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【事例豊富】役割等級とはどんな制度?メリットデメリットと導入時の注意点を解説

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【事例豊富】役割等級とはどんな制度?メリットデメリットと導入時の注意点を解説

目次

    本記事の内容は作成日または更新日現在のものです。本記事の作成日または更新日以後に、本記事で紹介している商品・サービス・企業・法令の内容が変更されている場合がございます。

    「役割等級って言葉は聞いたことはあるが、どんな制度か知らない」

    「これまでの等級制度とどんな違いがあるの?」

    「役割等級を導入するメリットを知りたい」

    こんなことを考えていませんか?

    企業の人事評価の新たな軸として役割等級が注目を集めています。従業員をより公正に評価できる、優秀な人材を採用しやすくなるというメリットがあるからです。

    この記事では、以下の内容について紹介します。

    • 役割等級とは
    • 他の等級制度との違い
    • メリットデメリット
    • 導入している企業の事例

    この記事を読めば、役割等級を活用して従業員のモチベーションを上げるヒントが見つかるでしょう。

    役割等級とは

    役割等級とは、従業員の社歴や年齢にかかわらず、与えられた役割に応じて報酬や序列を決める人事制度です。

    役割等級は、経営目標に基づいて役割が細かく定められています。

    そのため、従業員がやりたい仕事や報酬を得るために、何をすべきかがより明確になっている点が大きな特徴です。

    日本では浸透していない役割等級制度ですが、欧米では1980年代ごろから主流になっています。

    他の等級制度と異なる点

    職務等級制度とは?

    職務等級制度とは、仕事の難しさや重要性に応じて報酬が決まる制度のことで、一般的に「同一労働・同一賃金」と呼ばれています。

    主に以下のような特徴があります。

    • スペシャリストを育てやすい
    • 給料と職務の結びつきが明確
    • 人件費を削減しやすい
    • 年齢に応じて全ての従業員の給料を上げる必要がない

    一方、役割等級はその名の通り与えられた役割をこなせば評価されるため、どんな仕事を任せたらいいかある程度フレキシブルに変えられます。

    役割等級制度も職務等級制度のいずれも、勤続年数に捉われない面では共通していますが、職務が厳密に定められているかどうかで大きな違いがあるといえます。

    職能資格制度とは?

    職能資格制度とは、従業員の仕事の遂行能力に応じて昇給・昇進を決める制度のことで、高度経済成長期から多くの企業が採用しているシステムです。

    勤続年数に応じてスキルが上がるという前提で設計されているケースが多く、ほとんど年功序列のような形で運用されてきました。

    職能資格制度のメリットは、次の通りです。

    • ゼネラリストを育成しやすい
    • フレキシブルに従業員を異動させられる
    • 長期雇用に向いている

    しかし、勤続年数と給料が比例する賃金テーブルの場合、人件費が負担になったり評価基準があいまいになったりといったデメリットも大きいです。

    そのため、中小企業や先進的な大企業を中心に、役割等級や職務等級制度を採用するケースが増えています。

    役割等級が注目される背景

    なぜ近年、役割等級が注目されているのでしょうか。

    具体的には、4つの背景があります。

    1. バブル崩壊による景気低迷
    2. 高齢者雇用安定法の改正
    3. ジェンダーのギャップの解消
    4. 働くことに対する価値観が変化

    日本で主流の職能資格制度と比べながら解説します。

    バブル崩壊から続いている景気低迷

    役割等級が注目される背景の一つに、日本経済が低迷していることが挙げられます。

    これまでの職能資格制度は年功序列に近い形だったため、人件費が高くなる傾向にありました。

    高度成長期であれば企業の収益は右肩上がりだったので、人件費の上昇は問題ではありませんでした。しかし、バブル崩壊で大企業ですら従業員に高い給料を払う余裕がなくなっています。そして、現在でも経済の低迷は続いており、日本人の給料は伸びていません。

    そのため、役割等級を活用して、経営目標を達成してくれる従業員に対してだけ高い報酬を払う企業が増えたのです。

    高齢者雇用安定法の改正

    高齢者雇用安定法が改正されたのも、役割等級を取り入れる企業が増えている理由の一つです。

    高齢者雇用安定法では、企業に従業員を満70歳まで雇用することを努力目標として義務付けています。

    しかし、これまでの職能資格制度では

    • 人件費が企業にとって大きな負担になる
    • 必ずしも年齢と職務遂行能力が比例しない

    といったデメリットがあります。

    そのため、年齢に関係なく役割を遂行してくれる人だけを評価する役割等級が採用されるようになりました。

    ジェンダーのギャップの解消

    男女間の賃金格差を解消する意味でも、役割等級に注目する企業が増えています。

    日本におけるジェンダー格差はかなり根深く、1985年に男女雇用機会均等法が制定された後も、大企業や歴史ある中小企業では格差が依然として残っています。

    • 総合職と一般職の区別による男女間の賃金テーブルの違い
    • 育休・産休による昇進・昇給への影響
    • 職務に対する不当な女性蔑視

    しかし、役割等級はあくまで「どんな仕事をするか」に対する評価なので、性別に対する不公平さを解消できる可能性が高いです。

    たとえ、女性の新人であっても、高報酬の役割につくことができれば、ベテランの男性従業員より年収が高くなるケースも出てくるはずです。

    このようにジェンダーギャップを解決できる点で、役割等級を採用する企業が増えています。

    働くことに対する価値観が変化

    働き方への価値観が変化していることも、役割等級が重視される理由の一つです。

    日本では就職というと、同じ企業に一生勤めるという「就社」が一般的でした。会社への帰属意識を強く持ち、出勤して会社に貢献するという考えです。

    しかし2020年から大流行した新型コロナウイルスの影響でテレワークが加速し、会社でも自宅でも仕事ができるようになっています。その結果、会社への帰属意識よりも与えられた役割で成果を出すべきという意識が強まっています。

    そうなれば、これまでの年功序列よりも経営目標に基づいた役割で仕事を頑張ろうと考える従業員が増えても不思議ではありません。

    このように、就労に対する価値観が変わっているため、より時代に合った役割等級が注目されているといえます。

    役割等級制度を導入するメリット

    役割等級が注目されている背景を説明しましたが、自社にとってどんなメリットがあるのかピンとこない人もいるでしょう。

    無理にこれまでの制度を変えて、社内から反発を招かないか心配になる人もいるはずです。

    ここでは、役割等級制度を導入するメリットを紹介します。

    1. 従業員の主体性がアップする
    2. より公平な評価が可能になる
    3. 従業員を効率的に育成できる
    4. より優秀な人材を採用しやすくなる

    他の等級制度にはない良さがあるので、ひとつずつ解説します。

    従業員の主体性がアップする

    従業員の主体性が上がることが挙げられます。
    なぜなら、やるべき仕事が明確なので、業務に対して迷いがなくなるからです。

    • 何をすれば評価されるのか
    • 今の役割において自分に足りないものは何か
    • 役割に対して自分のどんな強みを発揮できるのか

    これらの項目がはっきりするため、従業員は自分で考えて行動できるようになります。

    より公平な評価が可能になる

    これまでの職能資格制度は、評価基準があいまいな側面があります。それに加え、上司の印象で昇進が決定することも珍しくないため、公平とはいえないケースが目立ちました。

    一方の役割等級は、定められた役割をこなせなければ、どれだけ上司と仲がよかったり社歴が長かったりしても評価されません。

    そして前述の通り、役割等級はどんな仕事をすればいいか分かるため、従業員としても評価に対する納得度が高まります。

    従業員を効率的に育成できる

    これまでの職能資格制度では、採用してから従業員をどう育成するか決めていました。本人の強みを考慮しない、人事異動が多く育成ノウハウが蓄積されていない、という部署も珍しくないため、非常に非効率でした。

    前述の通り、職能資格制度では評価があいまいな部分もあるため、従業員が会社の思うように成果を出してくれないといったケースも珍しくありません。

    一方、役割等級で定められている役割は経営目標に基づいて作られています。そのため、従業員を役割に見合うように指導すればいいので、遠回りな育成を避けることができます。

    また、人事異動でポジションが変わっても、役割等級の定義に従って従業員を育成すれば、新しい役割でもスムーズに成果を出してくれるはずです。

    このように、従業員の育成に比べてムダを省ける点が役割等級のメリットといえます。

    より優秀な人材を採用しやすくなる

    近年では若い人を中心に年功序列を避ける傾向にあります。なぜなら、成果を出しても若いという理由だけで昇進・昇給ができないケースが多いからです。

    しかし、役割等級は与えられた責務だけが評価の対象になるため、年齢が不利にはたらくことはありません。

    そのため若くしてキャリアアップできるメリットに魅力を感じ、優秀な人材が応募することが期待できます。

    役割等級制度を導入するデメリット

    役割等級はメリットの多い制度ですが、完璧というわけではありません。

    主に3つのデメリットがあります。

    1. 制度の設計に手間がかかる
    2. 人事配置によっては従業員のモチベーションが下がる
    3. 組織再編で制度の見直しが必要なケースが出てくる

    デメリットを正しく理解しないと、社内から大きな反発を招くおそれがあります。しっかりとリスクを把握しておきましょう。

    制度の設計に手間がかかる

    これまでの人事体制から役割等級に変える場合は、かなり手間がかかります。主に変えるべき点は次の2つです。

    • グレード分け
    • 評価基準と項目

    年功序列であれば勤続年数や年齢で給料を上げたら問題ありませんでしたが、役割等級では与えられたグレードごとに評価基準を作らければいけないため、かなり時間がかかります。

    例えば人事部において役割を付けるだけでもこれだけあります。

    • 採用担当
    • 労務管理
    • 教育・研修
    • 給与管理

    それぞれの役割を厳密に線引きし、賃金テーブルも従業員が納得するよう定めなければいけません。

    このように役割等級はいままでの人事制度を大きく変える労力が必要になります。

    なお人事設計にお困りの方は、ぜひ弊社HRBrainの「ゼロから作る人事制度設計マニュアル」を活用してみてください。人事制度の全体像がコンパクトにまとめられています。

    従業員のモチベーションが下がる

    以下のような理由で、従業員の働くモチベーションが下がる可能性もあります。

    • 従業員が年功序列に慣れている
    • 不本意な人事異動でポジションから外される


    大企業のような年功序列が主流の会社だと、ベテラン従業員から反発を招くリスクがあります。もともと、年功序列を約束されて入社しているケースが多いからです。

    いきなり「役割が変わるから給料が下がります」といわれたら、働く意欲がなくなるかもしれません。

    また不本意な人事異動で今のポジションから外されても、不満を招く可能性があります。

    このように、これまでの給与システムと人事異動も考慮して役割等級を導入しないと、従業員の士気にかかわることは覚えておきましょう。

    組織再編で制度の見直しが必要なケースが出てくる

    会社の買収や合併などで体制が変わると、これまでの役割等級を見直さなければいけません。

    特に新しい部門が発足したり統廃合された場合、ほぼ一から制度を作り直す必要があるでしょう。

    なので、一度役割等級を導入したら、制度設計のプロセスを社内で共有することをおすすめします。

    役割等級制度を施行する4ステップ

    これまでに解説したように、役割等級において制度設計が一番大切です。

    そのため、正しい手順を踏まないと、せっかく作ってもすぐに見直しすることになってしまいます。

    ここでは、役割等級を導入する4ステップを紹介します。

    1. 制度の方向性を決める
    2. 等級数と各役割を定義する
    3. 評価プロセスを具体化する
    4. 導入時期を検討する

    制度の方向性を決める

    役割等級は、他社のシステムを持ち込んでもうまく機能しません。制度を導入する際は、まず方向性を決めましょう。

    方針を決める主なポイントは次の通りです。

    • 経営目標・理念に基づいているか
    • 自社が直面している課題は何か
    • どんな人材を必要としているか

    これらの項目を、経営陣と従業員がしっかり認識を合わせる必要があります。

    等級数と各役割を定義する

    方針が決まったら、等級分けと各グレードで求められるミッションを決めましょう。

    まず等級数は、適切な数で分けることが大切です。

    等級が少なければ、同じグレードでも従業員の間で実力差が生まれます。そうすると実力が上がっても、他の等級に移るまで時間がかかるかもしれません。

    一方等級を分けすぎると各グレードの定義付けが難しくなります。等級を分ける際は管理ポジションで2~3、一般職で4~5くらいにしておくといいでしょう。

    等級数が決まったら、各グレードの定義をします。定義は誰が読んでも誤解しないよう、簡潔かつ具体的に書いてください。

    評価プロセスを具体化する

    役割を決めたら、評価のプロセスを決めます。何度も書いていますが、役割等級は評価基準とプロセスがあいまいだと、うまく機能しません。

    プロセスを決めるポイントは次の通りです。

    • 目標管理のスケジュールと連動しているか
    • 経営目標から離れていないか
    • 上司や同僚の私情が入り込む余地はないか

    特に目標達成のスケジュールを厳密に決めている場合は、目標管理に合わせて評価するタイミングを決めましょう。

    今従業員が与えられた目標に向かって仕事をしていても、目標達成の期限を迎える前に評価をされては、公正とはいえません。


    評価スケジュールは、自社の現状に合わせて決めることをおすすめします。

    導入時期を検討する

    最後に、役割等級の導入スケジュールを決めます。いきなり施行すると混乱を招くため、次のように数ステップに分けて移行することをおすすめします。

    1. 導入前に従業員へ説明会を開く
    2. 仮施行
    3. 正式に導入
    4. 導入後の浸透レベルの調査

    特に導入後、制度が浸透しているか定期的に確かめましょう。

    1. 現場から意見をもらう
    2. 管理サイドの評価訓練を行う

    上記の項目を入念にチェックすれば、従業員も納得感をもって役割等級を受け入れてくれるはずです。

    役割等級制度を導入している事例3選

    ここでは、役割等級を導入している事例を3社紹介します。

    パナソニック株式会社

    家電メーカーのパナソニックは、2014年に年功序列の賃金テーブルを見直し、管理職を対象に役割等級を導入しました。

    狙いは若手の従業員に責任あるポジションについてもらい、仕事へのモチベーションを引き出すことです。

    パナソニックは海外メーカーとの厳しい競争に晒されているため、優秀な若手の登用が必要不可欠です。

    自社の人材を活用してグローバルビジネスを成功させたいなら、パナソニックの人事制度は大いに参考になるでしょう。

    株式会社ココナラ

    ココナラは、スキルのオンラインフリーマーケット「coconala」を運営しているベンチャー企業です。

    2017年から役割等級を導入し、11段階のグレードに分けるなど、そのシステムは徹底しています。評価軸も以下の5つに分けられており、基準が明確に定義されています。

    • 裁量
    • コミット範囲
    • 育成責任
    • 業務レベル
    • ノウハウレベル


    そして一番ユニークなのは、等級に見合わない従業員を引き上げるためのサポートがあることです。

    単に等級から外すのではなく、上司と面談して、今のグレードで足りないスキルを洗い出す取り組みをしています。

    ココナラの制度を参考にすれば、役割等級を活用して従業員の能力を上げる方法が分かるはずです。

    ユナイテッド株式会社

    ユナイテッドは、アドテクノロジーとコンテンツマネジメント、投資事業を中心にビジネスを展開している会社です。

    2015年にグレードアップ宣言という独自の等級制度を設け、総合職とデザイナー職など合わせて18のグレードに分かれています。

    グレードアップ宣言の最大の特徴は、挙手制で上の等級にチャレンジできることです。希望する従業員は、等級を上げるために独自の研修を受けられます。

    そのため、マネジメント層に移る際に現場では経験できない視点を学べることがメリットです。

    「従業員の自主性をもっと上げたい」「会社からキャリアアップのチャンスを与えたい」という企業にとって、ユナイテッドの制度はとても学びになるでしょう。

    まとめ

    この記事では、役割等級の概要とメリットデメリット、導入の手順について紹介しました。

    繰り返しになりますが、職能資格制度は年功序列に近い制度なため、企業にとって大きな負担になっています。

    加えてジェンダー問題や就労意識への変化により、これまでの賃金システムでは企業の成長は期待できないかもしれません。

    しかし、役割等級なら経営目標に結びついた成果を求められるため、コストパフォーマンス高く人材を育成できるはずです。

    役割等級の導入を考えている企業の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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    HR大学 編集部

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