#労務管理
2024/03/28

労務のDXとは?DX化のメリットや課題点について解説

目次

労務業務は、従業員が安全・健康に働き続けるために不可欠です。
一方で、従業員の多い企業ほど、従業員ひとりひとりに関するデータを正確に管理することが難しくなります。

そこで近年、労務業務の効率化を促し、労務担当者の負担を軽減する「労務のDX化」が注目されています。

では、労務のDX化とは具体的にどのようなもので、どのようなメリットや課題があるのでしょうか。
この記事では、労務とDXそれぞれの概要や労務をDX化するメリット、労務のDX化を成功させるポイントなどについて説明します。

「紙やExcelで行う業務が多く、煩雑な労務手続きがなかなか削減できない」
「従業員からの労務手続きにおける問い合わせ対応で業務が中断されてしまう」
など、お悩みの方も多いのではないでしょうか。

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労務とは

労務とは、労働時間の管理や給与計算をはじめとした、従業員のサポートをする業務を指します。
具体的な業務内容には、以下のようなものがあります。

  • 勤怠管理

従業員の出勤・退勤時間や遅刻・早退の有無、有給休暇の取得状況を把握・管理する。

  • 給与計算

勤怠状況に基づいた、従業員ひとりひとりの給与額の計算。
基本給や手当の他、社会保険料や雇用保険料などの各種控除額も正確に把握し、間違いのない金額を算出する必要がある。

  • 社会保険の手続き

従業員が病気になった際や定年退職した後に、必要な手当や年金を受け取れないといった事態が起こらないよう、健康保険や雇用保険、厚生年金保険などの保険の手続きを行う必要がある。

  • 安全衛生管理

従業員が健康に働き続けられるよう、健康診断の手配を始めとする安全衛生管理を行う。
健康診断は従業員ひとりひとりが年に1回以上行う必要があり、労務では健康診断結果の記録や従業員本人への通知、必要に応じた保健指導なども行う。

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DXとは

DXとは、「デジタルトランスフォーメーション」の略称です。

経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)」では、デジタルトランスフォーメーションを、
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
と定義しています。

つまり、デジタルトランスフォーメーションとは、「デジタルの技術を活用して、企業や社会全体を変えていくこと」です。

企業のDX化においては、ITツールを導入するなどのデジタル技術の活用が特に重要です。
ITツールを取り入れる場面としては、具体的には以下のようなものがあります。

  • 従業員間での情報共有

  • 従業員同士のコミュニケーション

  • 業務スケジュールの管理

  • 従業員が自社に対して行う各種の申請

このような業務を専用のITツールで行えば、従来時間がかかっていた業務を効率的に行うことができ、組織全体の生産性が向上すると考えられます。

▼「DX」についてさらに詳しく
デジタルトランスフォーメーションはなぜDX?意味や定義、事例を解説

DXの進め方とは

経済産業省による、デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書「DXレポート2 中間取りまとめ」では、DXの構造を以下の3つに分けて説明しています。

デジタイゼーション

デジタイゼーションとは、一言で言うと「ツールのデジタル化」です。

これまでアナログで取り扱っていたものを、デジタルで取り扱うことを指します。

具体的には、社内コミュニケーションのためのITツールの導入や、名刺や請求書など紙で管理されていた情報の電子データ化などが挙げられます。

デジタイゼーションは、局所的・部分的なデジタル化の段階と言えます。

デジタライゼーション

デジタライゼーションとは、「プロセスのデジタル化」です。

デジタイゼーションにおいてデジタル化したデータを活用して、業務プロセスを効率化することを指します。

また、業務プロセスの効率化によって、業務から新しい価値を創出することもデジタライゼーションに含まれます。

具体的には、AIなどの最新技術を活用した業務効率化や高度なデータ活用などが挙げられます。

デジタライゼーションは、部分的であったデジタイゼーションを一歩進化させて、高度化したものであると言えます。

デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル化した技術やデータを活用してビジネスプロセスや事業戦略、商品そのものを変革していくことです。

また、ビジネスモデルそのものを変革して、新たな事業価値や顧客体験を生み出し、市場での競争優位を維持することを指します。具体的な例としては、自動車業界における、車両の所有からカーシェアリングというビジネススタイルへの移行などがあります。

デジタルトランスフォーメーションは、デジタル化が企業という範囲を超えて、社会全体に影響を及ぼす段階と言えます。

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労務においてDX化を進めるメリットとは

DXは、アナログで行っていたことをデジタル化することで、業務効率化やビジネスプロセスの転換などを行うことです。
では、DX化を進めることには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下で4つに分けて説明します。

作業工数を削減できる

DX化の推進においては、労務における作業工数の削減が期待できます。例えば、必要なデータが別々のファイルに雑然と保管されていたり、書類で山積みにされていたりする状態では、効率的に業務を進めることは難しいでしょう。

必要なデータを取り出したくても、ファイルをひとつひとつ見て回るような非効率な探し方になってしまいます。

それに対し、DX化を進めることは、必然的にデジタルツールを業務に取り入れることになります。

労務に関するデータや資料をクラウドで一元的に管理できれば、時間や場所を問わず、必要な情報を短時間で検索し、取り出すことができます。Excelファイルや紙でデータを保管する場合と比較すると、情報の検索や整理にかける工数を大幅に削減できるでしょう。

作業上のミスを軽減できる

DX化を進めることは、労務における作業ミスの軽減にも役立ちます。

たとえば、勤怠管理に紙のタイムカードを使用している場合、給与計算の際に従業員ひとりひとりの勤怠状況をタイムカードから集計しなければいけません。

特に、従業員が多い企業では従業員ひとりひとりの勤怠状況から正しい給与額を算出するのに、多くの手間と工数がかかります。また、人が計算する以上は、給与額の計算ミスが起こることもあるでしょう。

そこでDX化を進め、デジタルツールを導入することで、勤怠管理から給与計算までを自動化することが可能です。

勤怠管理の自動化によって、給与計算においてもミスなく金額を算出できることが期待できます。

このように、DX化は人による手動の作業に比べて、正確かつ効率的に業務を行うことにつながります。

業務の属人化を防止できる

企業において、業務が特定の担当者にしかできないという状況は好ましくありません。

特定の担当者にしか業務ができないと、その担当者が不在の際に、必要なデータやマニュアルなどの資料を探し出すのに非常に時間がかかります。

当該担当者が自身のパソコンでのみデータや資料を管理している場合、必要な情報を探し出すこと自体ができない場合もあるでしょう。

DX化によって業務に必要なデータがデジタル化され、クラウド上で一元的に管理されれば、誰もが自由にデータにアクセスし、業務を行えます。

このように、DX化を進めることは業務の属人化の防止につながることが期待できるでしょう。

ペーパーレス化を促進できる

DX化を進めることは、各データがデジタル化されていくということです。
デジタル化が進めば、文書を紙で保管することが減り、パソコン上やクラウド上で電子データとして保管することが多くなるでしょう。いわゆるペーパーレス化が進むことが期待できます。

ペーパーレス化によって、企業に以下のようなメリットが生まれると考えられます。

  • 紙やインクの消費減少や、印刷機器のメンテナンス費用のカットによるコスト削減

  • 大量の文書を保管するための物理的スペースの削減

  • オンライン上で文書を回覧・送信できることによる承認作業の効率化

  • 環境保護やSDGsに取り組んでいると認識されることによる企業イメージの向上

文書をデータで保管することに対し、システム障害などによって文書が閲覧できなくなったり、文書が破損・紛失したりするのではないかと危惧されることもあるでしょう。

しかし、データ化された文書はクラウド上でバックアップを取っていれば、復元することが可能です。

災害などにより物理的に破損・消失する可能性のある紙での保管と比べると、データでの保管はより安全と言えるでしょう。

労務においてDX化を進める際の課題点とは

労務におけるDX化には、多くのメリットがあります。

それでは、労務におけるDX化の課題点にはどのようなものがあるのでしょうか。以下で3つに分けて説明します。

既存のデータをまとめる手間がかかる

DX化を進める際は、従業員に関するデータや社内ルールに関する文書など、社内にある既存のデータを集約し、まとめ直す必要があります。

同一分野に関するデータやファイルが社内の異なる部署に点在している場合や、電子化された文書と紙の文書が混在していたりする場合もあるでしょう。

データや文書を集約する際は、まず優先度の高いものがどの部署にどのような状態で保管されているかを把握し、取りまとめます。
その上で、情報管理に関する社内ルールを規定することが大切です。

既存のデータやファイルは、一度正しく整理して取りまとめることができれば、その後は次々に蓄積していきます。DX化により、蓄積したデータが従来よりも整理しやすく、業務に活用しやすくなることが期待できます。

既存システムから新システムへの移行が困難な場合がある

固定のシステムを長年使い続けている大企業などでは、現行のシステムから新しいシステムへ移行することが難しい場合があります。

長年使い続けているシステムは、大半の従業員が使い慣れているものです。

そのため、DX化のために必要とは言え、まったく別の新しいシステムを導入することに従業員が抵抗を感じる場合もあるでしょう。

システムの移行に関して従業員が不安や不信感を抱えることがないよう、システム移行によるメリットや、使い方に困ったときのサポート体制について十分に説明することが大切です。

従業員に周知し、馴染むまでに時間がかかる

DX化は、人事や労務の担当者のみではなく、企業全体規模で行われるべきものです。そのため、DX化を行うことを早い段階で従業員に周知する必要があります。

その際には、以下のような内容を丁寧に説明することが重要です。

  • DXを推進する目的

  • DX化によって企業として何を目指すか

  • DX化によってどのようなメリットがあり、どのように従業員に還元されるか

  • 具体的に従業員の業務にどのような影響があるか

表面的にはDX化を進められたとしても、それぞれの取り組みが形骸化してしまった場合、DX本来のメリットを発揮することができません。

DX化における自社の目的を達成するためには、DX化に対する従業員の理解と積極的な姿勢が重要です。DX化を進める際は、従業員への周知を早い段階で丁寧に行うことが大切です。

労務においてDX化を成功させるポイント

労務においてDX化を進めることは、さまざまなメリットがあると同時に、乗り越えるべき課題点もあります。

それでは、課題点を解決し、DX化を成功させるには、どのような点に留意すれば良いのでしょうか。

以下で3点に分けて説明します。

目的に合わせて段階的に進める

DX化を進めると決めたら、まずはDX化の目的を明確にします。

目的によって、導入するシステムのタイプや取り組むべき施策が異なるためです。DX化によって目指す自社の姿をはっきりさせ、社内で共有することが大切です。

目的が明確になったら、段階的にDX化を進めます。

DX化は小さな段階を踏みながら、徐々に進めることが成功のポイントです。一気にDX化を進めたいからといって、社内ルールを一斉に変更したり、社内ツールをすべて新しいものに入れ替えたりするのはあまり良くありません。従業員の負担が大きくなり、業務上の混乱も生じかねないでしょう。

DX化は、従業員同士のコミュニケーションツールとしてチャットシステムを導入してみるなど、小さなステップから段階的に進めていくことが大切です。

既存の業務内容やフローを精査する

労務の仕事は、勤怠管理や安全衛生管理など、業務範囲が非常に幅広いものです。そのため、それぞれの業務の課題を解決できるよう、DX化を進めることが大切です。

まずは、労務の業務フローや具体的な業務内容を洗い出し、各業務における現時点での課題を認識することが大切です。各業務で使用しているシステムやツール、文書やファイルの保管方法なども確認します。

業務内容やフローの洗い出しを行ったら、不要な作業や時間短縮が可能な作業がないかを確認しましょう。また、新しく導入するツールは、どのような機能が搭載されているものが良いかという点も、この棚卸しの作業で見えてきやすくなるでしょう。

扱いやすいITツールを選ぶ

現在、労務管理システムを始めとして、DX化に役立つITツールが各社から多数提供されています。

各ツールは、それぞれ特化している機能や料金が異なります。たとえば、同じ労務管理システムでも、運用内容を自由にカスタマイズできるものと、あらかじめ標準的な機能を一通り搭載したものとがあります。

「自社の方針に合わせて、運用内容や項目を自由に組み合わせたい」と考える場合は、ある程度自由に運用内容を設定できるシステムが良いでしょう。

一方、「DX化について詳しい従業員がいないため、どのように内容を設定すれば良いか分からない」といった場合は、あらかじめ標準的な運用機能が搭載されているシステムを、そのまま使用するのが良いと考えられます。

また、機能の充実度に加えて、操作性の良さも重要です。

ITツールは人事や労務の担当者以外に、従業員が直接入力を行う場合もあります。DX化を進める際は、人事や労務の担当者はもちろん、初めてシステムに触れる従業員でも感覚的に操作できる扱いやすいツールを選んで導入することが重要です。

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※ITreviewカテゴリーレポート「労務管理部門」(2022Fall)

まとめ

DXは、ただ業務のあらゆる箇所をデジタル化するだけではなく、各分野のデジタル化により事業そのもの、ひいては社会全体のビジネスモデルそのものを変えていくものです。

労務は業務範囲が非常に広いため、DXを見据えたデジタル化を進めることにより、業務全体の大きな効率化が期待できるでしょう。

社内でDXを進める際は円滑に移行が進むよう、事前に従業員への周知や説明を十分に行い、理解を得ることが大切です。

その上で、業務の棚卸しや精査を丁寧に行い、自社の事業方針に合った使いやすいシステムを導入するなどの点に留意しながら進めていくことが大切です。

HR大学編集部
HR大学 編集部

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