紙を使う業務に範囲を絞り込み、紙を減らすための手段としてグループウェアの導入を検討しました。
また、導入適用の対象者については行内業務、店頭業務それぞれに従事する者がある中で、行内業務に従事する者に限定しました。店頭業務を外した理由としては、店頭に訪れる顧客が紙を求める場合を想定し、一律ペーパーレスにすることが困難と判断したためです。
導入後の活用について
同行は、グループウェア導入により行内の紙業務を廃止し、枚数ベースで年3割の削減に成功しました。
また、他の機能についても活用事例を社内で共有し、さらなる業務効率化、コスト削減に取り組みました。例えば各営業拠点から本社のヘルプデスクにくる問い合わせ内容と模範応答をナレッジとして拠点間で共有することにしました。これにより、本社・拠点間の電話が激減し、通話の工数とコストの削減を実現しました。
企業の活用事例③:・ディー・エヌ・エー(業種:IT/社員数:4,000名)
国内外各拠点の業務プロセスの統一により、拠点間で発生する業務工数を削減し、業務効率化を実現したグローバルIT企業の事例を紹介します。
導入目的
ゲームやEコマース事業を手がける同社が属する業界は、事業環境の変化が激しく、同社はその中でも事業スピードの速さを競争力の源泉としていました。事業の成長とともに、拠点横断の業務が活発になりましたが、拠点ごとに業務プロセスが異なることに起因する非効率な業務の進め方が課題になっていました。そこで、同社は、業務プロセスのグローバル統一を実現する手段として、国内外の各拠点において、グループウェアの導入を決定しました。導入の目的を踏まえ、既製品ではなく、ユーザー自らが要件を決めてアプリを設計できる有料のサービスを選択しました。
導入範囲
同社がグループウェア導入の対象範囲とした業務は、グローバル共通で利用が必要な社内システムのアカウント申請でした。この業務を対象とした理由としては、業務工数を見積もったときにも最も工数がかかっており、業務プロセス統一による業務効率化の効果が最も大きいと判断したためです。
また、導入適用者の対象者は、社内システムに関わる者に限り、アカウントの申請を行う社員と承認を行う上司、申請に基づき、実際にアカウントの作成・変更を行う担当者としました。
導入後の活用について
各拠点で異なっていた社内システムのアカウントの申請・承認フローを、グループウェア導入で統一したことにより、申請から承認までに要する工数を飛躍的に短縮しました。
次の動きとしては、各拠点に対し、ビジネスプロセスの改善案の検討と、それを実現できるアプリの設計を働きかけています。海外の各拠点が、グループウェアを活用し、独力で業務プロセス改善を実施し、そのナレッジを拠点間で共有できる環境を構築することが狙いです。
以上、各企業の事例を見てきました。中長期の経営課題を業務課題に分解し、導入の目的、範囲を検討することが、グループウェア導入を成功に導く鍵と言えるでしょう。
グループウェアサービスの紹介まとめ
最後に情報共有の促進、業務効率の向上およびコミュニケーションの活性化を実現するために効果的なサービスについて代表的なものを紹介します。各サービスの特徴が一目で分かるよう、機能の種類と多拠点企業との親和性を2軸にポートフォリオにまとめましたので、検討の参考にしてください。
完全無料で使えるサービス
数は少ないですが、機能や期間の制限なく、無料で使用できるサービスも一部存在します。R-GROUPは特に有名で、官公庁や一部上場企業での導入実績があります。
R-GROUP
・ベンダー名:Rグループ
・利用者数:上限なし
・容量:上限なし
・サービス形態:クラウド型
・人事機能:勤怠管理
・主な特徴:12種類の機能(ワークフローの機能はなし)、多言語対応可能(20ヵ国語)
e-Broad Office
・ベンダー名:イーブロードコミュニケーションズ
・利用者数:上限なし
・容量:上限なし
・サービス形態:クラウド型
・人事機能:勤怠管理
・主な特徴:10種類の機能(従業員の在籍確認機能あり)
有料で使えるサービス
無料のサービスと比べ、使える機能が多く、外部サービスとの連携機能も豊富です。特にkintoneは自由にアプリを設計できる機能があり、数多くの名だたる大企業が導入しています。
desknets neo
・ベンダー名:ネオジャパン
・利用者数:上限なし
・容量:1ユーザー当たり1GB
・金額:初期費用なし、月額440円 / 人
・サービス形態:クラウド型・パッケージ型
・人事機能:勤怠管理、経費精算(拡張機能)
・主な特徴:28種類の機能、外部ベンダーの給与計算システムとの連携機能あり
ni collabo 360
・ベンダー名:NIコンサルティング
・利用者数:クラウドの場合、2,000人まで
・容量:上限なし
・金額:初期費用なし、月額360円 / 人
・サービス形態:クラウド型・パッケージ型
・人事機能:勤怠管理、経費精算
・主な特徴:33種類の機能、企業外連携、多言語対応(英語以外は言語辞書登録が必要)
J-MOTTO
・ベンダー名:リスモン・ビジネス・ポータル
・利用者数:上限なし
・容量:上限なし
・金額:初期費用なし、20ユーザーまで月額3,000円、10ユーザーごと月額1,200円
・サービス形態:クラウド型
・人事機能:勤怠管理、経費精算(拡張機能)
・主な特徴:25種類の機能、マイクロソフトのOutlook予定表の登録データとの同期可能
kintone
・ベンダー名:サイボウズ
・利用者数:上限なし
・容量:上限なし
・金額:初期費用なし、月額1,500円 / 人
・サービス形態:クラウド型
・人事機能:勤怠管理、採用管理
・主な特徴:業務アプリを自由に設計可能、API・プラグイン等の100種類以上の連携サービ・ス、外国語対応(中国語・英語)
Google Workspace
・ベンダー名:グーグル
・利用者数:上限なし
・容量:上限なし
・金額:初期費用なし、月額2,244円 / 人(ユーザー数300人以上)
・サービス形態:クラウド型
・人事機能:なし
・主な特徴:12種類の機能、高度なセキュリティ管理、
グループウェアは外部連携を考慮した導入を!
基本機能の多さ、外部のサービス連携は有料のサービスが無料のものに比べ勝っています。
2021年4月現在、まだ見られないですが、人事評価やタレントマネジメント等、人材活用の機能を有したシステムとの連携するグループウェアが出てくるかもしれません。先を見据えて、外部への連携機能が豊富なグループウェアを選定すると、人材データを経営課題の解決に活用できる可能性が広がることでしょう。
グループウェアを活用し、企業の経営課題を解決する
グループウェアは、企業内で情報共有やコミュニケーションを行うソフトウェア・アプリケーションの総称です。
情報共有の促進、業務の効率化、コミュニケーションの促進を目的に、DXの取組みの一環として導入されます。
グループウェアを効果的に活用し、目的を達成できれば、従業員の生産性向上につながり、ひいては企業の業績向上を実現することができます。
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