#人事評価
2023/11/10

目標設定の方法とは?行うメリットや全体の流れ、留意点について解説

目次

従業員が継続的に成長し続けるための目標設定は欠かせません。

そのため、目標は、今するべきことを逆算してイメージできるよう、具体的かつ丁寧に設定することが大切です。

それでは、従業員の目標設定には、どのような方法があるのでしょうか。
また、具体的な行動につながる目標を設定するためには、どのような点に留意すると良いのでしょうか。

この記事では、目標設定の具体的な方法や設定の流れ、具体的な目標設定を行う上での留意点について説明します。

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目標設定とは

従業員ひとりひとりの目標は、企業の目的達成にあたって重要な要素です。

具体的な企業の目的には、「◯◯の商品の市場シェアで1位になる」「売上◯億円を達成する」といったものがあります。

このような企業の目的を達成するためには、従業員ひとりひとりが自身の強みを伸ばしたり課題を乗り越えたりすることが大切です。

従業員が能力を研鑽したり課題を克服したりするために、それまでのプロセスも含めた目標設定を行うことが有効なのです。

目標設定を行うメリットとは

目標設定は、従業員ひとりひとりの成長や、企業の目的達成において非常に有効です。

それでは、目標設定によって、従業員にとって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

以下で4点に分けて説明します。

将来のビジョンを明確に描くことができる

目標設定に関するノウハウや各種のフレームワークは、仕事の目標設定にしか使えないものではありません。

目標設定の方法を習得できると、人生そのものに対する目標設定にも活用できるでしょう。

人生全体についての目標設定ができれば、今後どのように仕事をして、どのような人生を送っていくのかといった範囲まで、将来のビジョンを描くことができるでしょう。

取り組むべきことが明確になる

目標設定の際は、目標達成のために何をするべきか、同時に達成までのプロセスを考える必要があります。

目標そのものから逆算して考えれば、現時点で何をするべきかが見えてくるでしょう。

ただ設定するだけでは「自分には難しい」と感じる目標でも、取り組むべきステップを把握できれば、「自分でも達成できるかもしれない」と前向きに感じられる場合もあるでしょう。

モチベーションの向上につながる

目標設定は、従業員のモチベーションの向上につながることが期待できます。

なぜなら、まず目標を達成できると、従業員自身の大きな自信につながると考えられます。

加えて、目標に到達した達成感を一度経験すると、また同じ経験をしたいという気持ちになるでしょう。

そのため、目標を達成するために、自然と合理的・効果的な行動を起こせるようになると考えられます。

目標設定は、従業員のモチベーションの向上、ひいては業務の効率化にもつながることが期待できるのです。

達成感を得られる

目標設定後は、目標の達成を意識しながら日々の業務に取り組むようになるでしょう。

懸命に取り組んだ結果、目標に到達できたときは達成感を得られます。

具体的な行動の結果として目標を達成したという経験によって得られる達成感は、非常に大きなものとなるでしょう。

目標設定の流れとは

目標設定では、最終目標そのものだけではなく、目標達成までのプロセスを策定することも大切です。

それでは、目標設定は具体的にどのような流れに沿って行うのでしょうか。

以下で、一般的な目標設定の流れについて解説します。

1.目標の種類を把握する

目標には、主に2つの種類があります。

まずは、自身がどちらの種類の目標を設定するべきなのかを把握することが大切です。

以下でそれぞれの特徴について説明します。

  • 発生型目標

発生型目標は、現在すでに抱えている問題や課題を解決するために設定する目標です。

具体的な発生型目標には、「赤字の解消」や「残業時間の削減」などがあります。

現在の状態からプラスを目指すというよりは、現在のマイナスの状態をゼロに戻す目標と言えるでしょう。

的確な目標設定をするためには、現在の問題や課題を正確に把握・分析することが大切です。

  • 設定型目標

設定型目標は、自分で自発的に定める目標です。

マイナスの状態からゼロを目指す発生型目標に対して、設定型目標は現在の状態からプラスを目指す目標と言えるでしょう。

具体的な設定型目標には、「営業成績を20%上昇させる」「新たな商品企画を1件立案し、受注する」などがあります。

目標数値が見えやすい発生型目標と異なり、設定型目標は具体的な数値を決めにくくなりがちです。

目標値の設定に悩む際は、上司などの周りの人に意見を求めてみるのも有効です。

2.具体的に達成する内容を決める

発生型目標と設定型目標の特徴を踏まえたら、具体的に自分が達成したい目標を定めます。

実際の目標設定については、後述のフレームワークに沿って行うと良いでしょう。

場合によっては、目標が複数思い浮かぶこともあります。

しかし、目標の数が多いと、目標に対する意識や目標達成のためにやるべきプロセスが分散してしまいます。

その結果、どの目標も達成できなかったということになりかねません。

そのような事態を避けるために、複数の目標を思いついた場合でも、重要度を考慮して一つの目標に絞り込む方が良いと言えるでしょう。

3.達成に向けた行動を決める

具体的な目標が決まったら、目標達成のために必要な行動を策定します。

行動の策定は、以下のような流れで行うと良いでしょう。

  1. 現在の状況を正確に把握する
  2. 現在の状況と、設定した目標とのずれを把握する
  3. 目標達成のために必要な具体的行動をリストアップする

目標達成に必要な行動の内容は、可能な限り詳細に挙げることが重要です。

「営業活動に今よりも時間をかける」「業務に集中し、残業時間を減らす」といった抽象的な内容では、具体的な行動につながりにくいでしょう。

実際の行動を起こしやすくするためにも、「◯◯というツールを新たに導入してみる」「毎日◯◯を必ず行う」など、他者から見て明確に理解できる内容でリストアップすることが大切です。

4.達成までの期限を設定する

次に、いつまでに目標を達成するのか、期限を具体的に設定します。

達成までの期限は時に、数年単位の長期的なものである場合もあります。

期限までの時間が長い場合は、半年や一年など、途中で期間を区切ると良いでしょう。

期間を区切った上で、その時々の中間目標を定めておきます。

プロセス通りに中間目標を達成できていれば、その時々での達成感を得ることもできるでしょう。

目標設定の方法とは

目標の設定には、いくつかの有名なフレームワークがあります。

以下で、目標設定の代表的な5つの方法について解説します。

SMARTの法則

「SMARTの法則」は、5つの要素を明確にしながら目標を設定する方法です。

1981年に、コンサルタントであるジョージ・T・トラン氏が提唱したもので、ピーター・ドラッカー氏の「目標による管理」と併せて用いられることが多くなっています。

「SMART」の名称は、以下の5つの頭文字を取って付けられています。

  • Specific(具体性)

どのくらいの期間をかけて、どのような方法で取り組むかなど、目標達成への具体的なプロセスが考えられているか。

  • Measurable(進捗の測定可否)

目標への取り組み具合や結果を数値で測ることができるか。

  • Achievable(実現可能性)

事業目的を達成したい気持ちが強いために、非現実的な目標を設定していないか。

  • Relevant(最終目的との関連性)

事業目的達成のために必要な目標が設定されているか。

  • Time-bound(期限の設定)

目標達成の期限や、長期的目標の場合は中間振り返りの時期を定めているか。

ベーシック法

ベーシック法は、目標設定の基本的な方法です。

ベーシック法では、以下の4つのステップに分けながら目標を定めます。

  • 目標項目の設定

目標項目は「向上・強化」「改善・解消」「維持・継続」「創出・開発」の4つに分けられます。

目標項目は、複数選ぶよりも4つの内のどれか一つに絞った方が、達成までのプロセスに集中できるでしょう。

  • 目標達成基準の設定

何をもって目標を達成したとするか、基準をあらかじめ定めます。

基準はできる限り数値化する方が達成可否を判断しやすいでしょう。

  • 期限の設定

目標達成までの期限を決めます。

  • 目標達成までの計画

目標達成までのプロセスを具体的に定めます。

使用するツールやソフト、工程ごとのスケジュールまでを詳細に設定します。

三点セット法

ベーシック法からさらに掘り下げた方法が三点セット法です。
三点セット法では、以下の3点について検討します。

■テーマ

達成する事柄、つまり目標そのものを指します。
テーマを決めるのに迷うときは、以下のような方法で検討するのも有効です。

1. 安正早楽(あん・せい・そう・らく)

より「早く」「正しく」「早く」「楽に」という観点での考え方です。

たとえば、「安く」であればコストカットについて、「正しく」であれば業務の正確性向上について検討します。

2. 自己否定

自己否定は、「もし...◯◯ではなかったら」というネガティブな想定からテーマを考える方法です。

たとえば「もし自分が契約を全く取れなかったら」と仮定すると、「自身の評価が下がり、会社全体の業績にも影響する」と想像できます。

そのような想像ができれば、「営業スキルを高めるために◯◯の勉強をして、◯◯の資格を取る」など、具体的な目標が自然と生まれてくるでしょう。

3. プロセスチェック

プロセスチェックは、日々の業務プロセスの中から改善するべき点を見つける方法です。

まずは、克服・到達したい目的をおおまかに定め、日々の業務内容の中でその目的に関連するものに注目します。

そして、目的に関連する業務において、改善の余地がある内容について目標を設定します。

■達成レベル

達成レベルは、テーマに到達できたかどうかを判断するための指標です。

この指標は、数値であることが理想的です。

しかし、「◯◯の数字を0にする」「◯◯率を100%にする」といった極端な目標は達成が困難であるため、適切な値を設定することが大切です。

■達成手段

達成手段は、どのようにテーマに到達するかを示すプロセスのことを指します。

抽象的ではない、「次に何をすれば良いか」が分かる具体的な行動計画を立てることが重要です。

ベンチマーキング法

「ベンチマーク」という言葉には、「指標・基準」という意味があります。

ベンチマーキング法は、自分が目標とすることをすでに達成している他者を指標にして、模倣する方法です。

ベンチマーキング法による目標設定の具体的な流れは、以下の通りです。

  • ベンチマークの設定

まずは、ベンチマーク、つまり指標とする人を決めます。

ベンチマークとなる人は、自分に実現可能な範囲で、可能な限り身近な人の中から選びます。

  • 対象の人についての情報収集・分析

ベンチマークとなる人を決めたら、その人に関する情報を収集します。

そして、収集した情報を分析し、その人にはあって自分に足りない点はどこかなどを考察します。

  • 目標の設定

ベンチマークとなる人の情報収集・分析により、自分が持つ課題を把握できたら、その課題を克服するための目標を設定します。

目標は、ベンチマークとなる人と自分との差を縮める、という観点で考えると良いでしょう。

  • 検証

ベンチマーク法は、ベンチマークの決定や目標の設定のみではなく、取り組んだ結果の検証までがセットです。

検証では、ベンチマークとなる人と自分の差がどの程度埋められたか、といった観点から、取り組みの結果を考察しましょう。

ランクアップ法

ランクアップ法は、自身の成長という観点から目標設定を行う方法です。

ランクアップ法では、以下の6つの点に着目して目標を検討します。

  • 改善

現在抱えている問題・課題を解消するための目標

  • 代行

自分よりも高い能力を持つ人の業務を代行できるようになるための目標

  • 研究

特定のテーマについて研究するための目標

  • 多能化

現在持っていない新しいスキルを習得するための目標

  • ノウハウの普及

自分が持つスキルを他の人にノウハウとして伝えるための目標

  • プロ化

現在持っている知識やスキルを専門家と同じレベルまで引き上げるための目標

目標設定における留意点とは

目標設定には、行うことによる多くのメリットや、各種のフレームワークがあります。

それでは、目標設定を行う際に特に留意するべき点にはどのようなものがあるのでしょうか。

以下で3つに分けて説明します。

上司など他者と共有すること

設定した目標は、上司や同僚など、他者と共有すると良いでしょう。

自分のみで目標を持っているのではなく、他者にも目標について知ってもらうことで、適度な緊張感が生まれます。

適度な緊張感によって、目標をそのままにせず、具体的な行動を起こさなければいけないという姿勢を保ちやすくなるでしょう。

中間目標がある場合はそれも共有し、進捗を報告したり、フィードバックやアドバイスをもらったりすることも有効です。

具体的な数値を設定すること

どのようなフレームワークを取り入れる場合も、目標や達成基準に具体的な数値を設定することが大切です。

「◯◯を今までよりも頑張る」といった抽象的な目標では、具体的に何に取り組めば良いか迷ってしまうでしょう。

また、目標数値が現状とあまりに乖離していると、モチベーションの低下につながる場合があります。

目標となる指標は、従業員自身の能力の他にも、自社の状況や従業員を取り巻く環境、社会情勢によって、難易度が左右される場合があります。

目標の達成基準は、周囲の環境も考慮した上で、現在の自分の能力と大きく乖離しない現実的な数値を設定しましょう。

なぜそのように設定したのかを説明できるような、根拠のある数値であることが望ましいです。

定期的に振り返りを行うこと

目標までのプロセスについては、普段から定期的に振り返りを行うことが理想的です。

可能であれば1週間に一回、1ヶ月に一回ほどの頻度で振り返りを行いましょう。
振り返りの際は、その時点での「順調な点」や「つまづいている点」などを書き出します。

順調な点については、さらに伸ばすために何をすれば良いかを考えます。

逆に、つまづいている点については、改善のために何をすれば良いかを考えましょう。

こまめに振り返りを行うことにより、プロセスが目標からずれている場合にも気付きやすくなります。

プロセスからずれていることに気づくことができれば、早い段階で正しいプロセスに軌道修正することができます。

まとめ

目標設定は、従業員ひとりひとりの成長、ひいては企業全体の事業成長につながります。

目標設定にはさまざまなフレームワークがあり、それぞれのフレームワークに特長があります。

まずは、曖昧で良いので、自分が目指したいと思う目標をおおまかに思い浮かべましょう。

目標が思い浮かんだら、その目標に適していて、かつ使いやすそうと感じられるフレームワークを用いて目標設定を行います。

また、目標は設定したら終わりではなく、定期的な振り返りが重要です。

スパンを決めてプロセスの振り返りを行い、目標達成に着実に取り組んでいきましょう。

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