#労務管理
2024/08/06

人事と労務の違いとは?具体的な業務内容や必要なスキルについて解説

目次

企業にとって「人」「物」「金」「情報」は大切な資源です。

その中でも最も重要とされている「人」に関する業務を主に行うのが人事と労務です。

人事と労務は、従業員が安心して働くために欠かせない、企業の根幹とも言える業務を担っています。

一方で、人事と労務は、業務内容の違いが分かりづらい分野でもあります。

人事と労務の業務とは、それぞれどのようなものなのか、その違いとは、人事と労務の具体的な業務内容やその違い、業務に必要なスキルについて確認してみましょう。

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人事と労務の違いとは

人事と労務の業務には、どのような違いがあるのでしょうか。

まず、人事は人材の採用や教育、人事評価など、従業員もしくは求人への応募者に直接対応する業務を多く行い、人材を直接的に管理する仕事と言えます。

企業にとって人材は、事業を動かし、成長させるために欠かせない存在です。

つまり人事は、自社の事業方針を基に人材を採用・教育し、最大のパフォーマンスが発揮できるようサポートする分野です。

一方の労務は、給与計算や社内の安全・衛生管理など、従業員に関連する事務手続きや環境の整備を行います。

言い換えれば、従業員が働きやすい環境づくりをすることが労務の仕事です。

採用面接や研修などで応募者や従業員と直接関わることの多い人事と比較すると、労務は裏方の業務が多くなります。

しかし、労務の仕事によって正確に給与が支払われたり、安全・衛生管理が行われたりすることにより、従業員は安心して働くことができるのです。

また、労働時間やハラスメントなどに関するトラブルに対応するのも労務の仕事です。

企業の健全な運営のためにも、労務の仕事は欠かせません。

人事と労務はどちらも根本に、従業員をサポートすることによって社内を活性化させ、生産性を向上させるという目的があります。

しかし、人事管理は従業員ひとりひとりに対して、労務管理は組織全体に対して行うという違いがあるのです。

人事の主な業務内容とは

人事の業務は、従業員の能力を活かせる仕組みづくりを行う大切なものです。

人事の具体的な業務内容を4つに分けて確認してみましょう。

人事の主な業務内容

  • 人材の採用

  • 人事配置

  • 人材育成

  • 人事評価制度の策定

人材の採用

企業が自社の事業目標を達成するためには、戦力となる人材が必要です。

その戦力となる「人材の採用」は、人事の大切な業務の1つです。

必要な人材を確保するために、人事部では経営計画に沿って年間の採用計画を作成します。

採用は、年単位の業務となるため、長期的な視野が必要になるでしょう。

採用には、大学などを卒業する人を対象とした「新卒採用」と、社会人などを対象とした「中途採用」とがあります。

新卒採用は、毎年ほぼ同時期に行われます。

他社との競争になりがちなため、新卒採用に関しては綿密な計画を立て、学生に対して自社のPRを丁寧に行うことが大切です。

中途採用は、不定期で行われます。

中途採用では、自社の必要とする人材と応募者の経験やキャリア志向とを十分に照らし合わせることが求められます。

そのため、現場でどのような人材が必要とされているのかを、採用担当者が把握することが大切です。

必要な人物像を具体的にイメージできるよう、経営側や各部署の責任者に話を聞いてみるなどすると良いでしょう。

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人事配置

「人事配置」とは、従業員ひとりひとりを各部署へ配置することを指します。

人事配置は、新しく従業員が入社した際はもちろん、既存の従業員の昇進や異動があった際にも行われます。

また、社外への出向や転籍なども人事配置に含まれます。

人事配置の主な目的は、業務を活性化させ、事業目標を達成することです。

加えて、事業上の目的とは別に、個人の強みやキャリア志向など、従業員ひとりひとりの特性に合わせた配置をすることも大切です。

そして、従業員の事情や組織内のバランスも考慮する必要があります。

適切な人事配置のためには、普段から従業員の人材管理を丁寧に行うことが求められます。

人材管理を丁寧に行うことで、従業員の持つスキルや経験を十分に管理できます。

従業員ひとりひとりが持つ強みを把握することで、組織のパフォーマンスと従業員のモチベーションの双方が向上する人事配置を行えると言えるでしょう。

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人材育成

従業員の能力を伸ばすための「人材育成」を行うことも、人事の業務です。

人材育成の代表的なものとして、社内研修があげられます。

社内研修は、従業員のコンプライアンス意識やスキルの向上を目的に行われます。

人事では、それぞれの研修の実施後に研修の内容や流れを振り返り、今後の改善に活かしていくことが大切です。

社内研修の大きなものには、新入社員に対する「新人研修」があります。

新人研修では、自社の企業理念や経営方針をはじめ、具体的な業務の内容やそれに必要な知識やノウハウなどを伝えます。

また、社会人として身に着けるべきビジネスマナーなどについても指導します。

社内研修には他に、管理職に就いている従業員や、新しく管理職に就いた従業員を対象とした「マネジメント研修」もあります。マネジメント研修では、​​担当部署の目標設定や業績の分析方法などを学びます。

また、マネジメントにおいて重要な、部下の業務量の配分方法についても指導します。

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人事評価制度の策定

評価制度を策定し、「人事評価」をいつ、どのような基準や方法で行うかを定めることも、人事の業務にあたります。

人事評価の結果によって、給与や賞与が決まる場合も多いため、人事評価は従業員のモチベーションや働きがいに大きく影響します。

正当な評価を受けられていないと感じれば、従業員に不満が生まれ、人材の流出に繋がる可能性もあるでしょう。

そのため、人事評価制度は上司の主観に影響されない、従業員の納得感を得られる内容であることが大切です。

人事においては、従業員を評価するポイントやプロセスを明確に定め、評価者が誰であっても影響のない統一化されたシステムを構築することが求められます。

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労務の主な業務内容とは

労務は、従業員が安全に働ける環境を守る仕事であり、業務内容は多岐に渡ります。

労務の具体的な業務内容を5つに分けて確認してみましょう。

労務の主な業務内容

  • 就業規則の作成と管理

  • 勤怠管理

  • 給与計算

  • 安全・衛生管理

  • 労務トラブルへの対応

就業規則の作成と管理

労働時間や休憩時間、休暇や給料など、企業で従業員が働く上ではルールが必要です。

こうした「就業規則の作成と管理」は労務が担当する業務の1つです。

就業規則は、自社にとって都合の良いように決められるものではなく、法律に則って作成しなければいけません。

また、就業規則は経営方針や法律の改正などにより、変更が必要になる場合があります。

就業規則が変更された場合は、書面やメールなどで知らせたり、目につきやすい場所に貼り紙をしたりして、従業員に周知しましょう。

さらに、就業規則の変更によって、従業員が不利益を被ることがないよう留意することが大切です。

特に、給料の減額などの変更は、従業員の生活に大きく影響するものです。

就業規則の変更によって給料が減額となる際は、従業員の合意を得ることが必要となります。

勤怠管理

従業員の「勤怠管理」も、労務の重要な業務の1つです。

具体的には従業員の、出社時刻と退勤時刻、休憩時間、時間外労働時間などを把握することが勤怠管理業務にあたります。

また、有給休暇の取得状況や休日出勤の有無を管理することも重要です。

出退勤や休暇の処理をすることで、適切な賃金の支払いをすることが可能になります。

例えば、長時間労働や過剰な残業などは、場合によっては法令に違反する場合があります。

正確な勤怠管理を行うことにより、従業員の過重労働に気付きやすくなり、法的リスクを下げられることが期待できます。

また、法的リスク以外に、適切な時間内で働くことは従業員の健康保持にも繋がるでしょう。

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給与計算

従業員の「給与計算」は、労務の中でも特に重要な業務です。

毎月、規定で定められた日に、正確な金額の給与が支払われることによって、従業員は安定した生活を営んでいくことができます。

そのため、給与支払いの遅延や金額の間違いなどは、あってはならないことです。

給与には、基本給と呼ばれるベースの金額の他に、通勤手当や家族手当、時間外手当などが加えられる場合があります。

さらに、その金額から社会保険料や所得税、住民税を控除した額が従業員へ支給されます。

手当や控除額などは、従業員ひとりひとりで異なるため、緻密な計算の上で正確な金額を算出することが求められます。

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安全・衛生管理

従業員の身体的・精神的な「安全・衛生管理」を行うことも労務の業務にあたります。

具体的な業務の1つに、定期的な「健康診断」の実施があります。

健康診断は従業員を雇用したタイミングの他、年に1回以上実施する必要があります。

労務では、健康診断の手配や結果の管理、結果に異常が見られた場合の手続きなどを行います。

また、近年では従業員のメンタルヘルスを維持するために、「ストレスチェック」を実施することも必要です。

ストレスチェックの結果によっては、産業医と面談を行うためのスケジュール調整などをする必要があります。

さらに、建設業や運送業などの「安全・衛生」に関して厳しい業種では、その他の業種よりも厳しく法律で定められていることがあります。

そうした業種の労務においては、特に注意深く、必要な診断や処置を行うことが大切です。

そして、精神的な安全管理として、「労働災害の防止」や「ハラスメントの防止」をする対策を行うことも大切です。

近年では、従来よく知られてきたセクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントに加え、マタニティー・ハラスメントやモラル・ハラスメントなど、ハラスメントの種類が増えています。

労務では、各ハラスメントを発生させない環境づくりや、万が一ハラスメントが発生した場合に従業員の相談窓口となるような制度を設計することが求められます。

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労務トラブルへの対応

社内で労務に関するトラブルが起きた際の「労務トラブルへの対応」も、労務の業務の1つです。

具体的な労務トラブルには、パワハラやセクハラなどの各種ハラスメント、賃金に関するトラブル、対人関係に関するトラブルなどがあります。

労務トラブルは、トラブルの当事者だけではなく、周囲の従業員のモチベーションも低下させたり、社内の雰囲気を悪化させたりするなど、悪影響をもたらします。

労務トラブルへの対処は非常に難しいですが、社内環境を良好に保つためにも、スピーディーかつ丁寧に対応することが大切です。

また、労務トラブルに対して素早く適切な対応ができれば、従業員の自社への信頼感が増すと考えられます。

ひいては、従業員エンゲージメントが向上し、離職率の低下に繋がることが期待できるでしょう。

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人事・労務担当者に共通して必要なスキル

人事、労務は共に、従業員が安心して働き、その能力を発揮できる環境を作るために重要な業務を担います。

人事、労務業務に従事する場合、どのようなスキルが求められるのか、4つに分けて確認してみましょう。

人事・労務担当者に必要なスキル

  • コミュニケーションスキル

  • 正確な法律知識

  • 正確な業務遂行能力

  • 徹底した秘密保持の姿勢

コミュニケーションスキル

人事や労務の担当者には、経営陣や一般従業員など、どのような立場の人にも円滑に対応ができる「コミュニケーションスキル」が求められます。

例えば、人事では、就活生や求職者に向けて企業説明会を開くことがあります。

また、採用面接の場では、学生や応募者と対話をする機会が多くあります。

人事の中でも、特に採用担当者には、自社の魅力を分かりやすく伝え、相手とスムーズなやり取りができる柔軟なコミュニケーション能力が必要と言えます。

労務では、賃金トラブルやハラスメントなどの労務トラブルが起こった場合に、当事者への対応をする機会があります。

当事者から丁寧に話を聞いた上で、相手が伝えたいことを正確に汲み取り、分かりやすい説明や回答をする必要があります。

このように、あらゆる場面で、柔軟かつ親切な対応ができるコミュニケーションスキルが、人事や労務の担当者には必要です。

正確な法律知識

人事や労務の業務は、法律に関わることが多いため、「正確な法律知識」が必要です。

具体的には労働基準法や労働組合法、男女雇用機会均等法、職業安定法などが挙げられます。

担当者が法律を正確に把握していない場合、従業員に法令の基準を超えた長時間労働をさせてしまうなどの状況が起きる可能性があります。

場合によっては、従業員の心身の健康を損ねることに繋がりかねません。

また、労務トラブルになり、自社の信用や従業員のモチベーションを低下させることに繋がる場合もあるでしょう。

そのような事態を避け、従業員の誰もが法律に則って働ける環境を作るためにも、人事や労務の担当者は、正確な法律の知識を持つことが必要です。

正確な業務遂行能力

人事や労務業務の業務では、細かな計算などの事務作業をすることが多くあります。

そのため、「正確な業務遂行能力」が必要です。

たとえば、労務での給与計算や社会保険の手続きなどで、ミスは許されません。

給料や社会保険料に少しでも間違いがあれば、追加の支払い金額や、差し引き金額を調整する手続きが必要になります。

また、金額の調整だけではなく、従業員からの自社への信用を失うリスクもあるでしょう。

正確な作業を行うためには、担当者がスケジュールを適切に管理し、時間的余裕を持って業務にあたることが大切です。

毎回のダブルチェック、トリプルチェックなどの作業は手間がかかるものではありますが、ミスをなくすためにも怠ることなく毎回行いましょう。

徹底した秘密保持の姿勢

人事や労務の業務では、自社や個別の従業員に関する重要な情報を扱う機会が多くあります。

そのため、人事や労務の担当者には、情報を漏らさず守るという、「徹底した秘密保持の姿勢」が求められます。

たとえば人事では、従業員ひとりひとりの家族構成やマイナンバーなどの個人情報を取り扱うことが多くなります。

そして労務では、ハラスメントなどの個人が抱えている労務トラブルの情報を知り得る機会があります。

担当者が、他の従業員の個人情報を同僚などに漏らしてしまった場合、当事者である従業員からの信頼を失うことに繋がるでしょう。

どんなに親しい同僚や上司であっても、他の従業員に関する情報は一切漏らさないことを徹底する姿勢が大切です。

また、業務上知り得た情報は、あらかじめ決めたルールに準じて取り扱うことが大切です。

人事労務の業務を正確かつ効率的に運用する方法

人事と労務は共に、従業員に関する業務を行うため、一見ほぼ同じ仕事を行っているように見えがちです。

しかし、人事は「個別の従業員に対する業務」を、労務は「従業員全体を対象にした業務」を行うという明確な違いがあります。

それぞれ業務の対象こそ異なりますが、人事と労務とは自社の根幹を支える重要な分野です。

自社にとって重要な業務を担うからこそ、正確な法律知識を持った上で、間違いのないように正確に業務を遂行する能力が求められます。

各種手続きといった業務から、従業員データの管理、就業環境の整備など、幅広い業務を、正確かつスピーディーに行うために、また、人事や労務の担当者の工数軽減のために、人事DXや労務DXを実施してみるのもおすすめです。

人事業務の効率化のための「人事DX」

IT技術の革新的な進化や、テレワークなどの働き方改革によって、人事領域のDX化は企業が対応すべき施策として注目されています。

また、人事業務の中でも多くの工数を必要とする、オペレーション業務をシステム化することで、人事担当者の作業工数を削減し、戦略人事としての業務に集中することが可能になります。

【成功事例付き】ゼロから始める!人事DXガイド

▼「人事DX」についてさらに詳しく
人事DX(HRDX)とは?人事部門のDX推進方法や成功事例

▼「戦略人事」についてさらに詳しく
戦略人事とは?人事戦略との違いや経営戦略を実現するための役割について解説

労務の作業効率化のための「労務DX」

労務管理は会社の人の働きを管理する重要な業務です。

各種手続きから、就業環境の整備など、幅広い業務の中でも、「入退社の手続き」「人材管理」「社会保険の手続き」などの手続きを、システム化し効率的に労務管理を行うことは、労務の効率化を考える際には、大切な施策になります。

効率的な労務管理を実現するために

▼「労務DX」についてさらに詳しく
労務のDXとは?DX化のメリットや課題点について解説

HR大学編集部
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