業界の働き方を変える!ティール組織を目指し1on1を活用

業界の働き方を変える!ティール組織を目指し1on1を活用

合同会社syuz’gen トルネーダー

植松 侑子 様

  • コンサルティング
  • 1~50名
  • 人事評価や目標管理の運用を効率化したい

    HRBrain導入開始:2019年07月01日

    業界の働き方を変える!ティール組織を目指し1on1を活用

    • 課題背景
      • 1on1ミーティングの質に個人差があった
      • ティール組織の確立を実現したい
    • 打ち手
      • 1on1のログ管理とOKR両方に対応したHRBrainを導入
    • 効果
      • 目標管理によりメンバーと会社のコミュニケーションが可視化された
      • 1on1ミーティングが効率化された

    ――まず、御社がどのような会社なのか、ご説明をお願いします。

    植松さま: syuz’gen(シュツゲン)は、舞台芸術業界のコンサルティング(企画・制作)から現場の運営までを行う会社です。行政機関や民間企業やアーティスト個人など、いろいろな人や組織と一緒に、彼らが実現したい事業を一緒に実現していくために必要なすべてのことをワンストップでやるというのが事業内容ですね。 エンターテインメントやアートの業界って、労働環境が整備されていないところが非常に多いんです。やりがい搾取もしばしば起こり、かなりブラックな働き方をしている人がたくさんいます。そういう状況を変えたいと、最初にNPO法人Explatを立ち上げました。

    エンターテインメントやアートのマネジメントを生業とする人たちが、それを生涯の仕事として働き続けられる労働環境を実現するために、労働環境の実態を調査したり、セミナーや人材育成のプログラム、インターンシップの学生に向けた合同説明会を開催したり。

    業界の中では、まだそういうことにきちんと注力するリソースがなかったので、立ち上がったときは結構注目されました。いろんな事業を立ち上げて、いわゆるPDCAを回していたのですが、1年半くらいたったときに、「あれ、これ限界があるな」ということに思い至りました。

    中間支援組織としてNPOを立ち上げたので、労働環境の実態調査や講座の提供をしても、導入してくれる組織や、それを見て実践・変革してくれる組織がいないと、結局は理想的な労働環境の実現ができないという壁にぶち当たって。このままだと現場は100年かかっても変わらないな、と。

    だったら、自分たちが思う働き方を実現する場所を自分たちでつくろうと思いました。NPOで持った問題意識をもとに、この業界で自分たちが目指すような働き方を実現している組織がここにありますよというのを形にしようと思って、営利法人の『合同会社syuz’gen(シュツゲン)』という組織をつくりました。

    ――ありがとうございます。植松さまの肩書きは、代表でよろしいのでしょうか。

    植松さま: はい。でも、ヒエラルキーのない組織をつくりたくて、名刺にはあえて代表とは書いていません。

    ――対外的にご自分の役割を伝える必要がある場合にはどんな風におっしゃるのでしょう?

    植松さま: この組織のリーダーであるという言い方もしますが、名刺にもあるように『トルネーダー』と名乗っています。(※植松さまの名刺の肩書きには、「トルネーダー/森づくり/スナフキン」と書かれています) いろいろな案件の相談内容に対して、「誰をどういうふうに巻き込んでいくか」を設計する人という意味でトルネーダーと名付けました。もちろん、実務の部分や現場ではスタッフに任せているところも多いですが、最初の位置、先頭で『巻き込むことを設計する係』っていう感じですね。

    ――不勉強で申し訳ないのですが、『トルネーダー』とは舞台芸術用語に由来している言葉なのでしょうか?

    植松さま: 特に舞台芸術用語ではないです(笑)、自分でつくりました。

    弊社はみんな、自分がつくった、ここにしかないオンリーワンの肩書を名刺に入れています。何をやるかではなく、「こういう人でありたい」というビジョンを肩書として入れていると言えば分かりやすいでしょうか。

    ――面白いですね。植松様は昔から舞台芸術にかかわっていらっしゃったのでしょうか。

    植松さま: もともとは大学で舞踊学を専攻していました。舞台芸術を裏側でマネジメントして、観客に届けていく仕事があることを知って、なんて素敵な職業だろうと思って、大学卒業してこの業界に入ったら、漆より漆黒、ブラックな業界の洗礼を受けたって感じです。(笑)

    ――なるほど(笑)御社は今、何名ぐらいの組織ですか?

    植松さま: 今は社員が10名、インターンが3名です。

    ――今後、どれくらいの規模になっていくという目標はありますか?

    植松さま: はい、目標としている人数は100人です。今は10人規模ですが、この10が30を目指す上での10なのか、100を目指す上での10なのか、いつも意識するようにしています。

    100人の組織と10人の組織を比べると、何かを考えたり導入したりするときのやり方が全く違いますよね。30人でも違うし、100人ならさらに違って当たり前。何をやるにしても「100人になっても通用するやり方かどうか」は常に考えておかないといけない。

    100人の目標はスタッフ全員に共有しています。なので、みんなも同じように「100人になるときには」という考えを持ちながらやってくれているんじゃないかと思います。

    100人の組織なら1人を99人で支えることができる

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    ――100人規模を目指す上では色々な障壁がありますよね。100人だけではなく、30名の壁、50名の壁もありますけど、そこをどう乗り越えるかというのが100名を目指すすべての企業の課題だと思います。御社が100名という目標を掲げるに至った経緯をお伺いしたいです。

    植松さま: 最初は全然100人なんて思っていませんでした。このオフィスに移転する前に借りていた事務所が、10人入ればパツパツのところでしたから、7、8人ぐらいでやれればいいかな、くらいの考えでしたね。

    でも、実際に事業を回していくと、労働環境をきちんと整備していくには数が必要だという考えに至りました。

    例えば、社員の1人が産休で抜けることになったとき。10人の組織なら、1人が抜けた穴を残り9人で埋めることになりますが、100人の組織なら99人でカバーすることができます。

    産休だけでなく、予期せぬこと、予期できることも含めて、人にはいろんなライフイベントがあります。それを会社のなかで受け止めていくためには、どうしても母数が重要だなと。

    「誰に何が起きたとしても大丈夫、みんながサポートに入れますよ」という状態をつくらないと、安心・安全な環境はできない。

    誰かに遠慮して無理をしてしまう、自分が休むと誰かに迷惑かけるからやめよう、というような、『空気を読み合う』ことをしたくないんです。それをしなくて済むための数字が100ではないか、と。そう思ったのが目標を掲げるに至った経緯ですね。

    ――目指す働き方を実現するために会社を設立して、それが成り立つような環境にしていくための1つの基準が100ということですね。

    業界初のティール組織の確立を目指して

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    植松さま: そうですね。まず、この業界でティール組織をつくってみたいというのが第一です。NPO法人をやっていた頃はまだ『ティール』という言葉を知らなくて、『ティール組織』という本を読んだ時に、「これだ」と思いました。

    でも今、この業界で、既存の組織に「ティール組織にしませんか」と言っても、多分誰も理解できない。特に、すでに出来上がっている組織からティールに移行するのは難しいな、と本を読めば読むほど思いました。

    ならば、自分が立ち上げる組織は最初からティール組織を目指せばいい。キーワードとして「ティール組織」というのは、新しくチームに入ってくるスタッフにも必ず共有しています。

    『ティール組織』がHR的に流行した時期がありましたけど、取り入れるのが難しくてやめてしまった人や組織もかなりいますよね。私たちも、実践してみて、本当に大変だなと身をもって実感しています。ティールじゃなくて普通の組織でいいんじゃないかな……という考えが頭をよぎった瞬間も何度もありました。

    でもやっぱり、ティールじゃないと意味がないと思って、まだ諦めてないですね。引き続き実践中です。

    ――なるほど。ティール組織の確立は業界でも初めてのことでしょうから、ぜひ実現していただきたいです。

    舞台芸術業界の労働環境はかなり厳しい

    ――舞台芸術業界の労働における問題というのは、例えば働く時間が長いとか、低賃金とか、そういったことですか?

    植松さま: そうです。長時間労働、低賃金、あとは非正規雇用が非常に多いというのも問題です。3年に1回労働に関して調査しているのですが、2016年の調査によると、20代の7割が非正規雇用です。お金も少ないし、長時間労働だし、雇用も不安定だし、若い人たちのモチベーションは下がる一方で、みんな30代を迎える前に辞めてしまう。

    そして、女性にとっては子どもを育てながら働くというのも厳しい環境ですね。女性のライフプランとキャリアプランの両立の問題もあります。

    ――でも、今まではそれで成り立っていたわけですよね?それは、なりたい人が多かったから、ということでしょうか。

    植松さま: はい、嫌な言い方ですけど、これまでは若者の使い捨てができていたのだと思います。1、2年で辞める人が多くても、それ以上に人がどんどん入ってくるから、彼らを労働力として消費して、でもトップ層は変わらない、みたいな。トップ層がブレインとなって、現場が代替可能な馬車馬のように働くことで、この業界は成り立ってきたんじゃないかと思います。

    でも今は、日本社会の労働人口がどんどん減ってきています。この業界においても、今までのようにどんどん人が入ってくる、とはいかない。若者たちもマインドが変わってきて、自己実現感や働きがいがないとそもそも入ってこない。使い捨てていた若者たちがどんどんいなくなって、これじゃまずいということにようやく最近、業界全体が気づき始めました。

    HRBrainで1on1ミーティングの質を担保する

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    ――どういったきっかけでHRBrainを知っていただいたのでしょうか。

    植松さま: ツールの必要性を感じ、いろいろなところに資料請求をして、比較検討した中にHRBrainさんがあった、というのがきっかけです。

    ティール組織をやるには、個人個人がまず自立するのが大前提です。個人のミッションと組織のミッションが歯車のようにかみ合っていくのが、ティール組織が最大の効果を生み出す理想的な状態です。

    この業界に入ってくる多くの若者は「この業界で働きたい」という気持ちで入ってきますが、入った瞬間、その目標は達成されてしまいます。その先の「入って何をするか」が大切ですね。

    10年後、20年後、まだ自分がこの業界にいるとして、どういうことをしたいのか分からなくなってしまった時に、個人個人が今どういう壁にぶち当たっていて、どういうキャリアを描きたくて、どうしていきたいかということをしっかり話していくことが必要だと思ったんです。

    手探りで、最初はいろんな方法で1on1ミーティングをやりました。その頃はミーティングの内容を私だけが見られるスプレッドシートに記録していました。

    ミーティングの前にメールで質問項目をスタッフに送るのですが、対応にはかなり個人差がありました。

    私が用意した質問項目に自分なりに事前準備をした上でミーティングに挑むスタッフもいれば、ミーティング冒頭で「私が送った質問項目見た?」と聞いたら、「そういえばありましたね」と目の前でスマホでメールを検索し始めるスタッフもいて、ミーティングの質にかなり差が出てしまって。

    費やすのは同じ1時間なのに、個人個人に対してできていることに差が出てしまう。でも、これをそれぞれの「できる」「できない」というところに任せてしまってはだめだなと。そこで、ちゃんとサポートしてくれるフレームが必要だと強く実感しました。

    たくさんの会社に資料請求をし、比較検討して、無料のデモもやってみて、最終的に決めたのがHRBrainさんでした。

    ――ありがとうございます!それだけ比較検討された上で決めていただけたのは本当に嬉しいです。選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか?

    植松さま: 私がやりたいことが実現できるフォーマットが整っていたということが一番ですね。最低でも1on1と目標管理に利用できるツールを考えていました。目標管理に関しては何を使うかはまだ決めてはいなかったのですが、OKRが気になっていましたね。

    HRBrainは1on1とOKR両方に対応していて、評価者と被評価者が、自分以外の全員をアサインできる設計になっていて、Aさんへの評価はBさんとCさんで、Dさんへの評価はBさんで……という風に、人ごとに変えることが出来る自由度の高さがすごくいいと思いました。あとは、綾部さん(弊社CS)がいろいろサポートしてくれたのも決め手の一つでしたね。

    ――綾部のサポートも評価いただいて嬉しいです、ありがとうございます。1on1ではどういったことを話されるのですか?

    植松さま: 1on1はHRBrainさんのおかげでフォーマットができて、効率よく話せるようになりました。

    それまでは、事前準備があるスタッフなら希望の内容を深く話すことができるのに、事前準備のないスタッフだとカジュアルトークから始まって、本質にたどりつく頃にはミーティングの時間が終了、ということも多くて。

    綾部さんにご相談して、他社さんの事例も参考にしつつ、うちにフィットしそうな質問項目を一緒に決めました。全員に対して共通で聞く必須項目と、それぞれが話したい項目をこの中から最大3個まで選ぶことのできる選択項目を設定しました。

    心のバリアの厚さって、人によって全然違いますよね。こんなに無防備で大丈夫かな?と思うくらい最初からオープンに自己開示できる人もいれば、むいてもむいても……玉ねぎの皮みたいに、どこまで行っても芯にたどりつかない人もいます。

    でも、自分のことを気にかけてくれている人がいると、人は変わっていくんじゃないかと思います。会社代表としての私だけではなく、会社のみんなが、組織全体として全員それぞれに興味関心を持っているので。

    みんな自分の弱いところを晒すのに時間と勇気が必要で、自分をオープンにして、「今、こういうことにつまずいている」ことを開示した方がいいと気づくと、誰もが少しずつ変わっていきますけど、そこに至るまでの時間は、これも人によって全然違います。徐々に変わっていく人もいれば、ある日突然、吹っ切れて変わる人もいますね。

    ツールの提供だけじゃない!カスタマーサクセスは強い味方

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    植松さま: 弊社はまだ立ち上げ3年目ですから、私自身、まだまだ現場に入らなければいけないのが現状です。本当はマネジメントに専念したいけど、今はまだ、プレイングマネージャーとしてやっていかなければいけない。現場に入るとどうしてもマネジメントがおろそかになってしまいます。

    いつまでにみんなと面談するとか、これを導入してこれをやろうとか、いろいろ考えていたことも、忙しい現場にいるとあっという間に優先順位が下がって、ぐちゃぐちゃになってしまいます。でも、そこを綾部さんが「次いつですか」「いつにしましょう」と細かく設定してくれました。

    カレンダーに入れてしまえば、流石にやらざるを得ないので、導入までのリズムをつくってもらえたのが、すごくありがたかったです。

    ――ありがとうございます。カスタマーサクセスは弊社がかなり力を入れている部分です。ツールの提供だけではなく、その先の成功まで提供できることを重視しているので、そう言っていただけてとても嬉しいです。

    植松さま: 例えば「こういうケースでは他社はどうしているんですか?」と聞くと、事例を探してくださいます。「こういうことをやっている組織もありますよ」と参考URLを共有していただけて、とても助かりました。

    事例を自分で探そうとすると、忙しさにかまけて後回しになってしまいますよね。自分が読みたいもの、自分のニーズとマッチしたものを調べてもらえたり、教えてもらえたりするのは、とてもありがたかったです。

    ――組織と個人のミッションをかみ合わせる上で、どのようなことを重要視されているのでしょうか。


    植松さま: まずは自分の人生のオーナーシップを自分で持つことです。たぶん教育のせいなんじゃないかと思いますが、意外とみんな、管理されることに慣れすぎている気がします。

    会社で、何時から何時まで勤務して、いつまでに何をやって、あなたの肩書はこれで、あなたの報酬はこれで……と、与えられることに慣れすぎて、それをただ受け入れるような。

    うちは、自分がいつ働くか、いつまでに何をするか、働く時間もすべて本人たちに任せています。自由な働き方っていいねって言われますけど、自分自身を管理できないと、怠惰になって全員が共倒れするリスクはありますよね。

    本人が、今どこに立っているのか、次に行きたいのはどこなのかを把握した上で、そこに行き着くために今これをやっているんだ、というのを、納得感を持ってやっていくことが大切だと思います。

    ――なるほど。その状態を成り立たせるために取る手段として、最初からそういう適性のある人を採用するか、そうじゃない人も自立できるように育成していくか、このどちらかかなと思うのですが、いかがでしょうか。

    植松さま: 「そういう人を採用」という点においては、すぐにこの働き方ができるのはフリーランス経験者です。自分が自分の人生の手綱を持たないと、誰も責任を取ってくれないという感覚を持っている方々なので。

    でも、みんながフリーランスを経験しているわけじゃない。「自立できるように育成していく」という点においては、フリーランスを経験したことがない人たちをティール組織に持っていかなければいけない。それには血を吐くような思いが必要ですね。

    お互いがマインドセットを変えていくのは、生半可なことじゃないです。「これじゃ駄目」「これじゃ駄目」の連続ですよ。まだ待ちの姿勢になっているよ、ということを何度も指摘しなければいけない。

    例えば「来週休みいただけますか」と聞かれて「『いただけますか』って、なぜ私の許可が必要なの」とか、「そもそもあなた自身があなたの時間を会社に提供しているだけであって、私があなたの時間を奪っているわけじゃないよ」とか返すわけですよ。そのマインドが違うよっていうところから、ひたすら壁打ちしていく。

    ――大変ですね……マインドを変えるためには、対話の繰り返しが必要ということでしょうか。

    植松さま: 対話と言っても、私から強制的に何か教えたりアドバイスしたりはできないです。人それぞれ考え方も違うし、価値観も違うし、優先順位も違いますから。最終的に変える、変わることを決意するのは本人しかできないので。

    キャリアは積み上げるものではなく掘り下げるものである

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    植松さま: 教えることができないからこそ、私はひたすら、壁打ちの良質な壁になろうとしています。

    自分が何に悩んでいて、何に苛立っていて、何にこだわって変わることができないのか?何につまずいているのか?ということは、本人も自覚できていなかったりしますよね。そういう時に、私が壁打ちの壁となって、ひたすら来るボールを返して、返して、いろんな聞き方で返していくわけです。

    そこで、本人が「私、これにすごくこだわっていたんだな」とか、「前の仕事で評価してもらえなかったことが、ずっとわだかまりになっていたんだ」とか、自分の中で気づくことができると、「そうか、だから組織が変わったのに、ここに固執していて変わることができなかったんだ」ということが自ずと分かるんですよね。

    だからもう、対話というよりは、ひたすら本人が壁打ちをして自分軸を掘り下げることにつきあう感じです。

    ――自ら気づくことができれば、教えられるよりも納得できますし、素晴らしいことだと思うのですが、壁になるって、かなり根気のいることですよね……良質な壁になるコツはありますか?


    植松さま: そうですね、例えば『自立する』ことって、キャリアとか、色々なものを積み上げていくイメージがありませんか?

    でも、キャリアは実は積み上げていくものではなくて、どんどん掘り下げていくものなんです。自分を掘り下げていった結果、掘った分の土が隣に積もって、外からは積み上がっているように見えるだけで。

    掘り下げることができなければ、積み上がる材料もないですよね。対外的に目立つのは積み上げる方だから、目立つことをして成功したい、評価されたいって思う人が多いですけど、そのためには絶対に掘り下げが必要です。

    壁打ちの壁になって掘り下げるのはすごく大変ですよ。私に対して自己開示したくない気持ちがある人もいるし、掘り下げることの意味とか意義が分かっていない人もいます。

    「徹底的に自分の意見を言う」、「自分の違和感が何なのかを言語化して、対話する」、「周りと衝突したとしても、同意できないことははっきりと
    NOと言う」。こういうことが苦手な人は多いですね。

    決められたフォーマットに従ってただ作業をこなすのであれば、掘り下げは必要ありません。でも、それで本当に自分がやりたいことができますか?一生に1回しかない自分の人生を充実したものにできますか?

    だから、苦しくても掘り下げないとだめなんです。1on1ミーティングでは、掘り下げたつもりになっている人に対して、私はかなり突っ込むようにしています。それはもう、お互いに相当苦しみます。見てみぬふりして、スルーすればお互い楽ではありますよね。

    ――「掘り下げる」と一言で言っても色々な手法があるとは思うのですが、具体的にはどういったやり方があるのでしょうか。

    植松さま: 新しい人が入るたびに必ず行う、イントロダクションデーというものがあります。自分の人生、ここに至るまでをチームのメンバーに説明する、自己紹介の時間です。初回はフォーマットに沿って自己紹介をしてもらいますが、2回目以降のフォーマットは自由です。

    自己紹介の際、自分の人生のスタート地点が幼稚園から始まる人もいれば、高校から始まる人もいるし、部活で何をやってきて、どういう挫折があって、家族との関係性がこうで……と、色々な話が出てきます。そういったことを共有し、みんなが理解することが大切です。

    新卒の子は割と柔軟性があるのですが、他業界から転職してくる人は、初めての自己紹介の際に、「自分が何をやってきたか」と、手がけた事業の説明が延々続くことが多いんです。「それは、やってきた『事業』の説明であって、『あなた』の説明じゃないですよね?」ということにまず気づいてもらう。

    2回3回と自己紹介を重ねると、「家族との関係があまり良くない」とか、「幼少期に周囲とうまくいかなかった」とか、本人にとってはおそらく言いづらいことを言ってくれるようになります。みんなが受け止めてくれることが少しずつ分かってくるからでしょうね。

    新しい人がくるたびにやっていると、ずっといる人たちは何度も自己紹介をするわけですから、前と同じフォーマットだと目新しさがないから、もう少しアップデートしようと、そこからさらに掘り下げていきますよね。

    自分の大きなヒストリーをみんなと共有するイントロダクションデーは半期に1回、私との1on1は月1回、全員での定例ミーティングは週1回の頻度でやっています。

    プロジェクトごとの進捗共有は意味がない

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    植松さま: 全員での定例ミーティングでプロジェクトごとの進捗共有をしても意味がありません。それぞれのプロジェクトの進捗状況を共有されても、そのプロジェクトにアサインされていない人にとっては、自分の仕事じゃないので、興味がなくて当然ですよね。これは時間の無駄です。

    定例ミーティングではそういうことを一切やらず、KPTA(キープ・プロブレム・トライ・アクション)をやっています。自分たちのプロジェクトの進捗を通して、自分がよかったこと。例えばK(Keep:よかったこと)は「毎朝走るようにしたら調子がよかった」とか、P(Problem:改善が必要なこと)は「自分のメールの書き方が悪いことに気づいた」とか。みんなが、何につまずいているのか、こうしたらうまくいったよ、ということを共有して、T(Try:新たに取り組むこと)とA(Action:具体的な行動)につなげます。

    全員での定例ミーティングはチームのフィードバックのため、1on1は個人のため、という風に明確に役割を分けていますね。

    『自由な働き方』は生き地獄?

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    植松さま: 会社ですから、仕事のパフォーマンスを上げていかなきゃいけないのは絶対で、それと同時に、自分自身を掘り下げることもバランスよくやっていく。どちらかに偏った時は戻さなきゃいけないですよね。

    でも、タイミングも重要で。メンバーが自分自身を掘り下げる作業において大切なものをつかみかけている瞬間に「それはいいから、今すぐこっちやって」と私が言ってしまうと、その瞬間にこれまでの信頼関係が失われてしまう。

    結局のところ、忍耐しかないです。ともすれば、今この瞬間にこの人材は「使える」「使えない」という二択に当てはめちゃいそうになるんです、経営者って。

    ――分かります。

    植松さま: 使える、使えないという言葉が頭をよぎるのを待て、待てと。これも忍耐ですね。つい、変化の進捗管理をしたくなるんですよ。これいつまでだよね、今これだよね、なんでこれできてないの?って。

    セルフマネジメントも大切だけど、介入しないといけないこともある。どこまで本人たちを信じるか。見込みが甘くて信じすぎたらみんな死ぬかもしれないから、信じすぎてもいけない、でも待たないといけないこともある、でも待ちすぎてもいけないっていうことの忍耐です。

    ――なるほど。とにかく辛抱して、オーナーシップを持ってもらうという。

    植松さま: そうです。そして、成長過程においては、失敗経験がすごく大切です。私が全てマネジメントして、私が言われたことをやっていれば失敗しない、という状況を作ることもできるかもしれませんが、やっぱり失敗から学ぶことの方がすごく大きいですよね。

    だから、どのタイミングで失敗させるかというのが悩みどころです。他社さまからいただいた案件なので失敗できないですけど、渡していい部分と渡しちゃだめな部分のバランスを取って……なんかもう、日々「おえーっ」て感じです、本当に。

    ――ここまでは大丈夫だけど、ここまでは忍耐にしようというのは、何を心がけていれば、正しい判断ができるようになるのでしょうか。

    植松さま: 私も間違いますよ。詰めが甘くて失敗することもあります。

    ――それも目指す働き方を実現する上で、勘を磨くためのプロセスというか。

    植松さま: そうですね。今後100人の組織にしていくには、私だけではなく今いる全員がリーダーになる必要があります。ヒエラルキーのない組織の中で、誰かが困ったときに、全員が手を差し伸べる側になれなければいけないので、今、失敗や痛みを知ることがすごく大事だと思っています。

    誰かに任せたことがうまくいかなくて、リカバリーに3倍時間がかかって、最初から自分がやった方が早かったなー、と思っても、それも双方に必要な学びですね。

    ティールで自由な働き方って、その生態系ができあがるまで、経営者への負荷って並大抵じゃないですよ。前世でどんなカルマを負ったらこんなことに遭うかなと思うぐらい(笑)

    ――カルマを背負って(笑)

    植松さま: 生き地獄ですよ。怒られて失敗して、対外的な責任と対内的な責任を全部経営者が負わないといけないわけですから。他社には絶対すすめないです。自立させるために、他人の人生をなんでこんなに背負わなきゃいけないの?って普通は思いますよね。でも、うちはこれをやらないと意味がないんです。

    最終的につくりたい組織のビジョンが明確に共有できているから耐えられている気がします。現在は未来に対して、あくまでも通過点なので、苦しいことが永遠に続くわけでもないし、同じ人が永遠に同じ失敗を繰り返すわけでもない。

    ティール組織を目指して、自由な働き方って決めたから、何がなんでもやるぞと思って。日々、「ぎょえーっ」て感じですけど。

    ――この業界の働き方を変えるという明確な目標があるからこそ、ですよね。

    植松さま: みなさん、「自由な働き方っていいねー」「私もそういうとこ行きたいです」って言います。「それトレンドですよね」とか。

    でも、誰がいつ来るか、いつ休むか、この人がここで休むから、チームとして、いつまでにこれをしておかないといけない、ということを常にアジャストしていくのはかなり面倒です。

    旧来の働き方の方が100倍楽ですよ。月から金、10時から19時、今週の仕事はこれ、これって全部ルールで決めてしまえば、思考のリソースを割かなくていいので、多分かなり省エネできます。でも、今挑戦している全く新しい組織の形はそれじゃないから、と思ってやっています。

    HRBrainに記録したログが未来の自分の手助けになる

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    ――ティール組織をつくる、組織のミッションと個人のミッションを一致させて自立を促すという中で、HRBrainが1番お役に立てる部分はどこでしょうか?

    植松さま: ログを残せるのが一番大きいですね。人によって角度が違う成長の度合いを自分自身で確認できるのはとても重要なことです。

    自分の歩んだ軌跡が残るから、あとで得られる気づきもあると思います。将来、チームリーダーになったときに自分の過去のログを見て、今のチームメンバーが、過去の自分と同じことでつまずいていることに気づくとか、過去にもらったコメントが、当時は納得いかなかったけど今ならすごく腑に落ちるとか。

    あとは、業績に直結するわけでもない個人の目標管理に対して、会社がコストをかけてツールを導入して、自分にフォーカスしてくれていること自体が、働く側からするとモチベーションにつながるんじゃないかな。

    自分が今何を考えているかに対して、会社が興味を持って、知ろうとしてくれているっていうことが、HRBrainを導入することによって可視化されますよね。

    ――ありがとうございます。一緒に掘り下げていった作業が記録として残るから、未来の自分だけじゃない、チームメンバーの気づきにもつながっていくのはいい循環ですよね。

    植松さま: スプレッドシートは便利なツールではありますが、人事評価のために作られたものではないので、どうしてもログとしての限界があったり、評価/被評価者の細かい設定ができなかったり、不便さや心配な点も多いです。

    やはり、餅は餅屋かな、と。HRBrainさんは人事評価や目標管理のために考えられた専門のツールですから、そういった心配をしなくてもいいのが強いですよね。

    ――そう言っていただけると、とてもありがたいです!

    植松さま: この業界ではまだ、ティール組織や自由な働き方を実現している組織がありません。うちが100人を達成したときに、社会に対してもそれなりのインパクトが出せるといいな、と。

    そのときに、このインタビューが、「シュツゲンが過渡期の頃のインタビュー」としてHRBrainさんにとってもお役に立てるものになるといいですよね!

    ――HRBrainもずっと応援させていただきたいと思います。最後に、御社の採用についてお聞きしたいのですが、採用に何かこだわりはありますか?

    植松さま: 採用に関してはまだ試行錯誤の段階ですが、今のところはリファラルが強いなと思いますね。

    でも、例えば業界全体が森で、人材が多様な生命体だとしたら、目立つ人材をリファラルで乱獲することで、森の生態系が崩れてしまう可能性もあると思っていて。

    業界全体が崩れてしまっては、私がやりたいビジョンが実現できません。とはいえ、リファラルが一番効果的だとも思うので、リファラルの射程範囲をどうやって広げていくべきか、それが次の課題かなと思いますね。

    ――ありがとうございます。

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    アート・エンターテインメント業界の労働環境を変える、という大きな目標に向かって邁進している合同会社syuz’genさま。明確なビジョンを掲げ、未来を見つつも、今をしっかりと掘り下げていく着実さが、「キャリアは積み上げるものではなく掘り下げるもの」という植松さまのお言葉に凝縮されているように思います。

    植松さま、『過渡期の貴重なインタビュー』をありがとうございました!

    ※掲載内容は、記事公開の2019年9月時点のものです。

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