人材管理
2023/09/12
スキルマップとは?そのメリットと導入方法・注目される背景を紹介
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スキルマップは、従業員のスキルやポテンシャルを把握するのに重要なツールです。
また、企業の掲げる大きな目標を達成するために必要な、「適正な人材配置」と「適正な人材育成」について、スキルマップは大いに役立ちます。
この記事では、スキルマップの概要と導入するメリットや、導入方法などを解説します。
▼スキルの見える化で戦略人事を実現する方法
スキルマップとは?
スキルマップとは、従業員の能力やスキルを数字で表し、可視化した評価のことを指します。
企業によっては、能力マップ、力量表、力量管理表などといわれることもあります。
海外企業での一般的な呼び方は、スキルマトリックス(Skills Matrix)です。
スキルマップの活用例として、製造業の商品を作る場合を例に確認してみましょう。
商品を作る過程に関する従業員のスキルは、1〜4の4段階の数字で評価できます。
1〜4の数字で評価する際は、
- 人の補助ができる
- 人に教えてもらいながら遂行できる
- 単独で遂行できる
- 人の教育ができる
などの基準を軸に評価を行います。
従業員全員の能力やスキルを数値化し、ひとつの表にまとめたらスキルマップの完成です。
スキルマップで「スキルギャップ」を解消する方法
スキルギャップとは、企業が事業を推進し展開する上で必要とするスキルと、実際に従業員が持つスキルとが釣り合っていない状態を指します。
特に、コロナ禍の日本社会では、デジタル化が急速に加速しました。
日常業務や取引先との打ち合わせがオンラインで行われるようになるなど、従業員がデジタル機器を始めとした、新しいツールを使いこなすスキルが求められるようになりました。
デジタル化が急速に進んだことで、それに対応できるスキルの習得が追いついていないという企業も存在します。
さらに、近年では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれるようになり、コロナ禍以降も社会のデジタル化は進んでいきます。
そのため、いかに早くデジタルに対応できる組織を作れるかが、今後を生き残るために重要な課題となっています。
こうしたスキルギャップを解決するために、従業員のスキルを可視化できるスキルマップの活用が推奨されています。
従業員のスキルを確認しながら少しずつスキルアップをさせるようにしましょう。
▼「DX(デジタルトランスフォーメーション)」についてさらに詳しく
デジタルトランスフォーメーションはなぜDX?意味や定義、事例を解説
スキルマップの導入が推進される理由
スキルマップの導入が推進される理由と目的について確認してみましょう。
スキルマップが推奨される理由
- 従業員のモチベーションが向上する
- 組織単位での人材育成ができる
- 業務内容の整理ができる
従業員のモチベーションが向上する
スキルマップを使用して、従業員に必要なスキルや求められるスキルを伝えることで、従業員は何を目標にすれば良いのかが明確になります。
目標が明確になると、日々の業務の中でスキルアップを意識した行動をとるようになり、目標がない従業員よりも早くスキルアップができるでしょう。
また、自身のスキルが可視化されることで、目標までのステップを明確に確認できるようになり、従業員は目標達成まで、高いモチベーションを維持しながら、スキルアップや日々の業務に取り組むことができます。
組織単位での人材育成ができる
組織の中で、誰がどのようなスキルを持っているのかが分からないと、組織として育成すべきスキルが把握できません。
スキルマップを使用して、従業員がそれぞれどういったスキルを持っているかを可視化することで、組織内で足りていないスキルがひと目で把握できます。
可視化された足りていないスキルを従業員に共有することで、従業員ひとりひとりにとって身につけるべきスキルが明確になるでしょう。
従業員単位で人材育成をしながら、組織単位の成長にもつなげられるのが、スキルマップの特徴です。
▼「人材育成」についてさらに詳しく
【実践編】人材育成って何やるの?これを読めば基本的考え方と具体的な企画方法がよくわかる
業務内容の整理ができる
社内の業務には「名前のない業務」も存在します。
例えば、顧客の気持ちを推し量った対応や、会議の事前準備などです。
これらの業務が会社に利益がある業務であれば、スキルのひとつとして認め、従業員を評価することが重要です。
スキルマップを作成するにあたって、業務内容の洗い出しや棚卸を行う工程で、名前のない重要な業務が見つかるかもしれません。
これらの業務をしっかりと評価できる仕組みになれば、従業員のモチベーション向上や、生産性向上にもつながるでしょう。
スキルマップを導入するメリット
スキルマップを導入することで、企業と従業員が得られるメリットについて確認してみましょう。
スキルマップを導入するメリット
- 人材配置の最適化
- 業務の標準化が可能になる
- 人事評価制度の公平化につながる
人材配置の最適化
スキルマップを活用することで、従業員の能力に適した部署に人材配置ができ、業務の効率化が図れます。
家具インテリア用品の開発や販売を行っている、株式会社東京インテリア家具では、人事情報の可視化によって、組織開発や配置転換計画に利用できる、戦略人事の土壌を整えました。
また、新潟県を中心に店舗を展開し普通銀行業務を行っている、株式会社大光銀行では、人材情報の可視化によって、適切な人材配置ができるようになりました。
▼「人材配置の最適化」についてさらに詳しく
適材適所を実現する「人材配置」とは?実践的な方法とポイントを人事目線で解説
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業務の標準化が可能になる
組織の中で複数の従業員が業務を行うと、メンバーごとでスキルのばらつきが生じてしまうこともあります。
スキルのばらつきが生じる背景には、全従業員が持つべきスキルが明確になっておらず、従業員もどこまでやればいいのかを明確に理解できていないケースがあります。
スキルのばらつきを防ぐために、スキルマップを使用しスキル分けを行うことが大切です。
スキルマップを通して、業務に求められるスキルの認識を従業員全員で合わせることで、業務内で何をどこまで行えばいいかが明確になり、標準的な業務の定着につながります。
人事評価制度の公平化につながる
スキルマップを活用することで、公平な人事評価が実現します。
日本企業では、未だに年功序列が根強く、人事評価をする際に実際の能力よりも、年齢や勤続年数が重要視されることも少なくありません。
このような人事評価を行うと、やる気のある従業員や向上心のある従業員が、評価に対して不満に感じ、場合によっては退職をしてしまい、優秀な人材を失う事態につながるかもしれません。
こうした事態を引き起こさないためにも、従業員のスキルを重視した人事評価の導入をおすすめします。
スキルを重視し、誰が見ても公平な人事評価をするためには、従業員のスキルを可視化して、高い評価をもらえる人材はどういった人材かを示すことが重要です。
スキルマップは各従業員のスキルが現状どのレベルなのかを明示でき、目指すべき姿と現在の自分自身を対比しやすくなります。
こうした人事評価を行うことで、従業員は人事評価に納得し、高いモチベーションを維持しながら日常業務に取り組めるようになるでしょう。
▼「人事評価制度」についてさらに詳しく
納得度の高い評価とは?目指すべき状態やアクションについて
▼「スキルマップのメリットとデメリット」についてさらに詳しく
スキルマップ導入にはデメリットがある?作り方や運用・管理方法も解説
スキルマップの作成方法
スキルマップを作成し運用するまでのステップについて確認してみましょう。
スキルマップ作成のステップ
- スキルマップ作成の目的を整理する
- 業務の洗い出しと棚卸をする
- スキルマップの項目を設定する
- スキルの評価基準を設定する
- スキルマップの試験導入とマニュアルを作成する
- スキルマップの運用を開始する
スキルマップ作成の目的を整理する
まずは、スキルマップを作成する目的を整理しましょう。
スキルマップを有効活用するためには、目的が明確でなければいけません。
例えば、「公平な人事評価を行うこと」が目的の場合、業務の遂行能力に応じた各作業の評価を設定すれば完了です。
しかし、「組織的な人材育成を行うこと」が目的の場合、組織の将来を見据えた、ハードルの高いスキルの評価なども含めます。
社内でどういった目的でスキルマップを活用したいかをすり合わせて、スキルマップを作成するようにしましょう。
業務の洗い出しと棚卸をする
スキルマップを作成する目的が明確になったら、業務の洗い出しと棚卸を行いましょう。
業務の洗い出しと棚卸は、社内で発生する業務を種類別で分け、難易度などで階層に分けることをいいます。
この洗い出しと棚卸の際に、各業務に必要なスキルを整理しておくと良いでしょう。
スキルマップの項目を設定する
業務の洗い出しと棚卸が完了したら、スキルマップ内に設定する細かいスキルの項目を設定します。
ここで設定するスキル項目は、より細かく、具体的な項目の方が、次のスキルマップ作成工程で設定がしやすくなります。
例えば、カスタマーサービスの電話オペレーター業務のスキルを設定する場合、必要なスキルは「電話対応力」となりますが、これをさらに具体的にし、「問題解決能力」や「状況把握能力」など細かく設定します。
スキルを設定する際のコツは、大項目を設定し、その後に小項目を探してみることです。
スキルの評価基準を設定する
スキルマップの項目の具体化が完了したら、スキルの評価基準を設定します。
従業員のスキルの評価を行う際に、階層をいくつにするかを決定しましょう。
階層を多くしすぎると、評価する側の管理が大変なため、階層はレベル1〜レベル4の「4段階」で設定するのが一般的です。
階層を設定した後は、各階層に当てはめる評価基準を設定します。
- レベル1:人に教えてもらいながら遂行できる
- レベル2:単独で業務を遂行できる
- レベル3:人の教育ができる
- レベル4:教育担当者の教育ができる
各階層の評価基準は、組織内で必要なスキルの中で、最も難易度の高いものを一番高い評価(レベル4)に当てはめ、そこから難易度順に落としていく形で当てはめて設定しましょう。
スキルマップの試験導入とマニュアルを作成する
スキルの評価基準の設定が終わったら、実際にスキルマップを使用してみましょう。
いきなり本運用すると、スキルマップ作成の過程で抜けていた部分に気づかないこともあるため、試験導入とトライアル期間を設けるのがおすすめです。
トライアルを行い、実際に評価をする管理職と、評価をうける従業員からの意見を集めましょう。
トライアル期間を経て、スキルマップを活用する細かなルールと設定が完成したら、スキルマップの活用方法や見方などのマニュアルを作成しましょう。
マニュアルの中には、活用方法だけではなく、導入する目的を一緒に記載しておくと、スキルマップが形骸化しづらいためおすすめです。
スキルマップの運用を開始する
スキルマップのマニュアルが完成し、従業員への共有を実施したら、本番環境での運用を開始しましょう。
本格的に運用を開始した後、トライアル期間で見つからなかった課題が出てくることもあります。
本格的な運用を開始した後も引き続き、管理職と従業員からのヒアリングを継続するようにしましょう。
スキルマップの使用方法や運用方法を変更する場合は、都度変更内容をマニュアルに追記し、文字で残しておくことが大切です。
▼「スキルマップの活用と職種別具体例」についてさらに詳しく
スキルマップの活用法とは?作成の注意点や職種別の具体例も解説
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スキル管理とは?目的や方法とスキルマップについて解説
スキルマップ導入に重量なテンプレートの活用
スキルマップの導入を手助けしてくれる、テンプレートについて確認してみましょう。
スキルマップのテンプレートの典型例
スキルマップを初めて導入する場合、「何から手をつければいいかわからない」「1からスキルマップを作成できない」などといった悩みを抱えてしまいがちです。
スキルマップの作成に悩んでしまった際は、まずはテンプレートを使用し、自社の業務に当てはめてみるのがおすすめです。
テンプレートの典型例

表のように、業務内容を「大項目」と「小項目」に分けます。
そして、そのスキルがどういった内容かの詳細をしっかりと記載し、従業員が何をしなければいけないかを明確にしておきましょう。
そして、従業員のスキルを小項目別に1〜4程度の数値で評価します。
スキルマップを作成するテンプレートは他にも存在しますが、今回紹介したように、大項目、小項目別に業務を細分化し、各項目に沿って従業員の評価を行うのが一般的です。
スキルマップのテンプレート
スキルマップのテンプレートに迷った場合は、厚生労働省の「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアル」を使用すると良いでしょう。
また、IT企業のスキルマップのテンプレートには、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「情報システムユーザースキル標準(UISS)と関連資料」があります。
厚生労働省のスキルマップのテンプレート
スキルマップのテンプレートとして、厚生労働省の「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」があります。
スキルマップのテンプレートの種類としては、「職種別」「業種別」に分けてファイルが用意されているので、自社に該当する業種のスキルマップをダウンロードしてみましょう。
また、各スキルマップは、レベル1からレベル4に階層分けがされています。
このレベル分けでは、スキルを習得するまでにかかる期間をおおよその年数で分けており、実際にレベル分けをするときのひとつの目安になります。
まだ一度もスキルマップを作成したことのない場合は、スキルマップのテンプレートを参考に従業員のスキル分けと、スキルマップの作成を試してみてはいかがでしょうか。
(参考)キャリアマップについて
情報システムユーザースキル標準(UISS)
IT企業のスキルマップを作成する場合は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「情報システムユーザースキル標準(UISS)と関連資料のダウンロード」を参考にすると良いでしょう。
IT企業や、ITを活用している自治体がスキルを身に着けられるよう、ITシステムにおける人材配置や育成のための指標を定義しています。
スキルマップに関する注意点
スキルマップを作成する際に発生する課題と、注意点について確認してみましょう。
スキルマップを作成する際の注意点
- 従業員や管理職にヒアリングを行う
- スキルマップの作成にかなりの時間が必要
- 人によって評価基準の認識にばらつきがある
従業員や管理職にヒアリングを行う
スキルマップの仕様は、実際にスキルマップを活用する従業員や管理職にとって使いやすいものでなければ大きな効果は得られません。
スキルマップ導入のトライアル期間はもちろんのこと、運用が開始された後も従業員へのヒアリングを継続し、スキルマップに反映させるようにしましょう。
スキルマップの作成にかなりの時間が必要
一度もスキルマップを作成したことがない場合は、スキルマップの作成過程にかなりの時間を要します。
特に、業務の洗い出しやスキルの設定は、時間がかかることもあるので、それを認識して焦らず設定しましょう。
また、業務のスキルは明確に定義づけされていないこともあり、設定や数値化に時間がかかります。
そのことを、スキルマップを作成するメンバー全員で認識を統一しておくことが重要です。
人によって評価基準の認識にばらつきがある
スキルマップを作成する際に、スキルをスキルマップに盛り込むべきかどうか、人によって判断が分かれる項目もあります。
特に、人材のマネジメントスキルなどのような抽象的なスキルの場合、人によって評価基準が異なるので、より具体的にスキルを設定することが大切です。
スキルマップを活用してスキル管理を始める方法

今日から始めるスキル管理〜スキルデータを活用して戦略人事を実現する方法〜
全ての従業員は、資格や経験、技能など何かしらのスキルを持っています。
スキルマップを通しtえ、従業員の持つスキルを可視化し、管理、活用することは、企業と従業員の双方に大きなメリットがあります。
「今日からはじめるスキル管理」と題して、スキル管理の流れから、スキル情報の具体的な活用事例などをご紹介します。
この資料で分かること
- スキルの分類
- スキル管理の重要性と活用例
- スキル情報の使い方
スキルマップの作成はタレントマネジメントシステムで効率化
スキルマップの活用は、企業の成長に不可欠です。
企業の重要な事業を推進させるためには、「適正な人材配置」が大きなポイントになります。
適正な人材配置のためには、スキルマップによる従業員のスキルや能力の把握が必要になります。
また、従業員のスキルや能力を把握することで、従業員のモチベーションアップや、組織単位での人材育成も実現できます。
スキルマップを活用することは、多くのメリットを得ることができますが、スキルマップを作成することは簡単なことではなく、時間のかかる作業になります。
スキルマップの作成をはじめとした人材管理の効率化に向けて、「タレントマネジメントシステム」を利用してみてはいかがでしょうか。
HRBrain タレントマネジメントの特徴
- 検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現
運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。
- 柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を
従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。
- 人材データの見える化も柔軟で簡単に
データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。
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