#人材管理
2024/04/01

今注目のサーバントリーダーシップとは?従来型との違いや役割にも

目次

    部下との接し方に悩んだとき、ひとつの指針になるのが「サーバントリーダーシップ」という考え方です。

    支配型リーダーシップの対極にある概念で、「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後、相手を導くものである」という考え方です。

    「ツアーコンダクター」と言い換えると、イメージがしやすいかもしれません。ガイド役は、参加者を目的地まで案内し、道中では様々なケアを行います。決して強引に客を引っ張っていくことはしませんが、参加者はその指示に従います。

    この記事では、この「サーバントリーダーシップ」という考え方について紹介していきます。

    リーダー人材の抽出や育成管理をデータで見える化

    サーバントリーダーシップとは?

    サーバントリーダーシップとは

    サーバントリーダーシップとは、リーダーが部下に積極的に関わり、意見に耳を傾けます。そのうえで組織の進むべき方向を指し示し、奉仕することで人を導くものです。部下を支えながら、ひとりひとりの可能性を引き出す役割があります。

    立場を振りかざして指示や命令をするのではなく、信頼関係を重視し、部下の声に耳を傾けながら目標やビジョンを達成していく手法です。

    誤解されやすいサーバントリーダーシップ

    サーバントリーダーシップの「サーバント」とは、英語で「使用人」「召使い」「奉仕者」という意味を持ちます。そのため、言葉のイメージに引きずられ「部下の言いなりになる」といった誤った認識を持たれることがあります。

    提唱者の言葉にあるように、奉仕に加えて「相手を導くものである」という点を忘れてはいけません。

    サーバントリーダーとは「優しいリーダー」か

    サーバントリーダーの「奉仕」を「優しい」と混同して考えてはいけません。

    部下の代わりにリーダーが率先してトラブルを解決することは、部下から見れば一見「面倒ごとを引き受けてくれる」ため、便利で「優しい」と捉えられるのかもしれません。

    しかしそれでは、部下の成長は望むべくもありません。
    それでは一方的な「奉仕」になってしまいます。

    サーバントリーダーは、奉仕に加えて、組織の方向性を指し示し、愛情をもって部下の誤りを正す勇気も必要です。

    こうしたサーバントリーダーシップを実践した場合、リーダーが自ら動かなくとも、部下は率先して課題に取り組む姿勢を見せるようになります。

    サーバントリーダーシップにおける理想のリーダーとは

    サーバントリーダーシップにおける理想のリーダーとは、ずばり「奉仕」です。
    といっても、独りよがりの奉仕ではありません。

    自らの良心に従い、より良い世界へと人々を導くことを自身の責務として認識します。

    そして「組織に優先されることはなにかと」常に考え続けること。
    その考えをもって部下を導きます。

    それが、サーバントリーダーシップにおける理想のリーダーの姿勢です。

    日本企業に多い支配型リーダーシップとは

    日本で主流となってきたのは、トップダウンの「支配型リーダーシップ」でした。

    これはリーダーが確固たる意思のもと、考え方、価値観を提示し、部下を統率し、引っ張っていくものです。

    「支配型リーダーシップ」においては、部下と双方向の対話をする必要はありません。

    あくまでトップダウンのため、説明や命令も一方的なものになります。
    そのため、部下はリーダーに対して恐れを感じるようになります。

    義務感で指示に従うため、積極的に業務を行うモチベーションが大きく削がれることになります。

    部下に対し、いかにもリーダーらしく振る舞うと、逆にリーダーシップを失ってしまいます。

    支配型リーダーとサーバントリーダーの違い

    支配型リーダーとサーバントリーダーの違い

    最も大きく違うのはコミュニケーションスタイルです。

    支配型リーダーは、トップダウンのため部下に対し、説明、命令をすることが中心となります。反対にサーバントリーダーは、部下の話に耳を傾けます。

    恐怖を与えることで組織を動かすのではなく、部下と信頼関係を築き、その自主性を尊重することで、結果的に組織は良いサイクルで自走するようになります。

    支配型リーダーとサーバントリーダーの違い

    サーバントリーダーの特徴について、更に詳しく知りたい方は、こちらを参照してください。

    サーバントリーダーが持つ10の属性

    提唱者「ロバート・K・グリーンリーフ」

    サーバントリーダーシップという概念は、1970年のアメリカにおいて「ロバート・K・グリーンリーフ」によって提唱されました。

    マネジメントの研究、開発、教育に生涯を捧げた彼は、66歳のとき、『リーダーとしてのサーバント』というタイトルでエッセイを発表しました。

    その本では「真のリーダーはフォロワーに信頼されており、まず人々に奉仕することが先決である」と提言しています。

    関連記事:提唱者について(NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会)

    サーバントリーダーシップが誕生した背景とは

    1970年のアメリカは、ベトナム戦争の泥沼化、ウォーターゲート事件など、混迷を極めていました。

    また、戦後に確立したアメリカ経済の優位性が低下した時期でもあります。
    とくに若者たちは、これらの事件によって国のリーダーに不信感を募らせていました。

    ロバート・K・グリーンリーフは、こうした時代背景から、支配型のリーダーシップではなく、人々が望む目標、より良い社会を実現するためのリーダーの必要性を感じました。

    サーバントリーダーの高潔な精神性が、人々に信頼されると考えたのです。

    どうしてサーバントリーダーシップが重要視されるのか

    現代社会において注目されている理由

    サーバントリーダーは、なぜいま注目されているのでしょうか。

    1970年からさらに時が経ち、現在では国境を越えたグローバル化が進んでいます。
    またIT技術の進化に比例して、ビジネスのスピードも上がっています。

    そうした中で、トップダウンで指示するやり方は、非効率になりつつあります。

    ひとりが部下の全てを管理し、指示を与えるやり方では、指示を待つ時間が発生するだけではありません。

    部下自身の成長も望めないうえ、やる気を削ぐことにも繋がります。
    部下の持っているスキルを活かし、個々が活躍できる職場環境・土壌を作ることは、現代社会において必要不可欠と言えます。

    サーバントリーダーシップによって得られる効果

    では、具体的にサーバントリーダーシップを取り入れたことで、どのような効果が得られるのでしょうか。

    サーバントリーダーシップのメリット

    まず始めに、サーバントリーダーシップのメリットについて紹介します。

    • 部下が能動的な行動を取る

    上司が自身のリーダーとしての地位にとらわれず、部下の意見・話に耳を傾け、助け、奉仕します。

    そうすることで、部下との間に信頼関係が構築されます。

    すると、部下・部下の間に支配型リーダーシップをとっていたときとは異なった、有益なコミュニケーションが生まれます。

    なぜなら、「支配型リーダー」の上司からの話は、一方的な命令、説明、押し付けになりがちだからです。

    上司との対話を通して、部下自身が発案したことが実現される、重要視されるという経験を通して、チームひとりひとりのモチベーションが向上します。

    上司、ひいては会社に対するエンゲージメントも高まることでしょう。

    いままで指示待ちだった部下の行動が、上司の示すビジョン、目的を意識するものへと変化します。

    • 従業員同士のコミュニケーションが活発に

    サーバントリーダーは、部下の自主性を重んじることで、部下との信頼関係が育ちます。
    それだけではありません。

    従業員同士のコミュニケーションも、活発なものへと変化します。

    サーバントリーダーシップのデメリット

    次に、サーバントリーダーシップのデメリットについて紹介します。

    • 部下との対話・方向性の共有に時間がかかる

    サーバントリーダーシップを浸透させるためには、部下との対話が欠かせません。
    そのためには、上司が自身の業務に追われているようでは、実現できません。

    自身の業務を見直し、部下に奉仕するための時間を確保することが肝要です。
    また、ビジョンや方向性を考え、部下にインプットする時間も必要です。

    • 部下が脱落することも

    サーバントリーダーシップは、部下の自主性を尊重します。

    そのため部下自身のスキルや知識量、問題解決の能力が低い場合は、機能しにくいというデメリットがあります。

    自ら考えることが不得手な部下にとっては、結果が出にくい側面もあります。

    サーバントリーダーが持つ10の属性

    つぎに、サーバントリーダーが持つ10の属性について紹介します。
    サーバントリーダーを目指す場合の、行動の指針となります。

    傾聴

    部下の言葉に耳を傾けましょう。
    部下が望むことを、自身の思い込みを捨てて、真摯に傾聴します。

    また、リーダーは他者の言葉だけでなく、自分自身の考えにも耳を傾けましょう。
    リーダーが示したビジョンが本当に「社会の役に立っているのか」、改めて考えることも、この「傾聴」には必要です。

    共感

    人の話に耳を傾けるには、相手がなにをしてほしいのかが、「共感」に着目して理解することが重要です。
    相手の立場に立ち、その気持ちを理解し、受け入れ、共感できる力が必要です。

    癒やし

    サーバントリーダーは、部下の身体(健康)、心への配慮も必要です。

    また、人の傷ついているところだけではなく、組織内で欠けている・損なわれていると感じた部分にも着目しましょう。その部分を癒すように働きかけ、弱みを補完することが、部下の成長を促します。

    そうリーダーが働きかけることで、本来持っている力が発揮できるようになります。

    そのためにも、「タレントマネジメントシステム」の導入がおすすめです。

    気づき

    組織内や部下を観察する能力も大切です。
    また、自分自身への気づきを意識することも重要です。

    説得

    上司としての権利を振りかざし、部下を服従させることを説得とは言いません。
    相手の心からの同意(コンセンサス)を得られるよう、説得を行えるようになりましょう。

    そのためにも、普段から「傾聴」を行い積極的なコミュニケーションを取りましょう。説得には、部下からの信頼が欠かせません。

    概念化

    目標へ向かう意識を忘れてはいけません。
    部下の目標・目的、また組織がどうありたいか、どこを目指すのか、リーダーとしての「夢」を見る能力を育てましょう。

    そしてそれを、部下に伝え、共感してもらいましょう。

    そうすることで、部下は迷いなく業務に取り組むことができるようになります。
    また、能動的な行動も期待できます。

    先見力

    過去の教訓、事例から学びましょう。
    そして、事件が起こる前にトラブルを見抜く見識「先見の明」を養いましょう。

    また部署の目指すべき方向を部下にインプットすることにより、リーダーひとりが対応する必要がなくなります。

    執事役

    執事のように「大切なものを預けても信頼できる」と思われる人物を目指しましょう。

    人々の成長に関わる

    従業員ひとりひとりのスキル、特性を把握し、その成長に深くコミットしましょう。その成長を支援し、育てることに責任を持ちましょう。

    部下のスキルを把握するには、スキルを可視化して把握できる「タレントマネジメントシステム」の導入がおすすめです。

    コミュニティづくり

    協力的なコミュニティを作り、維持するために、従業員が「愛情」や「癒し」を感じる環境を作るよう心がけましょう。

    これらのコミュニティづくりは、従業員の生産性をアップさせます。

    参考記事:NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会「スピアーズによるサーバントリーダーの属性」

    サーバントリーダーシップの導入事例

    資生堂

    「資生堂の再生」をミッションとして抜擢された池田守男氏は、社長在任中にサーバントリーダーシップを実践したことで知られています。

    顧客をピラミッドの頂点に据え、顧客を接客するビューティーコンサルタント、営業職の従業員の言葉に耳を傾けました。

    そこで得た知見やアイディアを活用し、働きやすさを実現させ、組織改革をはじめとする数々の改革を成功に導きました。

    良品計画

    良品計画の業績が急落した際に社長に就任した松井忠三氏は、自ら全国にある「無印良品」の店舗へと足を運び、従業員の言葉に耳を傾けました。

    そこで明らかになった課題をもとに、業務の可視化のための「MUJIGRAM」というマニュアルを作成しました。

    新人でもわかる具体的な内容から、明確な作業目的までが網羅された内容で、常に更新がされています。

    サーバントリーダーシップの「傾聴」「概念化」「先見力」の3つを発揮した例と言えるでしょう。

    これらの企業努力により業績悪化から回復するという成果を出しました。

    ダイエー

    大手スーパーのダイエーでは、当時、売上が落ち込んだ赤字店舗の閉鎖に踏み切りました。その数はなんと50店舗。元社長の樋口泰行氏は、これらすべての店舗に出向き、従業員に閉鎖の理由、働いてくれたことに対するお礼を伝えました。

    この働きかけにより従業員のモチベーションはアップし、「閉店売りつくしセール」は成功をおさめました。

    異動先の従業員にも働きかけを行った結果、前年比プラスの売上を達成しました。

    株式会社サイバーエージェント

    インターネット広告事業を行っているサイバーエージェントでは、組織開発において「社員の感情に寄り添う」ことを重要視しています。

    従業員と定期的に対話を行ない、上司と認識のずれを防ぎ、最後にはそれを振り返って確認し、評価に落とし込みます。

    この一連の流れによって、従業員の「納得感」が生まれます。

    まさにサーバントリーダーシップの「傾聴」「概念化」を体現していると言えるでしょう。

    関連サイト:HRBrain 導入企業インタビュー「納得感が社員の力を引き出す」

    スターバックス コーヒー

    有名コーヒーチェーンのスターバックス コーヒーも、サーバントリーダーシップを採用しています。「人々の心に活力と栄養を与えるブランドとして、世界で最も知られ、尊敬される企業になる」という企業ビジョンは、トップダウンで決定されたものではありません。

    従業員が考えたアイディアがやがて洗練され、世界中にある店舗で共有されるようになったものです。

    こうしたボトムアップ型のビジョンにより、世界的に知られるコーヒーチェーンにまで成長しました。

    取締役を務めたハワード・ビーハー氏は、サーバントリーダーシップに関する冊子に目を通すようにすすめています。

    サーバントリーダーシップの教育・研修

    では、サーバントリーダーシップを得るためにはどのような教育・研修があるのでしょうか。セミナー、書籍について紹介します。

    NPO法人 日本サーバントリーダーシップ協会

    NPO法人 日本サーバントリーダーシップ協会が主催する勉強会があります。
    「サーバントリーダーシップ入門講座」「読書会」などの活動を定期的に行っています。

    関連サイト:NPO法人 日本サーバントリーダーシップ協会/勉強会

    書籍

    サーバントリーダーシップの提唱者「ロバート・K・グリーンリーフ」のによって書かれた本が「サーバントリーダーシップ」です。

    1977年にアメリカで刊行されて以来、研究者、経営者のみならず、国の指導者にも影響を与えてきた名著です。

    単行本、kindle版から選ぶことができます。
    関連サイト:サーバントリーダーシップ(ロバート・K・グリーンリーフ)

    まとめ

    サーバントリーダーシップとは、「奉仕」の精神でもって部下に接します。部下の働きやすさを考慮し、話に耳を傾け、部下を中心とした組織運営を行います。

    そして、サーバントリーダーは、よりよい方向に組織を導くことを自身の責務とし「優先すべきことがなされているか」ということを確認をしながら、部下を導きます。

    それらサーバントリーダーからの働きかけによって、部下との間に信頼関係が構築されます。

    サーバントリーダーが持つ属性は、以下の10個です。

    サーバントリーダーが持つ10の属性

    1. 傾聴
    2. 共感
    3. 癒やし
    4. 気づき
    5. 説得
    6. 概念化
    7. 先見力
    8. 執事役
    9. 人々の成長に関わる
    10. コミュニティづくり

    従来の支配型リーダーは、トップダウンによる命令、指示がメインとなり、部下の話に耳を傾けるスタイルではありませんでした。

    そのため、部下は上司を恐れるようになり、指示に従って「言われたことだけをやっていればいい」と著しくモチベーションを削がれた状態に陥ってしまっていました。

    いかにもリーダーらしく振る舞うことは、部下からの信頼を失います。

    サーバントとして尽くすほうが、かえって部下から慕われ、信頼を得ることに繋がります。

    サーバントリーダーは、「執事」のように「大切なものを預けてもいい」と部下に心から信頼されるリーダーのことです。

    こうしたサーバントリーダーの活動は、「タレントマネジメントシステム」を活用することで容易になります。

    このシステムを導入することで、部下のスキルを把握し、納得感のある評価をすることができます。

    サーバントリーダーシップを実現するためにも「タレントマネジメントシステム」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

    サーバントリーダー人材を育成するために

    リーダーシップは先天的な能力ではなく、後天的に身に付けることのできる能力です。

    部下からの信頼が厚く、サーバントリーダーとして組織を活性化させることができる人材として育成を行うことが重要視されています。

    「HRBrain タレントマネジメントシステム」では、従業員ひとりひとりの「教育状況」や人材データベースで「スキルの見える化」が可能です。

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    HR大学編集部
    HR大学 編集部

    HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。