全社を巻き込むサーベイ運用。各部門が主体となって進める組織改善の仕組みとは
三谷産業株式会社 執行役員 人事本部長
佐藤 正裕 様
- 卸売・小売業
- 1001名~
- 従業員エンゲージメントを向上させたい
- 組織の課題把握・分析がしたい
- 組織診断サーベイ
- タレントマネジメント
- 人事評価
HRBrain導入開始:2019年05月01日
全社を巻き込むサーベイ運用。各部門が主体となって進める組織改善の仕組みとは
- 課題背景
- 以前実施していたサーベイには、実施スパンの長さや、集計がリアルタイムでできないことに課題を感じていた
- 「良い会社であり続けるための非財務的経営目標」を設定するため、新しいプロジェクトがスタートした
- 打ち手
- EX Intelligenceで、組織に対する「実態」の調査と「ありたい姿」とのギャップを把握する
- サーベイの分析は、各部門が主体的に行う
- 効果
- リアルタイムで状況を把握し、改善活動につなげることが可能になった
- 人事だけでなく、各部門が主体となって自律的に回していく仕組みづくりができた
三谷産業株式会社の人事本部長 佐藤正裕様に、HRBrainの組織診断サーベイ EX Intelligence(以下、「EX Intelligence」(※1))導入の経緯、HRBrainと掛け合わせた具体的な活用方法、おすすめポイントを伺いました。
三谷産業様には2019年より、タレントマネジメントのHRBrainをご利用いただいていますが、今回はEX Intelligenceに焦点を当ててお話を伺いました。
ー貴社の事業内容を教えてください。
当社は1928年に創業し、石炭の卸売からスタートしました。
事業活動・企業形態を一言で表現するなら「商社とメーカーの複合体」となります。
商社としては、首都圏・北陸地区・ベトナムの3拠点を持ち、世界を結びつけ「お客様の必要なものを必要なときに、必要なだけ、必要な形で、必要な場所にお届けすること」を目指しています。
また要望を満たすものが世のなかに存在しない場合は、投資をして工場を建設し、自らがメーカーとしてものづくりまでおこないます。
現在は、空調設備工事、情報システム、樹脂エレクトロニクス、化学品、住宅設備機器、エネルギーの6つの事業を展開し、お客様が真に必要とする製品やサービス、またそれらを組み合わせた価値を提供しています。
従業員数は連結で3,545名 、単体で586名です。(2023年3月末時点)
ー佐藤様のご経歴を教えてください。
1988年4月、三谷産業株式会社に入社し、住宅設備機器セグメント営業を担当しました。2001年6月に人事部へ異動し、以降22年間にわたって人事を経験。2018年4月、執行役員人事本部長に就任しました。
「実態」の調査だけでなく、「ありたい姿」とのギャップを数値で把握できることが導入の決め手
ーEX Intelligence導入の経緯について教えてください。
過去に3回組織診断サーベイを実施しましたが、改善プログラムをうまく進めることが難しく、結局中断せざるを得ませんでした。主な原因は、システムと制度の複雑さ、および運営サイクルの長さにより、人事部門の人員が追いつかずに疲弊してしまったことでした。この経験から、組織の健全な状態を定期的に評価し、問題や課題を抽出して改善する仕組みの重要性を痛感し、新しいシステム導入の検討を進めていました。
ちょうどその頃、社長を中心に「Company Well-being Index」という「持続的な良い企業運営のための非財務的な経営目標設定」プロジェクトが始まり、その中で「社員エンゲージメントスコア」が重要な目標項目として注目されました。このタイミングで、「エンゲージメント」要素を取り入れた新しい組織診断サーベイのシステム導入に向けて進展していくことになりました。
ー他システムと比べ、EX Intelligenceで印象に残っていることを教えてください。
EX Intelligenceは、組織の「実態」だけでなく、「ありたい姿」とのギャップを数値で評価できる点が非常に印象的でユニークでした。 さらに、以下の3つの魅力的な要素があります。 まず、設問を柔軟にカスタマイズできる点、課題の規模や優先順位を定量的に評価できる点、部署、役職、年齢などの軸ごとにデータを分析できる点です。
特に設問項目は、「組織が…」や「上司が…」といった主語を持つ質問ばかりで、当社では「自分がどうなっていたいのか」「自分はどうすべきなのか」といった質問をカスタマイズしたいと考えていました。 EX Intelligenceの柔軟な設問カスタマイズ機能により、これらの質問を簡単に組み込むことができました。 これにより、各部門でもデータの結果が理解しやすくなりました。
他社のサービスも試用しましたが、EX Intelligenceは特に高品質で、他のサービスと比較しても印象的であったため、我々はEX Intelligenceの導入を決定しました。
サーベイ結果をもとに、1on1によるコミュニケーションを強化
ーサーベイの結果について教えてください。
第1回アンケートのEXスコア®︎(※2)と第2回アンケートのスコアを比較すると、前回から3.3ポイント上昇しました。
前回との増減、差分を注視していくことが重要ですが、とはいえスコアに一喜一憂するのではなく、定点観測をすることが重要です。
前回から大きなギャップがあった「協働関係」「キャリア」「職の魅力」スコアの変化については、取締役会や決算説明会、株主総会でも公表しております。
ちなみに社員のアンケート回答期間は約2週間に設定し、社員の協力もあって回答率はほぼ100%という結果になりました。
分析も並行しておこなわれるため、回答期間終了と同時にEXスコア®︎やギャップを確認することができます。
リアルタイムで状況を把握し、改善活動につなげることが可能になりました。
ーサーベイのスコアが上昇したことに寄与したと考えられる施策について詳しく教えてください。
当社では2021年から、HRBrainで1on1の実施をおこなっています。
はじめての取り組みだったため、当初課長は勝手がわからず、部下に対して業績管理の延長線上で仕事の話をしてしまうことが多くありました。
そこで、もっと気軽かつ手軽にできるポジティブアクションを取り入れようと、社長のアドバイスのもと、課長として課員に対するポジティブなアクション(例えば、褒める・話を最後まで聞く等)という具体的な行動に落とし込みました。
そこで課長の行動を改善するヒントを一覧表にして配布するなど、人事としてサポートしました。
1on1については、社内のシステムに「こういう会話でこんな内容が引き出せました」という会話集や成功事例を定期的にアップしています。
また、メンター制度をとおして若手の課長から話を聞く機会があったときに、「1on1を実施してから部下との会話が増えた」「褒めることで、話しづらいと感じていた部下との関係が改善された」「プライベートな話題にも触れることができた」という話を聞くこともできました。
課長が部下に関心を示し、意識的に声かけをすることで、豊かなコミュニケーションが生まれます。
こうした1on1におけるポジティブアクションの取り組みが、サーベイのスコア改善にも繋がっている実感があります。
人事だけでなく、各部門が主体となって自律的に回していく仕組みづくり
ーサーベイ実施の際に気をつけていることはなんですか。
気をつけていることは2つあります。
ひとつは「実施時期」、もうひとつは「仕組みに多少の強制力を持たせること」です。
まずひとつ目の実施時期ですが、当社ではサーベイを5月と11月に実施しています。
年度末など従業員が忙しい時期の実施は避けて、心理的に落ち着くタイミングでスコアを計測するようにしています。
5月にサーベイを実施し、1か月を目安にアクションプランを練り、施策を打ち出します。その結果を11月に測定するという流れです。
もうひとつは、サーベイで得られた結果を自ら分析することや、それに関連するポジティブアクションに多少の強制力を持たせる仕組みづくりを意識しました。
当社では、6か月間を1サイクルとし、アンケート回答(2週間)、集計・分析(2週間)、フィードバック・改善活動計画(1か月)、そして施策実行(4か月)のPDCAサイクルは、人事本部がリズムを刻みながら現場と連携しています。
サーベイ結果を受けて、人事側から部門長に「取り組み状況を共有してください」と求めたところ「具体的になにをすればいいのかあらためて聞かせてほしい」と問い合わせがあり、別途説明会を設けることになりました。
また、執行役員の集まる経営会議のなかで30分ほど、社長からサーベイ結果に関して各部門に改善案を問いかけるシーンがありました。
当社では経営会議の議事録をオープンにしているため、執行役員に「発言に責任を持って取り組まなくては」という意識が深く根づいています。
この件で、人事部主導ではなく「トップダウンでサーベイに取り組む」という会社としての姿勢が明確になりました。
以後は会社全体としてモニタリングに取り組んでいく予定です。
当初は人事部がサーベイのデータを分析し、各部門ごとのデータやサマライズを出そうとしていたのですが、トップダウンで働きかけた結果、部門長に分析を任せることができました。
人事の人手には限界があるため、各部門が主体となって自律的に回していく仕組みができたことは、よかったと感じています。
サーベイの取り組みも仕組み化することで、人事の負担を減らしつつ、全社を巻き込んでの実施ができるようになると考えています。
ー組織改善にお悩みの他社のご担当者様に、アドバイスがあればお伺いさせてください。
組織の「実態(実感)」を調査するツールは多々ありますが、EX Intelligenceは「ありたい姿(期待)」も同時にアンケートするため、期待と実感のギャップを数値化できる点が他社のサービスにはない特長です。
素早く優先順位を定量的に把握し、改善に向けた施策の実行とその効果を測るためのアンケートを繰り返していくPDCAサイクルを、どれだけスムーズに回すかが鍵となると考えています。
※掲載内容は、記事公開の2023年9月時点のものです。