#人事評価
2023/08/10

メルクマールとは?導入の効果や方法、事例をご紹介!

目次

    皆さんはメルクマールという言葉をご存じでしょうか?

    メルクマールは、大きな目標を掲げている企業や目標達成への意識を高めたい企業が注視すべき目標管理指標のことです。

    今回この記事では、メルクマールの概要と効果、具体的な導入方法をまとめています。

    また、実際にメルクマールを導入している企業の事例を紹介し、どのように活用されているかを解説しています。

    初めてメルクマールを導入する企業は、「導入時のポイント」や「導入事例」を併せて確認しましょう。

    メルクマールとは?

    まずはメルクマールの概要について解説します。

    概要

    メルクマールとは、ドイツ語で「ゴールまでの道のり」や「ゴール」という意味があり、日本語では「目印」や「指標」という意味を持ちます。

    ビジネスシーンでは、企業の事業計画を達成するための「管理指標」や「プロセス指標」という意味で使われています。

    メルクマールは、プロジェクトの中間地点で振り返りとしても活用され、目標に向けしっかりと歩めているかの確認にも利用されることも理解しておきましょう。

    意味が近い言葉

    次に、メルクマールと似た意味を持つ言葉との違いを解説します。

    マイルストーンとの違い

    マイルストーンとは、「ゴールまでの通過点」という意味があり、業務プロセスの過程で使われます。

    メルクマールは、ドイツ語で「ゴールまでの道のり」や「ゴール」といった意味を持つことからマイルストーンと意味が重なって認識されてしまうことがあります。

    しかし、マイルストーンは「あとどれだけ進めばゴールに到達するか?」といった意味で使われる言葉です。

    メルクマールは、「中間目標が達成できているか?」や「達成率はどれくらいか?」など中間評価の基準として使用されます。

    つまり、マイルストーンは「中間地点からゴールまでの道のり」に注視しますが、メルクマールは「プロジェクト開始から中間地点まででどの程度進めたか」を注視している点が大きく異なるポイントです。

    KPIとの違い

    マイルストーンと同様に、メルクマールと似た言葉として扱われているのがKPIです。

    KPIとは、Key Performance Indicatorの頭文字をとった言葉で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されています。

    ビジネスシーンでのKPIは、目標に向けて進捗状況を確認するための中間管理指標という意味で利用されることから、メルクマールとほとんど同じような意味を持ちます。

    しかし、違いを表すとするならば、KPIは「目標管理」に重きを置いて使われることがありますが、メルクマールが対象とするものは目標管理だけではありません。

    メルクマールが目標管理以外で利用される例として、金融や医療現場などがあります。

    金融でメルクマールという言葉を使う際は、「判断基準」や「目印」という意味を持ち、医療現場では、「治療の効果を評価する指標」として使われます。

    つまり、KPIは目標管理という意味を多く含んでいるのに対して、メルクマールは業界やシチュエーションによって意味が異なる点が大きく異なるポイントです。

    メルクマールの効果

    ここからは、メルクマールを活用した際の効果について解説します。

    最終ゴールまでの道筋が明確になる

    メルクマールを活用して得られる最大の効果は、「ゴールまでの道筋が明確になる」点です。

    最終目標に向かって進む中間目標としてメルクマールを設定するため、中間地点に到達した際の進捗状況の把握、最終目標までの軌道修正などが用意にできます。

    例えば、主な業務が接客の部署で、最終目標を「顧客からのクレーム数を年間50件以下にする」などと設定したとしましょう。

    そしてメルクマールとなる途中目標として、「月間クレーム数を4件以下にする」などと設定します。

    月間のクレーム数を4件以下にできれば最終目標の「年間クレーム数50件」は達成できます。

    このように、月間の目標などの細かい目標が設定されることにより、最終ゴールまでの道筋が明確になり、従業員は最終目標に向けた明確な目標を感じながら業務にあたれるでしょう。

    最終目標までの道筋を明確にできる点が、メルクマールを活用する大きなメリットです。

    課題が明確になる

    メルクマールを活用することで得られる効果の2つ目は、課題が明確になる点です。

    上述したように、メルクマールを設定することで、最終ゴールまでの道筋が明確になり、中間地点の進捗状況も把握できます。

    この中間地点で、仮に目標よりも悪い結果だった場合、プロセスの途中で何が問題なのかを事前に把握し、課題を持ちながら目標に向け進めるでしょう。

    中間地点での進捗状況と課題を整理することで、最終目標の達成が遅れることを防いだり、目標未達を避けられたりできます。

    また、目標までに見つかった課題は次年度、今後の組織強化にも活用できます。

    中間地点での課題整理は、実際に実行している目標のためだけではなく、組織の将来的な強化にも重要です。

    KPIの代用になる

    メルクマールは、KPIと似た性質を持つことから代用として利用できます。

    KPIは、重要業績指標とも訳されており、組織の最終目標に至るまでの中間進捗を定量的に把握するために用いられます。

    一方、メルクマールはKPIと似た性質を持ちますが、定量的な管理だけに用いられるとは限りません。

    前章で述べた通り、メルクマールは広義の意味を持っており、使う場所やシチュエーションによって意味が異なります。

    時として定性的な目標としても活用されることもあり、KPIでは表せない目標として利用できるでしょう。

    メルクマールの導入方法

    ここからは、メルクマールの導入方法について、3つのプロセスにまとめて解説します。

    手順①最終目標を設定

    まず、メルクマールを導入する際は、組織の最終的な目標を設定するところから始めましょう。

    メルクマールは、あくまでも中間目標という位置づけのため、メルクマールをしっかりと設定したからといって最終目標が達成されるとは限りません。

    最終目標が達成できるかどうかは、定量的、かつ実現可能な目標を設定できるかによって異なります。

    事前に設定する最終目標が不明確であったり、そもそも実現できないような目標であったりすれば、中間目標であるメルクマールも意味がなくなってしまうでしょう。

    最終目標を設定するポイントは、現実的かつ定量的な目標設定を意識することが重要です。

    手順②最終ゴールに必要な小目標を設定

    最終目標を設定できたら、次に目標達成までに必要なアクションを整理しましょう。

    この小目標は、最終目標の数値を割った数値で設定すると比較的容易に目標設定ができます。

    例えば、最終目標が「年間の売上1000万円達成する」だった場合に、スタートから3ヶ月目に「売上250万円達成」、6ヶ月目に「売上500万円達成」などと設定します。

    また、この小目標はひとつだけではなく、複数設定しても構いません。

    適切に小目標を設定することで、最終的に組織としてありたい姿に近づくでしょう。

    手順③小目標を達成するための行動指針を設定

    3つ目のプロセスは、前のプロセスで設定した小目標を達成する具体的な行動指針を設定しましょう。

    先程の例の場合、スタートから3ヶ月目に「250万円達成」するための具体的な達成指針を設定します。

    例えば、「単価の高い商品の売り込みを強化する」や「SNS上で商品紹介を月に20件以上投稿する」などです。

    イメージとしては、目標に向けてやるべきことを明確にしましょう。

    この行動指針を設定する際の注意ポイントは、小目標を達成できるかをしっかりと精査することです。

    メルクマール導入時のポイント

    ここからは、メルクマールを導入する上で気をつけるべきポイントをご紹介します。

    導入時に失敗しないように以下の内容をしっかりと抑えておきましょう。

    活発なコミュニケーションを心がける

    メルクマールを設定しただけでは、それだけで最終目標が達成されるわけではありません。

    最終目標、あるいは小目標となるメルクマールを達成するために必要なこと、気づいたポイントを組織内で共有し、組織全体で目標を意識しながらプロジェクトを進めましょう。

    このプロセスでの情報共有やコミュニケーションで重要なポイントは、いいことも悪いことも両方共有することです。

    組織によっては、「油断しないようにいい状態を知らせない方がいい」や、「モチベーションが下がらないように悪い状態を知らせない方がいい」などとコミュニケーションをやめてしまうかもしれません。

    しかし、最終目標やメルクマールの達成に重要なのは、組織内でコミュニケーションを活発にさせて、組織全体で目標に向けて取り組むことです。

    従業員が日々の業務内で目標を意識した仕事ができるように、「目標まであと少しで達成だから頑張りましょう」や「まだ目標が未達だから気を引き締めましょう」などと声掛けを行いましょう。

    メルクマールを設定した後の行動次第で、最終目標が達成できるかが変わります。

    特に組織の管理職は、従業員が目標を意識できるような声掛けを積極的に行えるように心がけましょう。従業員が目標に対して意識を高められることにつながるのはもちろん、コミュニケーションの活性化にも大きく貢献する1on1ミーティング入門書の実施も重要です。

    情報共有を密に行う

    目標を達成するために、組織内で情報を発信する人が多ければ多いほど、目標未達になるような危険ポイントを事前に見つけられ、悪くなる前に軌道修正できるでしょう。

    上述したように、目標を達成するためには、管理職を中心に従業員に目標を意識させる声掛けが重要です。

    しかし、管理職の声掛けだけではなく、実際に業務を行う従業員同士の情報共有も重要です。

    組織内で日々の業務で感じた現場レベルの気づきを共有できる機会を作りましょう。

    ここで共有する情報は、例えば売上アップを目指している組織では、「商品Aの売上が伸びているから売り込みを強化しましょう」などです。

    その組織、また目標ごとで必要な情報共有は異なります。

    組織で話し合い、目標達成に必要な情報共有は何かを考え、活発な議論を行えるように心がけましょう。

    ソフトバンクの導入事例

    ソフトバンクでは、SDGsのコンセプトを実現するために、企業目標として以下の6つの目標を設定しました。

    この6つの大きな目標に対して設定したメルクマールを紹介し、実際の活動内容を説明します。

    以下の内容は、ソフトバンク公式サイトの「マテリアリティ(重要課題)」から参照しており、詳しい内容を確認したい方はこちらをご覧ください。

    ①DXによる社会・産業の構築

    ソフトバンクの大きな目標のひとつである「DX(デジタル・トランスフォーメーション)による社会・産業の構築」は、5GやAIなどの最新デジタル技術を活用し、ビジネスの発展と効率化に貢献したいなどの目的で設定されました。

    この大目標を達成するためのメルクマールとして、「ソリューション等売上の年平均成長率10%を達成する」という目標を設定しています。

    このメルクマールに対して、2020年には17%増という結果で、目標よりも高い結果を達成しました。

    ②人・情報をつなぎ新しい感動を創出

    ソフトバンクが主に取り扱っている携帯電話やスマートデバイスを普及させ、人と情報をつなぐ価値を提供するという目的で設定されたのが「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」です。

    この大目標を達成するためにメルクマールとして、「スマホ累計契約数3,000万件を達成する(2023年)」や「Yahoo!ニュース1日のユーザー数 4,500万件」などを設定しました。

    「スマホ累計契約数3,000万件を達成する(2023年)」の目標に対し、2020年では2,593万件を達成しており、2023年の最終目標達成に近づいています。

    また、「Yahoo!ニュース1日のユーザー数 4,500万件」の目標に対し、2020年の実績は4,181万件でした。

    ③オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出

    3つ目の大目標、「オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出」は、新たなビジネスの拡大やそれらを支える人材育成と組織構築を推進させる目的で設定されました。

    これに対し、メルクマールは「2023年にHAPS(成層圏プラットフォーム)の提供開始」などという目標を設定しています。

    そしてこの目標に対し、2020年には成層圏フライトテストと通信に成功しており、2021年にメルクマールを「HAPS実用化に向けた取り組み推進」に更新しました。

    ④テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献

    大目標「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」は、最新のテクノロジーを活用し、気候変動への対応や循環型社会の推進、自然エネルギーの普及に貢献するという目的で設定されました。

    これに対しメルクマールは、基地局再生可能エネルギー比率「2020年度に30%以上」、「2021年度に50%以上」、「2022年度に70%以上」という段階を踏んで促進する目標を設定しています。

    2020年の実績は、「基地局再生可能エネルギー比率:30%達成」しており、最初の小目標を達成しました。

    ⑤質の高い社会ネットワークの構築

    5つ目の目標である「質の高い社会ネットワークの構築」は、どんなときでも安定的につながるネットワークの維持に全力を尽くすという目的で設定されています。

    これに対し、5G展開計画として基地局数を「1万局超(2020年度末)」、「5万局超(2021年度末)」というメルクマールを設定しました。

    この実績は、目標よりも少し遅れて、2021年5月21日に1万局超達成を記録しています。

    また、小目標の達成が遅れており、「5万局超(2021年度末)」の目標を「5万局超(2022年度末)」に1年後ろ倒しています。

    ⑥レジリエントな経営基盤の発展

    6つ目「レジリエントな経営基盤の発展」は、社会に信用される誠実な企業統治を行うこと、最新のテクノロジーを活用しながら、イノベーションの創発と従業員の幸福度向上を図るという目的から設定されました。

    これに対し、「サステナビリティ調達調査回収:90%以上(毎年)」などのメルクマールを設定し、2020年ではアンケート回収率が92%と目標を達成させています。

    まとめ

    今回は、メルクマールに焦点を当て、その概要と効果、導入方法やソフトバンクの導入例を紹介しました。

    すでにKPIなどを導入し、組織の最終目標を達成するための中間目標を設定している企業もあるかもしれませんが、KPIより対象が幅広いメルクマールも近年注目されています。

    メルクマールを導入することで、組織の目標までの道筋が明確になったり、課題が把握できたり、目標達成に欠かせない効果が期待できます。

    メルクマールを活用する際のポイントは、従業員に組織の目標を意識させるように、声掛けや組織内のコミュニケーションを活発化させることです。

    まだKPIやメルクマールを導入したことがない企業は、ソフトバンクで導入された事例を確認することで、具体的な活動内容が把握できます。

    公式サイトも併せて確認しましょう。

    HR大学編集部
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