人材管理
2022/03/09
スキルマップとは?そのメリットと導入方法・注目される背景を紹介
目次
本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。
皆さんはスキルマップという、人材スキルを管理するツールをご存じでしょうか?
従業員のスキルを管理することで、従業員の強み・弱み、また組織の強み・弱みが可視化され、組織改革が効率的に進みます。
組織改革や従業員の人材育成に課題を感じている方は、スキル管理についてさらに詳しく紹介している『スキル管理とは?必要性や方法、スキルマップの作り方について解説』もあわせてご覧ください。
今回この記事では、スキルマップに焦点を当て、スキル管理がしやすくなるメリットや、活用方法を解説します。
また、初めて導入する際に気をつけるべきポイントもご紹介します。
1.スキルマップとは?
まずはスキルマップの概要を解説します。
スキルマップの概要
スキルマップとは、従業員の能力・スキルを数字で表し、可視化した評価のことを指します。
企業によっては、能力マップ・力量表・力量管理表などといわれることもあります。
海外企業での一般的な呼び方は、スキルマトリックス(Skills Matrix)です。
スキルマップの活用例として、製造業の商品を作る場合を考えます。
商品を作る過程に関する従業員のスキルは、1〜4などの数字で評価できます。
1〜4の数字で評価する際は、
1:人の補助ができる
2:人に教えてもらいながら遂行できる
3:単独で遂行できる
4:人の教育ができる
などの基準を軸に評価を行います。
従業員全員の能力・スキルを数値化し、ひとつの表にまとめたらスキルマップの完成です。
スキルマップで解決できる「スキルギャップ」
スキルギャップとは、企業が事業を推進・展開する上で必要なスキルと、実際に従業員が持つスキルが釣り合っていないことを指します。
特にコロナ禍の日本社会ではデジタル化が急速に加速しました。
日常業務や取引先との打ち合わせがオンラインで行われるようになるなど、従業員がデジタル機器を始めとした新しいツールを使いこなすスキルが求められるようになりました。
デジタル化が急速に進んだことで、それに対応できるスキルの習得が追いついていないという企業も存在します。
さらに、近年では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれるようになり、コロナ禍の終息後も社会のデジタル化は進んでいきます。
つまり、いかに早くデジタルに対応できる組織を作れるかが、今後を生き残るために重要な課題です。
こうしたスキルギャップを解決するために、従業員のスキルを可視化できるスキルマップの活用が推奨されています。
従業員のスキルを確認しながら少しずつスキルアップさせましょう。
2.スキルマップの導入が推進される理由
ここからは、スキルマップの導入が推進されている理由と目的を解説します。
従業員のモチベーションが向上する
スキルマップを使用して、従業員に必要なスキルや求められるスキルを伝えることで、何を目標にすれば良いのかが明確になります。
目標が明確になると、日々の業務の中でスキルアップを意識した行動をとるようになり、目標がない従業員よりも早くスキルアップができるでしょう。
また、自身のスキルが可視化されることで、目標までのステップを明確に確認できるようになります。それにより、目標達成までモチベーションを維持しながらスキルアップに臨めます。
こうしたことから、スキルマップを活用することで従業員が高いモチベーションを維持しながら日々の業務に取り組むことができます。
組織単位での人材育成ができる
組織の中で、誰がどのようなスキルを持っているのかがわからなければ、組織として育成すべきスキルが把握できません。
スキルマップを使用して、従業員がそれぞれどういったスキルを持っているかを可視化することで、組織内で足りていないスキルがひと目で把握できます。
可視化された足りていないスキルを従業員に共有することで、従業員ひとりひとりにとって身につけるべきスキルが明確になるでしょう。従業員単位で人材育成をしながら、組織単位の成長にもつなげられるのがスキルマップの特徴です。
業務内容の整理ができる
社内の業務内には、「名前のない業務」が存在します。
例えば、顧客の気持ちを推し量った対応や、会議の事前準備などです。
これらの業務が会社に利益がある業務であれば、スキルのひとつとして認め、従業員を評価することが重要です。
スキルマップを作成するにあたって、業務内容の洗い出しや棚卸の工程で、名前のない重要な業務が見つかるかもしれません。
これらの業務をしっかりと評価できる仕組みになれば、従業員のモチベーション向上や、生産性向上にもつながるでしょう。
3.スキルマップを導入するメリット
ここからはスキルマップを導入した場合に得られるメリットについてです。
人材配置の最適化
スキルマップを活用することで、各従業員の能力に適した部署に人材配置ができ、業務の効率化につながります。
金融会社のアイフル株式会社は、従業員の能力に応じた人材配置を行い、会社の課題・目標の達成を目指している会社のひとつです。
アイフル株式会社では、金融事業にDXを取り入れる際に、デジタル機器に精通している従業員や、システムに対応できる人材を適切な部署に配置しました。この人材配置の際に、従業員スキルやポテンシャルなどを管理するツールを活用し、人材配置のミスマッチを防いでいます。
業務の標準化が可能になる
組織の中で複数の従業員が業務を行うと、メンバーごとでスキルのばらつきが生じてしまうこともあるのではないでしょうか。
これが生じる背景には、全従業員が持つべきスキルが明確になっておらず、従業員もどこまでやればいいのか明確にされていないケースがあります。
スキルマップを使用しスキル分けを行うことで、業務内で何をどこまで行えばいいかが明確になるでしょう。
業務に求められるスキルの認識を従業員全員で合わせることで、標準的な業務の定着につながります。
人事評価制度の公平化につながる
スキルマップを活用することで、公平な人事評価が実現します。
未だに年功序列が根強い日本企業では、人事評価をする際に実際の能力よりも年齢や勤続年数が重要視されることも少なくありません。
こうした人事評価を行うと、やる気のある従業員や向上心のある従業員が不満に感じ、優秀な人材を失う事態につながるかもしれません。
こうした事態を引き起こさないためにも従業員のスキルを重視した人事評価の導入をおすすめします。
スキルを重視し、誰が見ても公平な人事評価をするためには、従業員のスキルを可視化して、高い評価をもらえる人材はどういった人材かを示すことが重要です。
スキルマップは各従業員の現状がどこなのかを明示でき、目指すべき姿と現在の自分自身を対比しやすくなります。
こうした人事評価を行うことで、従業員は人事評価に納得し、高いモチベーションを維持しながら日常業務に取り組めるでしょう。
4.スキルマップの作成方法
ここからは、実際にスキルマップを作成する方法をご紹介します。
作成の目的を整理する
まず初めに、スキルマップを作成する目的を整理しましょう。
スキルマップを有効活用するためには、目的が明確でなければいけません。これが、目的を整理する意味です。
例えば、「公平な人事評価を行うこと」が目的の場合、業務の遂行能力に応じた各作業の評価を設定すれば完了です。
しかし、「組織的な人材育成を行うこと」が目的の場合、設定すべき項目は、組織の将来を見据えた、ハードルの高いスキルなども含めます。
社内でどういった目的でスキルマップを活用したいかをすり合わせてから作成しましょう。
業務の洗い出しと棚卸をする
スキルマップを作成する目的が明確になった後、業務の洗い出しと棚卸を行いましょう。
業務の洗い出し・棚卸とは、社内で発生する業務を種類別で分け、難易度などで階層に分けることをいいます。
この洗い出しと棚卸の際に、各業務に必要なスキルを整理しておくといいでしょう。
スキルマップ内の項目を設定する
業務の洗い出し・棚卸が完了した後、スキルマップ内に設定する細かいスキルの項目を決めます。
ここで設定するスキル項目は、より細かく、具体的な項目の方が次のスキルマップ作成工程で設定がしやすくなります。
設定方法の具体例を出すと、カスタマーサービスの電話オペレーター業務のスキルを設定するとしましょう。
必要なスキルは「電話対応力」となりますが、これをさらに具体的にし、「問題解決能力」や「状況把握能力」などと細かくします。
設定するときのコツは、大項目を設定し、その後に小項目を探してみましょう。
評価基準を設定する
スキル項目の具体化が完了した後、実際に評価する基準を設定します。
まず従業員のスキルの評価を行う際に、階層をいくつにするか決定しましょう。実際は階層を多くしすぎると評価する側の管理が大変なため、1〜4で設定するのが一般的です。
階層を設定した後、各階層に当てはめる評価基準を設定します。
例えば、
1:人に教えてもらいながら遂行できる
2:単独で業務を遂行できる
3:人の教育ができる
4:教育担当者の教育ができる
などです。
まずは組織内で必要なスキルの中で、最も難易度の高いものを一番高い評価に当てはめます。そこから難易度順に落としていく形で各階層に当てはめて設定しましょう。
本格導入前の試験導入とマニュアル作成を実施する
評価基準まで設定し終わったら次は実際に使用してみましょう。
いきなり本運用すると、スキルマップ作成の過程で抜けていた部分に気づかないこともあるため、試験導入、トライアル期間を設けるのがおすすめです。
トライアルを行い、実際に評価をする管理職と評価をうける従業員からの意見を集めましょう。
トライアル期間を経て、スキルマップを活用する細かなルール・設定が完成したら、活用方法や見方などのマニュアルを作成しましょう。
マニュアルの中には、活用方法だけではなく、導入する目的を一緒に記載しておくと、形骸化しづらいためおすすめです。
運用を開始する
マニュアルが完成し、従業員に共有し終わったら本番環境で運用を始めましょう。
本格的に運用を開始した後、トライアル期間で見つからなかった課題が出てくることもあります。
本格的な運用を開始した後も引き続き、管理職と従業員からのヒアリングを継続しましょう。
使用方法や運用方法を変更する場合は、都度変更内容をマニュアルに追記し、文字で残しておくのが重要です。
5.スキルマップの導入に重要なテンプレートの活用について
ここからは、スキルマップの導入を手助けしてくれる重要なテンプレートについてご紹介します。
テンプレートの概要
スキルマップを始めて導入する場合、「何から手をつければいいかわからない」や「1からスキルマップを作成できない」など、つまづくことがあります。
こういう悩みを持っている方は、まずはテンプレートを使用して、自社の業務に当てはめて作成するのがおすすめです。
テンプレートの典型例は以下のような形です。
上表のように、業務内容を大項目と小項目に分けます。
そして、そのスキルがどういった内容かをしっかりと記載し、従業員が何をしなければいけないかを明確にしておきましょう。
そして、従業員のスキルを小項目別に1〜4程度の数値で評価します。
この他にもスキルマップを作成するテンプレートは存在しますが、今回紹介したように、大項目、小項目別に業務を細分化し、各項目に沿って従業員の評価を行うのが一般的です。
おすすめのテンプレート
もし、社内で使用するテンプレートに迷った場合、厚生労働省が公開しているテンプレートがおすすめです。
厚生労働省のテンプレートをダウンロードするためには、まずこちらのキャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロードのページを開きましょう。
ページを開いたら、ページ中段の「キャリアマップ、職業能力評価シート、導入・活用マニュアルのダウンロード」に表示された表内にある「職業能力評価シート」一覧をクリックします。
一覧ページは、あらゆる業種のスキルマップが用意されているので、自社に該当する業種のスキルマップをダウンロードしてみましょう。
ダウンロードするページにレベル1からレベル4に階層分けがされていますが、この階層については、同じく厚生労働省の「キャリアマップ、職業能力評価シート、導入・活用マニュアルのダウンロード」の表内にあるダウンロードを開くと出てくる資料に定義されています。
このレベル分けでは、スキルを習得するまでにかかる期間をおおよその年数で分けており、実際にレベル分けをするときのひとつの目安になります。
まだ一度もスキルマップを作成したことのない方は、この内容を基に従業員のスキル分け、スキルマップの作成を試してみてはいかがでしょうか。
6.スキルマップに関する注意点
最後に、スキルマップを使用する際の注意点をご紹介します。
実際に使う方達からヒアリングを行う
スキルマップの仕様は、実際に活用する従業員や管理職にとって使いやすいものでなければ大きな効果は得られません。
スキルマップのトライアル期間はもちろんのこと、運用が開始された後もメンバーからのヒアリングを継続し、スキルマップに反映させましょう。
スキル設定にかなりの時間が必要
一度もスキルマップを作成したことがない場合は、作成過程にかなりの時間を要します。
特に、業務の洗い出しやスキルの設定は、時間がかかることもあるので、それを認識して焦らず設定しましょう。
業務のスキルは明確に定義づけされていないこともあり、設定や数値化に時間がかかります。そのことを、作成メンバー全員で認識統一をしておくことが重要です。
人によって評価基準の認識にばらつきがある
スキルマップを作成する上で、マップに盛り込むべきかどうか人によって判断が分かれる項目もあります。
特に、人材のマネジメントスキルなどは抽象的なスキルであり、人によって評価基準が異なりやすいので、より具体的にスキルを設定するのが重要です。
例えば、「問題解決能力」や「問題把握能力」などに置き換えるといいでしょう。
まとめ
今回は、スキルマップに焦点を当て、概要やメリット、導入方法を解説しました。
企業の重要な事業を推進させるためにも、適正な人材配置ができるかが大きな分岐点となり、適正な人材配置のためには、従業員のスキルや能力の把握が必要不可欠です。
一方で、従業員のスキルや能力を把握することで、従業員のモチベーションアップや、組織単位での人材育成が実現できます。
スキルマップを作成するのは簡単なことではなく、時間のかかる作業にはなりますが、活用することで多くのメリットを得られます。
企業として成長するためにも、スキルマップを活用してみるのもおすすめです。
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