#人事評価
2023/08/09

目標管理の必要性と目標管理制度の導入。概要や運用方法を解説

目次

目標管理(MBO)を行うことで、社員のスキルアップや能力開発につなげている会社が増えています。目標管理の適切な運用方法を知ることで、社員のパフォーマンスをさらに高めることが可能です。

目標管理の必要性と手法

目標管理(MBO)は、1950年代にアメリカの経営学者であったピーター・ドラッカー氏によって提唱されました。アメリカでは多くの企業が導入してきた手法ですが、近年、多くの書籍が出版されるなど、日本でも注目されています。

目標管理の必要性

目標管理という考え方の根本にあるのは、「従業員が自ら目標を見つけて取り組み、問題を解決する」というプロセスを達成する仕組みです。

従業員一人一人の成長を促進すると同時に、企業戦略を具体化し、それを達成するために何が必要かを自ら考えることができる従業員を育成するために、目標管理が利用されるようになりました。

目標管理制度(MBO)とは

MBOは(Management by Objectives)の略で、日本語では『目標管理』と訳されます。

目標管理とは、上司や経営者ではなく、従業員自らが目標を設定し、その進捗や実績によって仕事や評価を管理していこうという考え方です。

目標が明確化されると社員の状況や能力を組織が把握しやすいため、価値観や業務が多様化している現代のビジネスにおいて、非常に効果的な手法として注目を集めています。

MBOのメリット

MBOのメリット

MBOを導入することによって、従業員と組織にどのようなメリットがあるのでしょうか?

人材育成

MBOの主旨は『人材育成』にあります。これは主にコーチングの元に使われる手法です。

コーチングとは、一方的に何かを教えるのではなく、対象者に寄り添い、できるようになるまで導く指導法です。

MBOでは、従業員に対して上司や会社が目標や課題を提示することはありません。

従業員が自ら目標を考え、乗り越えるためにはどのような課題や障害が発生するか、そしてどのような能力があれば自分は乗り越えられるのかを考えます。

これによって、単なる知識やスキルを持った人材ではなく、「目標達成のプロセスを自ら考えることができる人材」を育成することができるのです。

モチベーションの向上

目標管理の導入により、従業員のモチベーション向上効果があると言われています。「上司に言われた課題ではなく、自らが決めた目標」なら、自然とやりがいと責任感が伴いますし、自分で設定した目標ですから、十分に達成が可能なものになっているはずです。

達成不可能なノルマや無理難題な成績を押し付けられることがないため、やる気を誘発しやすいと考えられます。

人事考課

人事考課は、管理職の人間が従業員の業績や貢献度から報酬を査定する人事制度のことですが、人事考課の参考値となるのがMBOです。

目標が明確になっているため、達成率を評価の参考値にすることができます。また、従業員に評価の理由を「評価が上がったのは目標を達成したから、下がったのは未達だから」と明確に伝えることができるため、従業員の評価に対する納得度も上がります。

人事考課のためにMBOを導入している企業もあるくらい、日本では人事考課とMBOはセットとして考えられることが多いです。

MBOのデメリット

もちろん、MBOにもデメリットはあります。あらかじめデメリットへの対策を用意した上で導入することが、MBOを成功させるポイントです。

目標設定が難しい場合がある

MBOで設定する目標は必ず達成することが基本と言われていますが、簡単に達成できるような目標では従業員の成長は見込めません。とはいえ、あまりにも達成困難な目標では、途中で挫折する可能性も大きくなってしまいます。

「目標達成が容易ではなく、かつ未達にならない適度なレベルの目標」が必要ですが、従業員主導で決定するため、レベルの調整が難しく、時間がかかってしまうこともありえます。

短期結果が重視されやすくなる

結果を出せば評価がその分あがるため、短期の結果が重視されやすくなるのもデメリットの一つ。

成熟したスキルの獲得や、大きなプロジェクトを進めると、一時的に評価が下がってしまうケースがあるため、それを恐れて長期的戦略を取り入れなくなっていく可能性があります。

成果を出すためにスタンドプレーに走りやすくなってしまう人や、目標以外の業務に対しては消極的になってしまう人も現れてくることでしょう。

中長期的な展望と、評価をされにくい仕事についてどのように目標を設定していくのかが、MBOの課題です。

評価者の負担増

従業員一人一人に目標設定を行わなければならないのは、優秀な管理者であっても、かなり難しい業務と言えるでしょう。

進捗管理として従業員に面談を行ないつつサポートしなければなりませんので、 通常の業務に支障をきたすほどの負担にもなりかねません。

従業員それぞれの目標は一律ではないので、個別に評価を行わなければならないのも評価者に負担をかけてしまいます。

MBO導入に際しては、管理者の負担をいかに減らすかも重要な課題となります。

MBOのプロセス

MBOを開始したら、従業員に対して、次のようなアプローチを行います。

MBOのプロセス

目標設定

MBO開始の第一歩が、従業員自らが行う「目標設定」です。目標を設定してもらうために必要な情報を揃えましょう。

まずは「組織全体の目標」を、管理者と従業員の間できちんと共有します。従業員の目標が達成されれば、企業に貢献することができます。目標設定の最終目的は企業の利益を生み出すことですから、組織全体が向かうべき方向を最初に確認しておきましょう。

組織の目標を設定したら、個人目標の仮設定を行います。従業員の現状と達成までの期間などを鑑みて、仮目標が達成可能かどうかを検証しましょう。目標が低すぎると感じた場合は、ハードルを上げる事も必要です。

検証が済んだら、達成可能である最適なレベルの目標を設定して、達成のための計画を立ててもらいましょう。

実行と達成度の確認

目標を定めて計画を立てた後は、さっそく実行です。最初のうちは勝手がわからず、従業員からの疑問・質問も多いはずです。想定できる質問に対する回答を用意しておくなど、サポートする用意をしておくとスムーズです。

ある程度軌道に乗ったら、経過を見守りつつ一定期間で進捗を確認します。計画とズレがないか、何か問題が発生していないか、定期的に確認するようにしましょう。

もし計画に遅れやズレが生じていたら、目標達成のためにどのように修正していくかを相談します。それまでの行動の振り返りや、次の中継点まで何をすべきかなど、具体的な対策を確認しておきましょう。

評価とフォローアップ

目標達成のために定めた期間が終了したら、いよいよ評価を行います。目標を達成できたかどうかだけではなく、そこに至るまでのプロセスの良い点や悪い点の洗い出しを行い、次の目標に向けて計画や作業、目標設定をブラッシュアップしていきます。

目標を達成できなかった場合は、原因の指摘や、達成するまでにどうすれば良かったのかといったフォローアップも行いましょう。

目標管理シートの活用

後々の振り返りや評価のために『目標管理シート』を活用すると、目標管理をより効果的なものにすることができます。

目標管理シートとは

目標管理シートは、MBOマネジメントを行うためのツールです。シートといっても必ずしも紙である必要はなく、Excelやスプレッドシートなどの形式で作成されることが一般的です。

目標管理においては目標設定と計画、そして進捗確認が不可欠ですが、人事考課やフィードバックのためには、プロセスを残した記録があると評価者も被評価者も安心です。

目標管理シートを使って目標までのプロセスを残すことで、より具体的な改善施策や人材育成に役立てることができますし、被評価者にとっては納得の行く評価理由にもなります。

目標管理シートが使われるのはビジネスだけとは限りません。第一線で活躍するプロスポーツ選手が目標管理シートを利用しているケースなどもあるようです。

目標管理シートの作成手順

目標管理シートの作成手順です。

1.課題をピックアップ

まずは従業員に現状を確認してもらい、役職や部署、そして現状の評価などを洗い出します。そして、今後取り組むべき課題について、箇条書きにしてピックアップしてもらいます。

2.目標の設定

課題を洗い出したら目標の設定です。目標は売上や成約数などの定量的目標と、モチベーションやサービスの向上などの数値化が難しい定性的目標の二つの観点から考えるとうまくいきます。

3.プロセスの決定

具体的な目標が決まったら、期間から逆算してプロセスを決定してもらいましょう。プロセスについても期限を設定することで、進捗を確認できるようにしましょう。複数プランを考えておくと、計画の修正が容易に行えます。

初期シートの作成のために行う基本的なことは、以上の3項目ですが、目標達成までの期間が始まった後は、計画の進捗具合や途中で気付いたことなどがあれば、メモしておくように指示しておくと、後々振り返りがしやすくなります。

目標達成期間が終わったら、シートを元に管理者と従業員が面談を行い、評価とフィードバックを行います。

目標管理シートの書き方

目標管理シートを作成する際には、自社の業種やビジネスモデルにあわせたアレンジを行いつつ、項目を検討してみてください。

課題などの詳細な記入

目標管理シートの役割は『人材育成』です。目標やプロセスなど最低限のことだけでなく、後で振り返りやすい記録内容にすること、確認したときに自身の足りていない部分が意識できるような記載を行うことを常に意識しましょう。

個人レベルだけでなく、チームとしての課題や会社全体の方針や計画についても概要程度でよいので記載しておけば、「自分がなぜこの目標に向かって努力しているのか」という振り返りと、会社への貢献度が確認できるようになります。

シートは確認するためのもの。ゴチャゴチャして見づらいシートは確認以前の問題です。見やすく箇条書きにしたり、アプリの付箋機能を使ったり、わかりやすく見せる工夫も重要です。

客観的な記述を要求する

目標管理シートは単なるメモ帳ではありません。管理者や人事部の人間も見ることがある重要な書類です。従業員には、他人が読み返してもわかるレベルの内容に仕上げる意識を常に持つよう、指導しておきましょう。

改善点や所感などのメモも、できる限り客観的な文体にするべきです。こそあど言葉を乱用していたり、主語がない文章だったりすると、あとで本人が読み返した時に、何を指しているかわからなくなってしまいます。

数値の関わる進捗や課題については、具体的な数値を記載するように指導しておきます。例えば営業なら「成約率を伸ばす」ではなく「成約率○%を達成する」といったように具体的な数字を記載しておくと、進捗確認が楽になるからです。

期限設定と実現可能な目標

MBOにおいては、目標達成率は100%が前提です。100%達成できる目標でなければ、目標の設定の仕方が雑になってしまう可能性がありますし、途中で修正することも困難です。

また、期限設定は必ず行いましょう。 期限が設定されていない目標は、ゴールのないマラソンのようなもの。いつかモチベーションが低下し、挫折してしまいます。期限がなければ目標達成の現実味は薄れてしまいますし、評価も難しくなるでしょう。

期限を設定し、その期限内で達成できる目標を設定することが大切です。達成が難しい場合は、次の期間へ目標達成をスライドすることも考えましょう。

ツールの利用もアリ

最近は人事評価や目標管理のためのアプリも増えてきました。アプリの機能の一つとして、シートが付属していることもあるようです。

Excelやスプレッドシートを使うのも有効ですが、人数が増えるほど管理は大変になっていくもの。人事評価クラウドHRBrainなら、シンプルな目標管理ツールを簡単に始めることができます。現行の制度をそのまま移行することもできますし、新しく始める際にも、テンプレートに沿って入力するだけで、一流企業と同じ仕組みを最短で即日導入することができます。

クラウドなので、外出先でもシートを確認することができます。使いやすいツールは積極的に導入して、目標管理をより効率的に行いましょう。

適切な導入で成果につなげよう

目標管理は社員のスキルアップやモチベーション向上が見込めるだけでなく、人事考課においても明確な判断基準を作ることができるため、従業員の管理に非常に有効な手法です。

仕事に対し知識や技術を身につけるだけではなく、自身で課題を発見し、解決に至るまでのセルフマネジメント能力を従業員が習得することが可能です。

目標管理はMBOだけではなく、OKRなど他の手法もあります。自社にとって必要な手法を選択し、企業の発展につなげていきましょう。

目標管理システム導入事例

目標管理システム導入事例として「HRBrainタレントマネジメント」の導入事例を確認してみましょう。

20年ぶりの人事評価制度刷新とタレントマネジメントの活用 株式会社日比谷花壇

株式会社日比谷花壇は、フラワーショップの経営をはじめ、イベントプロデュース、ウエディングフラワー、EC、フラワーギフト・デザインの企画、制作、販売、フューネラル(葬儀)などの事業を展開しています。また、緑を活用した内装・造園事業も行っています。人事評価が20年前から抜本的な見直しがされないまま運用され続けていたことや人事システムの使いづらさに課題を感じていました。

課題

  • 長期間見直しがされていなかった人事制度に「基準があいまい」「上長によって評価にバラつきがある」などの問題があった

  • 各店舗に1台しかパソコンがないことやシステムの使いづらさから人事システムを「賞与のためだけに入力するもの」と認識されていた

課題解決のカギ

  • 一目見たらわかる仕様・画面で操作できるタレントマネジメントシステム「HRBrain」を導入

  • 「HRBrain」導入と同時に人事評価制度を20年ぶりに刷新

  • 資格や独自の「今後やってみたいこと」など、社員の情報を「HRBrain」に一元管理して可視化

一目見たらわかる仕様・画面で操作できる、わかりやすいUIのタレントマネジメントシステム「HRBrain」を導入。それと同時に20年間見直しがされていなかった人事評価制度を革新しました。また、社員情報を「HRBrain」に一元管理することによって、人材データの可視化が実現されました。

システム導入効果

  • 社員名簿から従業員の顔写真とパーソナルな情報が見られるため、人事評価しやすくなった

  • 設立72年目にしてはじめて、対象の従業員全員が目標を入力できた

  • 「HRBrain」上で社員が自ら情報を取得し、キャリアに活かす動きが出てきた

導入システム
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HRBrain 人事評価 サービス資料

導入事例
▼人事業務工数を7割削減。組織・人材改革を開始
株式会社日比谷花壇 | 導入事例

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MBOをはじめとした目標管理制度は、制度を作るだけでは何の役にも立ちません。正しく運用するために、人事のスペシャリストに相談してみませんか?

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HR大学編集部
HR大学 編集部

HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。

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