スキルマップの活用法とは?作成の注意点や職種別の具体例も解説
- スキルマップとは
- スキルマップが重視される理由とは
- 企業全体のスキルが可視化できる
- 企業単位での人材育成に繋がる
- 従業員のモチベーション向上に繋がる
- スキルマップを導入するメリットとは
- 従業員の能力向上に繋がる
- より効果的な人材育成ができる
- 業務の効率化が期待できる
- 公平・正確な従業員の能力評価に繋がる
- スキルマップを導入する流れとは
- 1.作成目的の確認
- 2.業務フローや業務名・業務の詳細の洗い出し
- 3.スキルレベルの評価基準の設定
- スキルマップを作成する際の注意点
- スキルマップ作成の目的やゴールを明確にする
- 業務フローやタスクを可能な限り細分化する
- 評価の頻度や評価後の流れを考えておく
- 職種別スキルマップの具体例
- 営業職
- 専門職
- 事務職
- まとめ
企業が成長し続けるためには、事業運営に必要な戦力を適切に確保することが重要です。
ただ、従業員数が多い企業ほど、特定のスキルを持つ従業員のリソースがあとどのくらい必要なのかを把握することが難しくなりがちです。
そのような場合にスキルマップを活用すれば、自社に必要な戦力を把握しやすくなると考えられます。
では、スキルマップとはどのように作成し、活用するものなのでしょうか。
この記事では、スキルマップの概要や作成するメリット、職種別スキルマップの具体例について解説します。
スキルマップとは
スキルマップとは、自社の従業員が持つスキルを表で一覧にしたものを言います。
海外では「Skills Matrix」と呼ばれます。
「Matrix」には「行列」という意味があり、縦に「行」、横に「列」がある状態を指します。
「Skills Matrix」とは、従業員のスキルをひと目で把握できるように行と列に並べたものということになります。
一般的にスキルマップは、横軸に業務で必要な各スキルの名称を、縦軸に従業員の氏名を書きます。
その上で、各スキルの名称と従業員の氏名が交差するマスに、その従業員のスキルレベルを○や×、数字などで書き表します。
各スキルの名称は、全体のスキルを大項目に分けた後、さらに小項目に分けて記載すると見やすくなるでしょう。
スキルマップが重視される理由とは
スキルマップは近年、企業運営において重視されています。
それにはどのような理由があるのでしょうか。
こちらでは3つに分けて説明します。
企業全体のスキルが可視化できる
従業員が多い企業では、従業員ひとりひとりが何のスキルをどの程度身につけているのか把握することは難しいものです。
その場合、事業の目標達成のためにあとどの程度リソースが必要なのかを掴みづらいでしょう。
そのような点においてスキルマップは、従業員全体の保持スキルを可視化できることが大きな特徴です。
企業としての保有スキルを可視化できることにより、どのスキルを強化・補充するべきなのかを把握しやすくなるでしょう。
企業単位での人材育成に繋がる
スキルマップを作成すれば、組織全体として保有するスキルのバランスを可視化できます。同時に、従業員ひとりひとりの保有スキルをひと目で確認できるようになります。
そうなれば、個々の従業員が伸ばすべきスキルが明確になるでしょう。
そこで、スキルマップの結果に基づいた個別の教育計画を立てることで従業員ひとりひとりのスキル強化に繋がります。
結果的に、企業全体のスキルも向上していくことが期待できます。
従業員のモチベーション向上に繋がる
作成したスキルマップは、従業員に共有することが大切です。
スキルマップでは、自身にどのようなスキルが充足もしくは不足しているのかを、一覧で視覚的に見ることができます。
従業員自身が習得するべきスキルを確認できれば、今後の目標が明確になるでしょう。
特に、これまで目指す指標やはっきりとした目標がなかった従業員にとって、スキルマップは自身のスキルレベルを再確認する機会になります。
このことが、モチベーションの向上に繋がると期待できるでしょう。
スキルマップを導入するメリットとは
スキルマップは、企業の保有スキルの可視化や企業単位の人材育成に役立つものです。
では、保有スキルの可視化や企業全体での人材育成ができた場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
こちらでは4つに分けて説明します。
従業員の能力向上に繋がる
スキルマップで自身の保有スキルや不足スキルを把握できれば、身につけるべき知識や伸ばすべき技術を意識するようになるでしょう。
そうなれば、従業員自身のモチベーションが向上し、スピーディなスキル習得が可能になると考えられます。
また、特定のスキルの獲得という明確な目標ができることにより、それに向けた計画を立てることができます。その結果、段階的かつ着実にスキルアップを進めていけることが期待できます。
より効果的な人材育成ができる
スキルマップによって従業員ひとりひとりのスキルが可視化できれば、人材育成をより効果的に行えるでしょう。
従来、人材育成においては上司と従業員が定期的に個別面談を行い、目標をすり合わせる方法が一般的でした。
しかし、上司が十分に従業員ひとりひとりの日頃の仕事ぶりを見ることができていない場合もあるでしょう。
また、従業員自身が自分は何が得意で、何が不足しているのかを把握できていない場合もあります。
その点においてスキルマップがあれば、得意とするスキル・不足しているスキルを上司・従業員本人双方が明確に把握することができます。
そうなれば、その時点の従業員ひとりひとりに最適な目標を立てることができるでしょう。
結果的に、人材育成が効果的・効率的に進むことが期待できます。
業務の効率化が期待できる
スキルマップで従業員ひとりひとりの保有スキルを把握できれば、各部署やプロジェクトへ、必要なスキルを持つ人員を適切に配置できると考えられます。
適切な人材配置ができることにより、全体の業務が効率的に進むことが期待できるでしょう。
また、スキルマップがあれば、現在各部署にどのスキルがどのくらい充足・不足しているのかをひと目で把握できます。
そのため、新しく採用した人材をどの部署に配置するかを考える際にも役立つでしょう。
公平・正確な従業員の能力評価に繋がる
従業員ひとりひとりのスキルを明確に示す指標がないと、人事評価が上司からの漠然とした印象や記憶に頼りがちになる場合があります。
そのような曖昧な評価をされることが続けば、従業員のモチベーションの低下にも繋がりかねません。
その点において、従業員のスキルを一定の指標で表すスキルマップがあれば、上司も従業員の評価をしやすくなるでしょう。
また、従業員の立場からも、どのような根拠に基づいて評価されたのかを明確に知ることができます。
そうなることによって結果的に、公平・正確な人事評価を行えるようになると考えられます。
スキルマップを導入する流れとは
スキルマップは、どのような流れに沿って作成すれば良いのでしょうか。
以下で一般的なスキルマップ作成の流れについて説明します。
1.作成目的の確認
まず、なぜスキルマップを作成するのか、目的を確認しましょう。
たとえば、スキルマップを作成する最大の目的が「公平な人事評価」であれば、各業務の遂行能力などを中心とした評価項目を設定する必要があります。
その他に「新入社員の人材育成」や「管理職の育成」などの目的もあるでしょう。
2.業務フローや業務名・業務の詳細の洗い出し
スキルマップを作成する目的を定めたら、次にスキルマップに記載する項目を決めます。
そのためには、普段行っている業務の名称や、各業務の詳細を洗い出す必要があります。
まずは、大項目として扱っている商品やサービス単位の業務を種類別に分けます。
次に、大項目の中の細かな業務を中項目や小項目として分けていきましょう。
この時の業務の洗い出しや項目の設定は、その業務の流れをよく知っている人が行うことが重要です。
実際の業務の流れや、業務において重要なポイントを理解していない人が項目を抽出しても、的外れなスキルマップになってしまう場合があるためです。
3.スキルレベルの評価基準の設定
項目を設定できたら、各項目をどのような基準で評価するかを決めます。
数字でスキルレベルを表す場合は、1〜4くらいの分類にすると管理がしやすいでしょう。
1〜10に分けるなどしてレベルを細分化しすぎると、評価そのものやその後の管理が難しくなる場合があります。
また、その評価をどのような基準でつけるのかを以下のように設定しましょう。
1・・・サポートを受ければ遂行できる
2・・・自分一人だけで遂行できる
3・・・初めて作業をする人に教えることができる
4・・・指導担当者に対して教えることができる
評価基準は最も難しいレベルを先に定め、そこから3、2、1と難易度を下げていくと設定しやすいでしょう。
スキルマップを作成する際の注意点
スキルマップの作成には、業務を洗い出して項目を決めるなど、細かな設定が必要です。
多くの工数がかかるからこそ、作成する際には十分に活用できるスキルマップとなるよう留意することが大切です。
それでは、スキルマップを作成する際には、具体的にどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
以下で、3つに分けて説明します。
スキルマップ作成の目的やゴールを明確にする
スキルマップは、従業員のスキルを可視化でき、人事評価や業務効率化に役立つものです。
それらのメリットだけでも、スキルマップを作成する大きな目的になります。
しかし、公平な人事評価や業務の効率化が達成できた後、最終的に自社がどうなりたいかを明確にしておくことが大切です。
目標とする売上指標や、従業員エンゲージメント指数など、はっきりと数値で測れるゴールを定めることで、それに適したスキルマップの作成方法・活用方法が自然と見えてくるでしょう。
業務フローやタスクを可能な限り細分化する
スキルマップを作成する際は、実際の業務の流れに基づいた項目を設定することが重要です。
その際に、各項目の分類が粗すぎると、正確な評価が行えなくなります。
逆に、分類が細かすぎると、総合的な評価が難しくなり過ぎてしまう場合があります。
項目の数や分類は、その後の管理や評価がしやすいよう、適切に設定することが重要です。
評価の頻度や評価後の流れを考えておく
スキルマップを作成した後は、そのスキルマップに基づいた各従業員の評価をどのくらいの頻度で行うかを決めておきましょう。
また、評価を行った後のフォローアップとして、どのような施策を取るのかを定めておくことも重要です。
フォローアップ施策の例としては、スキルを身につけるための研修や勉強会の実施、以前の評価面談で決めた個人目標の再設定などが挙げられます。
職種別スキルマップの具体例
スキルマップの内容は、業種や職種、部署などによってそれぞれ異なります。
ここでは、営業職・専門職・事務職の職種別に分けた、スキルマップの項目例を紹介します。
営業職
営業職の主な業務は、各商品・サービスの特長を分かりやすく説明し、契約・購入に繋げることです。
そのような営業職にとって重要なのは、主にコミュニケーションスキルや交渉スキルと言えるでしょう。
契約獲得を目標とする営業職のスキルマップには、次のような項目を設定すると良いでしょう。
業務フロー名:契約の獲得
担当業務に関する作業方法・作業手順の検討
業務の詳細:営業業務に必要な知識やセールストーク、対人能力に関する基本的事項を理解して業務に取り組んでいるか
営業の推進
業務の詳細:細かなアフターサービスを行うなど、顧客との長期的な人間関係を構築できるよう努めているか
担当業務に関する創意工夫の推進
業務の詳細:担当業務に関する問題点や改善点などを整理し、上司や先輩の助言などを踏まえて以後の業務改善に活かせるよう工夫しているか
業務フロー名:営業管理
担当業務に関する企画・立案
業務の詳細:担当業務に関して関係部門と連携し、主体的に情報発信・提供を行っているか
営業管理の推進
業務の詳細:今期の部門目標や営業方針を踏まえて進捗状況を把握すると共に、製品別・販売チャネル別・拠点別に、個別販売活動のサポートを実施しているか
担当業務の評価
業務の詳細:営業管理の目的と役割を忘れずに、実際の顧客や現場担当者から新しい情報を入手しながら、現在の体制や手法の妥当性を検証しているか
専門職
プロジェクトを立ち上げたり、新商品を開発したりする際、特定の技術に秀でた専門職のスキルは特に重視されます。
各プロジェクトや商品開発にどの従業員のスキルが最もマッチするかを判断する場合などに、スキルマップが活用できるでしょう。
専門職の中でも今回はWebデザイナーを取り上げます。
Webデザイナーのスキルマップ作成においては、次のような項目を設定するのが一般的でしょう。
業務フロー名:コーディング(文書構造化)
ハイパーテキストの利用に関する理解・確認
業務の詳細:HTMLの仕組み、マークアップ手段の概要を理解しているか
Webサイトの作成・構築
業務の詳細:上司、先輩の助言を得て、画像、映像などのデータをページに埋め込むことができるか
構築したWebサイトの管理
業務の詳細:顧客の要望に合わせて、ページの変更作業などを行えるか
業務フロー名:機能デザイン
機能デザインに関する理解・確認
業務の詳細:システムデザイン及びUI、UXに関する概要を把握しているか
機能デザインの実施
業務の詳細:上司の指示、助言を得て、 UI及びUXを考慮したユーザーインターフェースデザインを行い、ユーザーが使用するブラウザを想定したシステムの最適化を行えるか
機能デザインのチェック・改善
業務の詳細:モバイル端末による再生を行い、内容のチェックを行えるか
事務職
事務と一口に言っても、事務職には総務や経理などさまざまな分野があります。
WordやExcelなどの事務における一般的なスキルはもちろん、それぞれの業務内容に即した項目を設定することが、スキルマップを有効活用するポイントと言えます。
こちらでは、事務職の一例として経理を取り上げます。
経理事務のスキルマップとしては、以下のような項目を設定すると良いでしょう。
業務フロー名:PCの基本操作
PCの基本操作
業務の詳細:PCの基本的な操作方法を身につけ、セキュリティに留意して適切な使用をしているか
表計算ソフトなどの活用
業務の詳細:表計算ソフト、プレゼンテーションソフトなどを用いて、見やすい事務文書や表・グラフ作成を行えるか
情報の検索・加工と整理
業務の詳細:電子メールの活用やインターネットを使った情報検索を支障なく行えるか
業務フロー名:簿記
担当業務に関する作業方法・作業手順の検討
業務の詳細:簿記業務に必要な基本的事項を理解し、決算や補助簿の作成などの業務を実施手順や事務的手続き、社内決裁ルートなどを正しく理解した上で遂行できているか
簿記業務の推進
業務の詳細:証憑に基づく仕訳・伝票記入・転記などの業務を、上司の助言に基づいて自分一人の力で遂行できるか
担当業務に関する創意工夫の推進
業務の詳細:簿記業務に関して自己評価を行い、問題点や改善点を自分なりに整理しているか
まとめ
スキルマップは、特定のスキルを持つ人材が自社内にどのくらいいるのかを一覧で確認できるなど、企業の事業運営に非常に役立つものです。
また、各業務スキルを明確な指標で評価できることにより、公正で正確な人事評価に繋がるなど、従業員にとっても有効なツールと言えます。
企業として目指すビジョンを十分に考慮した上で、自社の方針に合ったスキルマップを作成し、人材育成や業務効率化に活用していくことが大切です。
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