紙運用からの脱却で、フィードバックする文化を醸成。改革を進める病院の取り組みとは
社会医療法人三栄会 法人本部 人事課 課長
長谷川樹 様
社会医療法人三栄会 法人本部 人事課 主任
土井伸哉 様
- 医療
- 1001名~
- 評価の納得度を向上させたい
- 人材データの分析・活用を行いたい
- 人材データを一元管理したい
- 人事評価や目標管理の運用を効率化したい
- タレントマネジメント
- 人事評価
HRBrain導入開始:2020年07月01日
紙運用からの脱却で、フィードバックする文化を醸成。改革を進める病院の取り組みとは
- 課題背景
- 評価結果が職員にフィードバックされておらず、制度が不透明だった
- 人事評価を紙で管理していたため、把握・集計・分析ができていなかった
- 打ち手
- HRBrainで人事評価データの集計・分析を「見える化」して適正な人員配置に活用
- 被評価者にも評価結果・フィードバックを開示
- 社員名簿に職員のキャリアを登録して人事異動を検討する際に確認
- 効果
- 「どういう根拠で、どのように評価されたか」を被評価者も理解できるようになった
- 以前は人事異動を検討する際に紙の履歴書をめくる必要があったが、作業が簡素化された
社会医療法人三栄会の法人本部にて人事課の課長をされている長谷川樹様、同じく人事課の主任をされている土井伸哉様にHRBrain導入の経緯、目的、おすすめポイントを伺いました。
ー貴院の事業内容を教えてください。
長谷川様:
社会医療法人三栄会が運営するツカザキ病院は、兵庫県中播磨・西播磨地区における救急医療を担う急性期病院です。
ツカザキ病院には、1,013名(2022年10月末現在)の職員が在籍しています。
規模拡大をきっかけに、評価制度の見直しと紙運用からの脱却を推進
ー導入前に抱えていた人事課題を教えてください。
長谷川様:
HRBrain導入以前の当院の給与体系は、年功序列型でした。
しかし、世の中の主流は成果型の役割等級制度のため、いずれはシフトしなければならないと考えていました。
そのためにも、適正な人事評価から給与・賞与・昇給に反映できる仕組みを必要としていました。
また、当院では、評価結果に基づいて賞与支給がありますが「その人事評価が本人にフィードバックされない」という問題もありました。
面談の機会もないため、被評価者は「自分がどのような評価だったのか、賞与が支給されるまでわからない」という状態に陥っていました。
こうした職員にとって不透明な制度を改め、納得して働ける制度にしたいという想いがありました。
改善しようと思ったきっかけは「規模拡張に伴った病院間における職員ローテーションの活発化」です。
社会医療法人三栄会が運営するツカザキ病院は、事業内容でお伝えしたように、急性期医療を提供しています。
急性期医療とは怪我や発病により「急激に健康状態が悪くなった」患者さんへ治療を行うことを指します。こうした急性疾患や救急の患者さんを受け入れるため、非常に忙しく緊張感のある現場です。
一方、三栄会の関連病院では、救急で命が救われた患者さんが療養する回復期を担当しています。
このように、まったく異なる性質の病院にもかかわらず、職員の給与・人事制度は同じものを適用していました。
そのため、今後の職員の定着のためにも、各病院の性質に合った制度に早急に改めていかなければならないと考えました。
職員の成長・学びのためには急性期病院が適しているといえますが、精神的な負荷や、肉体的にも負担が大きい現場となります。
そのため、「新人のうちは急性期病院で様々な経験をしてから、別の事業所に移って活躍する」など、病院間の異動をスムーズにできる管理をシステム的に行う必要がありました。
しかし、HRBrain導入以前は紙での管理だったため、職員情報の把握だけでなく、データの集計・分析などの活用ができないという課題がありました。
法人規模も拡大し続けており、早急にシステム化・DX化したいという想いがありました。
ー課題を解決し、どのような状態に変えたいと考えていましたか。
長谷川様:
「評価を意識した人事評価制度」を確立させたいという想いがありました。
そのため、役割等級制度を組み立てるだけでなく、「評価者がきちんと評価をしているか」をデータに落としこみ、確認できる状態にしたいと考えていました。
職員によって評価にばらつきがある状態だったため、システムで「見える化」し、平均値の確認や、評価状況を経営層が見て確認できるといったところまで、状態を引き上げていきたいと思っていました。
ー 他システムと比べ、HRBrainで印象に残っていることを教えてください。
土井様:
HRBrainは操作が「シンプルで簡単だな」という印象がありました。
「1回触れば操作を覚えられる」「やっているうちに勝手に覚えていく」といった感覚です。
当院は1,000名以上の職員が在籍しているため「操作できるのか」という点が心配でした。
しかし、HRBrainの説明を職員に行うと一回の説明で覚えてもらうことができ、その不安は解消されました。
また、「こんなことはできるのかな?」と思ったとき、ヘルプページを開いたらすぐに解決できる点も良かったです。
長谷川様:
操作がシンプルという点について具体的に補足すると、「どのボタンを押したら、どういうことが起こるのか予想できる・理解しやすい」ということがあげられます。
他社の場合は、操作を行うメニューの階層が2、3つ深いことに比べて、HRBrainの場合は「すぐに到達できる」という点が良かったです。
また、HRBrainの導入を経営層に提案する際のポイントとして「ある程度カスタマイズできる」点がありました。
ほかにも、当院の独自の目標などが期の途中でも変更できること、「あったらいいな」と思っていた細かな機能がどんどんアップデートされる動きがあったことが魅力でした。
運用をスタートした際には、「やっぱり、これちょっと変えたいな」「こういうことはできないのかな」と思うことが必ずあります。
稟議を通すうえで、そうした「運用後を見据えた点」がアピールポイントになったと考えています。
「どういう根拠で、どのように評価されたか」を被評価者も理解できるようになった
ー導入後の満足度と、その理由について教えてください。
長谷川様:
2020年7月に導入して少しずつ利用範囲を広げ、2022年4月に本格的な稼働がはじまり、10月に職員の自己評価が完了したところです。そのため、全体での運用はまだ途中といったところです。
ただ「評価者が適正な評価ができているのか」「責任を持って評価をしているのか」など、進捗状況が確認できる点については、満足しています。
「どんな目線で、どういう評価をしたのか」というコメントを被評価者が見られるようになったため「その評価を受けて、今後どのような目標を立てるのか」という意識を持って、評価期間を終えられた印象があります。
半年後、1年後、2年後と、今後のデータが蓄積され可視化されることにより、より満足度は上がっていくと考えています。
ー経営や現場から、どのような反響がありましたか。
長谷川様:
正直、職員からは「紙の方が良かった」という声もありました。
「今だけ」を見たら、確かに慣れているほうがやりやすいのかもしれませんが、「長い目で見て」と伝えました。
以前は紙に評価コメントを書く欄がありましたが、先に述べたように「本人にはフィードバックされない」という問題がありました。
そのコメント欄は、あくまで上層部が「この評価が適切かどうか」を確認するためだけに活用していました。
しかし、今はデジタル化したことで、被評価者もコメント欄を閲覧できます。
「どういう根拠で、どのように評価されたか」「何をもって評価されたのか」を理解するための欄として活用できています。
その点で、大きく改善されたと思っています。
タイムリーに役割等級別・部署別で評価の確認ができるため、上層部に説明する際に「これ、いいね」という声を聞くこともありました。
また、紙に比べて、比較的早い時期に評価を完了できたことから、現場の意識の高まりを感じることができました。
総じて好評であるといえます。
見直した評価制度の運用開始と人事業務の効率化を実現
ー導入前に抱えていた課題の解決状況はいかがですか。
長谷川様:
年功序列型から「最低評価が続いた場合は降格もありえる」という、成果評価型の人事制度に変更し、運用することができています。
当院では年2回(上期・下期)の評価があり、その総合評価によって、昇進・昇格・降格が決まります。
医療を提供しているため、レベルに達していない状態の職員が医療現場に立つことには大きな問題があります。
こうした適正な人事制度になったことで、以前の課題については解決できたと考えています。
ーどの機能を、どのように利用されているか具体的に教えてください。
長谷川様:
現在は主に、社員名簿と人事評価の機能を利用しています。
当院では1,000名以上の職員がいるため、社員名簿に職員の顔写真を掲載しています。
顔と氏名を一致させて確認する際に、便利に利用しています。
また、ローテーションで人事異動を行なう際に、職員のキャリアを社員名簿で確認しています。
HRBrain導入以前は、紙の履歴書をめくって確認していたため、作業としてはかなり簡素化できました。
土井様:
社員名簿を使って、職員の把握ができるようになりました。
今後は、労務管理への活用を考えています。
HRBrain導入以前は、マネージャーから電話で「等級を見たい」という依頼を受けて、人事情報をCSVで出力し、内容を伝えていました。
しかし、現在は人事以外にも一部権限を付与しているため、マネージャーは管轄職員のデータをリアルタイムで確認することができます。
現在、まだ最低限の情報しか入力されていないため、一つひとつ肉付けをしていきながら、当院オリジナルのものを作っていきたいと考えています。
長谷川様:
次に人事評価の機能ですが、データの集計・分析が自動で「見える化」できるため、適正な人員配置に活用しています。
また、賞与支給の判断材料にも利用しています。
ほかには、年度終わりの昇進昇格などの判断材料としても、活用を期待しています。
ー貴院に展開する上で、大変だったこと・進めやすかったことがあれば教えてください。
土井様:
2020年7月に一部署でHRBrainを導入し、少しずつ利用範囲を広げていましたが、2022年2月に全体への展開が決定して、4月1日からシステムの稼働を開始することになりました。
そのため、追加で職員約1,000名分のデータ登録が必要となりました。
給与システムなど、それぞれのシステムにおいて登録している職員情報・項目が微妙に異なっていたため、どのように一本化していくかを考えるところからスタートしました。
「今後の職員情報の管理・運用を踏まえたデータ項目の決定」「4月1日までの全職員のデータ登録」の2点に、最も苦労しました。
準備期間は大変でしたが、カスタマーサクセスの方の迅速なサポートもあり、予定通り運用開始することができました。
4月が始まると、職員がHRBrainを操作するようになり「評価の簡単さ」を実感してくれるようになりました。
長谷川様:
年度末は、事務が一番忙しい時期です。
当院では、年度末にHRBrain導入準備とともに、給与制度改定も実施したため、同時進行での準備が必要となりました。
色々な事情を勘案しながらマスター登録を組み替えるだけでなく、給与形態の改善にも神経を使うなど、色々な問題の解決を通常業務と並行して行う点が大変でした。
限られた人員で運営していくためにDXを進めていく
ーこれから人事のDXに着手しようとしている他院のご担当者様に、アドバイスがあればお伺いさせてください。
長谷川様:
医療現場と違い「事務に余裕人員の配置は考えられない」というところが多いかと思われます。
しかし、法人規模が拡大していく中、限られた人員で病院運営を行う必要があるため、本部では人事や経理、それ以外のセクションにおいてもDX化を進めています。
DX化にはコストがかかることに加えて、導入にあたって課題がある場合もあります。一方で、中長期的な効率化を考えると非常に魅力的です。
今回、当院では4月の本格稼働に向けて、HRBrainを一部署利用から全体に展開しました。
しかし、年度末のただでさえ忙しいところ、導入に向けての準備は負担がありました。
そのため、例えば12月からなど、助走期間を設けたらよりスムーズにいくのではないか、と思います。
HRBrainはWebでのクチコミ評価が高かったこともあり、導入しました。
病院は横の繋がりがあるほか、「良いところを共有しよう」という業界でもあるため、導入を考えている病院があれば、ぜひ紹介したいと考えています。
※掲載内容は、記事公開の2022年12月時点のものです。