
現場を信じ続け、根気強くサポート。 エンゲージメントスコアと当事者意識向上に寄与した 東テク「経営企画」の組織改善とは
東テク株式会社 経営戦略本部 サステナビリティ推進グループ 課長代理
熊澤 弥 様
- 卸売・小売業
- 1001名~
- 人事制度の見直しをしたい
- 従業員エンゲージメントを向上させたい
- 人的資本開示への準備がしたい
- 組織の課題把握・分析がしたい
- 組織診断サーベイ
HRBrain導入開始:2022年10月01日
現場を信じ続け、根気強くサポート。 エンゲージメントスコアと当事者意識向上に寄与した 東テク「経営企画」の組織改善とは
- 課題背景
- 裁量が大きいという強みの反面、部署間の「連携不足」という課題があった。
- プレイングマネージャーが多く、部下へのフォローが不足。育成の仕組みが確立されていなかった。
- 組織の現状を客観的なデータで把握できておらず、有効な組織改善や制度改革に着手できずにいた。
- 打ち手
- サーベイ結果を基に、経営企画が各部門長とのフィードバック面談を数年間、根気強く実施した。
- 組織改善を「指示」せず、客観的データを「提示」することで、管理職の気づきと自律を促した。
- サーベイで「期待と実感」のギャップを可視化し、課題の優先順位を判断。データに基づいた効果的な施策を実行。
- 効果
- 当初は無関心だった管理職が、組織の状態を「自分ごと」として捉え、自律的に考えるように変化。
- グループ全体のエンゲージメントスコアが1.2ポイント向上し、一人当たりの生産性もアップした。
- 経営計画に人的資本の取り組みを反映させるなど、データに基づく組織改善の土台が完成。
「組織改善」と「制度改革」を両輪で回す。「経営企画」主導の組織改善への挑戦。
Q. 事業内容や直近の経営状況についてお聞かせください。
熊澤様:
当社は、空調設備や計装、エネルギー関連の事業を手掛ける技術商社です。ダイキン工業の国内トップディーラーとして、様々なメーカーの優れた製品を組み合わせ、お客様に最適なソリューションを提案しています。
経営状況としましては、市場環境にも恵まれ、業績は好調に推移しています。2025年度を最終年度とする第一次中期経営計画の目標(売上高1,550億円、経常利益120億円)を1年前倒しで達成し、新たに売上高1,600億円、経常利益158億円へと目標を上方修正しました。 現在は、2030年度に売上高2,000億円を目指す長期ビジョン「『ここちよい』の、その先へ。」を掲げ、次のステップに進んでいるところです。
市場環境という点では、コロナ禍以前より、復興需要や東京オリンピック、そして大阪万博といった背景から、建設業界全体の需要が高い水準で推移してきました。 特にここ数年は、都心部の再開発や民間の設備投資がさらに活発になっており、当社が手掛ける空調設備や、省エネに欠かせない計装技術は、あらゆる建物に必要とされるため、事業の追い風となっています。
Q. なぜ今組織改善やエンゲージメント向上に取り組もうと考えられたのでしょうか。
熊澤様:
私が所属するサステナビリティ推進グループが広報室から発展した背景には、SDGsや人的資本経営、ESGといった社会的な流れがあります。
財務情報だけでなく、非財務情報が重要視される時代において、「組織の現状を客観的なデータで把握できていない」という課題意識が大きくなり、エンゲージメント調査に踏み切ったのが実情です。
また、中期経営計画で掲げた「人にここちよい」というスローガンもエンゲージメント向上に取り組む大きなきっかけでした。お客様や社会に「ここちよさ」を提供するには、まず私たち従業員が活き活きと働きがいを感じられる環境が必要です。
Q. エンゲージメント向上に取り組まれる中、どのような組織課題があると認識されていましたか。
熊澤様:
組織課題としては、大きく二つありました。
一つは「部署間の連携不足」です。当社には、現場や個人の裁量で仕事を進められる自由さがありますが、その反面、部署同士の連携は十分とはいえず、部署間のコミュニケーションやチームワークを強化できればと考えていました。
もう一つは、「中間管理職の育成」です。当社は、部門長やグループリーダーといった管理職がプレイングマネージャーであることが多く、マネジメントに十分な時間を割けていませんでした。結果として、部下へのフォローが不足し、場合によっては、現場の部下が「放置されている」と感じてしまう懸念もありました。このようにマネージャー層への教育や指導が十分に行えていない点が、組織の課題だと捉えていました。
これらの課題にも通ずるのですが、私たちがエンゲージメント調査を活用して実現したいのは、「組織改善」と「制度改革」です。「組織改善」と「制度改革」は、両輪で回してはじめて完成するものだと思います。
根気強く現場を信じる。経営企画が貫いた「見守る」支援と生まれた変化。
Q. なぜ、数あるサービスの中からHRBrainの組織診断サーベイ「EX Intelligence」を選ばれたのでしょうか。
熊澤様:
決め手となったのは、従業員の「期待」と「実感」のギャップを測定できる点です。実感、つまり満足度だけを調査すると、どうしても不満や愚痴が中心になりがちです。
しかし、従業員が会社に対して「何を期待しているのか」を同時に把握することで、そのギャップの大きさから、取り組むべき課題の優先順位を客観的に判断できると考えました。 一つの指標だけだと見逃してしまう「本質」を捉えられると思ったのです。これは、数あるサービスの中でも非常にユニークで、私たちの目的に合致していました。
もちろん、HRBrainの営業担当の方のお人柄や、システムの拡張性、コストといった面も総合的に評価して決定しました。
Q. 導入後、どのような取り組みをされましたか。また、どのような効果がありましたか。
熊澤様:
私は「経営企画」なので、人事部のように直接的な制度改革を行うわけではありません。私たちの役割は、サーベイという客観的なデータを基に、各部門のマネージャーに対話のきっかけを提供し、自律的な改善を促すことです。
具体的には、年に1回サーベイを実施し、その結果を分析して各部門長にフィードバックしたり、役員会や全社に向けて成果を報告するという活動を、この数年間続けてきました。
その結果、定量的な成果として、グループ全体のエンゲージメントスコアが1.2ポイント向上。また、中期経営計画にも営業成績を開示しているのですが、一人当たりの生産性も向上しました。
施策としては、フィードバック面談における質の向上や健康促進イベントの実施などを行い、中でも「表彰制度」を導入した際には、関連する項目のスコアが全社的に上昇したことをデータで明確に確認することができました。さらに、定性的な面では、マネージャーたちの意識に明らかな変化が見られました。

Q. マネージャー層の意識は具体的にどのように変化したのでしょうか。
熊澤様:
導入した当初は、部門長たちもサーベイの結果にそれほど興味を示さないケースも多かったです。しかし、フィードバックを重ねるうちに、徐々に自分たちの組織の状態を「自分ごと」として捉えるようになってくれました。
例えば、去年と比べてスコアがどう変わったのかを気にするようになったり、「この数値結果は、おそらくこういうことが要因ですよね」と、自ら原因を分析して話してくれるようになりました。また、私たちに質問を投げかけてくれる部門長も少しずつ増えました。
これは、私たちが直接「こうしてください」と指示するのではなく、「あなたの組織は、客観的なデータで見るとこうなっていますよ。何か心当たりはありますか?」という事実を提示し続けた結果だと考えています。
あくまで客観的な事実として「他の拠点ではこういう声もあるけれど、どうですか?」と情報を共有する程度に留めていました。すぐに結果が出るものではなかったのですが、現場を信じて対話を重ねたことが、少しずつみなさん一人ひとりの当事者意識につながったのだと思います。
「組織改善」と「制度改革」の両輪で、組織改革を全社の取り組み事項へ
Q. 今後の展望として、HRBrainのサービスをどのように活用していきたいですか。
熊澤様:
今後の展望は、「組織改善」と「制度改革」の両輪でHRBrainを活用していくことです。 「組織改善」の面では、これまでの活動を継続し、マネージャーたちがサーベイ結果から自ら課題を読み取り、アクションを起こせるような風土づくりを目指します。
現状の課題は明確に見えてきたので、次は設問の中から「あなたの組織では、特にこの項目に注目してください」と、より具体的なコミュニケーションを取っていくことで、現場のアクションを後押ししたいですね。
そして「制度改革」の面では、サーベイで見えた課題を、人事部と連携しながら次期中期経営計画に織り込んでいきたいと考えています。人的資本に関する取り組みを経営計画に組み込むことで、全社共通の目標として推進していきたいと考えています。
Q. 最後に、組織改善にお悩みの他社のご担当者様、特に経営企画に携わる方へメッセージをお願いします。
熊澤様:
経営企画がエンゲージメント調査に携わることはよくあると思いますが、ただスコアを取るだけで満足してしまうケースも多いのではないでしょうか。しかし、重要なのはその先です。私たちもまだまだ手探りなのですが、経営企画が組織改善の旗を振り、そこから制度改革、そして最終的には文化の醸成につなげていくことが理想だと考えています。
そのためには、「根気強く続けること」が何より重要です。現場のみなさんは最初からサーベイを理解しているわけではないので、すぐに何かが変わることはありません。しかし、抽出されたデータを基に対話を続け、現場のみなさんを信じて待つ「我慢」の姿勢が、大きな変化につながっていくのだと思います。
また、理想を言えば、こういったエンゲージメントに関する取り組みを、最終的には評価制度に組み込んでいくことが、組織に根付かせるためには非常に重要ではないかと考えています。
私たちも、そうした将来像を描きながら、できることを一つずつ進めている最中です。今回の当社の事例が、組織改善にお悩みの方々のご参考になれば大変嬉しく思います。
※掲載内容は、取材当時の2025年6月時点のものです。